あの日、少女が見たモノ
キャラクターノベル制作 革酎納品 2022年06月24日 16時01分05秒
●
久々に家族と過ごす晩餐の席。
コルネリウス・アーラは、とある依頼で保護したエルフの赤子フェアエ(女児、生後数カ月)を父フェアロス・アーラ・アスプロスの元で育てて貰うべく、次の依頼を受けるまでの間に何とか時間を作って帰郷していた。
「はーい、それじゃあ皆さんお待ちかねのデザートですよ~」
トレーに果物一杯のボウルを乗せてキッチンから足を運んできた姉のライラは、猫の半獣人。見ての通り、コルネリウスとはそもそもの人種が異なる。
が、この一家では全員が家族だ。血が繋がっていようがいまいが、関係無い。父フェアロスに育てられた者は等しく家族としての権利を得るのである。
そのライラが新しい家族であるフェアエの口元に、甘い果汁を入れた水差しをそっと近づける。
フェアエはきゃっきゃと嬉しそうに笑い、ライラのもてなしに対する喜びを全身で表現していた。
(たまにこうやって、家族の皆と過ごすのも良いですね……)
姉と、新しい妹が仲良さげに戯れる姿を、コルネリウスは半ば夢見心地の心境で穏やかに眺めていた。
が、そんな幸せな時間は、そうは長く続かなかった。
●
深夜、きょうだい達が寝静まった頃。
コルネリウスは父の書斎に呼び出された。
何だろうと小首を傾げて部屋を訪れたコルネリウスを、父フェアロスの渋面が出迎えた。
「先日、都市同盟の冒険者ギルドで妙なものを目にしました」
父が都市同盟に足を運ぶなど珍しいことだ――そんなことを思いながら、コルネリウスは話の筋がよく見えない為、思わず訊き返した。
「……いつの間に、都市同盟に?」
だがその問いに対する応えは無く、父はいきなり核心を衝いてきた。
「私のモノと初対面の男性のモノを比べて、精神攻撃に利用したとの報告がありました」
「あっ……」
その瞬間、コルネリウスはその場に凝り固まってしまった。まさか、あの発言までもがしっかり文書として残されていたなどとは、思いもよらなかったのである。
「全く……何ということを」
「えっと……パパ……」
何とか上手く切り抜けなければと焦ったコルネリウスは、いつもの癖――叱られたり説教を喰らいそうになった時に、フェアロスを父さんではなく、パパと呼ぶ習慣が咄嗟に飛び出してしまった。
フェアロスも心得たもので、小さくかぶりを振って曰く。
「そうやって誤魔化さない」
駄目だ、通用しない。
いつの間にかコルネリウスはその場に正座となり、お説教被弾モードに入っていた。
●
いいですかコルネ、とフェアロスは身を乗り出してきた。
「男の良し悪しを、モノの大小で断じてはいけません。ひとの器は生まれ持った肉体に左右されるべきではないのです」
この瞬間、コルネリウスの頭の中で疑問符が幾つも乱れ飛んだ。
最初コルネリウスは、
「年頃の娘が男性器の寸評を口にすることなど、はしたないでしょう」
と、叱られるものだとばかり思っていた。ところがどうも、思っていたのと違う方向性に話が進もうとしている。コルネリウスは狼狽した。
「危難に接した時、股間のモノが縮み上がっているかどうか。本当の器量はそこで決まるのです。大小ではありません。いざという時に、普段のサイズを維持出来るかどうかが重要なのです」
即ち、股間のモノ・ビフォーアフターこそが何より大事だ、と父はいう。
年頃の娘に対して、一体何の話をしているのか。
しかしフェアロスは心底、真面目である。確かに、いっていることはまぁ間違いではない。しかしそれを真剣な顔して若い娘に話す様なことか。
いや、こういう話題でもしっかり諭すべきところは諭すというのが、彼の信条なのかも知れない。その点は大いに尊重され、称賛されるべきだろう。多分。
更にフェアロスはいう。
「最近、巷でこんな歌を耳にしました」
だーかーらー
おぉーきなぁー
モーノーをー
くーだーさーいー
コールーネーリウスーがー
おーもーわーずー
にぃどみーするよーなー
モーノーをー
くださーいー
●
何とも嘆かわしい、とフェアロスは無念そうにかぶりを振る。
「コルネはもう立派な冒険者。壁エルフのお姉さんとしての異名もすっかり定着しています。そんなコルネが軽々しく股間のモノを大小で論ずる様な言動をしたばかりに、この様な愚かな歌が出回るのです」
改めて、フェアロスはいう。
男の優劣はモノの大小などで測られるべきではない、と。
と、ここでフェアロスはそれまでの厳しい表情を幾分緩めた。幼子にいい聞かせる様な優しい口調で、穏やかに語りかける。
「それにですね……正直いいますと、私のモノは然程に大きくありません。コルネリウスが見たのはまだ小さかった頃……色々な物が、大きく見えてしまう年頃なのです」
例えば幼少の頃に通った道が凄く広くて大きな道だったと記憶していても、大人になってから同じ道を通るとビックリするぐらいに狭い路地に過ぎなかったという話は、よく耳にするだろう。
それと同じことだ、と父はどこか寂しげな笑みを湛えて静かに語った。
即ち、コルネリウスが幼き日に見た父の巨根は、淡いセピア色の思い出として、あの日の情景のまま、胸の奥にしまっておくべきだというのでる。
幻想の巨根にそこまでする値打ちがあるかどうかという議論は措いておくとして。
この時、近くでブフッという変な音がした。
後で聞いたところによると、ライラが書斎の外でこっそり聞き耳を立てていたらしいのだが、とうとう耐え切れなくなって噴き出してしまったのだという。
それは兎も角、今のフェアロスは説教開始直後の厳しい表情ではなく、愛に溢れた優しい笑顔でコルネリウスを静かに眺めている。
説教というものは、相手に過ちを理解させさえすれば、それで良い。
必要以上に感情的となるのはもってのほかだし、第一コルネリウスは聡明な娘だ。フェアロスのいわんとしていることは、多くを語らずとも理解してくれるだろう。
この話はもう、ここでおしまい。
後は父と娘の思い出の語らいで、夜を過ごすことにしよう。
●
別の日の夜、コルネリウスは夢を見ていた。
どこかの場末の酒場で、何故かミルクを飲んでいる。薄い色合いの黒眼鏡をかけ、妙に斜に構えた姿。
すぐ外の広場では、誰かが大声で叫んでいる。群衆が彼を取り囲んでいた。
「諸君らが愛してくれたヤスは(社会的に)死んだ! 何故だ!?」
この時、コルネリウスは桜色の美しい唇を僅かに笑みの形に歪めた。
「短小だからさ」
低く呟いて、コルネリウスはぐいっとミルクをあおった。
どうやら、コルネリウスの意識改革はまだ道半ばらしい。
大小ではなく、ビフォーアフターで見極める。口でいうのは簡単だが、いざ実践するとなると、これはこれで中々難しい。
第一、世の男共が普通、縮み上がったモノをそう簡単に披露するだろうか。
だが悲観は禁物だ。
いずれはコルネリウスも立派な股間のモノ鑑定人として、チン列されたモノをしっかり目利きし、その良し悪しを正確に判断することが出来る様になるだろう。
そう、例えば、
「良い仕事してますねぇ」
と、男達のモノを正確に寸評することが出来れば、彼女の未来は明るい栄光の道が約束されたも同然だ。
知らんけど。
久々に家族と過ごす晩餐の席。
コルネリウス・アーラは、とある依頼で保護したエルフの赤子フェアエ(女児、生後数カ月)を父フェアロス・アーラ・アスプロスの元で育てて貰うべく、次の依頼を受けるまでの間に何とか時間を作って帰郷していた。
「はーい、それじゃあ皆さんお待ちかねのデザートですよ~」
トレーに果物一杯のボウルを乗せてキッチンから足を運んできた姉のライラは、猫の半獣人。見ての通り、コルネリウスとはそもそもの人種が異なる。
が、この一家では全員が家族だ。血が繋がっていようがいまいが、関係無い。父フェアロスに育てられた者は等しく家族としての権利を得るのである。
そのライラが新しい家族であるフェアエの口元に、甘い果汁を入れた水差しをそっと近づける。
フェアエはきゃっきゃと嬉しそうに笑い、ライラのもてなしに対する喜びを全身で表現していた。
(たまにこうやって、家族の皆と過ごすのも良いですね……)
姉と、新しい妹が仲良さげに戯れる姿を、コルネリウスは半ば夢見心地の心境で穏やかに眺めていた。
が、そんな幸せな時間は、そうは長く続かなかった。
●
深夜、きょうだい達が寝静まった頃。
コルネリウスは父の書斎に呼び出された。
何だろうと小首を傾げて部屋を訪れたコルネリウスを、父フェアロスの渋面が出迎えた。
「先日、都市同盟の冒険者ギルドで妙なものを目にしました」
父が都市同盟に足を運ぶなど珍しいことだ――そんなことを思いながら、コルネリウスは話の筋がよく見えない為、思わず訊き返した。
「……いつの間に、都市同盟に?」
だがその問いに対する応えは無く、父はいきなり核心を衝いてきた。
「私のモノと初対面の男性のモノを比べて、精神攻撃に利用したとの報告がありました」
「あっ……」
その瞬間、コルネリウスはその場に凝り固まってしまった。まさか、あの発言までもがしっかり文書として残されていたなどとは、思いもよらなかったのである。
「全く……何ということを」
「えっと……パパ……」
何とか上手く切り抜けなければと焦ったコルネリウスは、いつもの癖――叱られたり説教を喰らいそうになった時に、フェアロスを父さんではなく、パパと呼ぶ習慣が咄嗟に飛び出してしまった。
フェアロスも心得たもので、小さくかぶりを振って曰く。
「そうやって誤魔化さない」
駄目だ、通用しない。
いつの間にかコルネリウスはその場に正座となり、お説教被弾モードに入っていた。
●
いいですかコルネ、とフェアロスは身を乗り出してきた。
「男の良し悪しを、モノの大小で断じてはいけません。ひとの器は生まれ持った肉体に左右されるべきではないのです」
この瞬間、コルネリウスの頭の中で疑問符が幾つも乱れ飛んだ。
最初コルネリウスは、
「年頃の娘が男性器の寸評を口にすることなど、はしたないでしょう」
と、叱られるものだとばかり思っていた。ところがどうも、思っていたのと違う方向性に話が進もうとしている。コルネリウスは狼狽した。
「危難に接した時、股間のモノが縮み上がっているかどうか。本当の器量はそこで決まるのです。大小ではありません。いざという時に、普段のサイズを維持出来るかどうかが重要なのです」
即ち、股間のモノ・ビフォーアフターこそが何より大事だ、と父はいう。
年頃の娘に対して、一体何の話をしているのか。
しかしフェアロスは心底、真面目である。確かに、いっていることはまぁ間違いではない。しかしそれを真剣な顔して若い娘に話す様なことか。
いや、こういう話題でもしっかり諭すべきところは諭すというのが、彼の信条なのかも知れない。その点は大いに尊重され、称賛されるべきだろう。多分。
更にフェアロスはいう。
「最近、巷でこんな歌を耳にしました」
だーかーらー
おぉーきなぁー
モーノーをー
くーだーさーいー
コールーネーリウスーがー
おーもーわーずー
にぃどみーするよーなー
モーノーをー
くださーいー
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何とも嘆かわしい、とフェアロスは無念そうにかぶりを振る。
「コルネはもう立派な冒険者。壁エルフのお姉さんとしての異名もすっかり定着しています。そんなコルネが軽々しく股間のモノを大小で論ずる様な言動をしたばかりに、この様な愚かな歌が出回るのです」
改めて、フェアロスはいう。
男の優劣はモノの大小などで測られるべきではない、と。
と、ここでフェアロスはそれまでの厳しい表情を幾分緩めた。幼子にいい聞かせる様な優しい口調で、穏やかに語りかける。
「それにですね……正直いいますと、私のモノは然程に大きくありません。コルネリウスが見たのはまだ小さかった頃……色々な物が、大きく見えてしまう年頃なのです」
例えば幼少の頃に通った道が凄く広くて大きな道だったと記憶していても、大人になってから同じ道を通るとビックリするぐらいに狭い路地に過ぎなかったという話は、よく耳にするだろう。
それと同じことだ、と父はどこか寂しげな笑みを湛えて静かに語った。
即ち、コルネリウスが幼き日に見た父の巨根は、淡いセピア色の思い出として、あの日の情景のまま、胸の奥にしまっておくべきだというのでる。
幻想の巨根にそこまでする値打ちがあるかどうかという議論は措いておくとして。
この時、近くでブフッという変な音がした。
後で聞いたところによると、ライラが書斎の外でこっそり聞き耳を立てていたらしいのだが、とうとう耐え切れなくなって噴き出してしまったのだという。
それは兎も角、今のフェアロスは説教開始直後の厳しい表情ではなく、愛に溢れた優しい笑顔でコルネリウスを静かに眺めている。
説教というものは、相手に過ちを理解させさえすれば、それで良い。
必要以上に感情的となるのはもってのほかだし、第一コルネリウスは聡明な娘だ。フェアロスのいわんとしていることは、多くを語らずとも理解してくれるだろう。
この話はもう、ここでおしまい。
後は父と娘の思い出の語らいで、夜を過ごすことにしよう。
●
別の日の夜、コルネリウスは夢を見ていた。
どこかの場末の酒場で、何故かミルクを飲んでいる。薄い色合いの黒眼鏡をかけ、妙に斜に構えた姿。
すぐ外の広場では、誰かが大声で叫んでいる。群衆が彼を取り囲んでいた。
「諸君らが愛してくれたヤスは(社会的に)死んだ! 何故だ!?」
この時、コルネリウスは桜色の美しい唇を僅かに笑みの形に歪めた。
「短小だからさ」
低く呟いて、コルネリウスはぐいっとミルクをあおった。
どうやら、コルネリウスの意識改革はまだ道半ばらしい。
大小ではなく、ビフォーアフターで見極める。口でいうのは簡単だが、いざ実践するとなると、これはこれで中々難しい。
第一、世の男共が普通、縮み上がったモノをそう簡単に披露するだろうか。
だが悲観は禁物だ。
いずれはコルネリウスも立派な股間のモノ鑑定人として、チン列されたモノをしっかり目利きし、その良し悪しを正確に判断することが出来る様になるだろう。
そう、例えば、
「良い仕事してますねぇ」
と、男達のモノを正確に寸評することが出来れば、彼女の未来は明るい栄光の道が約束されたも同然だ。
知らんけど。