【魔召】飽食愛す料理人『リベルガストラ』

天魔大戦アポカリプス・ゼロ-四月革命- イベントノベル(テーマ)制作 夜団子納品 2022年05月11日 14時25分10秒

 誰かが呻いた、神への祈りを。
 誰かが罵倒した、手を差し伸べてもくれない神を。
 誰かは叫んだ、悪魔でもいいから助けてくれ、と。
 それを聞き届けて、私は痩せこけた手でかまどの炭を取った。

「魔界の調理師、店主リベルガストラよ、我の求めに応じ現れよ」
 かつて、異教者として隠れていた叔父が見せてくれた魔導書。そこには様々な悪魔の召喚方法が記載されていた。危険だから絶対に見るなと再三叱られたが、ある悪魔に惹かれてそのページだけはずっと読み返していた。
「我この厨房でパンを捏ね、肉を切り、野菜を裂き、果物を飾るものなり。我とともに焼き、煮込み、茹で、潰す技を為さん」
 並べられた供物は野菜のヘタ、掘り起こした木の根、腹を壊さない雑草、死んだ犬の肉。それらが今の私たちの持つ、最高の食材であった。火を通せばきっと食える。少しでも食べればきっと子供たちは死なずに済む。そんな思いでかき集めた食材たち。
 かつてここは、美食の都と呼ばれた美しい街であった。大きくはないが物流に富み、海を擁していたので外国の食材も仕入れることができた。私もかつては、この場所で美食の奴隷(料理人)として日々魂を捧げるひとりであった。
 そんな幸福な時代も、今は昔。中央貴族のどこぞの馬鹿が余計な火種を振りまかなければ。
 この国は孤立し戦争で荒れた。貿易はできなくなり交流は断たれ、海に面して栽培の向かないこの都市はあっという間に飢えてしまった。
 『リベルガストラ(ストレガ・L・リベルガストラ)』。あの幼き日憧れた飽食の悪魔。『食は万世共通の幸福なれば、君は力を尽くすべきなのだ』――その言葉で、私は真に目指したい道を歩むことを決めたのだから。
「どうか、どうか――我らをお助けください」

 悪魔も天使も、人間(われわれ)にとっては同じもの。或いは、自分たち(われわれ)を救う者を神と呼ぶのだろう。
 なんと身勝手なのだろう。でも。
「これが食材、とは。なんて、なんて。嘆かわしいのだ……」
 白いコックコートに竜頭蓋。彼女から薫るのはもはや忘れかけていた食卓のさまざまな香り。
 食を愛する悪魔にはそれが染み付いていた。
「ひい、ふう、みい……」
 彼女は私の厨房に転がる人間たちを指で数え始めた。そして私を見、「これだけしかいないのだ?」と尋ねた。私は首を横に振り、動けない子供たちがいることを語った。
「なら急ぐのだ!!」
 彼女が躊躇いなく調理道具を取り出したところで、頬を涙が伝った。
 ――彼女こそが、私にとっての神であった。

登場キャラクター

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0