ザンカ、旅立ちの前夜
プロローグノベル制作 たぢまよしかづ納品 2020年11月23日 17時40分42秒
ロスガリア大陸は東方に鎮座する山岳地帯。
この周辺はドワーフたちが治めるドワーフ王国がある。その王国より少々離れた場所にあるのが、クジンの隠れ里である。
クジンの隠れ里は遥か昔にシルトラースにて首刈帝クジンリーネと共に戦場を駆けた戦士トウヤが、首刈りの技術を高めるがために祖として興した集落である。
首刈帝の名を頂き姓にした彼らはいつしかクジンの民と呼ばれることになる。
今では人口100人と少々。
彼らは首刈帝を武の神として崇め、連綿とその技術とそして――首刈帝から下賜された七振りの宝剣を伝えてきた。
首刈宝剣と呼ばれるかつて首刈帝が大きな武勲をたてた戦士のためにドワーフの技術でこしらえた武具をその手に取ることがクジンの民にとっては憧れであり目標になる。
この話はその中の一振りである首刈宝剣【壱ノ剣:断頭】を手にする少女の始まりの物語である。
少女ザンカ・クジンは首刈帝の『神話』を小さなころから寝物語にきいてきた。
数々の国を退け、武勲を我が物にしてきた私のかみさま。
少しでもかみさまに近づくことができますようにと、少女にとって苦しいといえるその修業にも耐えてきた。
背が低いこともありライバルには何度もからかわれてきた。
事実女の身としての膂力の差は大きい。
それでも少女は唯一つ、憧れの壱ノ剣を目指し努力し邁進してきた。
「お前、才能ってのがなー」
出入りのドワーフの職人が少女の頭をなでながらそういってきたことがあった。
『才能』。そんなつまらない言葉で未来を摘まれることがザンカにとってとても悔しかった。
だから少女は無理をした。素振りのしすぎで熱をだして倒れたこともある。
ライバルにも何度も諦めろといわれた。
それでも少女は負けなかった。「才能がない」。たったソレだけで私はかみさまに近づくことすら無理なのか。
そんなバカバカしい話があっていいはずがない!! それが少女の骨子。
力で勝てぬのなら速度を上げればいい。無駄に体をうごかさなければいい。巧みな技を得ればいい。
効率的に首を刈るための筋肉の使い方を覚えればいい。
その悔しさからの努力は少女を強き戦士に変える。
いつしか少女は首刈帝の再来と呼ばれるほどに成長を遂げた。
その日は里全体が騒がしく大人たちは昼間から酒や料理を呑み食らう。
『授剣丿祭』と言われるその行事は、首刈帝が下賜した宝剣を宝剣の戦士に授ける彼ら一族にとって重要な祭りである。
長老より宝剣を授けるに値すると判断された時その祭りがひらかれる。
今回は数十年担い手がいなかった【壱ノ剣:断頭】の授与式だ。いつもより祭りの規模は大きい。
出入り職人のドワーフたちも呼ばれ、大量の酒を豪快にかっくらっている。
少女――から女性に成長したザンカ・クジンは長い髪を一つに束ねて正装に身を包んでいる。
「すまなかったな」
後ろから突然かけられた声にザンカは振り向く。あのとき「才能がない」と断じたドワーフだ。
「えっ? なにか謝ることありましたか?」
「俺の見立てはまちがっていた」
「ああ、気にしないでください! あのことばのおかげで私はより一層鍛錬に臨めました!」
「まったく俺もやきがまわったのかね」
「あーあー、そんなこというんでしたら、私の宝剣の手入れタダでしてくださいよ!」
「おい、それは俺の仕事だぞ! せめて6割引で」
「7割ってどうですか?」
二人は言い合いそして笑う。あんな小さな子供がここまで強くなるなんて思わなかった。ドワーフの職人は自らを悔いる。そして――。
「戦士ザンカ・クジン。我らドワーフ職人は貴方のために力を振るうと誓う」
「大げさですよ!」
「大げさにもなるさ。首刈帝の再来のクジンよ」
ドワーフ職人から握手を求められる。それは誇り高く頑固でわからずやなドワーフの親愛の証。
ザンカはドワーフの手をしっかりと握って笑う。
「うん、よろしくおねがいします! 旅立っていい工具や鉱石があれば送りますね」
「ああ、頼む。手入れはいつでもきてくれ」
「7割引でしたよね?」
「6割だ!」
宝剣をうけとったザンカの民はさらなる鍛錬のため一族を離れ旅にでることを義務付けられている。
初めて里から出るザンカは寂しさ以上にわくわくしていた。
外の世界には塩の池があるらしい。みたこともない果物や、食べ物。そして――。
自分より強いものがたくさんいるという。
何よりも強いものに出会うために――。
ザンカは今、旅立つのだ。
この周辺はドワーフたちが治めるドワーフ王国がある。その王国より少々離れた場所にあるのが、クジンの隠れ里である。
クジンの隠れ里は遥か昔にシルトラースにて首刈帝クジンリーネと共に戦場を駆けた戦士トウヤが、首刈りの技術を高めるがために祖として興した集落である。
首刈帝の名を頂き姓にした彼らはいつしかクジンの民と呼ばれることになる。
今では人口100人と少々。
彼らは首刈帝を武の神として崇め、連綿とその技術とそして――首刈帝から下賜された七振りの宝剣を伝えてきた。
首刈宝剣と呼ばれるかつて首刈帝が大きな武勲をたてた戦士のためにドワーフの技術でこしらえた武具をその手に取ることがクジンの民にとっては憧れであり目標になる。
この話はその中の一振りである首刈宝剣【壱ノ剣:断頭】を手にする少女の始まりの物語である。
少女ザンカ・クジンは首刈帝の『神話』を小さなころから寝物語にきいてきた。
数々の国を退け、武勲を我が物にしてきた私のかみさま。
少しでもかみさまに近づくことができますようにと、少女にとって苦しいといえるその修業にも耐えてきた。
背が低いこともありライバルには何度もからかわれてきた。
事実女の身としての膂力の差は大きい。
それでも少女は唯一つ、憧れの壱ノ剣を目指し努力し邁進してきた。
「お前、才能ってのがなー」
出入りのドワーフの職人が少女の頭をなでながらそういってきたことがあった。
『才能』。そんなつまらない言葉で未来を摘まれることがザンカにとってとても悔しかった。
だから少女は無理をした。素振りのしすぎで熱をだして倒れたこともある。
ライバルにも何度も諦めろといわれた。
それでも少女は負けなかった。「才能がない」。たったソレだけで私はかみさまに近づくことすら無理なのか。
そんなバカバカしい話があっていいはずがない!! それが少女の骨子。
力で勝てぬのなら速度を上げればいい。無駄に体をうごかさなければいい。巧みな技を得ればいい。
効率的に首を刈るための筋肉の使い方を覚えればいい。
その悔しさからの努力は少女を強き戦士に変える。
いつしか少女は首刈帝の再来と呼ばれるほどに成長を遂げた。
その日は里全体が騒がしく大人たちは昼間から酒や料理を呑み食らう。
『授剣丿祭』と言われるその行事は、首刈帝が下賜した宝剣を宝剣の戦士に授ける彼ら一族にとって重要な祭りである。
長老より宝剣を授けるに値すると判断された時その祭りがひらかれる。
今回は数十年担い手がいなかった【壱ノ剣:断頭】の授与式だ。いつもより祭りの規模は大きい。
出入り職人のドワーフたちも呼ばれ、大量の酒を豪快にかっくらっている。
少女――から女性に成長したザンカ・クジンは長い髪を一つに束ねて正装に身を包んでいる。
「すまなかったな」
後ろから突然かけられた声にザンカは振り向く。あのとき「才能がない」と断じたドワーフだ。
「えっ? なにか謝ることありましたか?」
「俺の見立てはまちがっていた」
「ああ、気にしないでください! あのことばのおかげで私はより一層鍛錬に臨めました!」
「まったく俺もやきがまわったのかね」
「あーあー、そんなこというんでしたら、私の宝剣の手入れタダでしてくださいよ!」
「おい、それは俺の仕事だぞ! せめて6割引で」
「7割ってどうですか?」
二人は言い合いそして笑う。あんな小さな子供がここまで強くなるなんて思わなかった。ドワーフの職人は自らを悔いる。そして――。
「戦士ザンカ・クジン。我らドワーフ職人は貴方のために力を振るうと誓う」
「大げさですよ!」
「大げさにもなるさ。首刈帝の再来のクジンよ」
ドワーフ職人から握手を求められる。それは誇り高く頑固でわからずやなドワーフの親愛の証。
ザンカはドワーフの手をしっかりと握って笑う。
「うん、よろしくおねがいします! 旅立っていい工具や鉱石があれば送りますね」
「ああ、頼む。手入れはいつでもきてくれ」
「7割引でしたよね?」
「6割だ!」
宝剣をうけとったザンカの民はさらなる鍛錬のため一族を離れ旅にでることを義務付けられている。
初めて里から出るザンカは寂しさ以上にわくわくしていた。
外の世界には塩の池があるらしい。みたこともない果物や、食べ物。そして――。
自分より強いものがたくさんいるという。
何よりも強いものに出会うために――。
ザンカは今、旅立つのだ。