とあるホムンクルスの成長記録
キャラクターノベル制作 STANZA納品 2022年09月10日 15時40分01秒
※にっき※
おれのなまえ れぴど くろさいと
せいべつ おとこ
とし うまれたて
ぎるどで よみかきはおそわった
ほうこくしょは かける
こうかけと いわれた
にっきは なにもいわれてない
にっきは どうかけばいいのか
※おわり※
「……こんな感じで、いいのか」
詰めていた息を吐いて、 俺はペンを置いた。
頭で考えたことを文字にするのは難しい。
思ったことをそのまま書けばいい筈なのに、何故か変な感じに変わってしまう。
あれは数日前のことだ。
「ちょっとお兄ちゃん! あんた顔色悪いよ?」
街をぶらぶらしていた俺を呼び止めたのは、見知らぬ女性だった。
「大丈夫? どっか具合悪いんじゃない? 手もこんな冷たいじゃないのさ、この暑いのに!」
「いや、顔色は悪いかも知れんが特に体調が悪いわけでは……手が冷たいのは、体質で」
だが彼女は、俺の話を見事に聞き流して喋り続けた。
「なんか生気ないし目も死んでるし、ちゃんとゴハン食べてる? もしかしてゾンビ?」
色々と勝手に並べ立てた末に、勝手に納得した。
「ああ、あんたゴブリンかい! そりゃアタシらとは違うねえ!」
「いや、俺は」
「それにしたってまあ、ぼんやり魂抜けた顔して! ほら、これ食べな!」
そう言って、彼女は俺の手に大きな飴玉を握らせた。
「頭がぽやっとしてヤル気が出ない時はね、甘いものが良いんだよ!」
なるほど、以前のことが思い出せないのは甘いものが足りないせいか。
そう考えて一日三食、皿に山盛りの飴玉をボリボリ齧ってみた。
頭は多少すっきりしたが、それだけだった。
どうやら故障した頭には効果がないようだ。
(……なら、今のこの記憶も……いつか消えるのか)
だから記録を残そうと思った。
メモ書きでもよかったのだが、どうせなら日記にしてみようと考え――今、少し後悔している。
(メモでよかったのでは?)
※にっき※
もしかしたら むかしのおれも
にっきをかいていたのかも しれない
だからおもいついたの かもしれない
※おわり※
「だとしたら、全編ホラーかスプラッタだろうな……」
具体的な記憶はないが、そんな気がする。
※にっき※
8がつ○にち
にっきには ひづけをかくと おそわった
きょうは とてもあつい
あついから こかげでやすんでいた
しらないねこが くっついてきた
ねこは あつい
※おわり※
後日、猫は涼しい場所が好きだと知った。
俺は体温が低いから、ひんやりして涼しいと思われたのだろうか。
ちなみにその猫は今、何故か日記帳の上に寝そべっている。
「……書けないのだが」
どかそうとして、持ち上げてみた。
「……猫、伸びすぎじゃないか……?」
猫は長い。覚えた。
※にっき※
8がつ○にち
ねこはえきたいだと、おそわった。
たしかに、ものすごくのびるし、とける。
かたちもかわる。
あれからずっと、うちにいる。
ねずみはとらない。
※おわり※
気紛れについてきた猫は、気紛れに出て行くだろうと思っていた。
だがその気配は全くない。
そろそろ名前を付けてやるべきだろうか。
※日記※
8月○日
今日はエモノがとれたので、行きつけの店で食事をとる。
アドベンチャラー・ダイナーという店だ。
エモノを自分で肉にすると、どういうわけかスプラッタになる。
ここならキレイにさばいてくれるし、料理にしてくれるから安心だ。
レシピをひとつ教わったので、今度は自分で料理してみたいと思う。
猫は俺が分けてやったものをテーブルの下で食べていた。
トリニクの骨付きは良くないと言われたので、肉だけをとってやる。
名前はまだない。
※終わり※
いっそ「猫」のままでも構わないのでは?
間違ってはいないし、他に猫はいないのだから、猫が勘違いすることもあるまいと思うのだが。
それはそうと、俺が飲んでいたジンジャーエールを欲しがるのはどうしたものか。
猫に飲ませても良いのだろうか。
※日記※
9月○日
調理台が崩壊し、鍋が爆発した。
ちょうど獲物が手に入り、たまには自炊でもしてみようと思ったのだ。
解体スプラッタは承知の上だったが、まさかまな板どころか調理台まで犠牲になるとは。
それでもどうにか食える部分を確保し、レシピ通りに油とスパイスと調味料を入れ、鍋に入れて火にかけた。
それ以外には何もしていない、ただ少しアレンジを加えただけだ。
家も道具も中古の安物だから、かなり老朽化していたのだろう。
そう思うことにしておいた。
※了※
文章を書くのもだいぶ慣れてきた。
こうして執筆の腕は確実に上がっているのに、料理の腕は逆に悪化の一途を辿っている。
「昔の俺に経験がなかったということか」
それは充分にあり得る。
何しろ思い出スプラッタだからな。
まだ暑いせいか、猫は今日も俺にくっついている。
寒くなったらどうするのだろう。
それまで、家にいてくれるだろうか。
おれのなまえ れぴど くろさいと
せいべつ おとこ
とし うまれたて
ぎるどで よみかきはおそわった
ほうこくしょは かける
こうかけと いわれた
にっきは なにもいわれてない
にっきは どうかけばいいのか
※おわり※
「……こんな感じで、いいのか」
詰めていた息を吐いて、 俺はペンを置いた。
頭で考えたことを文字にするのは難しい。
思ったことをそのまま書けばいい筈なのに、何故か変な感じに変わってしまう。
あれは数日前のことだ。
「ちょっとお兄ちゃん! あんた顔色悪いよ?」
街をぶらぶらしていた俺を呼び止めたのは、見知らぬ女性だった。
「大丈夫? どっか具合悪いんじゃない? 手もこんな冷たいじゃないのさ、この暑いのに!」
「いや、顔色は悪いかも知れんが特に体調が悪いわけでは……手が冷たいのは、体質で」
だが彼女は、俺の話を見事に聞き流して喋り続けた。
「なんか生気ないし目も死んでるし、ちゃんとゴハン食べてる? もしかしてゾンビ?」
色々と勝手に並べ立てた末に、勝手に納得した。
「ああ、あんたゴブリンかい! そりゃアタシらとは違うねえ!」
「いや、俺は」
「それにしたってまあ、ぼんやり魂抜けた顔して! ほら、これ食べな!」
そう言って、彼女は俺の手に大きな飴玉を握らせた。
「頭がぽやっとしてヤル気が出ない時はね、甘いものが良いんだよ!」
なるほど、以前のことが思い出せないのは甘いものが足りないせいか。
そう考えて一日三食、皿に山盛りの飴玉をボリボリ齧ってみた。
頭は多少すっきりしたが、それだけだった。
どうやら故障した頭には効果がないようだ。
(……なら、今のこの記憶も……いつか消えるのか)
だから記録を残そうと思った。
メモ書きでもよかったのだが、どうせなら日記にしてみようと考え――今、少し後悔している。
(メモでよかったのでは?)
※にっき※
もしかしたら むかしのおれも
にっきをかいていたのかも しれない
だからおもいついたの かもしれない
※おわり※
「だとしたら、全編ホラーかスプラッタだろうな……」
具体的な記憶はないが、そんな気がする。
※にっき※
8がつ○にち
にっきには ひづけをかくと おそわった
きょうは とてもあつい
あついから こかげでやすんでいた
しらないねこが くっついてきた
ねこは あつい
※おわり※
後日、猫は涼しい場所が好きだと知った。
俺は体温が低いから、ひんやりして涼しいと思われたのだろうか。
ちなみにその猫は今、何故か日記帳の上に寝そべっている。
「……書けないのだが」
どかそうとして、持ち上げてみた。
「……猫、伸びすぎじゃないか……?」
猫は長い。覚えた。
※にっき※
8がつ○にち
ねこはえきたいだと、おそわった。
たしかに、ものすごくのびるし、とける。
かたちもかわる。
あれからずっと、うちにいる。
ねずみはとらない。
※おわり※
気紛れについてきた猫は、気紛れに出て行くだろうと思っていた。
だがその気配は全くない。
そろそろ名前を付けてやるべきだろうか。
※日記※
8月○日
今日はエモノがとれたので、行きつけの店で食事をとる。
アドベンチャラー・ダイナーという店だ。
エモノを自分で肉にすると、どういうわけかスプラッタになる。
ここならキレイにさばいてくれるし、料理にしてくれるから安心だ。
レシピをひとつ教わったので、今度は自分で料理してみたいと思う。
猫は俺が分けてやったものをテーブルの下で食べていた。
トリニクの骨付きは良くないと言われたので、肉だけをとってやる。
名前はまだない。
※終わり※
いっそ「猫」のままでも構わないのでは?
間違ってはいないし、他に猫はいないのだから、猫が勘違いすることもあるまいと思うのだが。
それはそうと、俺が飲んでいたジンジャーエールを欲しがるのはどうしたものか。
猫に飲ませても良いのだろうか。
※日記※
9月○日
調理台が崩壊し、鍋が爆発した。
ちょうど獲物が手に入り、たまには自炊でもしてみようと思ったのだ。
解体スプラッタは承知の上だったが、まさかまな板どころか調理台まで犠牲になるとは。
それでもどうにか食える部分を確保し、レシピ通りに油とスパイスと調味料を入れ、鍋に入れて火にかけた。
それ以外には何もしていない、ただ少しアレンジを加えただけだ。
家も道具も中古の安物だから、かなり老朽化していたのだろう。
そう思うことにしておいた。
※了※
文章を書くのもだいぶ慣れてきた。
こうして執筆の腕は確実に上がっているのに、料理の腕は逆に悪化の一途を辿っている。
「昔の俺に経験がなかったということか」
それは充分にあり得る。
何しろ思い出スプラッタだからな。
まだ暑いせいか、猫は今日も俺にくっついている。
寒くなったらどうするのだろう。
それまで、家にいてくれるだろうか。