揺れるミモザ、花散らす青嵐
天魔大戦アポカリプス・ゼロ-四月革命- イベントノベル(テーマ)制作 STANZA納品 2022年05月18日 14時05分59秒
地の力天使クロリスの住まいは、白壁が美しい小さな一軒家だ。
家はこぢんまりとしているが庭は広く、そこには様々な植物が植えられている。
その日、明るい陽光が降り注ぐその一角に、ひときわ明るく金色に輝く場所があった。
黄色いポンポンのような小さな花が、いくつもの房になって風に揺れている。
「今日はこれを持って行きましょう」
ふわふわの花にそっと手を添え、クロリスは柔らかく微笑んだ。
「いらっしゃい、クロリス」
水の天使パヴェルが玄関を開けると、甘い春の香りがふわりと鼻をくすぐった。
「こんにちは、パヴェルさん」
陽光を纏う天使が、陽光のような黄色い花束を抱えて微笑んでいる。
「今日はミモザのお花を持ってきました。とても綺麗に咲いたんですよ」
「あら、素敵。いつもお花をありがとうね」
差し出された花束を受け取り、クロリスを居間へ招きながら、パヴェルはふと思い出したように尋ねる。
「このお花、もしかしてあの時の?」
いつだったか、二人で人間界に遊びに行った時、クロリスは園芸店で色々な種を買い込んでいた。
「ええ、少し前に芽が出たんです」
普通は花が咲くまで数年、ましてや花束に出来るほど大きく咲き揃うまでにはそれ以上の年月がかかるものだが、植物や花を司る地の力天使の手にかかれば成長もあっという間だ。
その力があれば季節の影響も殆ど受けないため、クロリスの庭ではいつでも多種多様な花々が咲き誇っている。
いつもそれらを手土産にもらうため、パヴェルの部屋は花屋か温室かというほどに、いつも花で溢れていた。
「どこに飾ろうかしら、もう花瓶がいっぱいだわ」
嬉しい悲鳴を上げるパヴェルに、クロリスは楽しげに笑った。
「そう思って、今日は少し準備して来たものがあるんです」
荷物から蔓の束や麻紐を取り出す。
「一緒にリースを作ってみませんか?」
居間のテーブルに向き合って座り、二人は蔦を丸く輪になるように編み始めた。
「大きさはこれくらいで良いかしらね」
「ええ、丁度いいと思いますよ」
編み上がったら葉を付けたままのミモザの花をたっぷり盛って、そこに部屋に飾られた花の中からカスミソウやラベンダーなどを選んでバランス良く差していく。
最後にリボンで飾れば、元気なビタミンカラーのリースの出来上がりだ。
「これならこのまま飾れるわね」
「ええ、それに自然とドライフラワーになりますから、いつまでも飾っておけますよ」
ミモザの花言葉は優雅、そして感謝と友情。
この日々が、どうかいつまでも続きますように。
「それじゃ、私からはこれを」
パヴェルが取り出したのは、黄色とオレンジで花の形に作られた組紐の髪飾り。
「自分で作ってみたの、気に入ってもらえるかしら」
それを受け取り、クロリスは蕾が開くように目を輝かせた。
「素敵な髪飾り……!」
その場で早速髪に着けてみる。
「似合いますか?」
「ええ、とっても」
微笑んで、パヴェルは自分の髪にも髪飾りを着けた。
クロリスとは色違いの、青と白の組紐で作ったものだ。
「実は私、自分の分も作ったのよ」
「お揃いなんて、ますます嬉しいです……大事に使いますね」
パヴェルの目には、クロリスの全身から幸せオーラが溢れ出ているように見えた。
「うふふ、クロリスさんの笑顔を見ていると、元気いっぱいの妹ができたみたいだわ」
「では、これからはパヴェルお姉さまとお呼びしましょうか」
「構わないわ、それじゃ可愛い妹にはこれもあげましょうね」
リボンをかけた袋には、焼きたてのクッキーが詰まっていた。
「ありがとうございます、美味しそうですね……折角ですし、一緒に食べませんか?」
「大丈夫、それは持って帰ってちょうだい。一緒に食べる分はちゃんと別に用意してあるわ」
テーブルの下から籠に山盛りのクッキーが出て来る。
「それでは、お茶にしましょうか。私も軽くつまめるものを作って来たんですよ」
クロリスもバスケットからクロワッサンのサンドウィッチを取り出した。
「たまごサラダをたっぷり挟んで、ミモザと色を合わせてみたんです」
「それなら私はこれよ」
パヴェルがグラスに注いだのは、シャンパンとオレンジジュースで作ったカクテル。
「これ、ミモザっていう名前なんですって」
「ミモザづくしですね」
満面の笑みと共に、二人はグラスを合わせる。
この幸せが、いつまでも続くと思ったのに。
「パヴェルさん、どうして……?」
問いかけても答えはない。
「ごめんなさい。でも、後悔はしていないの。私も貴女を傷つけたくない。お願い、通して頂戴」
これが最後になるなんて。
貴女が天の理から外れてしまうなんて。
「私にも、天使としての矜持があります……貴女が相手でも、何も言わずに通すわけには」
見つめ合う二人の天使。
クロリスが鳥籠を持つ手に力を込める。
パヴェルの髪で、悲しみの青と冷たい氷の白が揺れた。
けれどその心が揺れることは、きっと――
家はこぢんまりとしているが庭は広く、そこには様々な植物が植えられている。
その日、明るい陽光が降り注ぐその一角に、ひときわ明るく金色に輝く場所があった。
黄色いポンポンのような小さな花が、いくつもの房になって風に揺れている。
「今日はこれを持って行きましょう」
ふわふわの花にそっと手を添え、クロリスは柔らかく微笑んだ。
「いらっしゃい、クロリス」
水の天使パヴェルが玄関を開けると、甘い春の香りがふわりと鼻をくすぐった。
「こんにちは、パヴェルさん」
陽光を纏う天使が、陽光のような黄色い花束を抱えて微笑んでいる。
「今日はミモザのお花を持ってきました。とても綺麗に咲いたんですよ」
「あら、素敵。いつもお花をありがとうね」
差し出された花束を受け取り、クロリスを居間へ招きながら、パヴェルはふと思い出したように尋ねる。
「このお花、もしかしてあの時の?」
いつだったか、二人で人間界に遊びに行った時、クロリスは園芸店で色々な種を買い込んでいた。
「ええ、少し前に芽が出たんです」
普通は花が咲くまで数年、ましてや花束に出来るほど大きく咲き揃うまでにはそれ以上の年月がかかるものだが、植物や花を司る地の力天使の手にかかれば成長もあっという間だ。
その力があれば季節の影響も殆ど受けないため、クロリスの庭ではいつでも多種多様な花々が咲き誇っている。
いつもそれらを手土産にもらうため、パヴェルの部屋は花屋か温室かというほどに、いつも花で溢れていた。
「どこに飾ろうかしら、もう花瓶がいっぱいだわ」
嬉しい悲鳴を上げるパヴェルに、クロリスは楽しげに笑った。
「そう思って、今日は少し準備して来たものがあるんです」
荷物から蔓の束や麻紐を取り出す。
「一緒にリースを作ってみませんか?」
居間のテーブルに向き合って座り、二人は蔦を丸く輪になるように編み始めた。
「大きさはこれくらいで良いかしらね」
「ええ、丁度いいと思いますよ」
編み上がったら葉を付けたままのミモザの花をたっぷり盛って、そこに部屋に飾られた花の中からカスミソウやラベンダーなどを選んでバランス良く差していく。
最後にリボンで飾れば、元気なビタミンカラーのリースの出来上がりだ。
「これならこのまま飾れるわね」
「ええ、それに自然とドライフラワーになりますから、いつまでも飾っておけますよ」
ミモザの花言葉は優雅、そして感謝と友情。
この日々が、どうかいつまでも続きますように。
「それじゃ、私からはこれを」
パヴェルが取り出したのは、黄色とオレンジで花の形に作られた組紐の髪飾り。
「自分で作ってみたの、気に入ってもらえるかしら」
それを受け取り、クロリスは蕾が開くように目を輝かせた。
「素敵な髪飾り……!」
その場で早速髪に着けてみる。
「似合いますか?」
「ええ、とっても」
微笑んで、パヴェルは自分の髪にも髪飾りを着けた。
クロリスとは色違いの、青と白の組紐で作ったものだ。
「実は私、自分の分も作ったのよ」
「お揃いなんて、ますます嬉しいです……大事に使いますね」
パヴェルの目には、クロリスの全身から幸せオーラが溢れ出ているように見えた。
「うふふ、クロリスさんの笑顔を見ていると、元気いっぱいの妹ができたみたいだわ」
「では、これからはパヴェルお姉さまとお呼びしましょうか」
「構わないわ、それじゃ可愛い妹にはこれもあげましょうね」
リボンをかけた袋には、焼きたてのクッキーが詰まっていた。
「ありがとうございます、美味しそうですね……折角ですし、一緒に食べませんか?」
「大丈夫、それは持って帰ってちょうだい。一緒に食べる分はちゃんと別に用意してあるわ」
テーブルの下から籠に山盛りのクッキーが出て来る。
「それでは、お茶にしましょうか。私も軽くつまめるものを作って来たんですよ」
クロリスもバスケットからクロワッサンのサンドウィッチを取り出した。
「たまごサラダをたっぷり挟んで、ミモザと色を合わせてみたんです」
「それなら私はこれよ」
パヴェルがグラスに注いだのは、シャンパンとオレンジジュースで作ったカクテル。
「これ、ミモザっていう名前なんですって」
「ミモザづくしですね」
満面の笑みと共に、二人はグラスを合わせる。
この幸せが、いつまでも続くと思ったのに。
「パヴェルさん、どうして……?」
問いかけても答えはない。
「ごめんなさい。でも、後悔はしていないの。私も貴女を傷つけたくない。お願い、通して頂戴」
これが最後になるなんて。
貴女が天の理から外れてしまうなんて。
「私にも、天使としての矜持があります……貴女が相手でも、何も言わずに通すわけには」
見つめ合う二人の天使。
クロリスが鳥籠を持つ手に力を込める。
パヴェルの髪で、悲しみの青と冷たい氷の白が揺れた。
けれどその心が揺れることは、きっと――