ぴよぴよと草原の子ライオン
キャラクターノベル制作 白葉うづき納品 2020年11月11日 18時11分46秒
その日、依頼を終えたレオネベルはヴェルクリエの街を歩いていた。内容は何てことはない、相も変わらず不可思議な紋具を巡ってのこと。
「便利なモン作るのはいいけど、迷惑かけるのはなぁ……っと、ここか?」
彼女には訪ねてみたい場所があった。以前仕事で一緒になった運び屋から聞いた、ある一軒の民家。レオネベルは目的地に着くと息を吐き、意を決してその扉を叩いた。
「ひよこー……?」
訪ねてきたレオネベルを温かく迎え、学者らしき男性は快く頼みを聞いてくれた。
案内された部屋を開ける前から賑やかな声が聞こえてくる。それはあの日聞いた鳴き声と変わりない、元気な報せ。
「ぴよぴよぴよ!」
「ひよこ!」
黄色くて真ん丸、ふわふわな小さなひよこが一斉にレオネベルへ詰めかけた。ジャンプして飛び込んできた子を抱きとめる。
「もしかして覚えててくれたのか? ……へへっ」
思った以上の大歓迎。賑やかに鳴きながら足元に集うひよこにしゃがむと、レオネベルはくすぐったそうに笑った。
「元気だったか?」
「ぴよ!」
「毎日腹いっぱい食ってるか?」
「ぴよぴよ!」
「オレのこと、覚えてたのか?」
「ぴーよっ!」
「うわーっ……」
レオネベルは膝をついて頭を抱える。この溢れんばかりの気持ちはなんだろう。くりくりとした瞳が見つめてくる。これはもはや暴力と言ってもいい。
「お前らマジで可愛いな!」
「ぴよっ!」
ジャンプするひよこたちは恐らく自分の可愛さを分かっている。丸くて黄色いふわふわした毛玉が飛び跳ねてはアピールしていた。
「なんだ、撫でてほしいのか? 順番にだぞ?」
「ぴよ!」
そう告げると行儀よく一匹ずつ近づいてくれた。ふわふわの毛並みを撫でると気持ちよさそうに目を細め、小さく鳴き声を零す。それが十匹分。
「本当ふわふわだなぁ」
「ぴよー……」
「あ、お前ここちょっとはげてるぞ? ぶつけたか? ふわふわだからって油断するなよ?」
「ぴよ!」
「あーっもう! 可愛いな! こうしてやる!」
「ぴよぴよ!」
一匹ずつ存分に触れあってはその可愛さにレオネベルの表情は緩んでいく。あどけない笑顔に、ひよこたちも嬉しそうに鳴き声を重ねた。
僅かに木床が軋み近付いてくる音が聞こえる。ぴくりと反応したレオネベルは瞬時に大きく深呼吸すると、頬を何度か捏ねた。
「少しいいかな、レオ君」
「んっ……、ああ、大丈夫だ。構わねえぜ」
ノックの後に扉が開かれ、学者先生が顔を覗かせた。彼はクレーゲルと名乗り、鳥を専門に研究しているらしい。暇を見て遠出しては不思議な鳥を探しているのだとか。
学者はレオネベルとひよこを見て微笑ましそうに瞳を和らげた。レオネベルは何となくフードを被る。
「ぴよぴよひよことは仲良く出来たかい?」
「ん……まあな。オレのことも覚えてたみたいだ、頭いいんだな」
「うむ。私たちの言うことも何となく理解しているみたいでね。かしこくて大人しくて、それでいて可愛い」
「可愛い」
レオネベルは深く頷く。
「ふふ。どうして彼らがこの姿で生まれてくるかはまだわからない。けれど僕と学者仲間は、そもそもニワトリではないのでは? と考えている。もしかしたら違う種類の鳥なのかもしれない、と」
「不思議な奴らだもんな。こんなかわ……ちっちぇえし」
クレーゲルは優しくひよこを撫でる。ひよこは気持ちよさそうに目を細めた。
「君たちが行ってくれた村で、時々普通の卵と異なる卵が見つかるんだ。そこからこの子たちは生まれる。機会があったらぜひ行ってみてほしい。この子たちのことがもっと知れるよ」
「ふーん……」
この前の村の場所は覚えている。近くに用事があれば、寄ってみるのも悪くない。
「ああそうだ、レオ君にお願いしたいことがあるんだ」
頼まれてくれるかな、と優しい笑みがレオネベルに向けられた。
「~♪」
「ぴよっぴよっ」
両手に籠を持ち、レオネベルはのどかな道を歩く。籠が揺られるごとに呼応するよう鳴き声も聞こえてきた。学者の家はヴェルクリエの郊外近くに位置していて、少し歩くと背の低い草原が見えてくる。ここも学者仲間が管理しているらしく、乾いた大地でも青々としたじゅうたんが敷かれていた。
「この辺でいいか? ぴよどもー、出てきてもいいぞー」
「ぴよぴよぴよ!」
「ははっ、オレも来いって? しょうがねえなー」
籠を地面に降ろして傾けると、十匹が思い思いに飛び出してきた。ひよこたちと一緒にレオネベルも草原に駆け出す。
「待てって、結構速いな!」
「ぴよーっ」
「ほーら捕まえた。ふわふわしてんなぁ本当」
追いかけっこをしては一緒に転がる。草原でひよこと子ライオンが駆けまわる。
学者が頼んだのはこの子らの運動、そしてご飯も一緒にとお弁当と餌も持たせてくれていた。
「うまいか?」
「ぴよ!」
「へへ、良かった」
手元から餌を啄んだひよこは元気よくレオネベルに応える。
ふわふわな時間は、まだもう少し、もう少し。
「便利なモン作るのはいいけど、迷惑かけるのはなぁ……っと、ここか?」
彼女には訪ねてみたい場所があった。以前仕事で一緒になった運び屋から聞いた、ある一軒の民家。レオネベルは目的地に着くと息を吐き、意を決してその扉を叩いた。
「ひよこー……?」
訪ねてきたレオネベルを温かく迎え、学者らしき男性は快く頼みを聞いてくれた。
案内された部屋を開ける前から賑やかな声が聞こえてくる。それはあの日聞いた鳴き声と変わりない、元気な報せ。
「ぴよぴよぴよ!」
「ひよこ!」
黄色くて真ん丸、ふわふわな小さなひよこが一斉にレオネベルへ詰めかけた。ジャンプして飛び込んできた子を抱きとめる。
「もしかして覚えててくれたのか? ……へへっ」
思った以上の大歓迎。賑やかに鳴きながら足元に集うひよこにしゃがむと、レオネベルはくすぐったそうに笑った。
「元気だったか?」
「ぴよ!」
「毎日腹いっぱい食ってるか?」
「ぴよぴよ!」
「オレのこと、覚えてたのか?」
「ぴーよっ!」
「うわーっ……」
レオネベルは膝をついて頭を抱える。この溢れんばかりの気持ちはなんだろう。くりくりとした瞳が見つめてくる。これはもはや暴力と言ってもいい。
「お前らマジで可愛いな!」
「ぴよっ!」
ジャンプするひよこたちは恐らく自分の可愛さを分かっている。丸くて黄色いふわふわした毛玉が飛び跳ねてはアピールしていた。
「なんだ、撫でてほしいのか? 順番にだぞ?」
「ぴよ!」
そう告げると行儀よく一匹ずつ近づいてくれた。ふわふわの毛並みを撫でると気持ちよさそうに目を細め、小さく鳴き声を零す。それが十匹分。
「本当ふわふわだなぁ」
「ぴよー……」
「あ、お前ここちょっとはげてるぞ? ぶつけたか? ふわふわだからって油断するなよ?」
「ぴよ!」
「あーっもう! 可愛いな! こうしてやる!」
「ぴよぴよ!」
一匹ずつ存分に触れあってはその可愛さにレオネベルの表情は緩んでいく。あどけない笑顔に、ひよこたちも嬉しそうに鳴き声を重ねた。
僅かに木床が軋み近付いてくる音が聞こえる。ぴくりと反応したレオネベルは瞬時に大きく深呼吸すると、頬を何度か捏ねた。
「少しいいかな、レオ君」
「んっ……、ああ、大丈夫だ。構わねえぜ」
ノックの後に扉が開かれ、学者先生が顔を覗かせた。彼はクレーゲルと名乗り、鳥を専門に研究しているらしい。暇を見て遠出しては不思議な鳥を探しているのだとか。
学者はレオネベルとひよこを見て微笑ましそうに瞳を和らげた。レオネベルは何となくフードを被る。
「ぴよぴよひよことは仲良く出来たかい?」
「ん……まあな。オレのことも覚えてたみたいだ、頭いいんだな」
「うむ。私たちの言うことも何となく理解しているみたいでね。かしこくて大人しくて、それでいて可愛い」
「可愛い」
レオネベルは深く頷く。
「ふふ。どうして彼らがこの姿で生まれてくるかはまだわからない。けれど僕と学者仲間は、そもそもニワトリではないのでは? と考えている。もしかしたら違う種類の鳥なのかもしれない、と」
「不思議な奴らだもんな。こんなかわ……ちっちぇえし」
クレーゲルは優しくひよこを撫でる。ひよこは気持ちよさそうに目を細めた。
「君たちが行ってくれた村で、時々普通の卵と異なる卵が見つかるんだ。そこからこの子たちは生まれる。機会があったらぜひ行ってみてほしい。この子たちのことがもっと知れるよ」
「ふーん……」
この前の村の場所は覚えている。近くに用事があれば、寄ってみるのも悪くない。
「ああそうだ、レオ君にお願いしたいことがあるんだ」
頼まれてくれるかな、と優しい笑みがレオネベルに向けられた。
「~♪」
「ぴよっぴよっ」
両手に籠を持ち、レオネベルはのどかな道を歩く。籠が揺られるごとに呼応するよう鳴き声も聞こえてきた。学者の家はヴェルクリエの郊外近くに位置していて、少し歩くと背の低い草原が見えてくる。ここも学者仲間が管理しているらしく、乾いた大地でも青々としたじゅうたんが敷かれていた。
「この辺でいいか? ぴよどもー、出てきてもいいぞー」
「ぴよぴよぴよ!」
「ははっ、オレも来いって? しょうがねえなー」
籠を地面に降ろして傾けると、十匹が思い思いに飛び出してきた。ひよこたちと一緒にレオネベルも草原に駆け出す。
「待てって、結構速いな!」
「ぴよーっ」
「ほーら捕まえた。ふわふわしてんなぁ本当」
追いかけっこをしては一緒に転がる。草原でひよこと子ライオンが駆けまわる。
学者が頼んだのはこの子らの運動、そしてご飯も一緒にとお弁当と餌も持たせてくれていた。
「うまいか?」
「ぴよ!」
「へへ、良かった」
手元から餌を啄んだひよこは元気よくレオネベルに応える。
ふわふわな時間は、まだもう少し、もう少し。
登場キャラクター
レオネベル