【螺旋戦線】それは絶えず形を変える

天魔大戦アポカリプス・ゼロ-四月革命- イベントノベル(テーマ)制作 螺子巻ゼンマイ納品 2022年04月23日 09時25分41秒

 螺旋洞窟、上層。見張りの悪魔は退屈そうに敵を待つ。
 そんな彼の首元に、ひやりとした異物感。
 気づいた時には力が抜けていて、倒れる悪魔は死の刹那、目撃する。
 腿に暗器を忍ばせる、小さく可憐な侵入者。
 第七位権天使、アヴェラ(アヴェラ・ウッチェロ)。

(白い、指)

 悪魔は知らない。彼女の名も、向けられた瞳の意味も。

 斃した悪魔から視線を外し、周囲の異変を肌で感じる。
 警告(アラート)が発動したのだろう。増援が、洞窟の奥から来る。

(四人。強そう)

 姿は見られていない。
 ならと天使は宙を舞い、天井の岩陰から地面へと細針を投げる。
 からん。響いた音に悪魔が意識を向けると、ひゅんっ。
 敵の首に短剣を投げ刺したアヴェラは、天井を蹴って敵の背後に回る。
 次の投擲はしかし剣に弾かれ、俊敏な悪魔が接近する。
 刃が天使を薙いだ。しかし舞ったのは、血ではなく水飛沫だ。
 水の分身(フェイク)。
 悪魔は本物を探そうとするが、動けない。
 分身(水)は崩れると同時に氷へと変化し、彼の脚を凍らせたのだ。
 ザンッ! 潜んでいた本物(アヴェラ)が水の刃を飛ばし、首を斬る。
 残り、二人。駆ける天使は、水刃の跡(水溜り)を飛び越えた。
 踏み抜けば氷。ならば魔術でと敵は構えるが……じゅわり。
 煙幕を生み(水を蒸気へ変化させ)、暗殺者(アヴェラ)は死角から、水刃にて敵を狙う。
「舐めるなッ」
 鉄の爪で水刃を弾く悪魔。
 同時にもう一人が、焔風を吹いて周囲の水を蒸発させた。
(相性が悪い)
 眉根を寄せるアヴェラに、鉄爪の悪魔が迫る。
 ギィンッ! 爪を短剣で止めるが、抑えきれない。
 更に焔の悪魔が、天使を焼き尽くそうと距離を詰める。
 判断の間は無い。アヴェラは表情を変えぬまま、周囲に多量の水を生む。
「無駄だ!」
 その水は、焔の悪魔が消し飛ばした。
 爪を抑える力は抜けかけ、背後には焔の悪魔。
 がくんっ。天使の肩に刃が掛かり、敵はほくそ笑む。……勝敗は、決した。

「――!?」

 アヴェラの勝利だ。
 鉄爪が焔の胸に刺さり、血を吹き出す。
 彼らは目測を誤ったのだ。何故か?

 陽炎(かげろう)。
 悪魔の焔を利用して、天使は僅かに光を曲げた。
 効力は弱い。ほんの少し、彼らの目を誤魔化すだけ。
 それだけあればいい(充分な隙だ)。氷で二者の脚を止め、その首に糸(ワイヤー)を掛ける。

 悪魔達の首が落ち、少女天使は膝を折った。
 ……魔力は使い切り、半身の火傷と肩の創傷。
 潮時だろう。役割を果たした天使は、ちらと斃した悪魔の指を見遣る。
 硬い指。太い指。それだけを覚えて、彼女は帰還していった。

登場キャラクター

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0