旅立つしっぽ
キャラクターノベル制作 樫木間黒納品 2022年05月06日 08時55分45秒
エルシー・サリバンの実家は然程裕福な家庭だった訳ではない。
大国の近辺に位置するとはいえ、シラー砂漠は王国のように肥沃な土地を持たない。農作物による自給自足は見込めず、砂漠の民は専ら地域特有の資源や独自の技術で組み上げられた芸術品を用いた収入に頼らざるを得ない。
水源を有していても、食料の大部分は買い付けなければなかったのである。
それでも砂漠の民は支え合って、逞しく生きていた。
黒毛の半獣もその共同体と一体になって、工芸品の作成、荷運びの手伝い等々……流通に関わるが人手の足りない仕事に協力し売上の一部を報酬として受け取っていた。よく働き、人柄も良いサリバン夫妻は町中から好かれていた。
彼らの仕事を求める手は引く手数多。故に莫大な、とは言えないが一日の生活に充ててお釣りが出る程度には稼げていた。そのお釣りを積み重ね、長子が産まれる頃には十分な貯蓄が懐にあるようにした。砂漠の過酷な気候は時に幼子の命を奪う事もあったが、愛子達の死にめげる事なく貯めた資産で住居を改築。以降も子宝に恵まれ――ささやかながら、一家は幸せな生活を送っていた。
けれど安定はいつまでも続くとは限らない。
夫婦が堅実に計画を立て家族を守っていても、どうしようもない流れは存在する。それは事前に知る事も、知れたとして後戻りも対策も思うように立てられるとは限らないのだ。
明確にサリバン家が変わり始めた理由の一つが、サリバン夫人の四度目の出産だった。
胎の様子が長子達を出産していた時と似ていたので予兆はあったが、この度新しく産まれた子供は四人目ではなく四人目と五人目と六人目になった。
これにて――亡くなった子供を除き、三人の子供に加えて計六人の子供達。予期せぬ三つ子の誕生であったが、三度目と四度目の間が開いていた事も助かり当面は事足りる程度の貯蓄は備わっていた。
一番上の子供でもまだ六歳と目を離せない年頃ではあるが、足りなくなるであろう人手は近所の者に頼み込めば然したる問題はなかった。その長女も近場にある町長の家に赴いては読み書きを教わったり、見様見真似で家事を手伝ったり――と、後々親の代わりに家の仕事を任せても構わないくらいに育ってくれる事は目に見えていた。場合によっては収入源を少し増やして生活の足しにすれば……と当時は思っていた。
驚きはしたものの、当時こそは問題が問題になっていなかった。
もう一つの理由が重なりさえしなければ。
もう一つの理由は数年後――町が蛮族に襲撃された事だ。
砂漠の民を襲うのは過酷な環境だけではない。砂漠に出没する外敵やら蛮族達の強襲も、彼らの平穏な暮らしを脅かす一因となっていた。それらに滅ぼされた町や村も数知れず。この時は町民達の決死の抵抗と応援の冒険者達が間に合い壊滅的な被害には至らなかったが、それでも少なからず犠牲者が出た。
その中に人の子を持つ親もいた。
争いの結果生まれた七人の孤児達。砂漠地帯に孤児院なんて大層な施設はなく、王都に行けば見つかるだろうがそこまで向かうのも遠い。ならば何処かの家で引き取るのが一番良いという事になったが、引き取り先として申し出たのがサリバン夫妻だった。それも全員を。
当然彼らの生活状態を鑑みて集落の大人達は引き留めようとした。
夫妻はその言葉一つ一つを真摯に受け止めそれでも、と気持ちは変えなかった。曰く「親を亡くした子供から友人を引き離して、更に孤独を深めてはならない」と。
年齢は一番上が十で下が二つとバラバラだが、七人の子供達は皆友人同士であり――そしてサリバンの子供達とも仲睦まじく過ごしていたのだ。故に仲良しの両親の下で皆一緒に暮らせる事を喜んだ。
「今日からこの子達もあなたの兄弟よ」
と、親から経緯を語られた長女も同じくらい喜んだ。
元から同じ町で住み、一日中遊び通す事さえあるような仲間達なのだ。そんな気心の知れた友達と本物の兄弟になれるなんて! この時のエルシーはそんな楽観的な感情ばかりを持っていた。
●
孤児となった子供達が家族に加わり暫くして、エルシーは漸く家族が増えるという事は決していい事ばかりではないと思い知った。
「おねえちゃん、パパとママは?」
「もうすぐ商談……えーと、お仕事が終わって帰ってくると思うよ!」
「そっか。はやくパパとママに会いたいな」
「ぼくも」
「……そうだね。私も早く会いたいね」
「おねえちゃん。おなかすいたー」
「あー、はいはい! 用意してるから待ってね」
両親の帰りを待つ妹の頭を優しく撫で、「ご飯を食べようね」と促した。
幼い子供ほど興味を移すのが速い。……しかし、それは間を置けば再発するという事である。エルシーと同年代の兄弟も言葉にこそ出さないが、内心同じ事を想っているだろう。
十三人兄弟姉妹になってからのサリバン家は長女のエルシーが年長の兄弟達を纏め、家事や弟妹の面倒を見る体制を築き上げていた。最初こそ大人が手伝いに入っていたが子供達は物覚えも良く、すぐに子供達だけで家を回せる程度に成長した。親に頼らない互助的な暮らしは子供達の自立に役立っていたようで。
特にエルシーの成長は目覚ましいものだった。彼女は兄弟達を率いて家の一切を取り仕切る事を苦に思ってはいなかった。寧ろ、両親の現状を問題視していた。
嘗ては父が出稼ぎに向かったり、母が工芸に籠り切りになっても子供達に構う時間を確保してくれていた。けれど兄弟が一気に倍以上に増えてからは皆を養っていくために、両親共々家を空けて数日は帰って来ない状態がありふれた事になってしまった。
同世代の子供達と遊ぶのは楽しい。しかし両親も家族の一員だ。その家族と過ごせない事がどんなに寂しい事か。
家族全員のために両親が仕事を増やす事は仕方がない。それは理解できてもどうにかならないものか――。
(私も働いてお金を稼げるようになれば、お父さんとお母さんの負担を減らせるようにならないかな?)
エルシーはまだ十を超えて少しの子供だ。普通なら働くにはまだ早い……と言われるような年頃だが、彼女には授恵者としての素質があった。
授恵者は例え子供であっても、大人と変わらない戦闘能力を発揮する事ができる。若い冒険者がバルバロイを容易く倒してみせた姿は、彼女の記憶に焼き付いている。つまり、彼女も同じ事ができる。大人の中に混ざって働き、食い扶持を作る事ができるのだ。
●
「――だから、これからは私も働きたいの」
エルシーの申し出に母は驚いた。しっかりした子だと思ってはいたが、ここまで責任感を負わせてしまうとは……。
娘の成長を喜ぶよりも、ここまで追い込んでしまった不甲斐なさを歯痒く思った。
「エル、あの子達を引き取るのはお母さん達が決めた事よ。あなたが背負う必要はないわ」
「でも、家族でしょ? 家族なら助け合わないと。私はお母さんとお父さんの役に立ちたいよ」
エルシーの決意は固い。確かに娘の言う通り、親が揃って働きに出なければ家計は立ち行かなくなる。それに両親の負担を子供が引き受けてくれれば、その分親子で暮らせる時間を取れるようになる。
彼女の提案を呑めば大助かりなのだろう――しかし母は目を伏せ、自分が彼女と同じくらいの年頃の時はどうだったか思い出した。
砂漠での暮らしは決して楽ではない。あまり自由のない暮らしだったが、それでも思うように過ごして自分のやりたいように選択できていた記憶がある。
しかし、エルシーはどうだろうか。聞けばあれほど仲の良かった幼馴染とも遊ばなくなっていると言う。家の事ばかりを考えて、彼女自身を疎かにさせてはいないだろうか。
自由のない、家族のための道具にさせてはいないだろうか。
未来ある若者がそうなってしまうのは、最も忌むべき事態だ。
「……あなたの気持ちはとても嬉しいわ。でもね、エルは自由に生きて欲しいの。お父さんだって同じ気持ちのはず。
世界を見て、力を付けて……私達の力に成るのはそれからの方が嬉しいわ」
「でも……それを待っている時間は……」
「急いではダメ。今は、自分を伸ばす時なのよ」
そう言って、母は愛娘の頭を優しく撫でた。
●
親が諭しても、素直に聞けないのが子供心だ。
しかしエルシーに母の言葉は届いていた。家族のために稼ぐのではなく、稼ぐついでに世界を見て回るため。彼女の中で元から決めていた方針は切り替わりつつあった。
冒険者となって、家族の生活費を稼ごう。
色んな依頼を受けて、世界を回って色んな事を見に行こう。
家族に言えば「そんな危ない事を」と止められてしまいそうだから、唯一人にだけ話そうとした。エルシーはその子と久しぶりに会う事になる。
不安も多少はあったが、それよりも興奮が勝った。彼女の話を聞いてどんな顔をしてくれるだろうか?
「――――ハル!」
小さな時から一緒に過ごしていた、少し年上の幼馴染。
家族が増えた頃から、彼女が自分を避けるようになったのは感じていた。忙しさにかまけてもう一度向き合う機会を得られずに、そのまま疎遠になっていた。
実は嫌われていて、だから避けられているのだとしても。何も話さず「さよなら」するよりかは断然マシだと。
その子は最近、町外れで姿を見せるらしい。まるで人目を避けているかのように。
砂漠の太陽は眩しい。あの子の姿は蜃気楼の中に揺らいで消えそうだった。エルシーはその影をはっきりと視界に捉え、もう一度その名前を呼んだ。
大国の近辺に位置するとはいえ、シラー砂漠は王国のように肥沃な土地を持たない。農作物による自給自足は見込めず、砂漠の民は専ら地域特有の資源や独自の技術で組み上げられた芸術品を用いた収入に頼らざるを得ない。
水源を有していても、食料の大部分は買い付けなければなかったのである。
それでも砂漠の民は支え合って、逞しく生きていた。
黒毛の半獣もその共同体と一体になって、工芸品の作成、荷運びの手伝い等々……流通に関わるが人手の足りない仕事に協力し売上の一部を報酬として受け取っていた。よく働き、人柄も良いサリバン夫妻は町中から好かれていた。
彼らの仕事を求める手は引く手数多。故に莫大な、とは言えないが一日の生活に充ててお釣りが出る程度には稼げていた。そのお釣りを積み重ね、長子が産まれる頃には十分な貯蓄が懐にあるようにした。砂漠の過酷な気候は時に幼子の命を奪う事もあったが、愛子達の死にめげる事なく貯めた資産で住居を改築。以降も子宝に恵まれ――ささやかながら、一家は幸せな生活を送っていた。
けれど安定はいつまでも続くとは限らない。
夫婦が堅実に計画を立て家族を守っていても、どうしようもない流れは存在する。それは事前に知る事も、知れたとして後戻りも対策も思うように立てられるとは限らないのだ。
明確にサリバン家が変わり始めた理由の一つが、サリバン夫人の四度目の出産だった。
胎の様子が長子達を出産していた時と似ていたので予兆はあったが、この度新しく産まれた子供は四人目ではなく四人目と五人目と六人目になった。
これにて――亡くなった子供を除き、三人の子供に加えて計六人の子供達。予期せぬ三つ子の誕生であったが、三度目と四度目の間が開いていた事も助かり当面は事足りる程度の貯蓄は備わっていた。
一番上の子供でもまだ六歳と目を離せない年頃ではあるが、足りなくなるであろう人手は近所の者に頼み込めば然したる問題はなかった。その長女も近場にある町長の家に赴いては読み書きを教わったり、見様見真似で家事を手伝ったり――と、後々親の代わりに家の仕事を任せても構わないくらいに育ってくれる事は目に見えていた。場合によっては収入源を少し増やして生活の足しにすれば……と当時は思っていた。
驚きはしたものの、当時こそは問題が問題になっていなかった。
もう一つの理由が重なりさえしなければ。
もう一つの理由は数年後――町が蛮族に襲撃された事だ。
砂漠の民を襲うのは過酷な環境だけではない。砂漠に出没する外敵やら蛮族達の強襲も、彼らの平穏な暮らしを脅かす一因となっていた。それらに滅ぼされた町や村も数知れず。この時は町民達の決死の抵抗と応援の冒険者達が間に合い壊滅的な被害には至らなかったが、それでも少なからず犠牲者が出た。
その中に人の子を持つ親もいた。
争いの結果生まれた七人の孤児達。砂漠地帯に孤児院なんて大層な施設はなく、王都に行けば見つかるだろうがそこまで向かうのも遠い。ならば何処かの家で引き取るのが一番良いという事になったが、引き取り先として申し出たのがサリバン夫妻だった。それも全員を。
当然彼らの生活状態を鑑みて集落の大人達は引き留めようとした。
夫妻はその言葉一つ一つを真摯に受け止めそれでも、と気持ちは変えなかった。曰く「親を亡くした子供から友人を引き離して、更に孤独を深めてはならない」と。
年齢は一番上が十で下が二つとバラバラだが、七人の子供達は皆友人同士であり――そしてサリバンの子供達とも仲睦まじく過ごしていたのだ。故に仲良しの両親の下で皆一緒に暮らせる事を喜んだ。
「今日からこの子達もあなたの兄弟よ」
と、親から経緯を語られた長女も同じくらい喜んだ。
元から同じ町で住み、一日中遊び通す事さえあるような仲間達なのだ。そんな気心の知れた友達と本物の兄弟になれるなんて! この時のエルシーはそんな楽観的な感情ばかりを持っていた。
●
孤児となった子供達が家族に加わり暫くして、エルシーは漸く家族が増えるという事は決していい事ばかりではないと思い知った。
「おねえちゃん、パパとママは?」
「もうすぐ商談……えーと、お仕事が終わって帰ってくると思うよ!」
「そっか。はやくパパとママに会いたいな」
「ぼくも」
「……そうだね。私も早く会いたいね」
「おねえちゃん。おなかすいたー」
「あー、はいはい! 用意してるから待ってね」
両親の帰りを待つ妹の頭を優しく撫で、「ご飯を食べようね」と促した。
幼い子供ほど興味を移すのが速い。……しかし、それは間を置けば再発するという事である。エルシーと同年代の兄弟も言葉にこそ出さないが、内心同じ事を想っているだろう。
十三人兄弟姉妹になってからのサリバン家は長女のエルシーが年長の兄弟達を纏め、家事や弟妹の面倒を見る体制を築き上げていた。最初こそ大人が手伝いに入っていたが子供達は物覚えも良く、すぐに子供達だけで家を回せる程度に成長した。親に頼らない互助的な暮らしは子供達の自立に役立っていたようで。
特にエルシーの成長は目覚ましいものだった。彼女は兄弟達を率いて家の一切を取り仕切る事を苦に思ってはいなかった。寧ろ、両親の現状を問題視していた。
嘗ては父が出稼ぎに向かったり、母が工芸に籠り切りになっても子供達に構う時間を確保してくれていた。けれど兄弟が一気に倍以上に増えてからは皆を養っていくために、両親共々家を空けて数日は帰って来ない状態がありふれた事になってしまった。
同世代の子供達と遊ぶのは楽しい。しかし両親も家族の一員だ。その家族と過ごせない事がどんなに寂しい事か。
家族全員のために両親が仕事を増やす事は仕方がない。それは理解できてもどうにかならないものか――。
(私も働いてお金を稼げるようになれば、お父さんとお母さんの負担を減らせるようにならないかな?)
エルシーはまだ十を超えて少しの子供だ。普通なら働くにはまだ早い……と言われるような年頃だが、彼女には授恵者としての素質があった。
授恵者は例え子供であっても、大人と変わらない戦闘能力を発揮する事ができる。若い冒険者がバルバロイを容易く倒してみせた姿は、彼女の記憶に焼き付いている。つまり、彼女も同じ事ができる。大人の中に混ざって働き、食い扶持を作る事ができるのだ。
●
「――だから、これからは私も働きたいの」
エルシーの申し出に母は驚いた。しっかりした子だと思ってはいたが、ここまで責任感を負わせてしまうとは……。
娘の成長を喜ぶよりも、ここまで追い込んでしまった不甲斐なさを歯痒く思った。
「エル、あの子達を引き取るのはお母さん達が決めた事よ。あなたが背負う必要はないわ」
「でも、家族でしょ? 家族なら助け合わないと。私はお母さんとお父さんの役に立ちたいよ」
エルシーの決意は固い。確かに娘の言う通り、親が揃って働きに出なければ家計は立ち行かなくなる。それに両親の負担を子供が引き受けてくれれば、その分親子で暮らせる時間を取れるようになる。
彼女の提案を呑めば大助かりなのだろう――しかし母は目を伏せ、自分が彼女と同じくらいの年頃の時はどうだったか思い出した。
砂漠での暮らしは決して楽ではない。あまり自由のない暮らしだったが、それでも思うように過ごして自分のやりたいように選択できていた記憶がある。
しかし、エルシーはどうだろうか。聞けばあれほど仲の良かった幼馴染とも遊ばなくなっていると言う。家の事ばかりを考えて、彼女自身を疎かにさせてはいないだろうか。
自由のない、家族のための道具にさせてはいないだろうか。
未来ある若者がそうなってしまうのは、最も忌むべき事態だ。
「……あなたの気持ちはとても嬉しいわ。でもね、エルは自由に生きて欲しいの。お父さんだって同じ気持ちのはず。
世界を見て、力を付けて……私達の力に成るのはそれからの方が嬉しいわ」
「でも……それを待っている時間は……」
「急いではダメ。今は、自分を伸ばす時なのよ」
そう言って、母は愛娘の頭を優しく撫でた。
●
親が諭しても、素直に聞けないのが子供心だ。
しかしエルシーに母の言葉は届いていた。家族のために稼ぐのではなく、稼ぐついでに世界を見て回るため。彼女の中で元から決めていた方針は切り替わりつつあった。
冒険者となって、家族の生活費を稼ごう。
色んな依頼を受けて、世界を回って色んな事を見に行こう。
家族に言えば「そんな危ない事を」と止められてしまいそうだから、唯一人にだけ話そうとした。エルシーはその子と久しぶりに会う事になる。
不安も多少はあったが、それよりも興奮が勝った。彼女の話を聞いてどんな顔をしてくれるだろうか?
「――――ハル!」
小さな時から一緒に過ごしていた、少し年上の幼馴染。
家族が増えた頃から、彼女が自分を避けるようになったのは感じていた。忙しさにかまけてもう一度向き合う機会を得られずに、そのまま疎遠になっていた。
実は嫌われていて、だから避けられているのだとしても。何も話さず「さよなら」するよりかは断然マシだと。
その子は最近、町外れで姿を見せるらしい。まるで人目を避けているかのように。
砂漠の太陽は眩しい。あの子の姿は蜃気楼の中に揺らいで消えそうだった。エルシーはその影をはっきりと視界に捉え、もう一度その名前を呼んだ。