薔薇と告白
キャラクターノベル制作 空色みなも納品 2022年06月12日 12時39分24秒
●
サンドイッチと薔薇紅茶に、薔薇を煮詰めたジャムを二匙。
真っ赤な薔薇を一輪、親しい人に贈れば――。
●
カランカラン――。
卓上遊戯喫茶の店内に鳴り響く、いつものドアベルの音。
「このウキウキと弾むようなドアの開け方は――やっぱりルアンナか。いらっしゃい」
「こんにちは、ユーリ。今日はお土産を持ってきました♪」
ユーリ・トレーガーは入り口を振り向く前から、来客の正体を察していた。
入り口に立っていたのは、予想通りのルアンナ・ミュラーであった。
ユーリは都市国家リブラネスタの端にある、この卓上遊戯喫茶の店主であり。
同じくリブラネスタでパン屋を営むルアンナとはご近所さんだ。
「なるほど、嬉しいじゃないか。何を買ってきてくれたんだ?」
「これです! 中身は開けてみてのお楽しみ♪」
ユーリがルアンナの手許に視線を落とすと、そこには小箱が抱えられていた。
「それは楽しみだな、ありがとう。せっかくだ、今日もゆっくりしていくか?」
「ごめんなさい、今日はこの後お仕事が入ってしまっていて……でも」
ユーリの手に、ルアンナの手から小箱が移る。
ルアンナは店に滞在できないことを至極残念そうにしながらも、言葉を区切った後、一転、表情を華やがせた。
「その代わり今度の休日、一緒にピクニックへ行きませんか? 綺麗な湖畔があるんです♪」
「ああ、そいつは実に楽しそうだ。是非とも、そうしようじゃないか」
どうやら今日のルアンナはお土産を渡すと同時に、ユーリをお出かけに誘いに来たようだった。
ルアンナと少なからず親しい仲であるユーリにとっても、この提案に否やはない。
ユーリは深く頷いてルアンナの誘いを受けると、仕事に急ぐルアンナを店の表まで見送ったのだった。
「で、ミュラーさんから何を頂いたんですか、ユーリ様」
店の奥から、従業員のクラウスがひょっこり顔を覗かせる。
どうやらユーリとルアンナを二人でやりとりさせるため、これまで裏に引っ込んでいたようだ。
「さっそく開けてみましょう!」
「お前たちときたら、いつも通りかしましいな……言われなくても今、開けるさ」
同じく興味津々で小箱を見に来た従業員のミアにもせっつかれ。
ユーリが包みを解き、小箱を開くと――。
「これは……薔薇紅茶のセットか? それに……赤い薔薇が一輪、添えてあるな」
ユーリが開いた小箱には、薔薇の花弁が入った茶葉と、薔薇のジャムが詰め込まれており。
その上に乗せられた一輪の赤い薔薇が、鮮やかな存在感を主張していた。
「これは大チャンスです! 逃したらいけません!」
「おわっ!? どうしたいきなり!?」
それを見たミアが、ぐいっとユーリのほうへ身を乗り出してきた。
「一本の薔薇には『一目ぼれ』『あなたしかいない』といった意味があるんです!」
「……そ、そうなのか?」
プレゼントとして一本の薔薇、というシチュエーションにがっつり食いついたミアは、ユーリへ詰め寄っている。
実際、ミアの知識の中では、一本の薔薇にそういう意味を込めることもあるのだろう。
だからと言って、ルアンナの知識の中でもそうであった保証はないはずだが――。
押され気味となったユーリは、助けを求めるようにクラウスに視線を向ける。
しかし、クラウスは黙ってニコニコするばかり。
ダメだ、こいつはこういうとき面白がるだけだった――ユーリは観念した。
(ユーリ様がミュラーさんとデート……お二人が在学中に、ユーリ様にデート指南を頼まれたことを思い出しますね)
そのクラウスはというと、内心で学生時代のユーリを思い出していた。
あの時は、ユーリがルアンナとデートするのをクラウスがこっそり見守ったりしたものだ。
当時のルアンナにデートという認識はなかったかもしれないが、ユーリにとってはその頃からルアンナは気になる相手だったのだ。
「絶対、次のピクニックで告白しましょう! いいですね!」
「えええ……」
ミアに念押しされ逃げ場を失ったユーリは、もはや天井を見上げるしかなかった。
●
草原の緑に、空の透き通った青を映す湖――。
爽やかな色調が、景色を彩っている。
ルアンナとユーリの二人は、約束通りピクニックのため風光明媚な湖畔を訪れていた。
「とってもいい天気――今日が快晴でよかったですね♪」
「あ、ああ……まったくもっていい天気、だな」
楽しげなルアンナに声をかけられるも、ユーリの返事はどこかぎこちない。
絶対に告白してこい、などとミアに言われてきたものだから、仕方ないことではあるのだが。
なんといっても、圧がすごい。
「そろそろ昼食をとろうじゃないか。実は今日は君がくれたお土産も持参していてな」
「そうしましょう! 実はお土産は私用にも買ってあったので、持ってきたんです。それに、サンドイッチも作ってきました!」
ユーリとルアンナたちは、湖畔で腰を落ち着けるのに適した一角を確保すると、小さな焚火の準備を始める。
この場で薔薇紅茶を淹れようというのだ。
「薔薇紅茶は僕が淹れよう。いつも紅茶担当のクラウスほどの腕前ではないかもしれないがな」
ユーリが焚火で沸かした湯を使って、薔薇紅茶の茶葉を蒸らしていく。
蒸らしが長時間に及ぶとえぐみが出てしまうので、そこはほどほどに。
「ふふっ、見た感じ大丈夫そうです」
ルアンナは湯気を立てる薔薇紅茶が入ったカップを受け取ると、薔薇のジャムを二匙ほど掬い取って、薔薇紅茶に加えた。
それに倣って、ユーリも自身の分の薔薇紅茶にジャムを落とす。
「それでは、いただくとするか」
「はいっ♪」
ユーリとルアンナは、二人同時にそれぞれのカップへと口を付け、澄んだ紅色の液体を飲んだ。
「なるほど……美味い」
「ふぅ……美味しい」
ユーリとルアンナの口から、深い吐息が漏れる。
薔薇紅茶のぬくもりは、どこか心まで温めてくれるような、そんな優しさがあった。
二人はしばらく、薔薇紅茶とルアンナお手製のサンドイッチを交互に楽しみながら時を過ごす。
薔薇紅茶を半分ほど飲んだところで、ユーリはちらりと視線を上げて、ルアンナの顔を見る。
ルアンナはずっとご機嫌な様子で、特に緊張の色などは見られない。
そう、一輪の薔薇に特段の思いを込めて贈ったにしては――。
「その、なんだ、ルアンナ。たいへん良いお土産を貰って感謝しているところだが――このお土産、どうしたんだ?」
「どうした、というと?」
たまらず問いかけたユーリに対し、ルアンナはきょとんとした顔で返す。
「あー、だから、どこで買ってきた、とか」
「ああ、これは薔薇紅茶が名物の喫茶店にお出かけした時に。赤い薔薇も綺麗だと思ってつけて貰ったんです♪」
なかなか核心を突けないでいるユーリであったが、ルアンナは話の流れで一輪の薔薇のことについて触れた。
やはり――ルアンナは一輪の薔薇に何かしらの意味を込めて贈ったわけではなかったのだ。
ユーリの心の中で、何かが折れそうになる――。
が――だから、なんだ?
薔薇に込められた意図がなかったとしても、それでこれまで積み重ねてきた二人の関係が変わるわけでもない。
必要なのは、あくまで一歩を踏み出すきっかけだけだったのだ。
ユーリ――漢を見せろ!
「ルアンナ――聞いてほしい話がある」
「……聞いてほしい話、ですか」
ユーリが急に改まった様子になったのを流石にルアンナも感じ取ったのか、居住まいを正す。
「僕はルアンナ、君のことが好きだ。そう、一人の女性として。僕と――付き合ってはくれないか」
告白した――ユーリはついに告白した。
告白してしまったのだ。
ルアンナもこれには驚いたのか、息を呑んでいる様子。
しばらくの間、場を沈黙が支配する――。
「その、私はユーリのことを良いお友達と思ってきました」
静寂を破ったのは、ルアンナだった。
ユーリは固唾を呑んで、ルアンナが次に語る言葉を待っている。
「一人の男性としてどうか、と、言われたとき、まだよく分からないところもあるんですが……」
ルアンナは自身の心を整理しながら話すように、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
その間、ユーリの心臓はバクバクと高鳴りっぱなしである。
「でも、ユーリと出会ってからの私を思い出したとき。そこに確かに幸せがあったんです」
ルアンナは思い出していた。
学生の頃、卓上遊戯倶楽部に誘われ、初めて部室に訪れた時のこと。
それから卓上遊戯倶楽部の部室に通い続けた日々のこと。
聖霊節に二人でお出かけした時のこと。
そして学園を離れた後、再会した後のこと――。
ルアンナとユーリの思い出は、常にたくさんの笑顔とともにあった。
「だから私、ユーリとなら幸せになれる気がする。よろしくね――ユーリ」
そう、ルアンナの口から告げられた返事は――イエスだった。
「や……」
「や?」
そこでユーリが突然、言葉を溜めたので、ルアンナは不思議そうな顔をする。
「やったあああああああああー!」
ユーリの叫びが、静謐だった湖畔に木霊した。
長年の思いがついに実を結んだのだ。
雄叫びを上げたくなるのも、致し方あるまい。
「……ふぅ」
それで叫び疲れたのか、ユーリはどさっ、と草原に仰向けに倒れた。
「ふふっ♪」
ルアンナはそんなユーリを微笑ましく思ったか、向かい合っていた位置から移動し、ユーリの横に並んだ。
そして、そのままユーリの真似をして草原で仰向けに寝っ転がる。
「空が綺麗ね♪」
「ああ……空が綺麗だ」
ルアンナとユーリは日が傾き始めるまで、そのまま並んで空を眺めていたのだった。
サンドイッチと薔薇紅茶に、薔薇を煮詰めたジャムを二匙。
真っ赤な薔薇を一輪、親しい人に贈れば――。
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カランカラン――。
卓上遊戯喫茶の店内に鳴り響く、いつものドアベルの音。
「このウキウキと弾むようなドアの開け方は――やっぱりルアンナか。いらっしゃい」
「こんにちは、ユーリ。今日はお土産を持ってきました♪」
ユーリ・トレーガーは入り口を振り向く前から、来客の正体を察していた。
入り口に立っていたのは、予想通りのルアンナ・ミュラーであった。
ユーリは都市国家リブラネスタの端にある、この卓上遊戯喫茶の店主であり。
同じくリブラネスタでパン屋を営むルアンナとはご近所さんだ。
「なるほど、嬉しいじゃないか。何を買ってきてくれたんだ?」
「これです! 中身は開けてみてのお楽しみ♪」
ユーリがルアンナの手許に視線を落とすと、そこには小箱が抱えられていた。
「それは楽しみだな、ありがとう。せっかくだ、今日もゆっくりしていくか?」
「ごめんなさい、今日はこの後お仕事が入ってしまっていて……でも」
ユーリの手に、ルアンナの手から小箱が移る。
ルアンナは店に滞在できないことを至極残念そうにしながらも、言葉を区切った後、一転、表情を華やがせた。
「その代わり今度の休日、一緒にピクニックへ行きませんか? 綺麗な湖畔があるんです♪」
「ああ、そいつは実に楽しそうだ。是非とも、そうしようじゃないか」
どうやら今日のルアンナはお土産を渡すと同時に、ユーリをお出かけに誘いに来たようだった。
ルアンナと少なからず親しい仲であるユーリにとっても、この提案に否やはない。
ユーリは深く頷いてルアンナの誘いを受けると、仕事に急ぐルアンナを店の表まで見送ったのだった。
「で、ミュラーさんから何を頂いたんですか、ユーリ様」
店の奥から、従業員のクラウスがひょっこり顔を覗かせる。
どうやらユーリとルアンナを二人でやりとりさせるため、これまで裏に引っ込んでいたようだ。
「さっそく開けてみましょう!」
「お前たちときたら、いつも通りかしましいな……言われなくても今、開けるさ」
同じく興味津々で小箱を見に来た従業員のミアにもせっつかれ。
ユーリが包みを解き、小箱を開くと――。
「これは……薔薇紅茶のセットか? それに……赤い薔薇が一輪、添えてあるな」
ユーリが開いた小箱には、薔薇の花弁が入った茶葉と、薔薇のジャムが詰め込まれており。
その上に乗せられた一輪の赤い薔薇が、鮮やかな存在感を主張していた。
「これは大チャンスです! 逃したらいけません!」
「おわっ!? どうしたいきなり!?」
それを見たミアが、ぐいっとユーリのほうへ身を乗り出してきた。
「一本の薔薇には『一目ぼれ』『あなたしかいない』といった意味があるんです!」
「……そ、そうなのか?」
プレゼントとして一本の薔薇、というシチュエーションにがっつり食いついたミアは、ユーリへ詰め寄っている。
実際、ミアの知識の中では、一本の薔薇にそういう意味を込めることもあるのだろう。
だからと言って、ルアンナの知識の中でもそうであった保証はないはずだが――。
押され気味となったユーリは、助けを求めるようにクラウスに視線を向ける。
しかし、クラウスは黙ってニコニコするばかり。
ダメだ、こいつはこういうとき面白がるだけだった――ユーリは観念した。
(ユーリ様がミュラーさんとデート……お二人が在学中に、ユーリ様にデート指南を頼まれたことを思い出しますね)
そのクラウスはというと、内心で学生時代のユーリを思い出していた。
あの時は、ユーリがルアンナとデートするのをクラウスがこっそり見守ったりしたものだ。
当時のルアンナにデートという認識はなかったかもしれないが、ユーリにとってはその頃からルアンナは気になる相手だったのだ。
「絶対、次のピクニックで告白しましょう! いいですね!」
「えええ……」
ミアに念押しされ逃げ場を失ったユーリは、もはや天井を見上げるしかなかった。
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草原の緑に、空の透き通った青を映す湖――。
爽やかな色調が、景色を彩っている。
ルアンナとユーリの二人は、約束通りピクニックのため風光明媚な湖畔を訪れていた。
「とってもいい天気――今日が快晴でよかったですね♪」
「あ、ああ……まったくもっていい天気、だな」
楽しげなルアンナに声をかけられるも、ユーリの返事はどこかぎこちない。
絶対に告白してこい、などとミアに言われてきたものだから、仕方ないことではあるのだが。
なんといっても、圧がすごい。
「そろそろ昼食をとろうじゃないか。実は今日は君がくれたお土産も持参していてな」
「そうしましょう! 実はお土産は私用にも買ってあったので、持ってきたんです。それに、サンドイッチも作ってきました!」
ユーリとルアンナたちは、湖畔で腰を落ち着けるのに適した一角を確保すると、小さな焚火の準備を始める。
この場で薔薇紅茶を淹れようというのだ。
「薔薇紅茶は僕が淹れよう。いつも紅茶担当のクラウスほどの腕前ではないかもしれないがな」
ユーリが焚火で沸かした湯を使って、薔薇紅茶の茶葉を蒸らしていく。
蒸らしが長時間に及ぶとえぐみが出てしまうので、そこはほどほどに。
「ふふっ、見た感じ大丈夫そうです」
ルアンナは湯気を立てる薔薇紅茶が入ったカップを受け取ると、薔薇のジャムを二匙ほど掬い取って、薔薇紅茶に加えた。
それに倣って、ユーリも自身の分の薔薇紅茶にジャムを落とす。
「それでは、いただくとするか」
「はいっ♪」
ユーリとルアンナは、二人同時にそれぞれのカップへと口を付け、澄んだ紅色の液体を飲んだ。
「なるほど……美味い」
「ふぅ……美味しい」
ユーリとルアンナの口から、深い吐息が漏れる。
薔薇紅茶のぬくもりは、どこか心まで温めてくれるような、そんな優しさがあった。
二人はしばらく、薔薇紅茶とルアンナお手製のサンドイッチを交互に楽しみながら時を過ごす。
薔薇紅茶を半分ほど飲んだところで、ユーリはちらりと視線を上げて、ルアンナの顔を見る。
ルアンナはずっとご機嫌な様子で、特に緊張の色などは見られない。
そう、一輪の薔薇に特段の思いを込めて贈ったにしては――。
「その、なんだ、ルアンナ。たいへん良いお土産を貰って感謝しているところだが――このお土産、どうしたんだ?」
「どうした、というと?」
たまらず問いかけたユーリに対し、ルアンナはきょとんとした顔で返す。
「あー、だから、どこで買ってきた、とか」
「ああ、これは薔薇紅茶が名物の喫茶店にお出かけした時に。赤い薔薇も綺麗だと思ってつけて貰ったんです♪」
なかなか核心を突けないでいるユーリであったが、ルアンナは話の流れで一輪の薔薇のことについて触れた。
やはり――ルアンナは一輪の薔薇に何かしらの意味を込めて贈ったわけではなかったのだ。
ユーリの心の中で、何かが折れそうになる――。
が――だから、なんだ?
薔薇に込められた意図がなかったとしても、それでこれまで積み重ねてきた二人の関係が変わるわけでもない。
必要なのは、あくまで一歩を踏み出すきっかけだけだったのだ。
ユーリ――漢を見せろ!
「ルアンナ――聞いてほしい話がある」
「……聞いてほしい話、ですか」
ユーリが急に改まった様子になったのを流石にルアンナも感じ取ったのか、居住まいを正す。
「僕はルアンナ、君のことが好きだ。そう、一人の女性として。僕と――付き合ってはくれないか」
告白した――ユーリはついに告白した。
告白してしまったのだ。
ルアンナもこれには驚いたのか、息を呑んでいる様子。
しばらくの間、場を沈黙が支配する――。
「その、私はユーリのことを良いお友達と思ってきました」
静寂を破ったのは、ルアンナだった。
ユーリは固唾を呑んで、ルアンナが次に語る言葉を待っている。
「一人の男性としてどうか、と、言われたとき、まだよく分からないところもあるんですが……」
ルアンナは自身の心を整理しながら話すように、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
その間、ユーリの心臓はバクバクと高鳴りっぱなしである。
「でも、ユーリと出会ってからの私を思い出したとき。そこに確かに幸せがあったんです」
ルアンナは思い出していた。
学生の頃、卓上遊戯倶楽部に誘われ、初めて部室に訪れた時のこと。
それから卓上遊戯倶楽部の部室に通い続けた日々のこと。
聖霊節に二人でお出かけした時のこと。
そして学園を離れた後、再会した後のこと――。
ルアンナとユーリの思い出は、常にたくさんの笑顔とともにあった。
「だから私、ユーリとなら幸せになれる気がする。よろしくね――ユーリ」
そう、ルアンナの口から告げられた返事は――イエスだった。
「や……」
「や?」
そこでユーリが突然、言葉を溜めたので、ルアンナは不思議そうな顔をする。
「やったあああああああああー!」
ユーリの叫びが、静謐だった湖畔に木霊した。
長年の思いがついに実を結んだのだ。
雄叫びを上げたくなるのも、致し方あるまい。
「……ふぅ」
それで叫び疲れたのか、ユーリはどさっ、と草原に仰向けに倒れた。
「ふふっ♪」
ルアンナはそんなユーリを微笑ましく思ったか、向かい合っていた位置から移動し、ユーリの横に並んだ。
そして、そのままユーリの真似をして草原で仰向けに寝っ転がる。
「空が綺麗ね♪」
「ああ……空が綺麗だ」
ルアンナとユーリは日が傾き始めるまで、そのまま並んで空を眺めていたのだった。