天使の指が紡ぐもの

天魔大戦アポカリプス・ゼロ-四月革命- イベントノベル(テーマ)制作 空色みなも納品 2022年04月18日 14時06分42秒

●
 天使のような、という形容がある。
 しかし実際のところ、天使は――冷酷だった。

●
 それは、何の前触れもなく訪れた。

 天使の喉笛が、パックリと割れる。
 ヒュッと空気の漏れる音がして。
 その天使は二度と大空を舞うことが無くなった。

 墜ちていく天使を余所にして。
 他の天使たちが警戒するように辺りを見渡している。

 やがて一人の天使が指差した先に。
 それは在った。

 水の権天使、アヴェラ(アヴェラ・ウッチェロ)。
 アヴェラは何故ゆえに、仲間を殺めるのか。
 否、アヴェラにとって、これらの天使はすでに仲間などではない。

「三番隊天使に告ぐ。あなたたちに堕天の予兆ありにつき、速やかに処分します」
 アヴェラは言うが早いか、短剣を放って天使の一人の胸に突き立てる。
 つい先ほどまで、手には何も握られていなかったはずだ。
 見れば、ヒラリ――とアヴェラの短いスカートが揺れていて。
 チラ、と覗いた太ももにズラリと短剣が巻き付けてあった。
 そう、アヴェラは体中に暗器を仕込んでいるのだ。

 今度は襲いかかってきた天使のこめかみを、アヴェラが針で貫く。
 これは服の袖に仕込んであったものだ。
 アヴェラの動作には、ためらいのようなものは一切、見られない。

 天使たちもこのままでは各個撃破されると学んだのか、連携のようなものが見られ始める。
 しかし、アヴェラは常に天使たちの一枚上手を行く。

 アヴェラの姿が、増えた。
 水を使って分身を生み出したのだ。

 一体の分身に翻弄されていた天使の翼が突然、凍りつく。
 そこをアヴェラが遠くから放った水の刃で切り裂いて。
 アヴェラに近づこうとした天使が、不可視の水蒸気トラップにはまり込む。

 アヴェラの戦いぶりは、まさに『初見殺しのつるべ撃ち』とでも呼ぶべきもの。
 そして、天使の中にそれを見たことがある者はいない。
 見た者は最後、消えてきたのだから。

 アヴェラは最後に残った天使の一人が、命乞いするのをじっと見つめている。
 正確には、うつ伏せに倒れた天使がこちらへ伸ばした手の、指を見つめていた。

 このとき、これまで何の抵抗もなく天使を蹂躙してきたアヴェラの心に。
 欠片ほどの、しこりのようなものが生まれた。

 しかし、その正体に気付くことなく。
 アヴェラは最後の天使から命を奪った。

「……逆に私も殺されることがあるのかしら」
 アヴェラはその場を去る前に一度だけ。
 天使たちの骸を振り返った。

登場キャラクター

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0