天使のいる庭で

天魔大戦アポカリプス・ゼロ-四月革命- イベントノベル(テーマ)制作 水繰潤納品 2022年05月18日 19時24分35秒

 天界のとある場所――ある天使が管理する、小さな庭園があった。
 敷地をぐるりと囲むように綺麗に形を整えられた樹木。それらに沿って煉瓦でつくられた花壇。
 傍らにはコテージが建てられ、テラスにはお茶を楽しむためのテーブルと椅子も設置されている。

 様々な種類の花が揺れ小鳥たちが舞う庭先で、地の力天使・クロリス(コルネリウス・アーラ)は日々の日課である土いじりに精を出していた。
「今日も綺麗に咲いていますねぇ。……ふふ、はい。とっても素敵ですよ」
 のんびりとした口調でクロリスは花達へと語りかけている。
 彼女は度々人間界へ降り立っては、気に入った花の種を持ち帰り、自分で育てることを趣味としている。
 今日も花達のご機嫌は上々の様子。

「~♪」
「こんにちは、クロリス!」
 鼻歌まじりに如雨露で水を撒くクロリスの元に、風の主天使・サフィエル(サフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブ)がやってきた。
「……! サフィエルさん!」
 ふわりとやわらかな風を纏って降り立つサフィエルの姿は、褐色の肌に金の髪が陽に照らされ、嬉しそうな表情と共にキラキラと輝いている。
「遊びに来たよ!」
「そろそろかなって、待っていたところでした! 今日は、だいぶ前に植えた種や球根から、お花が咲いたんですよ」
「この間言ってたマリーゴールド? どれどれ……」
 サフィエルが手にしていたバスケットをテラスのテーブルに置くと、綺麗に整えられた花壇に駆け寄り花達の様子を覗く。
 マリーゴールドと赤や白をはじめとした色とりどりのチューリップが風に揺れ、鮮やかに咲き誇っていた。
「わ、すっごい綺麗! チューリップも咲いてる!」
「サフィエルさんがお好きだと言っていたので」
 折角だから一緒にガーデニングをしよう誘いをかけると、サフィエルも二つ返事で頷いた。

「ふんふんふ~ん♪」
 サフィエルはスコップ片手に花の苗の植え替えを手伝うべく、花壇に向き合う。
 この色の並びはどうだろう、紫と白も綺麗な並びで捨てがたい――そんな風に悩みながら、根鉢を並べてじっくりを見比べて。
 納得した組み合わせにひとつ頷くと、穴に根鉢を置くと優しく土をかけていく。
「ねぇクロリス、こんな感じでいいのかな?」
「はい、とってもお上手で……はっ……!?」
「!?」
 突如、クロリスの目がカッと見開かれた。
 何事かとサフィエルも顔を上げると、クロリスは1点を凝視している。
 視線の先を追えば、緑の艶やかな甲虫が赤いチューリップの花弁にくっついていた。
「あれって」
「……はい。天敵(コガネムシ)ですね」
 人間界から何かの拍子についてきてしまったのだろうか。
 険しい表情を崩さずに、じりじりと虫と距離を詰めるクロリス。
「きっとお花の苗を持ってきた時に、ついて来ちゃったんですね……私としたことが、不覚です」
 花弁からそっと虫を指に移して運ぶクロリスの仕草は丁寧そのもので。表情はやや硬く見えるものの、彼女の事だから小鳥や花と同様に虫へも慈悲が溢れているのだろうかとサフィエルが感心しかけたその瞬間。
「めっ……です、よ……!」
 ――ドゴォ!!
「!?」
 クロリスは虫を地面に叩きつけ、一瞬で傍に置いてあった鳥籠を引き寄せると、躊躇なく虫に向かってそれを振り下ろした。
 すっと鳥籠がどけられると、そこに虫の姿は跡形もなく消え去って――地面には鳥籠の形に深く抉られた跡だけが残っていた。
 僅か2秒ほどの出来事に、目を見開くサフィエル。
「ひぇっ……」
「奴は、害虫ですので」
 お花を蝕む虫さん、絶対許さない。
 ――後に知った話だが、この一件以降サフィエルは彼女の事は怒らせないようにしようと、密かに心に誓ったのだという。
「……はっ、すみませんサフィエルさん。取り乱してしまって」
「だ、大丈夫だよ……! ちょ~っと吃驚したけど!」
 手を振って笑うサフィエルの表情は僅かに引きつっていたが、我に返ってから頬に手を当て愁いを帯びる様子はすっかりいつものクロリスであった。
「あぁ、コガネムシ(奴)の所為で地面に穴が空いてしまいました……整地しなければ……」
 彼女が悲し気に視線を落とす先は、虫が滅された痕跡が生々しく残る地面。
 その様子に、サフィエルが良い事を思いついた! とぱっと手を上げる。
「あ、それならここも花壇にしちゃうのはどうかな! あたしも手伝うよ!」
「いいんですか? 先日サフィエルさんの好きそうなお花の種も手に入れたところだったんです。そちらを撒きましょうか」
「やった~! そうしよ!」

 キュウ~。

 と、次の目標が決まったところでサフィエルお腹が可愛らしい音を立ててお昼の時間を告げた。
「……えへへ、お腹すいちゃった……お昼持ってきたからご飯にしよっ!」
「もうそんな時間でしたか! それでは花壇の手入れの続きは後にして、休憩しましょう」
 サフィエルが持って来たバスケットへ視線を向けると、ふたりの天使はテラスへと移動していく。

そして『天使たちのお茶会( ランチタイム)』へと続く――。

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アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0