【翼牢】わたしを縛るものの名は
天魔大戦アポカリプス・ゼロ-四月革命- イベントノベル(テーマ)制作 むぎあき納品 2022年05月31日 12時52分10秒
あの光景が像となって、瞼を閉じれば浮かび上がってしまう。故にナジュサフィムは夜の帳の訪れを恐れた。
戦場を駆け、剣を振るえば押し寄せる微睡みなど切って捨てられようものを。
(おまえは何を考えている)
小柄なナジュサフィムの身体には幾重にも黒鎖が張り巡らされ、鳥籠の中に彼女を雁字搦めに捕えていた。
身動ぎするたびに鎖が擦れてこの場に繋ぎ止められている事を、否が応でも思い知らされる度にナジュサフィムの中の炎が強く燃え上がる。
青々とした新緑色の悪魔には似つかわしくない瞳、陽の光を浴びて輝く花のような髪だって。
(こいつは、何故、わたしを)
鈍らせるのだ、剣を。
否。
断ち切る。この剣で、こいつは、わたしが断ち切る。
羽根を奪っていった、この悪魔を。
『……君は生かしておいてあげる』
まるで生を与えるような口振りで、手にした羽を玩ぶ。
今だってそう。
■
こんな気持ち、知らない、わからない。
羽根を奪っていった、こいつの顔が。
――だからわたしはここにいる、囚われている。わたしの中をざわつかせる悪魔の側で。
こんな気持ち、知らない、わからない。
あの時よりも深く深く潜り込んだはずなのに。
わたしには、必要なかったはずのもの。
だというのに羽根を奪った、あいつの瞳が――わたしから、一体なにを、奪っていったの。
わからない。この、ざわつく何かが。
わたしの手を止めて、剣を緩めて。
わたしは、羽根以外の、すべてをこいつに盗まれて。
わたしは、こいつの檻に囚われた。
■
その気になれば断ち切る、容易くはないができると確信している。
(なのに。どうしてできないの、ナジュサフィム)
鎖を絶ち、鳥籠を抉じ開け、目の前にいるこいつを切る。何をすべきかなんてとっくにわかっていながら、一体どれほどの時間こうして、わたしは。
「怖い顔で睨んでないで、折角来てくれたんだから仲良くしようよ」
ナジュサフィムを捕らえた口で、春の長閑さを思わせる雰囲気を纏わせながら鳥籠の向こうで悪魔は茶目っ気たっぷりに微笑んだ。
お茶でも淹れようか。ああでも、そのままじゃあ飲めないだろうし、どうしようか? などと神経を逆撫でる。
「ああ、そうだ」
項垂れるようにして悪魔から視線を背けていた鎖がぐい、と引かれた。緑の瞳に映る自分の顔に戸惑うナジュサフィムに、悪魔は追い打ちを掛けた。
「君の名前も聞かせてくれないか、おチビさん?」
戦場を駆け、剣を振るえば押し寄せる微睡みなど切って捨てられようものを。
(おまえは何を考えている)
小柄なナジュサフィムの身体には幾重にも黒鎖が張り巡らされ、鳥籠の中に彼女を雁字搦めに捕えていた。
身動ぎするたびに鎖が擦れてこの場に繋ぎ止められている事を、否が応でも思い知らされる度にナジュサフィムの中の炎が強く燃え上がる。
青々とした新緑色の悪魔には似つかわしくない瞳、陽の光を浴びて輝く花のような髪だって。
(こいつは、何故、わたしを)
鈍らせるのだ、剣を。
否。
断ち切る。この剣で、こいつは、わたしが断ち切る。
羽根を奪っていった、この悪魔を。
『……君は生かしておいてあげる』
まるで生を与えるような口振りで、手にした羽を玩ぶ。
今だってそう。
■
こんな気持ち、知らない、わからない。
羽根を奪っていった、こいつの顔が。
――だからわたしはここにいる、囚われている。わたしの中をざわつかせる悪魔の側で。
こんな気持ち、知らない、わからない。
あの時よりも深く深く潜り込んだはずなのに。
わたしには、必要なかったはずのもの。
だというのに羽根を奪った、あいつの瞳が――わたしから、一体なにを、奪っていったの。
わからない。この、ざわつく何かが。
わたしの手を止めて、剣を緩めて。
わたしは、羽根以外の、すべてをこいつに盗まれて。
わたしは、こいつの檻に囚われた。
■
その気になれば断ち切る、容易くはないができると確信している。
(なのに。どうしてできないの、ナジュサフィム)
鎖を絶ち、鳥籠を抉じ開け、目の前にいるこいつを切る。何をすべきかなんてとっくにわかっていながら、一体どれほどの時間こうして、わたしは。
「怖い顔で睨んでないで、折角来てくれたんだから仲良くしようよ」
ナジュサフィムを捕らえた口で、春の長閑さを思わせる雰囲気を纏わせながら鳥籠の向こうで悪魔は茶目っ気たっぷりに微笑んだ。
お茶でも淹れようか。ああでも、そのままじゃあ飲めないだろうし、どうしようか? などと神経を逆撫でる。
「ああ、そうだ」
項垂れるようにして悪魔から視線を背けていた鎖がぐい、と引かれた。緑の瞳に映る自分の顔に戸惑うナジュサフィムに、悪魔は追い打ちを掛けた。
「君の名前も聞かせてくれないか、おチビさん?」