【武試】手に馴染むもの (上)
天魔大戦アポカリプス・ゼロ-四月革命- イベントノベル(テーマ)制作 七瀬納品 2022年05月08日 09時09分55秒
土埃が舞い、怒号が飛び交う。
天使と悪魔の戦いは、その日も苛烈さを極めていた。
悪魔と対峙する大天使ルードルフに、不可避の攻撃が迫る。
「くっ……!!」
――彼の手にあった大剣が、彼の命の代わりに音を立てて壊れた。
そして、ルードルフが相棒の武器を失ってから数日後のこと。
彼は全身を覆う白いマントを身につけて、とある工房へとやって来ていた。
「ルードルフ、ただ今参上いたしました」
「やあ、よく来たね。顔を上げてよ」
上位天使に対する礼を解いて、ルードルフは声の主へと目を向ける。
そこに立っていたのは、第六位能天使バクル。今回ルードルフを呼び出した張本人である彼は、武器職人だ。
こちらへ、と言ってバクルは、ルードルフを工房の奥へと案内する。
鉄が打ち合わされる甲高い音や刃を研ぐ音を聞きながら二人が進んでいくと、やがて広い空間へとたどり着いた。
「最前線で戦っているきみに、ここの武器を試してほしいんだ」
そこには、バクルを含めた武器職人達が作った武器が、ずらりと並べられている。剣、斧、槍……様々な種類の武器が揃えられている光景に、ルードルフは目を見開いた。
どれもこれも、職人の技術と情熱が込められた素晴らしいものばかりだ。
気に入ったものがあれば持って行って構わないと付け加えて、バクルはルードルフへと視線を向ける。
それを受けて、ルードルフは口を開いた。
「ご存じの通り、武器は身を守る物でもあります。忌憚ない意見で構いませんか」
「勿論。これは正しく意見を貰うためだからね。正直に言ってもらって構わないよ」
バクルはルードルフの問いにニコリと笑って頷くと、早速武器の説明をすべく足を進めた。
「これはあそこにいるロンテさんが作った刀だね。質が低い代わりに量産性に重きを置いてるらしいよ」
端の方で武器の手入れをしていた職人の一人が、バクルの説明を受けて軽く会釈をする。
ルードルフは彼に頭を下げてから、その刀を手に取った。
「……思ったより軽いですね」
「ああ、切れ味も試してみるといい」
そう言って、バクルは試し斬り用の巻き藁を取り出す。
静かに構えたルードルフがそれを袈裟斬りにすると、藁は軽い手応えと共に綺麗な断面を晒した。それから数度刀を振るったルードルフは、少し離れて見ていたバクルへと向き直る。
「量産品といっても切れ味はいいですし、重さを考えても比較的扱いやすいのではないかと」
「なるほど。質より量、とは言いつつ質も及第点ということかな」
一つ頷いて、バクルは斬られた藁の断面を確認する。その後ロンテと呼ばれていた職人と少し言葉を交わして、ルードルフのもとへ戻った。
次に行こうか、とバクルに促され、ルードルフは壁に掛けられていた槍のもとへ行く。
「これはぼくが作った槍だね。悪魔の中には硬い装甲を持ったのもいるから、貫通力に重きを置いてみたんだ」
差し出された槍を握ると、ルードルフの手にはやや細く感じられた。長さがある分重さはそれなりだが、先の穂の部分は鋭く、幅も狭い。貫通力に重きを置いたと言う通り、装飾も殆ど施されていなかった。
見た目よりも実用性を重視する、バクルらしい槍である。
ルードルフが前に向かって槍を突き出すと、刃は鋭い音と共に空を裂く。重心の偏りもそれほど無い。
「やや細めなので、柄に攻撃を受けた時に少し不安はありますが……余計な装飾がないので、重心のバランスはいいと思います」
「それは良かった。柄に関しては改善の余地有りだね。……ああ、ではこっちはどうかな」
バクルはそう言うと、隣へ視線を移して指差した。
「それは『壊れにくさ』に重きを置いて作ったんだ。戦場では武器は大事なパートナー。武器が壊れるなんて最悪の状況だからね」
「仰るとおりで……」
つい数日前、まさにその状況に陥ったルードルフは、バクルの言葉に深く頷く。あれはさすがに肝が冷えた。量産品であったとはいえ作り手にも申し訳ない事をしてしまったと、砕けた大剣を思い浮かべてルードルフの表情が曇る。
一つ息を吐いて気持ちを切り替えてから、改めて目の前の武器を見た。
(これはハンマーか。随分と大きいな)
持ってみると、大きさも相まってかなりの重量感がある。
筋力と武器の重さでもって敵を屠るというスタイルのようだ。振り回すだけでも、かなりの攻撃力が出るのではないだろうか。
「筋力に自信のある者や、大柄な者には向いていそうな武器ですね」
ルードルフの言葉に頷いてから、じゃあ次、と促すバクル。
「こっちのモルゲンステルンは、魔法との相性が良くなるように作ってるんだ」
モルゲンステルンとは、モーニングスターとも呼ばれるメイスの一種。先端にある、棘のついた球体はやや小ぶりではあるが、攻撃的な印象だ。
天使と悪魔の戦いは、その日も苛烈さを極めていた。
悪魔と対峙する大天使ルードルフに、不可避の攻撃が迫る。
「くっ……!!」
――彼の手にあった大剣が、彼の命の代わりに音を立てて壊れた。
そして、ルードルフが相棒の武器を失ってから数日後のこと。
彼は全身を覆う白いマントを身につけて、とある工房へとやって来ていた。
「ルードルフ、ただ今参上いたしました」
「やあ、よく来たね。顔を上げてよ」
上位天使に対する礼を解いて、ルードルフは声の主へと目を向ける。
そこに立っていたのは、第六位能天使バクル。今回ルードルフを呼び出した張本人である彼は、武器職人だ。
こちらへ、と言ってバクルは、ルードルフを工房の奥へと案内する。
鉄が打ち合わされる甲高い音や刃を研ぐ音を聞きながら二人が進んでいくと、やがて広い空間へとたどり着いた。
「最前線で戦っているきみに、ここの武器を試してほしいんだ」
そこには、バクルを含めた武器職人達が作った武器が、ずらりと並べられている。剣、斧、槍……様々な種類の武器が揃えられている光景に、ルードルフは目を見開いた。
どれもこれも、職人の技術と情熱が込められた素晴らしいものばかりだ。
気に入ったものがあれば持って行って構わないと付け加えて、バクルはルードルフへと視線を向ける。
それを受けて、ルードルフは口を開いた。
「ご存じの通り、武器は身を守る物でもあります。忌憚ない意見で構いませんか」
「勿論。これは正しく意見を貰うためだからね。正直に言ってもらって構わないよ」
バクルはルードルフの問いにニコリと笑って頷くと、早速武器の説明をすべく足を進めた。
「これはあそこにいるロンテさんが作った刀だね。質が低い代わりに量産性に重きを置いてるらしいよ」
端の方で武器の手入れをしていた職人の一人が、バクルの説明を受けて軽く会釈をする。
ルードルフは彼に頭を下げてから、その刀を手に取った。
「……思ったより軽いですね」
「ああ、切れ味も試してみるといい」
そう言って、バクルは試し斬り用の巻き藁を取り出す。
静かに構えたルードルフがそれを袈裟斬りにすると、藁は軽い手応えと共に綺麗な断面を晒した。それから数度刀を振るったルードルフは、少し離れて見ていたバクルへと向き直る。
「量産品といっても切れ味はいいですし、重さを考えても比較的扱いやすいのではないかと」
「なるほど。質より量、とは言いつつ質も及第点ということかな」
一つ頷いて、バクルは斬られた藁の断面を確認する。その後ロンテと呼ばれていた職人と少し言葉を交わして、ルードルフのもとへ戻った。
次に行こうか、とバクルに促され、ルードルフは壁に掛けられていた槍のもとへ行く。
「これはぼくが作った槍だね。悪魔の中には硬い装甲を持ったのもいるから、貫通力に重きを置いてみたんだ」
差し出された槍を握ると、ルードルフの手にはやや細く感じられた。長さがある分重さはそれなりだが、先の穂の部分は鋭く、幅も狭い。貫通力に重きを置いたと言う通り、装飾も殆ど施されていなかった。
見た目よりも実用性を重視する、バクルらしい槍である。
ルードルフが前に向かって槍を突き出すと、刃は鋭い音と共に空を裂く。重心の偏りもそれほど無い。
「やや細めなので、柄に攻撃を受けた時に少し不安はありますが……余計な装飾がないので、重心のバランスはいいと思います」
「それは良かった。柄に関しては改善の余地有りだね。……ああ、ではこっちはどうかな」
バクルはそう言うと、隣へ視線を移して指差した。
「それは『壊れにくさ』に重きを置いて作ったんだ。戦場では武器は大事なパートナー。武器が壊れるなんて最悪の状況だからね」
「仰るとおりで……」
つい数日前、まさにその状況に陥ったルードルフは、バクルの言葉に深く頷く。あれはさすがに肝が冷えた。量産品であったとはいえ作り手にも申し訳ない事をしてしまったと、砕けた大剣を思い浮かべてルードルフの表情が曇る。
一つ息を吐いて気持ちを切り替えてから、改めて目の前の武器を見た。
(これはハンマーか。随分と大きいな)
持ってみると、大きさも相まってかなりの重量感がある。
筋力と武器の重さでもって敵を屠るというスタイルのようだ。振り回すだけでも、かなりの攻撃力が出るのではないだろうか。
「筋力に自信のある者や、大柄な者には向いていそうな武器ですね」
ルードルフの言葉に頷いてから、じゃあ次、と促すバクル。
「こっちのモルゲンステルンは、魔法との相性が良くなるように作ってるんだ」
モルゲンステルンとは、モーニングスターとも呼ばれるメイスの一種。先端にある、棘のついた球体はやや小ぶりではあるが、攻撃的な印象だ。