【食虜】ザクロはいかが?
天魔大戦アポカリプス・ゼロ-四月革命- イベントノベル(テーマ)制作 七瀬納品 2022年05月09日 16時18分06秒
その男は、食を踏みにじった。
食に対する誠意を失った彼に、リベルガストラは一つのザクロを差し出した。
それを口にした男は目を見開いて驚いた。
――こんなに美味いものは、食べたことが無い!!
彼女の目が笑っていないことには、最後まで気づかぬまま。
「助けてくれ、なぁ、あんた!」
そう呼びかけられて、リベルガストラは顔を上げた。
空はすでに日も暮れて、もう店じまいをしようかという頃のこと。テーブルと椅子を畳んでいた彼女のもとへ、一人の男がやって来た。
首をかしげたリベルガストラに、男は縋るように迫る。
「おかしいんだよ、あれからずっと! 何を食べても美味くない、満たされない!」
鬼気迫る表情で、男は言い募る。
「おかしいんだ! あのザクロを食べてからずっと!!」
気が狂いそうだと、うちひしがれたように膝をついた男を見て、リベルガストラはようやく何かに思い当たったような顔をした。
「……ああ、あの時の」
ぽつりと呟いて、男を見下ろす。
リベルガストラが彼に与えたザクロは、普通のザクロではない。
『食べたものを虜にする』という魅了の魔法を施したザクロだった。
今まで味わったどんなものよりも美味しく感じるが、その後どんなものを食べても満足できない。魔法と言うよりも、もはや呪いの域である。
彼女は普段、食材に魔法などかけない。魅了などもってのほかだ。彼女はいつだって、食材の良さを引き出すため、自らの知識と技術をもって料理に挑む。
そんな彼女が、彼にザクロを手渡した理由はただひとつ。
目の前で、彼が料理を無駄にしたからだ。
「悔いているのだ?」
「え?」
「食を冒涜した自分の悪行を、心から反省しているのかと聞いているのだ」
リベルガストラの問いに、男はこくこくと頷く。
その様子を見て、彼女は告げた。
自らが満足できる味を作り出すこと。あらゆるものを食べて学び、食材に感謝し、理想の味に近づけるよう励むことが、その状態から脱する唯一の方法だと。
男は言葉に詰まり、結局小さく「わかった」と頷いてそのまま足早に去って行く。
――その後彼がどうなったか、彼女は知らない。
暴食の悪魔、リベルガストラ。
彼女が好むのは飽食、美味い飯と食材、食に携わる者達。
彼女が嫌うのは飢餓、不味い飯、食材を粗末に扱う者。
彼女は食を軽んじる者を許せない。許さない。
その者が食に対する誠意と敬意を、取り戻さない限り。
食に対する誠意を失った彼に、リベルガストラは一つのザクロを差し出した。
それを口にした男は目を見開いて驚いた。
――こんなに美味いものは、食べたことが無い!!
彼女の目が笑っていないことには、最後まで気づかぬまま。
「助けてくれ、なぁ、あんた!」
そう呼びかけられて、リベルガストラは顔を上げた。
空はすでに日も暮れて、もう店じまいをしようかという頃のこと。テーブルと椅子を畳んでいた彼女のもとへ、一人の男がやって来た。
首をかしげたリベルガストラに、男は縋るように迫る。
「おかしいんだよ、あれからずっと! 何を食べても美味くない、満たされない!」
鬼気迫る表情で、男は言い募る。
「おかしいんだ! あのザクロを食べてからずっと!!」
気が狂いそうだと、うちひしがれたように膝をついた男を見て、リベルガストラはようやく何かに思い当たったような顔をした。
「……ああ、あの時の」
ぽつりと呟いて、男を見下ろす。
リベルガストラが彼に与えたザクロは、普通のザクロではない。
『食べたものを虜にする』という魅了の魔法を施したザクロだった。
今まで味わったどんなものよりも美味しく感じるが、その後どんなものを食べても満足できない。魔法と言うよりも、もはや呪いの域である。
彼女は普段、食材に魔法などかけない。魅了などもってのほかだ。彼女はいつだって、食材の良さを引き出すため、自らの知識と技術をもって料理に挑む。
そんな彼女が、彼にザクロを手渡した理由はただひとつ。
目の前で、彼が料理を無駄にしたからだ。
「悔いているのだ?」
「え?」
「食を冒涜した自分の悪行を、心から反省しているのかと聞いているのだ」
リベルガストラの問いに、男はこくこくと頷く。
その様子を見て、彼女は告げた。
自らが満足できる味を作り出すこと。あらゆるものを食べて学び、食材に感謝し、理想の味に近づけるよう励むことが、その状態から脱する唯一の方法だと。
男は言葉に詰まり、結局小さく「わかった」と頷いてそのまま足早に去って行く。
――その後彼がどうなったか、彼女は知らない。
暴食の悪魔、リベルガストラ。
彼女が好むのは飽食、美味い飯と食材、食に携わる者達。
彼女が嫌うのは飢餓、不味い飯、食材を粗末に扱う者。
彼女は食を軽んじる者を許せない。許さない。
その者が食に対する誠意と敬意を、取り戻さない限り。