卓上遊戯と心を満たす贈り物
キャラクターノベル制作 空色みなも納品 2022年02月21日 11時40分02秒
●
温かい冬の贈り物。
それは私の心を隙間なく満たしてくれる――。
●
「ふんふふ~ん♪ ふんふふ~ん♪」
都市国家リブラネスタの隅っこ、パン屋『ミュラース』の店内で。
鼻歌の聞こえる先を追って厨房を見れば、店の主たるルアンナ・ミュラーが麺棒でクッキー生地を伸ばしていた。
生地が綺麗な平らになったと見たルアンナは、抜き型を手にポンポンポン、と次々ハートを生み出していく。
型を抜いて余った生地を軽くまとめて、再び伸ばし。
今度は結んだリボンの形に生地を抜く。
「ふふ、綺麗に焼けました」
それらの生地を丁寧に焼き上げ、きつね色の仕上がりに満足そうな様子を見せるルアンナ。
香り立つクッキーをしばらく冷まし、人肌ほどのぬくもりになったところで。
渡す相手に自身のぬくもりが伝わるように、ルアンナはクッキーにアイシングを施す。
貰った人の心が満たされるようにとの、願いを込めて。
ルアンナは固めのアイシングで縁取りをしたところへ、柔らかめのアイシングを満たしていく。
「あとは乾かせば完成ですね♪」
そうしてルアンナが見渡すテーブルに、彩り豊かなアイシングクッキーがズラリと並んだのだった。
●
カランカラン――とベルの音。
「いらっしゃ――おっと、ルアンナじゃないか」
「こんにちは、ユーリ。また来ちゃいました♪」
ユーリ・トレーガーが自ら店主を務める卓上遊戯喫茶で、来客の気配に振り向くと。
入口に立っていたのは、冬の装いに身を包んだルアンナだった。
見れば、ルアンナの手にはリボンでラッピングされた箱が収まっている。
「おい、クラウス、ミア――って、あいつらどこへ行ったんだ」
接客を命じようと店員たちの姿を探したユーリだったが、近くに見当たらないので頭を掻いている。
「これは面白いものが見られそうですね」
「ええ、今日にも何か進展があるといいですねー」
その探されていた二人はというと、店の奥に引っ込んでユーリたちの様子をにやけ顔で見守っていた。
そういうわけで、ユーリとルアンナは実質、店内に二人きりで過ごすことになる。
「まあ、あいつらのことはいいか。それでルアンナ、今日は?」
そう問いながらも、ユーリの視線は自然とルアンナが手に持った箱へと落ちる。
ユーリは何かを期待してか、実にソワソワと落ち着かない様子だ。
「今日はこれをお渡しに来ました! 日頃のお世話に感謝を込めて!」
はいどうぞ、と言ってルアンナは手にした箱をユーリへと押し出した。
それをユーリがしっかりと受け取ったのを確認してから、ルアンナの手が箱から離れる。
「うん、こちらこそ礼を言おう――ありがとう。さっそく開けても?」
ユーリに尋ねられ、ルアンナがこくりと小さく頷いた。
それを見たユーリは箱をテーブルに置き、結わかれたリボンをスルスルとほどいていく。
「ほおー……」
露わになった箱の中身を見て、ユーリの口から思わず感嘆の息が漏れる。
箱に入っていたのは、ルアンナが店で作って来たアイシングクッキーであった。
それも、ハート型に焼き上げられたものが所狭しと詰め込まれている。
「これ、ルアンナが作ったのか。いや、凄いな」
「はい♪」
ユーリに感心されたと見て、ルアンナも上機嫌なようだ。
そして何より、貰った側のユーリである。
気になるルアンナが、ユーリのために時間をかけてハートのクッキーを作ってくれた。
この事実に、ユーリのハートも高鳴るばかり。
「それと……これはクラウスさんとミアさんへ渡しておいてください。今、いらっしゃらないようなので」
「って、うん、ああ、そうだよな……分かった。これは僕からあいつらに渡しておこう」
するとルアンナが手提げ鞄からもう二つの箱を取り出したので、ユーリはちょっと残念そうに肩を落としていた。
しかしユーリがクッキーを独り占めできなかったとはいえ、贈り物を貰えてとても嬉しいことに変わりはない。
そして、ユーリはまだ知らない。
店員二人に贈られたクッキーは、リボンの形であることを。
「そうだ、ここで一個いただいてみてもいいだろうか?」
「もちろんです!」
せっかく貰ったクッキーを早く味見したくてうずうずしていたユーリは、ルアンナの許可を取ってクッキーを口許へ運ぶ。
クッキーのハートがユーリの口に入るのを、ワクワクと目を輝かせて見守るルアンナ。
ユーリの口の中で、クッキーがサクリと音を立ててほどけた。
ふわりと漂う小麦粉の香りと甘さ。
「……美味い」
「気に入って頂けたようでよかったです!」
ユーリの呟きを聞いて、ルアンナはほっとした様子で胸を撫で下ろす。
普段からパンを焼いていることもあり製菓には自信があったものの、なんだかんだでルアンナにも緊張があったようだ。
「これは何かお返しを贈らないわけにはいかないな。何がいいだろうか」
「あっ、そのように気を使わせたいわけではっ」
ユーリがふむと考え込んだのを見て、ルアンナは慌てて顔の前でパタパタと両手を振っている。
「僕がそうしたいんだ、そうさせてくれ。とはいえ何にすればいいか決めてるわけではないから、そこは待ってほしい」
「……分かりました。そういうことなら、楽しみにさせて頂きますねっ」
ユーリの決意が固いのを悟ってか、ルアンナは笑顔で返すことにした。
結局のところ、親しい人から贈り物を貰えれば嬉しいのはルアンナも一緒なのだ。
「そして折角、ここへ来たんだ。やっていくんだろう?」
「もちろん! 一緒に遊びましょう!」
ユーリに促され、ルアンナは一緒に二人用遊戯が収められた棚を物色する。
キラキラした瞳で遊戯の箱の列をなぞるルアンナの横顔を、ユーリも温かい光が宿った目で眺めていた。
●
「僕は81マスのうち空きマスが10マス。勝利点から20点を引いて、最終8点だな」
「こちらは空きマスが……8マス。ということはマイナス16点で、他の勝利点を加えれば25点です♪」
ユーリとルアンナは対面で席に着き、間のテーブルには遊戯に使うボードが広げられていた。
二人それぞれの前には縦横9マスずつの正方形のボードがあり。
さらにその間に、進行を管理するために使うと思われるボードが置いてある。
中央のボードの周りにはわずかばかり、様々な形のタイルが残されており。
そこから集めたと思われるタイルが個人ボードに隙間――はあるが、敷き詰めようとするように並べられていた。
その他、おそらく点数を表すためであろう。
二人の手許にはチップの山ができている。
「いや、参った。先に大きさ7の正方形を作られたのもそうだが、終始ペースを握られてしまったな」
「私の勝ちですね。やっぱり、このパズルみたいに隙間なく並べようとするのが頭を使いますが、それが楽しいです」
ユーリが両手を上げて降参の意を示す。
それを見ているルアンナはただ静かに微笑んでいた。
「僕のボードは隙間だらけだが、それでも満ち足りた時間だった……ん?」
「どうしました?」
ユーリがふとボードを見つめて考え込む様子を見せたので、ルアンナは不思議そうにきょとんとした顔をする。
「こうして断片を繋いで……ああ、いや。少し思いついたことがあってね。そのうち分かるから、楽しみにしておいてくれたまえ」
「えー、今は教えてくれないんですか?」
ユーリがもったいぶるものだから、焦らされたルアンナは頬を膨らませてみせる。
「それより、次の遊戯をやらないか? また面白いのが入荷してね」
「あ、やりますやります!」
しかしユーリがさらなる遊戯に誘うと、ルアンナはあっという間に機嫌を直したのだった。
●
「やあ、ルアンナ」
「いらっしゃい、ユーリ。今日も喫茶のサンドイッチに使うパン、焼けてますよ♪」
後日、今度はユーリがルアンナの店――『ミュラース』を訪ねていた。
「ああ、それもあるんだが、今日は君に贈り物があってね」
そう言ってユーリは綺麗にラッピングされた箱を差し出した。
「わあ――ありがとうございます!」
「この前、約束したお返しだ。開けてみてくれたまえ」
それを受け取ったルアンナが太陽のごとく表情を輝かせると、ユーリが箱の中身を見るよう促す。
「これは……帽子? でも色々な模様の布が継いでありますね――可愛いです!」
ルアンナが箱から取り出したのは、様々な布を継ぎ合わせて作られた帽子だった。
そう、いわゆるパッチワークというやつだ。
「これ、もしかしてユーリが?」
「ああ、君からは手作りのクッキーを貰ったからな。不器用ながら、頑張って作らせて貰った」
ルアンナが手許の帽子からちらりとユーリを見上げると、ユーリは気恥ずかしそうに頭を掻いていた。
「だいぶミアに教えて貰いながらになったが……作業自体は全部、僕がやった。その、気に入って貰えただろうか」
「それはもう、気に入りましたとも!」
ユーリから貰った帽子を、ルアンナは大事そうにぎゅっと抱える。
「さっそく被ってみますね――どうですか?」
「ああ、とてもよく似合っている」
帽子はルアンナの頭にぴったりとフィット。
ユーリもそれを見て自分の作品に間違いが無かったことに安心したようで、深い息を吐いている。
なにより、可愛らしい帽子を被ったルアンナに見惚れてしまった、ということもあるかもしれない。
「私も鏡で見てみましょう。わあ――」
ルアンナはアーモンドの花模様が裏面にあしらわれた手鏡を持ち出してきて、頭のあたりを映していた。
鏡面に顔が映されたことにより、ルアンナは自身の表情がとてもほころんでいることも自覚することになる。
「もう一度、ありがとうを言いますね、ユーリ。大切にします!」
「ああ、そうしてくれると僕も嬉しい」
ルアンナとユーリの心は今、隙間なく満たされていると言っていいだろう。
その二人を繋ぎ合わせた卓上遊戯に、今一度の感謝を――。
温かい冬の贈り物。
それは私の心を隙間なく満たしてくれる――。
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「ふんふふ~ん♪ ふんふふ~ん♪」
都市国家リブラネスタの隅っこ、パン屋『ミュラース』の店内で。
鼻歌の聞こえる先を追って厨房を見れば、店の主たるルアンナ・ミュラーが麺棒でクッキー生地を伸ばしていた。
生地が綺麗な平らになったと見たルアンナは、抜き型を手にポンポンポン、と次々ハートを生み出していく。
型を抜いて余った生地を軽くまとめて、再び伸ばし。
今度は結んだリボンの形に生地を抜く。
「ふふ、綺麗に焼けました」
それらの生地を丁寧に焼き上げ、きつね色の仕上がりに満足そうな様子を見せるルアンナ。
香り立つクッキーをしばらく冷まし、人肌ほどのぬくもりになったところで。
渡す相手に自身のぬくもりが伝わるように、ルアンナはクッキーにアイシングを施す。
貰った人の心が満たされるようにとの、願いを込めて。
ルアンナは固めのアイシングで縁取りをしたところへ、柔らかめのアイシングを満たしていく。
「あとは乾かせば完成ですね♪」
そうしてルアンナが見渡すテーブルに、彩り豊かなアイシングクッキーがズラリと並んだのだった。
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カランカラン――とベルの音。
「いらっしゃ――おっと、ルアンナじゃないか」
「こんにちは、ユーリ。また来ちゃいました♪」
ユーリ・トレーガーが自ら店主を務める卓上遊戯喫茶で、来客の気配に振り向くと。
入口に立っていたのは、冬の装いに身を包んだルアンナだった。
見れば、ルアンナの手にはリボンでラッピングされた箱が収まっている。
「おい、クラウス、ミア――って、あいつらどこへ行ったんだ」
接客を命じようと店員たちの姿を探したユーリだったが、近くに見当たらないので頭を掻いている。
「これは面白いものが見られそうですね」
「ええ、今日にも何か進展があるといいですねー」
その探されていた二人はというと、店の奥に引っ込んでユーリたちの様子をにやけ顔で見守っていた。
そういうわけで、ユーリとルアンナは実質、店内に二人きりで過ごすことになる。
「まあ、あいつらのことはいいか。それでルアンナ、今日は?」
そう問いながらも、ユーリの視線は自然とルアンナが手に持った箱へと落ちる。
ユーリは何かを期待してか、実にソワソワと落ち着かない様子だ。
「今日はこれをお渡しに来ました! 日頃のお世話に感謝を込めて!」
はいどうぞ、と言ってルアンナは手にした箱をユーリへと押し出した。
それをユーリがしっかりと受け取ったのを確認してから、ルアンナの手が箱から離れる。
「うん、こちらこそ礼を言おう――ありがとう。さっそく開けても?」
ユーリに尋ねられ、ルアンナがこくりと小さく頷いた。
それを見たユーリは箱をテーブルに置き、結わかれたリボンをスルスルとほどいていく。
「ほおー……」
露わになった箱の中身を見て、ユーリの口から思わず感嘆の息が漏れる。
箱に入っていたのは、ルアンナが店で作って来たアイシングクッキーであった。
それも、ハート型に焼き上げられたものが所狭しと詰め込まれている。
「これ、ルアンナが作ったのか。いや、凄いな」
「はい♪」
ユーリに感心されたと見て、ルアンナも上機嫌なようだ。
そして何より、貰った側のユーリである。
気になるルアンナが、ユーリのために時間をかけてハートのクッキーを作ってくれた。
この事実に、ユーリのハートも高鳴るばかり。
「それと……これはクラウスさんとミアさんへ渡しておいてください。今、いらっしゃらないようなので」
「って、うん、ああ、そうだよな……分かった。これは僕からあいつらに渡しておこう」
するとルアンナが手提げ鞄からもう二つの箱を取り出したので、ユーリはちょっと残念そうに肩を落としていた。
しかしユーリがクッキーを独り占めできなかったとはいえ、贈り物を貰えてとても嬉しいことに変わりはない。
そして、ユーリはまだ知らない。
店員二人に贈られたクッキーは、リボンの形であることを。
「そうだ、ここで一個いただいてみてもいいだろうか?」
「もちろんです!」
せっかく貰ったクッキーを早く味見したくてうずうずしていたユーリは、ルアンナの許可を取ってクッキーを口許へ運ぶ。
クッキーのハートがユーリの口に入るのを、ワクワクと目を輝かせて見守るルアンナ。
ユーリの口の中で、クッキーがサクリと音を立ててほどけた。
ふわりと漂う小麦粉の香りと甘さ。
「……美味い」
「気に入って頂けたようでよかったです!」
ユーリの呟きを聞いて、ルアンナはほっとした様子で胸を撫で下ろす。
普段からパンを焼いていることもあり製菓には自信があったものの、なんだかんだでルアンナにも緊張があったようだ。
「これは何かお返しを贈らないわけにはいかないな。何がいいだろうか」
「あっ、そのように気を使わせたいわけではっ」
ユーリがふむと考え込んだのを見て、ルアンナは慌てて顔の前でパタパタと両手を振っている。
「僕がそうしたいんだ、そうさせてくれ。とはいえ何にすればいいか決めてるわけではないから、そこは待ってほしい」
「……分かりました。そういうことなら、楽しみにさせて頂きますねっ」
ユーリの決意が固いのを悟ってか、ルアンナは笑顔で返すことにした。
結局のところ、親しい人から贈り物を貰えれば嬉しいのはルアンナも一緒なのだ。
「そして折角、ここへ来たんだ。やっていくんだろう?」
「もちろん! 一緒に遊びましょう!」
ユーリに促され、ルアンナは一緒に二人用遊戯が収められた棚を物色する。
キラキラした瞳で遊戯の箱の列をなぞるルアンナの横顔を、ユーリも温かい光が宿った目で眺めていた。
●
「僕は81マスのうち空きマスが10マス。勝利点から20点を引いて、最終8点だな」
「こちらは空きマスが……8マス。ということはマイナス16点で、他の勝利点を加えれば25点です♪」
ユーリとルアンナは対面で席に着き、間のテーブルには遊戯に使うボードが広げられていた。
二人それぞれの前には縦横9マスずつの正方形のボードがあり。
さらにその間に、進行を管理するために使うと思われるボードが置いてある。
中央のボードの周りにはわずかばかり、様々な形のタイルが残されており。
そこから集めたと思われるタイルが個人ボードに隙間――はあるが、敷き詰めようとするように並べられていた。
その他、おそらく点数を表すためであろう。
二人の手許にはチップの山ができている。
「いや、参った。先に大きさ7の正方形を作られたのもそうだが、終始ペースを握られてしまったな」
「私の勝ちですね。やっぱり、このパズルみたいに隙間なく並べようとするのが頭を使いますが、それが楽しいです」
ユーリが両手を上げて降参の意を示す。
それを見ているルアンナはただ静かに微笑んでいた。
「僕のボードは隙間だらけだが、それでも満ち足りた時間だった……ん?」
「どうしました?」
ユーリがふとボードを見つめて考え込む様子を見せたので、ルアンナは不思議そうにきょとんとした顔をする。
「こうして断片を繋いで……ああ、いや。少し思いついたことがあってね。そのうち分かるから、楽しみにしておいてくれたまえ」
「えー、今は教えてくれないんですか?」
ユーリがもったいぶるものだから、焦らされたルアンナは頬を膨らませてみせる。
「それより、次の遊戯をやらないか? また面白いのが入荷してね」
「あ、やりますやります!」
しかしユーリがさらなる遊戯に誘うと、ルアンナはあっという間に機嫌を直したのだった。
●
「やあ、ルアンナ」
「いらっしゃい、ユーリ。今日も喫茶のサンドイッチに使うパン、焼けてますよ♪」
後日、今度はユーリがルアンナの店――『ミュラース』を訪ねていた。
「ああ、それもあるんだが、今日は君に贈り物があってね」
そう言ってユーリは綺麗にラッピングされた箱を差し出した。
「わあ――ありがとうございます!」
「この前、約束したお返しだ。開けてみてくれたまえ」
それを受け取ったルアンナが太陽のごとく表情を輝かせると、ユーリが箱の中身を見るよう促す。
「これは……帽子? でも色々な模様の布が継いでありますね――可愛いです!」
ルアンナが箱から取り出したのは、様々な布を継ぎ合わせて作られた帽子だった。
そう、いわゆるパッチワークというやつだ。
「これ、もしかしてユーリが?」
「ああ、君からは手作りのクッキーを貰ったからな。不器用ながら、頑張って作らせて貰った」
ルアンナが手許の帽子からちらりとユーリを見上げると、ユーリは気恥ずかしそうに頭を掻いていた。
「だいぶミアに教えて貰いながらになったが……作業自体は全部、僕がやった。その、気に入って貰えただろうか」
「それはもう、気に入りましたとも!」
ユーリから貰った帽子を、ルアンナは大事そうにぎゅっと抱える。
「さっそく被ってみますね――どうですか?」
「ああ、とてもよく似合っている」
帽子はルアンナの頭にぴったりとフィット。
ユーリもそれを見て自分の作品に間違いが無かったことに安心したようで、深い息を吐いている。
なにより、可愛らしい帽子を被ったルアンナに見惚れてしまった、ということもあるかもしれない。
「私も鏡で見てみましょう。わあ――」
ルアンナはアーモンドの花模様が裏面にあしらわれた手鏡を持ち出してきて、頭のあたりを映していた。
鏡面に顔が映されたことにより、ルアンナは自身の表情がとてもほころんでいることも自覚することになる。
「もう一度、ありがとうを言いますね、ユーリ。大切にします!」
「ああ、そうしてくれると僕も嬉しい」
ルアンナとユーリの心は今、隙間なく満たされていると言っていいだろう。
その二人を繋ぎ合わせた卓上遊戯に、今一度の感謝を――。