【因縁】金色と青炎の前奏曲

天魔大戦アポカリプス・ゼロ-四月革命- イベントノベル(テーマ)制作 菊華 伴納品 2022年04月30日 13時59分42秒

●天使を狩る悪魔と、悪魔を狩る天使の遭遇
「貴様が、噂の『サキガン(藤崎 此岸)』か」
 乾いた大地に、二対の翼をもった天使が舞い降りる。地の力天使・カモミイル(カタバミ・ナルカミ)は手にした長杖を弄びながら眼前の悪魔に声をかけた。
 面倒くさそうに顔を上げた悪魔・サキガンは、青々と燃えた髪と一対の黒い翼を震わせてにぃ、と笑う。
「だとしたら、何だ」
「話が早い。貴様を討伐させてもらう」
 カモミイルは、長杖をサキガンへ向ける。同時に砂嵐が巻き起こり視界が塞がった。しかし彼は慌てない。喉から音波を発すると、砂嵐を吹き飛ばしてしまった。
 開けた視界の中にカモミイルの姿はない。だが、僅かな振動を感じ取った彼は急いで飛びのく。数秒後に地面を突き破り、黒髪の天使が長杖を構えて飛び出しサキガンは舌打ちした。
(コイツが噂の……)
 長杖で地面を叩いたカモミイルがその先をサキガンへ向けると、音を立てて地面が割れる。サキガンがひらりと飛びこえて回避すると、再びカモミイルの姿がない。僅かな振動から、また地面に潜ったのだろう、と彼は考えた。
「てめぇこそ『土竜』って呼ばれているのを知らねぇのかよ……」
 サキガンの周辺で、『憤怒の悪魔を倒している天使がいる』とたまに話されていた。その天使の特徴が『土や砂を操り、地面に潜る』というもの。
 口の中に入った砂を吐き捨て、放たれた石の弾丸を音波で弾くと翼を広げ高々と舞い上がる。カモミイルが僅かに表情を険しくしたのを彼は見逃さなかった。
(噂が本当なら、奴は空中戦を苦手としているはずだ)
 サキガンは青い炎と強靭な喉から放たれる音波を主な武器としている。それらで襲い掛かってくる者全てを墜落させ、翼を燃やしてへし折った。二度と自分を襲わないように。だが、それが天使たちの中で何か噂になっていたのだろう。そう考え、面倒だと思いながらも音波を放ち、どこからカモミイルが出てくるか把握しようとした。だが……。
(なんだ?)
 地面に音波を放ち、ソナーのように探っていたサキガンは気を引き締める。急に反応が消えた事に、違和感を覚えたのだ。
「貴様、鍛えられているな」
 不意に声がし、振り返った途端見えない何かに叩き落される。地面に激突する寸での所で翼を羽搏かせ上を見ると、カモミイルが見下ろしていた。
(こいつ、重力も扱えるのか!?)
 サキガンが青い炎を放てば、カモミイルは僅かに微笑んだ。

(土や岩なら無音で通り抜けることもできるからね)
 カモミイルは白いローブについた土を払いながら、青い炎を土の壁で防ぐ。そうしながらも目の前の男について振り返った。
(何人もの天使が『憤怒の悪魔に翼を折られている』と報告があった。その被害者は皆、翼を炎で焼かれた上に折られていた……と)
 カモミイルは思う。自分たちは悪魔を戦うし、場合によっては堕天した仲間を討つ事もある。そして、彼もまた天使に襲われたのだから返り討ちにしているだけなのかもしれない。
(それでも、被害の大きさを考えると放っておくわけにはいかないな)
 彼自身は対悪魔に動く天使の中でもまだ温厚(マトモ)な部類だと思っている。何人もの憤怒の悪魔に普通に声をかけ話を聞こうとしていた。だが、大半はまともに話を聞かず襲い掛かってきたので返り討ちにしていただけだ。
「てめぇ!」
 土の壁を音波でぶち破り、サキガンが青い炎の矢を放つ。それを避けながらカモミイルはサキガンを睨みつけた。
(翼を折られた仲間の痛みをぶつけさせてもらう)
 カモミイルが長杖を向けると、地面からサキガンへと土の槍が襲い掛かる。音波をぶつけて槍を崩すも、重力波が襲い掛かる。
 だが、サキガンは怒りと共に高揚感も覚えていた。最近襲い掛かってくる者は皆手ごたえのない相手ばかりだったので、退屈していたのである。
「久々に滾るな……っ!」
 真っ青な炎が周囲を焦がし、カモミイルはどうにか重力波で真上に飛び回避する。早く飛ぶ事をやや苦手とする彼は、普通に羽搏くよりこっちのほうがやりやすいのだ。
 無言で土を操りサキガンに襲い掛かるカモミイル。サキガンは飛んできた石の弾丸を音波で砕き、楽し気に笑った。
「なぁ、てめぇ! 名前を聞かせろよっ!」
 青い炎の矢を乱発し追いかけるサキガンに、カモミイルは苦々しい顔になる。変な奴に目をつけられた、と。
 しかしカモミイルはこうも考えていた。奴と自分は実力が拮抗している。このままでは埒があかない、と。
 だから、彼は提案する。
「条件がある。私とだけ戦い続けろ、サキガン。貴様は、私以外の天使に手を出すな。私も貴様以外の悪魔に手を出さぬ。どちらかが死ぬまでの契約だ。私との戦闘(ダンス)は楽しいのだろう?」
 その提案に、サキガンはにやりと笑った。そして、手早くカモミイルの羽根を毟ると楽し気に笑い声を上げた。
「貴様ッ?!」
「いいぜ。その契約、乗ってやるよ!」

 ――これが、100年の因縁の始まりだった。

(終)

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アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0