名もなき悪魔の誘い 上
天魔大戦アポカリプス・ゼロ-四月革命- イベントノベル(テーマ)制作 七海真砂納品 2022年04月12日 13時20分03秒
「この中、ですね……」
精霊兵器『炎の柱』を確保せよ――その命を受けて遺跡を訪れたのは、名もなき一体の悪魔であった。
悪魔が指先を動かすと、入口を塞いでいた瓦礫が取り除かれていく。中へ踏み込み、入口を再び塞いだ悪魔は、その俊足を生かして遺跡の内部を駆ける。
(ここ……ここも……ああ、ここも。丁度良いですね)
侵入者が必ず通るであろう箇所に術を仕込む。発動すれば、四方八方から飛び出すギロチン刃によって、その翼は血の色に染まることだろう。
そうした罠で後続の足止めを試みながら、悪魔は奥を目指す。
やがて、悪魔が炎の柱を持つクーネを見付けたのと、彼女が悪魔の気配に気付いて振り返ったのは、ほぼ同時のことだった。
「悪魔――!?」
クーネが目を見開く。咄嗟に炎の柱を振りかぶった彼女の攻撃を、出現した眷属の狼が見当違いな方向へと逸らしていく。
「……ありがとう。ええと、人間さん」
狼に向かって小さく囁いた悪魔は、どう語りかけたものだろうと、戸惑いを滲ませながらクーネの方を見た。
「恐れなくても……大丈夫ですよ。私は、人間の感情に寄り添う優しい悪魔ですから」
「えぇー……?」
優しい悪魔というフレーズに疑いの目を向けるクーネだが、一見、無害そうに見える悪魔の外見がプラスに働いてくれたのだろう。実際、悪魔が彼女に対して危害を加える様子が無いこともあり、クーネはじいっと悪魔を見つめながら「それで、何か用か……?」と尋ねてくる。
「ええ……貴女と、貴女の持つ、その柱に」
「これか、これは――」
一体何なんだろうと困惑しているクーネは、自分が今どれほど不安定な立場にあるのか知らないのだ。そんな彼女を案じた悪魔は手短に、彼女が持つ炎の柱について説明をする。
「そんな凄い物が眠っていたのか、この遺跡には」
「そうなんですよ……それを手に入れて、何をする予定だったんです? 復讐だったら私得意なので、お手伝いできるんですけどねぇ……」
「何を、か……おじいちゃんの夢を叶えて、おじいちゃんの凄さを皆に知って欲しかった、かな」
「……なるほど」
クーネの目に宿る純粋さ、そこに滲む微かな暗い感情。天使の側にも、悪魔の側へも傾ききっていない、それはある意味でとても人間らしい健全さを持った状態とも言えるだろう。
(学界への復讐……ということであれば……手を貸せる場面もあるでしょうか、ね……)
だから、悪魔はクーネに囁いた。
精霊兵器『炎の柱』を確保せよ――その命を受けて遺跡を訪れたのは、名もなき一体の悪魔であった。
悪魔が指先を動かすと、入口を塞いでいた瓦礫が取り除かれていく。中へ踏み込み、入口を再び塞いだ悪魔は、その俊足を生かして遺跡の内部を駆ける。
(ここ……ここも……ああ、ここも。丁度良いですね)
侵入者が必ず通るであろう箇所に術を仕込む。発動すれば、四方八方から飛び出すギロチン刃によって、その翼は血の色に染まることだろう。
そうした罠で後続の足止めを試みながら、悪魔は奥を目指す。
やがて、悪魔が炎の柱を持つクーネを見付けたのと、彼女が悪魔の気配に気付いて振り返ったのは、ほぼ同時のことだった。
「悪魔――!?」
クーネが目を見開く。咄嗟に炎の柱を振りかぶった彼女の攻撃を、出現した眷属の狼が見当違いな方向へと逸らしていく。
「……ありがとう。ええと、人間さん」
狼に向かって小さく囁いた悪魔は、どう語りかけたものだろうと、戸惑いを滲ませながらクーネの方を見た。
「恐れなくても……大丈夫ですよ。私は、人間の感情に寄り添う優しい悪魔ですから」
「えぇー……?」
優しい悪魔というフレーズに疑いの目を向けるクーネだが、一見、無害そうに見える悪魔の外見がプラスに働いてくれたのだろう。実際、悪魔が彼女に対して危害を加える様子が無いこともあり、クーネはじいっと悪魔を見つめながら「それで、何か用か……?」と尋ねてくる。
「ええ……貴女と、貴女の持つ、その柱に」
「これか、これは――」
一体何なんだろうと困惑しているクーネは、自分が今どれほど不安定な立場にあるのか知らないのだ。そんな彼女を案じた悪魔は手短に、彼女が持つ炎の柱について説明をする。
「そんな凄い物が眠っていたのか、この遺跡には」
「そうなんですよ……それを手に入れて、何をする予定だったんです? 復讐だったら私得意なので、お手伝いできるんですけどねぇ……」
「何を、か……おじいちゃんの夢を叶えて、おじいちゃんの凄さを皆に知って欲しかった、かな」
「……なるほど」
クーネの目に宿る純粋さ、そこに滲む微かな暗い感情。天使の側にも、悪魔の側へも傾ききっていない、それはある意味でとても人間らしい健全さを持った状態とも言えるだろう。
(学界への復讐……ということであれば……手を貸せる場面もあるでしょうか、ね……)
だから、悪魔はクーネに囁いた。