【観察】天使クルメルによる悪魔リュウの被害報告書
天魔大戦アポカリプス・ゼロ-四月革命- イベントノベル(テーマ)制作 おおくまねこ納品 2022年05月05日 13時43分03秒
●悪魔リュウに関する報告書(1)
報告者:北東天使軍中級3隊、風の力天使クルメル
中級3隊隊長主天使ハルエル様
〇月×日、▲時ごろ、自動販売機付近で悪魔と遭遇。背後から奇襲を受ける。悪魔は『色欲の悪魔リュウ』と名乗った。救援を呼ぶ為に大声を上げたところ、リュウは逃亡。
備考:
幸いにも負傷はなかったが、後頭部の髪をバッサリ切られ、勝手にボブカットにされるという辱めを受ける。他に被害者はなし。
以上
●
クルメルがリュウと遭遇したのは一日前のことだ。
「今日の得物はあの子にしましょうか」
色欲の悪魔リュウはたまたま視界に入ったクルメルの髪を一目見て気に入っていた。目立たぬように帽子でガードされているが、自分の目は誤魔化せない。あの天使の青い髪は一級品だ。
「……」
リュウは一日クルメルに張り付き、その働きぶりをよく観察した。彼女は戦闘兵ではなく衛生兵だ。いつも治癒の魔法で後方支援に従事している。どうやら回復隊の指揮官のようだ。
「狙うなら、あの子が一人の時ね」
翼の色を白く偽装し、天使のフリをして敵陣に潜入したリュウは休憩時間になったクルメルの後をこっそり付けた。
「――今よ!」
物陰から飛び出したリュウは音もなく彼女の背後に忍び寄った。そのままクルメルの帽子を跳ね上げ、髪を一房手に取ると、一気に剃刀でバッサリやった。鮮やかな奇襲。普通に攻撃すれば深手を負わせることもできたが、リュウはクルメルの命など別に欲しくはない。美しき者から、美の象徴たる髪を奪い取ることで自らの糧とすることが生きがいなのだ。
「え? きゃああ!」
背後で起こった異変に気付いたクルメルは悲鳴を上げた。
「あなた、誰!?」
クルメルが振り向くと、そこには女性と思しき黒髪の悪魔が立っていた。
「色欲の悪魔リュウ。あなたの美しさの象徴である髪は私が頂いたわ」
「はい? 髪……? ってなにやってるの!? ああ、一房だけチョンチョンになってるー!」
クルメルは自分の後ろ髪がバッサリやられてしまったことに気付き、もう一度絶叫した。
「私の見込んだ通り、綺麗な髪ね。一切切れ毛がない青髪……本当に美しいわ!」
切り落としたクルメルの髪を手に取り、恍惚とした表情を浮かべるリュウ。どうやらこの悪魔はかなり変わった趣向をしているようだ。
「へ、変な悪魔……ともかく、逃がしません! みなさーん! ここに悪魔がいまーす!」
大声で救援を呼ぶクルメル。するとリュウは翼を広げ――。
「また会いましょう。また私があなたの髪をめちゃくちゃにしてあげる! あーはっは!」
高笑いと共に空へと飛び去っていった。
●悪魔リュウに関する報告書(2)
報告者:北東天使軍中級3隊、風の力天使クルメル
中級3隊隊長主天使ハルエル様
〇月×日、▲時ごろ、リュウと二度目の遭遇。左右非対称のザンバラカットの憂き目に遭う。他に被害者は無し。
以上
●悪魔リュウに関する報告書(3)
報告者:クルメル
ハルエル様
リュウと三度目の遭遇。ベリーショートにされました。
●リュウに関する報告書(8)
ワックスで固められ、リーゼントにされました。悪魔滅ぶべし。
●
「そうか、災難だったな」
「災難だったな、じゃないですよ! いい加減にあの道徳的殺人鬼を何とかして下さい! 髪は女の命ですよ!」
座天使は苦笑いした。クルメルは何度もリュウと遭遇した際の被害報告書を出しているが、一向に動きが無い上層部に苛立っているのか、だんだん報告書が雑になってきており、もはや「散髪報告書」となりつつある。
「笑いごとじゃありません! もう8度目ですよ! 髪の毛再生にも効く治療薬があるからいいものの、毎回テキトーにバサバサ切られるものだから、整えるのが大変なんです!」
(うーむ……そろそろ彼女にも上層部の思惑を明かしておくか)
実は、天使軍上層部はクルメルを囮として利用していた。リュウは強力な悪魔だ。もし彼が戦場に乱入してくれば場は確実に混乱する。だが、クルメルが髪の毛を奪われるだけならば実質被害はほぼゼロなので、軍としては現状維持がベストだと判断していたのだ。
「クルメル君。実はだな……」
座天使は思わせぶりな横顔を見せた。
●
「……また来たの? やるならじっくりやってね」
またまたリュウと遭遇したクルメルは、溜息を吐き、くるりと背を向けた。
「あら、今日は抵抗しないの?」
「どうせ命は取らないんでしょう? なら好きにしなさいよ」
「へえ……なら好きにさせてもらうわ。ふふふ、今日はどうしてあげようかしら……」
悪魔はクルメルの後頭部をうっとりと見つめ、唇を吊り上げるのであった。
報告者:北東天使軍中級3隊、風の力天使クルメル
中級3隊隊長主天使ハルエル様
〇月×日、▲時ごろ、自動販売機付近で悪魔と遭遇。背後から奇襲を受ける。悪魔は『色欲の悪魔リュウ』と名乗った。救援を呼ぶ為に大声を上げたところ、リュウは逃亡。
備考:
幸いにも負傷はなかったが、後頭部の髪をバッサリ切られ、勝手にボブカットにされるという辱めを受ける。他に被害者はなし。
以上
●
クルメルがリュウと遭遇したのは一日前のことだ。
「今日の得物はあの子にしましょうか」
色欲の悪魔リュウはたまたま視界に入ったクルメルの髪を一目見て気に入っていた。目立たぬように帽子でガードされているが、自分の目は誤魔化せない。あの天使の青い髪は一級品だ。
「……」
リュウは一日クルメルに張り付き、その働きぶりをよく観察した。彼女は戦闘兵ではなく衛生兵だ。いつも治癒の魔法で後方支援に従事している。どうやら回復隊の指揮官のようだ。
「狙うなら、あの子が一人の時ね」
翼の色を白く偽装し、天使のフリをして敵陣に潜入したリュウは休憩時間になったクルメルの後をこっそり付けた。
「――今よ!」
物陰から飛び出したリュウは音もなく彼女の背後に忍び寄った。そのままクルメルの帽子を跳ね上げ、髪を一房手に取ると、一気に剃刀でバッサリやった。鮮やかな奇襲。普通に攻撃すれば深手を負わせることもできたが、リュウはクルメルの命など別に欲しくはない。美しき者から、美の象徴たる髪を奪い取ることで自らの糧とすることが生きがいなのだ。
「え? きゃああ!」
背後で起こった異変に気付いたクルメルは悲鳴を上げた。
「あなた、誰!?」
クルメルが振り向くと、そこには女性と思しき黒髪の悪魔が立っていた。
「色欲の悪魔リュウ。あなたの美しさの象徴である髪は私が頂いたわ」
「はい? 髪……? ってなにやってるの!? ああ、一房だけチョンチョンになってるー!」
クルメルは自分の後ろ髪がバッサリやられてしまったことに気付き、もう一度絶叫した。
「私の見込んだ通り、綺麗な髪ね。一切切れ毛がない青髪……本当に美しいわ!」
切り落としたクルメルの髪を手に取り、恍惚とした表情を浮かべるリュウ。どうやらこの悪魔はかなり変わった趣向をしているようだ。
「へ、変な悪魔……ともかく、逃がしません! みなさーん! ここに悪魔がいまーす!」
大声で救援を呼ぶクルメル。するとリュウは翼を広げ――。
「また会いましょう。また私があなたの髪をめちゃくちゃにしてあげる! あーはっは!」
高笑いと共に空へと飛び去っていった。
●悪魔リュウに関する報告書(2)
報告者:北東天使軍中級3隊、風の力天使クルメル
中級3隊隊長主天使ハルエル様
〇月×日、▲時ごろ、リュウと二度目の遭遇。左右非対称のザンバラカットの憂き目に遭う。他に被害者は無し。
以上
●悪魔リュウに関する報告書(3)
報告者:クルメル
ハルエル様
リュウと三度目の遭遇。ベリーショートにされました。
●リュウに関する報告書(8)
ワックスで固められ、リーゼントにされました。悪魔滅ぶべし。
●
「そうか、災難だったな」
「災難だったな、じゃないですよ! いい加減にあの道徳的殺人鬼を何とかして下さい! 髪は女の命ですよ!」
座天使は苦笑いした。クルメルは何度もリュウと遭遇した際の被害報告書を出しているが、一向に動きが無い上層部に苛立っているのか、だんだん報告書が雑になってきており、もはや「散髪報告書」となりつつある。
「笑いごとじゃありません! もう8度目ですよ! 髪の毛再生にも効く治療薬があるからいいものの、毎回テキトーにバサバサ切られるものだから、整えるのが大変なんです!」
(うーむ……そろそろ彼女にも上層部の思惑を明かしておくか)
実は、天使軍上層部はクルメルを囮として利用していた。リュウは強力な悪魔だ。もし彼が戦場に乱入してくれば場は確実に混乱する。だが、クルメルが髪の毛を奪われるだけならば実質被害はほぼゼロなので、軍としては現状維持がベストだと判断していたのだ。
「クルメル君。実はだな……」
座天使は思わせぶりな横顔を見せた。
●
「……また来たの? やるならじっくりやってね」
またまたリュウと遭遇したクルメルは、溜息を吐き、くるりと背を向けた。
「あら、今日は抵抗しないの?」
「どうせ命は取らないんでしょう? なら好きにしなさいよ」
「へえ……なら好きにさせてもらうわ。ふふふ、今日はどうしてあげようかしら……」
悪魔はクルメルの後頭部をうっとりと見つめ、唇を吊り上げるのであった。