【料理】暴食と憤怒の真剣料理教室!

天魔大戦アポカリプス・ゼロ-四月革命- イベントノベル(テーマ)制作 菊華 伴納品 2022年05月03日 09時06分48秒

●教えて欲しい!!
 ――怪力乱神のシトラ(中野・詩繫)。
 彼女は『力こそ至上』を掲げる憤怒の悪魔らしい悪魔で凶暴で粗暴な性格である。だが、自分より優れた能力を持つ者に対しては敬意を払う一面も持っていた。

(あの方に、何かしたいけれど……)
 ある日、シトラは珍しく思い悩んでいた。彼女は己の主人に恩返しがしたいのだが、何をしたらいいのか解らなかったのである。
 そんな所に、彼女はとある暴食の悪魔の噂を聞きにする。なんでも腕のいい料理人で『食は万世共通の幸福なれば』を掲げているそうだ。そしてその二つ名は『自由なる舌』、魔界調理師、店主……。
 その名はリベルガストラ(ストレガ・L・リベルガストラ)。悪魔にしては冷静かつ温厚で食を中心とした知識も豊富だと聞く。
「これは気になるね」
 シトラは噂を頼りに『自由なる舌』とも呼ばれる暴食の悪魔の元へ足を進めた。

 しばらくして、とてもいい匂いが漂ってくる。その先には、目的の大型のフードトラックが止まっており、小柄な悪魔がテーブルを拭いていた。
 シトラはさり気無くやってくると「開いてる?」と問いかけた。彼女は席を勧めながら「ちょうど開店したとこなのだ」とメニューを渡す。
 注文を問われたシトラはシチューを注文し、しばし待つ。そして綺麗な皿に素朴だかとても美味しそうなシチューと焼き立てのパンが差し出された。
 早速食べた途端、胸が震えた。それほどの衝撃が魂を駆け抜けた。
(これ、今まで食べてきたどの料理より遥かに美味しくて、あったかいっ!)
 目を見開いたシトラは夢中でシチューを口にし、僅かに涙ぐむ。
「お味はいかがなのだ?」
 件の悪魔がふんわりした様子で問いかけると、シトラはぱっ、と彼女の両手をとって膝をつく。
「アンタ、いや、貴女がリベルガストラか? 貴女の腕を見込んで頼みがあるっ」
 不思議そうに首を傾げるリベルガストラに、シトラは真剣な眼差しで土下座し
「あ、あたしを弟子にしてくだ」
「OKなのだ」
 あっさり2秒で弟子入りが決まった。

●修行の道険し
(なるほど)
 シトラが自由の舌(リベルガストラ)に弟子入りして数時間後。ちょっとした問題が発生していた。シトラは途方もない膂力(よりょく)を持つ一方、壊滅的に不器用であった。そして、生まれてこの方料理をした事が無い。繊細な力加減が求められる料理において、シトラの怪力が問題になったのだ。
 彼女が一生懸命なのはわかる。だが、がんばればがんばるほど不器用さが露見する悪循環に陥っていた。
 少々しょんぼりしているように見えるシトラを見、リベルガストラは考える。彼女はメシマズを許さない。故に原因を嘆き、懇切丁寧に教えるのだ。
(料理には愛は必要だけどそれだけではダメなのだ)
 リベルガストラは小さく頷き、目線を合わせ穏やかにシトラへ諭す。
「もう少し、肩の力を抜くのだ」
 シトラが『誰かの為に』料理をしようとしているのは一目見て分かった。だから、余計に身体に無駄な力がかかるのではないか、と予想する。
「それと、材料を吟味し厳選するのだ。ごろごろ野菜も『ゴロゴロシチュー』と言い張るのだ。煮込めば同じなのだ。でも、味付けだけはしっかり気を付けるのだ」
「! がんばってみるっ!」
 シトラは笑顔で頷いた。
 リベルガストラは懸命に料理を学ぼうとするシトラに対し根気強く、丁寧に指導した。その甲斐もあってシトラはそこそこ美味しいレベルの料理を作れるようになっていた。
「やっと……できたっ」
 料理の完成に、シトラの瞳が輝く。鍋から立ち上る美味しそうな香りに、リベルガストラは瞳を細め頷く。
「料理って、大変だけど楽しいね」
 シトラは笑顔でそう言った。

 出来上がったシチューを皿に盛りつけ、パンとサラダも準備していざ試食。
「さっそく食べるのだ」
「うんっ」
 師(リベルガストラ)に促され、シトラは自分が作ったシチューを食べてみる。と、ごろっとしつつも程よい大きさの野菜はホクホクで、シチューも味わい深くなっていた。これならば主も喜んでくれるかもしれない。
「なかなか美味しいのだ」
 リベルガストラもシトラが作ったシチューを口にし、優しい顔で頷く。これなら主に喜んでもらえるかもしれない、とシトラの表情も柔らかい物になっていた。
「料理のコツの1つは『妥協する事としない事』をはっきりする事なのだ」
 彼女の言葉を、シトラは真剣な顔で心に刻み込んだ。

 それから数日後。
 拘(こだわ)りのあるシチューをソースから仕込んでいた料理人(リベルガストラ)は、急に影が降りた事に気付く。
「ん?」
 よく見ると……でかい地獄魔猪がそこに置かれていたのだ。軽く彼女の背を超える程の体長だ。そして、持ってきた張本人だろうシトラが、笑顔で立っていた。ということは……。
(先日のお礼、なのだ?)
 リベルガストラの眼差しに、シトラが頷く。
 料理人は、大きな魔猪を前にどんな料理にしようかと微笑んだ。

(終)

登場キャラクター

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