我等、栄光のロスガリアレビュアーズ!
キャラクターノベル(グループ)制作 STANZA納品 2022年08月03日 10時43分26秒
SHOW館、それは大人の社交場。
嬢と呼ばれるお姉様がたが手練手管を尽くして客をもてなし、心も身体もお財布もがっちり握って離さない、金さえあればこの世の楽園とも言える場所だ。
その楽園に今、かつてない危機が訪れようとしていた。
ギルドに掲示された店の名に、ウスターシュ・ド・バティーニュは足を止める。
ハーフビーストSHOW館の「もふもふパラダイス」と、ヒューマンSHOW館の「ドールハウス」は馴染みの店だ。
ゴブリナSHOW館の「ゴブブの庭」も、行ったことはないが聞き覚えがある。
そこに今、何やらきな臭い動きがあるらしい。
「この三館、いずれも単一種族だけを集めたコンセプトSHOW館なんですがね」
職員は声を潜めて言った。
「嬢を通じて、不審なやりとりをしてる可能性があるっていうんですよ」
その真偽を確かめる為、客として店に潜入し詳細な報告書を提出するように、との依頼だった。
(……詳細な報告書、ねえ?)
依頼主が匿名である点に、ウスターシュは何か引っかかりを覚えた。
(後ろに何か透けた意図ありそうだな?)
と言うか絶対あるよな?
真に求められているものは――そう、SHOW館と嬢に対する濃密で詳細な体験レポート、つまりレビュー!
「そうか、犯罪を未然に防ぐための調査か。調査ならSHOW館に行くのもしょうがねえなあ」
棒読みと共に、ウスターシュは秒でその依頼を受けた。
同行するのは他に三人。
「あぁ、なるほど……調査ね」
ヴァンゲルス・ロッドは裏社会に通じた腕利きの情報屋だ。
つまり、この手の店にはそれなりに詳しいし、この調査が言葉通りのものでないことは見た瞬間に理解した。
「ゴブリナSHOW館とは、また通好みの店があるじゃねぇか」
色々と通い慣れた猛者を自認するヴァンゲルスも、そこまで尖った店に足を踏み入れたことはない。
何かきっかけでもあれば……と思ったところに渡りに舟、これは乗るしかない。
たとえそれが諸共に沈みゆく泥舟であったとしても。
ジュスト・ヴェルジーは名門貴族のお坊ちゃまである。
貴族たるもの権謀術数に長け、口八丁手八丁は勿論のこと下半身でも罠に嵌まるようなことがあってはならない。
つまりハニトラ対策の一環として、SHOW館通いが教育プログラムに組み込まれているのだ、貴族って怖い。
寧ろ積極的に仕掛ける側に立つべし、とも言われているらしい、貴族って怖い。
SHOW館に年齢制限はない、故に彼は歳の割に早熟で遊び慣れしているし、貴族社会に於ける未成年であっても何ら問題はない。
唯一問題があるとすれば、彼には婚約予定の令嬢が存在する、ということだろうか。
バレたらお仕置不可避である。
だが相手も貴族の令嬢であるなら、その辺りの事情には通じている筈だ――理解があるかどうかは別にして。
「要はバレなければ良いのだろう?」
上手くやるさと、ジュストは口角を上げた。
リンタロウ・イナバはその目付きの悪さ故に、よく下町のゴロツキやチンピラの類と間違われる。
SHOW館に通うタイプではないが、街のあちこちで女の子を引っ掛けてはムフフな関係を結び、飽きたら道端にポイと捨てる――そんな風にも思われているらしい。
だが彼はこう見えて、ウブで奥手なビビリであった。
それは実家の付き合いで何度かSHOW館に行き、素敵サービスのアレコレを体験した程度では治らないレベルの重症、もはや不治の病。
そんな男がSHOW館レビューなんて大丈夫か?
「大丈夫じゃねえよ、不安しかねーわ!」
では何故に依頼を受けたのかと?
普通に真っ当な調査依頼だと思ったんだよ!
そして四人は夜の歓楽街へと赴く。
まず向かったのは、真っ先に目に入ったハフビSHOW館の「もふもふパラダイス」だった。
猫耳フェチのウスターシュは、この店の常連である。
「いらっしゃいませぇ。あっ、今日も来てくれたんですねぇ」
彼のご贔屓を知る受付嬢は「今日もミミちゃんですかぁ?」とウサ耳をピコピコした。
「いや、今日は仕事だ。誰か適当に見繕ってくれ。ミミとはまた後日、プライベートで」
「わかりましたぁ、ではこの子でいかがですかぁ?」
示された嬢に満足気に頷き、ウスターシュはさっさと奥に消える。
呆然とその背を見送る三人に、受付嬢が尋ねた。
「お客様はどの派閥でいらっしゃいますかぁ?」
派閥とは何だと、リンタロウとジュストがヴァンゲルスを見る。
「なんでこっち見んだ」
「いや、なんか年の功で色々知ってそうだと思って」
リンタロウが答えると、ヴァンゲルスは「年の功は余計だ」と言いつつ解説を始めた。
「派閥ってのは、ケモ度による好みだ」
ケモ度とは獣化の割合を示す尺度であり、ヒューマンをケモ度0として、ケモ度1~3がハーフビーストの範疇となる。
3段階の解釈と選定基準は様々だが、この店ではケモ度1が耳や尻尾など身体の一部が獣化しているもので、2では更に獣部分が増え、3になるとほぼ直立歩行の獣といった感じになる。
「まあビギナーなら1が妥当じゃねぇか?」
そう言って、ヴァンゲルスは3のカテゴリからナマケモノの嬢を選んだ。
「俺もオッサンだからな、たまにゃのんびりした嬢もいいだろ」
カラカラと笑って、ヴァンゲルスは通路の奥に消える。
「俺は……そうだな、この店で最も自慢の嬢を頼む」
レビュアー……いや、調査員としての仕事に真面目に取り組むジュストは、選択を店の者に任せた。
これで一番人気を出して来るか、人気は今ひとつでも他の者にはない美点や特技を持つ者を出すか、或いは最も売り出したい者を選んで店の都合を押し付けるのか。
選択次第で、この店の格や品位がわかるだろう。
「えっ、あの、俺は……っ」
ひとり残されたリンタロウは焦っていた。
「おっ、お任せで……あっ、好みはつやさらの綺麗な髪で、毛並も良くて、優しいお姉さんタイプで……ロリは駄目ッス、ロリは! 大人として!」
さあ、お任せの結果や如何に!
――もふもふパラダイス――
ウスターシュ
嬢:猫ハフビ
評価:大満足!
いやー、やっぱハフビは猫系だよな。
このツンツン尖った猫耳に勝る芸術品が他にあるか?
それにしなやかで長い尻尾、気まぐれで気高い女王様気質かと思えばベッタベタに甘えて来るこのギャップ。
実家にいる猫を思い出すんだ、もう永遠にもふもふ出来る……控えめに言って最高だ……。
ヴァンゲルス
嬢:ナマケモノハフビ
評価:微妙
スローな行為ってあるだろ?
この歳になるとあれだ、こう若い頃みたいにガツガツすんのも、なあ。
ってことで選んだ嬢なんだが……いや、まず部屋がジャングルだったのが驚きだな。
だがもっと驚いたのは、嬢が木の枝から逆さにぶら下がってたことだ。
まさかそのままコトに及ぶのかと思ったら、そのまさかだった。
手招きされて、俺も逆さにぶら下がってみる。
「ちっとばかし変わっちゃいるが、ま、いいんじゃねぇか?」
なんて余裕こいてられたのは最初の数分だった。
逆さに釣られた状態じゃ、その、あれだ、血液が集中すべき部分に上がらねぇ!
若い頃ならともかく、経年劣化したオッサンの循環器系ナメんな!
それでもどうにか目的は果たしたんだが……知らなかったぜ……ナマケモノって、あっちはすげぇ早いのな。
ジュスト
嬢:犬ハフビ
評価:及第点
現れたのは、耳と尾の他はほぼヒューマンと変わらない嬢だった。
自慢の嬢と言うだけあって、その容姿や立居振舞は美しく、客への対応も丁寧だが硬すぎない。
俺は異種族に対する偏見は少ない方だと自負するが、やはり好みは同族に寄る。
受付で交わした幾つかの型通りの会話からそこまで読み取る辺り、あの受付もかなりの観察眼を持っているようだ。
嬢個人に関しては……そうだな、やはりもふもふの耳は触り心地が良い。
ただ、あのふさふさの尾は少々困る。
敏感な部分を、ふぁさりふぁさりと絶妙な具合に刺激されると……いや、後は想像に任せる。
リンタロウ
嬢:馬ハフビ
評価:リタイアにつき評価不能
ああ、確かに俺が言った通りの人が来た。
つやさらで綺麗なお姉さん、でもその髪はタテガミって言わねぇ?
毛並もいいけど、なんか全身しっとり濡れてるし……濡れるのって普通、一部分だけじゃ……いやその!
あ、それ汗なんだ? え、トレーニングしてた? そう、走ってたんだ……さすがウマ嬢。
え、俺の髪……綺麗?
「あ、アザッス。お姉さんの方が、綺麗、デスヨ」
髪はね、髪だけは……いや、でもよく見れば瞳も綺麗だ、真っ黒で知的で、睫毛が長くて優しそう……馬面だけど。
うん、あの、流石にお馬さんの顔したハフビ嬢はハードル高いと思うんだ?
俺そんなガチなハフビ勢だと思われた?
やっぱこの目つきのせいかな……。
えっ、俺も鍛えてそうって?
「雑貨屋は体が資本なんで一応鍛えて、はい」
どうしよう、どうすればいいんだこれ。
深層心理に刻まれた「お姉様最恐伝説」が荒ぶって、全然そんな気分になれないぞ!
「あばばばばばば」
そうだ、手!
顔を見るから恐怖が蘇るんだ。
それに手は正直だ、そこにはその人の内面や人生が表れる。
手入れの行き届いた綺麗な手も、仕事で荒れた傷だらけの手も平等に好きだし尊い!
そう、手フェチの俺なら手だけで逝け――
「蹄!?」 ※なお蹄型手袋を使ったドッキリだと後に判明しましたが手遅れでした
あ、なんか賢者タイム入ったわ俺。
もうこのまま楽しく筋トレの話でもしよう。
そうだ、一緒に筋トレしてもいいかな……ふふ……。
「リンタロウが倒されたか」
「奴は我らエロ魔人四天王でも最弱」
「レビューなど、我等三人で充分」
行くぞ、次はヒューマンSHOW館だ!
――ドールハウス――
ウスターシュ
嬢:ノーマル
評価:文句なし
まあスタンダードだしな、実家のような安心感ってとこか。
同族故に新奇さという点では弱いが、特に種族差で困ることもないのが良い――サイズとか、意識や感覚とか、そもそも構造が違うとか……な。
ヴァンゲルス
嬢:ベテラン
評価:普通
この手の店は若い子が重宝されるが、ここは妙齢のご婦人も多いな。
技術と経験、それに話術で楽しませてくれるベテランはポイント高いぞ。
特に俺みてぇな奴には、身体のエロさよりも頭のエロさだ……頭の回転が速くて賢いことが一番だな。
まあ口と頭が軽いのも、ある意味やりやすいがな。
ジュスト
嬢:きょぬー
評価:不可
悪いが巨乳には耐性がある。
それを見抜けなかったここの受付は、早急にすげ替えるべきだ。
――ゴブブの庭――
ウスターシュ
嬢:青肌
評価:普通
俺としたことが、これまでゴブリナの嬢は対象外だった。
食わず嫌いが悔やまれるし、角の生えたレディも素敵……なんだが。
ちょっと変わった肌の子はどうにも……青とか紫とか、大丈夫かな生きてるかなって……。
ヴァンゲルス
嬢:赤肌
評価:沼
この店はやや特殊なプレイを売りにしてると聞いたんだが……なるほど、真っ赤なオイルを全身に塗りたくるのか。
客と嬢が同じ色に染まり、マッサージの刺激で感度も急上昇ってか。
三店目でヘトヘトのオッサンもビンビンだな。
「なかなか面白そうじゃねぇか。楽しみにしてるぜ」
結論から言うと……ゴブリナ嬢、最高!
ジュスト
嬢:緑肌
評価:判定不能
肌の色は別にして、ゴブリナ嬢にはヒューマンに近い容姿の者が多いな。
緑のオイルは見た目に難があるが、それさえ気にしなければ悪くない。
だが……このオイルは何か不純物が入っていないか?
モラルとコンプライアンスの面で問題があると判断する……が、意識が朦朧としてきたぞ……何だこの恍惚感は……ここが地上の楽園か!(昇天
厳密な調査の結果、心配されたような不穏な動きはないとの結論が得られ、詳細な報告がギルドに提出・公開された。
その後暫くして三店の客が急増、特にハフビとゴブリナの店が急激な伸びを見せたという。
なお参考として、以下の報告を載せておく。
――逆レビュー――
男性A:良いのは顔だけじゃなかった
男性B:積み重ねた年輪を感じさせるテクに痺れる
男性C:羽目を外さず綺麗に遊ぶ紳士だが、タガが外れた時の限界突破がエグい
男性D:可愛い子、ずっとそのままでいてほしい
後日、行状がバレた男性Cは苛烈なお仕置きを受けたとか――
嬢と呼ばれるお姉様がたが手練手管を尽くして客をもてなし、心も身体もお財布もがっちり握って離さない、金さえあればこの世の楽園とも言える場所だ。
その楽園に今、かつてない危機が訪れようとしていた。
ギルドに掲示された店の名に、ウスターシュ・ド・バティーニュは足を止める。
ハーフビーストSHOW館の「もふもふパラダイス」と、ヒューマンSHOW館の「ドールハウス」は馴染みの店だ。
ゴブリナSHOW館の「ゴブブの庭」も、行ったことはないが聞き覚えがある。
そこに今、何やらきな臭い動きがあるらしい。
「この三館、いずれも単一種族だけを集めたコンセプトSHOW館なんですがね」
職員は声を潜めて言った。
「嬢を通じて、不審なやりとりをしてる可能性があるっていうんですよ」
その真偽を確かめる為、客として店に潜入し詳細な報告書を提出するように、との依頼だった。
(……詳細な報告書、ねえ?)
依頼主が匿名である点に、ウスターシュは何か引っかかりを覚えた。
(後ろに何か透けた意図ありそうだな?)
と言うか絶対あるよな?
真に求められているものは――そう、SHOW館と嬢に対する濃密で詳細な体験レポート、つまりレビュー!
「そうか、犯罪を未然に防ぐための調査か。調査ならSHOW館に行くのもしょうがねえなあ」
棒読みと共に、ウスターシュは秒でその依頼を受けた。
同行するのは他に三人。
「あぁ、なるほど……調査ね」
ヴァンゲルス・ロッドは裏社会に通じた腕利きの情報屋だ。
つまり、この手の店にはそれなりに詳しいし、この調査が言葉通りのものでないことは見た瞬間に理解した。
「ゴブリナSHOW館とは、また通好みの店があるじゃねぇか」
色々と通い慣れた猛者を自認するヴァンゲルスも、そこまで尖った店に足を踏み入れたことはない。
何かきっかけでもあれば……と思ったところに渡りに舟、これは乗るしかない。
たとえそれが諸共に沈みゆく泥舟であったとしても。
ジュスト・ヴェルジーは名門貴族のお坊ちゃまである。
貴族たるもの権謀術数に長け、口八丁手八丁は勿論のこと下半身でも罠に嵌まるようなことがあってはならない。
つまりハニトラ対策の一環として、SHOW館通いが教育プログラムに組み込まれているのだ、貴族って怖い。
寧ろ積極的に仕掛ける側に立つべし、とも言われているらしい、貴族って怖い。
SHOW館に年齢制限はない、故に彼は歳の割に早熟で遊び慣れしているし、貴族社会に於ける未成年であっても何ら問題はない。
唯一問題があるとすれば、彼には婚約予定の令嬢が存在する、ということだろうか。
バレたらお仕置不可避である。
だが相手も貴族の令嬢であるなら、その辺りの事情には通じている筈だ――理解があるかどうかは別にして。
「要はバレなければ良いのだろう?」
上手くやるさと、ジュストは口角を上げた。
リンタロウ・イナバはその目付きの悪さ故に、よく下町のゴロツキやチンピラの類と間違われる。
SHOW館に通うタイプではないが、街のあちこちで女の子を引っ掛けてはムフフな関係を結び、飽きたら道端にポイと捨てる――そんな風にも思われているらしい。
だが彼はこう見えて、ウブで奥手なビビリであった。
それは実家の付き合いで何度かSHOW館に行き、素敵サービスのアレコレを体験した程度では治らないレベルの重症、もはや不治の病。
そんな男がSHOW館レビューなんて大丈夫か?
「大丈夫じゃねえよ、不安しかねーわ!」
では何故に依頼を受けたのかと?
普通に真っ当な調査依頼だと思ったんだよ!
そして四人は夜の歓楽街へと赴く。
まず向かったのは、真っ先に目に入ったハフビSHOW館の「もふもふパラダイス」だった。
猫耳フェチのウスターシュは、この店の常連である。
「いらっしゃいませぇ。あっ、今日も来てくれたんですねぇ」
彼のご贔屓を知る受付嬢は「今日もミミちゃんですかぁ?」とウサ耳をピコピコした。
「いや、今日は仕事だ。誰か適当に見繕ってくれ。ミミとはまた後日、プライベートで」
「わかりましたぁ、ではこの子でいかがですかぁ?」
示された嬢に満足気に頷き、ウスターシュはさっさと奥に消える。
呆然とその背を見送る三人に、受付嬢が尋ねた。
「お客様はどの派閥でいらっしゃいますかぁ?」
派閥とは何だと、リンタロウとジュストがヴァンゲルスを見る。
「なんでこっち見んだ」
「いや、なんか年の功で色々知ってそうだと思って」
リンタロウが答えると、ヴァンゲルスは「年の功は余計だ」と言いつつ解説を始めた。
「派閥ってのは、ケモ度による好みだ」
ケモ度とは獣化の割合を示す尺度であり、ヒューマンをケモ度0として、ケモ度1~3がハーフビーストの範疇となる。
3段階の解釈と選定基準は様々だが、この店ではケモ度1が耳や尻尾など身体の一部が獣化しているもので、2では更に獣部分が増え、3になるとほぼ直立歩行の獣といった感じになる。
「まあビギナーなら1が妥当じゃねぇか?」
そう言って、ヴァンゲルスは3のカテゴリからナマケモノの嬢を選んだ。
「俺もオッサンだからな、たまにゃのんびりした嬢もいいだろ」
カラカラと笑って、ヴァンゲルスは通路の奥に消える。
「俺は……そうだな、この店で最も自慢の嬢を頼む」
レビュアー……いや、調査員としての仕事に真面目に取り組むジュストは、選択を店の者に任せた。
これで一番人気を出して来るか、人気は今ひとつでも他の者にはない美点や特技を持つ者を出すか、或いは最も売り出したい者を選んで店の都合を押し付けるのか。
選択次第で、この店の格や品位がわかるだろう。
「えっ、あの、俺は……っ」
ひとり残されたリンタロウは焦っていた。
「おっ、お任せで……あっ、好みはつやさらの綺麗な髪で、毛並も良くて、優しいお姉さんタイプで……ロリは駄目ッス、ロリは! 大人として!」
さあ、お任せの結果や如何に!
――もふもふパラダイス――
ウスターシュ
嬢:猫ハフビ
評価:大満足!
いやー、やっぱハフビは猫系だよな。
このツンツン尖った猫耳に勝る芸術品が他にあるか?
それにしなやかで長い尻尾、気まぐれで気高い女王様気質かと思えばベッタベタに甘えて来るこのギャップ。
実家にいる猫を思い出すんだ、もう永遠にもふもふ出来る……控えめに言って最高だ……。
ヴァンゲルス
嬢:ナマケモノハフビ
評価:微妙
スローな行為ってあるだろ?
この歳になるとあれだ、こう若い頃みたいにガツガツすんのも、なあ。
ってことで選んだ嬢なんだが……いや、まず部屋がジャングルだったのが驚きだな。
だがもっと驚いたのは、嬢が木の枝から逆さにぶら下がってたことだ。
まさかそのままコトに及ぶのかと思ったら、そのまさかだった。
手招きされて、俺も逆さにぶら下がってみる。
「ちっとばかし変わっちゃいるが、ま、いいんじゃねぇか?」
なんて余裕こいてられたのは最初の数分だった。
逆さに釣られた状態じゃ、その、あれだ、血液が集中すべき部分に上がらねぇ!
若い頃ならともかく、経年劣化したオッサンの循環器系ナメんな!
それでもどうにか目的は果たしたんだが……知らなかったぜ……ナマケモノって、あっちはすげぇ早いのな。
ジュスト
嬢:犬ハフビ
評価:及第点
現れたのは、耳と尾の他はほぼヒューマンと変わらない嬢だった。
自慢の嬢と言うだけあって、その容姿や立居振舞は美しく、客への対応も丁寧だが硬すぎない。
俺は異種族に対する偏見は少ない方だと自負するが、やはり好みは同族に寄る。
受付で交わした幾つかの型通りの会話からそこまで読み取る辺り、あの受付もかなりの観察眼を持っているようだ。
嬢個人に関しては……そうだな、やはりもふもふの耳は触り心地が良い。
ただ、あのふさふさの尾は少々困る。
敏感な部分を、ふぁさりふぁさりと絶妙な具合に刺激されると……いや、後は想像に任せる。
リンタロウ
嬢:馬ハフビ
評価:リタイアにつき評価不能
ああ、確かに俺が言った通りの人が来た。
つやさらで綺麗なお姉さん、でもその髪はタテガミって言わねぇ?
毛並もいいけど、なんか全身しっとり濡れてるし……濡れるのって普通、一部分だけじゃ……いやその!
あ、それ汗なんだ? え、トレーニングしてた? そう、走ってたんだ……さすがウマ嬢。
え、俺の髪……綺麗?
「あ、アザッス。お姉さんの方が、綺麗、デスヨ」
髪はね、髪だけは……いや、でもよく見れば瞳も綺麗だ、真っ黒で知的で、睫毛が長くて優しそう……馬面だけど。
うん、あの、流石にお馬さんの顔したハフビ嬢はハードル高いと思うんだ?
俺そんなガチなハフビ勢だと思われた?
やっぱこの目つきのせいかな……。
えっ、俺も鍛えてそうって?
「雑貨屋は体が資本なんで一応鍛えて、はい」
どうしよう、どうすればいいんだこれ。
深層心理に刻まれた「お姉様最恐伝説」が荒ぶって、全然そんな気分になれないぞ!
「あばばばばばば」
そうだ、手!
顔を見るから恐怖が蘇るんだ。
それに手は正直だ、そこにはその人の内面や人生が表れる。
手入れの行き届いた綺麗な手も、仕事で荒れた傷だらけの手も平等に好きだし尊い!
そう、手フェチの俺なら手だけで逝け――
「蹄!?」 ※なお蹄型手袋を使ったドッキリだと後に判明しましたが手遅れでした
あ、なんか賢者タイム入ったわ俺。
もうこのまま楽しく筋トレの話でもしよう。
そうだ、一緒に筋トレしてもいいかな……ふふ……。
「リンタロウが倒されたか」
「奴は我らエロ魔人四天王でも最弱」
「レビューなど、我等三人で充分」
行くぞ、次はヒューマンSHOW館だ!
――ドールハウス――
ウスターシュ
嬢:ノーマル
評価:文句なし
まあスタンダードだしな、実家のような安心感ってとこか。
同族故に新奇さという点では弱いが、特に種族差で困ることもないのが良い――サイズとか、意識や感覚とか、そもそも構造が違うとか……な。
ヴァンゲルス
嬢:ベテラン
評価:普通
この手の店は若い子が重宝されるが、ここは妙齢のご婦人も多いな。
技術と経験、それに話術で楽しませてくれるベテランはポイント高いぞ。
特に俺みてぇな奴には、身体のエロさよりも頭のエロさだ……頭の回転が速くて賢いことが一番だな。
まあ口と頭が軽いのも、ある意味やりやすいがな。
ジュスト
嬢:きょぬー
評価:不可
悪いが巨乳には耐性がある。
それを見抜けなかったここの受付は、早急にすげ替えるべきだ。
――ゴブブの庭――
ウスターシュ
嬢:青肌
評価:普通
俺としたことが、これまでゴブリナの嬢は対象外だった。
食わず嫌いが悔やまれるし、角の生えたレディも素敵……なんだが。
ちょっと変わった肌の子はどうにも……青とか紫とか、大丈夫かな生きてるかなって……。
ヴァンゲルス
嬢:赤肌
評価:沼
この店はやや特殊なプレイを売りにしてると聞いたんだが……なるほど、真っ赤なオイルを全身に塗りたくるのか。
客と嬢が同じ色に染まり、マッサージの刺激で感度も急上昇ってか。
三店目でヘトヘトのオッサンもビンビンだな。
「なかなか面白そうじゃねぇか。楽しみにしてるぜ」
結論から言うと……ゴブリナ嬢、最高!
ジュスト
嬢:緑肌
評価:判定不能
肌の色は別にして、ゴブリナ嬢にはヒューマンに近い容姿の者が多いな。
緑のオイルは見た目に難があるが、それさえ気にしなければ悪くない。
だが……このオイルは何か不純物が入っていないか?
モラルとコンプライアンスの面で問題があると判断する……が、意識が朦朧としてきたぞ……何だこの恍惚感は……ここが地上の楽園か!(昇天
厳密な調査の結果、心配されたような不穏な動きはないとの結論が得られ、詳細な報告がギルドに提出・公開された。
その後暫くして三店の客が急増、特にハフビとゴブリナの店が急激な伸びを見せたという。
なお参考として、以下の報告を載せておく。
――逆レビュー――
男性A:良いのは顔だけじゃなかった
男性B:積み重ねた年輪を感じさせるテクに痺れる
男性C:羽目を外さず綺麗に遊ぶ紳士だが、タガが外れた時の限界突破がエグい
男性D:可愛い子、ずっとそのままでいてほしい
後日、行状がバレた男性Cは苛烈なお仕置きを受けたとか――