結果にコミットしなはれや
キャラクターノベル制作 革酎納品 2022年02月06日 11時20分44秒
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ロモズ歩兵団の現本拠地であるカルケルーア・ロモズは山岳集落群である為、冬場の厳しさは平地の比ではない。
兎に角雪が多く、冬の朝晩に於ける気温の低さはちょっとした極寒地方並みである。
その分、各家屋の断熱構造や暖房設備はいずれも完璧に近い形で行き届いており、屋内で生活する分には何の支障も無い。
そして連日の降雪で雪かき風景がすっかり日常となってしまったある日、ロモズ歩兵団遊兵5番隊長アルマ・ヴァレンタインは突然何を思ったか、ブートキャンプをやろうといい出した。
「美味い食事と適度な運動で、皆を鍛えよう」
その日、歩兵団各隊の日々の定期訓練を終えたところで、アルマは執務室に戻るなり、副長のカミールを捕まえて朗らかに宣言した。
一体何のことかと目を白黒させるカミールに対し、アルマは屋外での行動が制限されている今だからこそ、本来目を背けてはいけない部分に焦点を当てようというのである。
「隊長さぁや、要するに何ぃどげするんですかね?」
ここ最近、他の隊員達との交流も増えて随分と訛りが収まってきたカミール。発音や語尾といったところでまだまだ微妙な違いが残っているものの、普通に日常会話を交わすだけなら、以前とは比べ物にならない程に聞き取り易くなっていた。
そのカミールが、久々に地元訛り丸出しでアルマに問い返した。それ程に驚いた、ということだろう。
問われたアルマは、遊兵5番隊の定期訓練結果表を卓上に差し出した。そこには各隊員の成績が比較形式で記載されている。
カミールは尚も不思議そうな様子で、アルマが指し示す数値の羅列をじっと覗き込んだ。
「あー、これだけじゃあ分からないか……んじゃ、他の隊の分も見せるね」
アルマは事務局から借りてきた他隊の成績表を隣に置いて、カミールに比較させた。ここで漸くカミールも合点がいった様子で、何度も頷いている。
要するに、遊兵5番隊員の訓練成績が他隊に比べると、余り芳しくなかったのだ。いい換えれば、色々な部分で劣っている点が多いということである。
これは流石に隊長アルマとしても見過ごす訳にはいかなかった。
●
一体何が原因で、遊兵5番隊の成績が落ち込む様になったのだろうか。訓練メニューそのものは各隊共通であり、どの隊も殊更に何か特別なことをしている訳ではない。
「主に基礎体力面での成績が落ち込んじょっちゅうがかぁ」
カミールの何げないひと言に、アルマは瞳を煌めかせた。そこが問題だ、と漸く気づいたのである。
「基礎体力が疎かになってたら全ての技術面に悪影響が出る……うーん、こんな初歩的なところを見落とすたぁねぇ」
ここでアルマは、遊兵5番隊の日頃の食事メニューを提出させた。ロモズ歩兵団では食材や物資に関わることは全て、記録に残されている。当然、各隊で独自に設定している献立も情報として文書化されていた。
アルマとカミールは、卓上に広げられたここ半年の自隊食事メニューに愕然とした。
「な……何じゃこりゃあ」
思わずそんな呟きが口を衝いて飛び出してしまう程に、惨憺たる内容だった。
「こりゃあ……半分ぐりゃあがジャンクフードみたいなもんじゃなぁ」
流石のカミールも、呆れて口がふさがらない。
特に目立ったのがピザ、芋の素揚げ、菓子パン、麺類の類であり、野菜や蛋白質が極端に少ない。これでは体力不足に陥るのも、時間の問題であった。
「うぅ~ん……何でこんな偏食になっちゃったのかなぁ」
「そらぁやっぱり、隊長さぁのゲテモノ料理がショックやったんじゃなかろかね」
カミールからの思わぬひと言に、アルマはその場で凍り付いてしまった。
もしかして、隊の基礎体力低下にはアルマ自身にも原因の一端が隠されていたというのだろうか。だが確かに今思い返してみると、隊長就任当初の頃はアルマもかなり好き勝手に、自分好みの料理で舌鼓を打っていた時期がある。
思わず天井を仰ぎ、やっちまったぁと額に手を当てた。
「こりゃあボク自身の反省も込めて、皆に美味しく食べて貰えるちゃんとした料理を振る舞わなきゃなぁ」
アルマは己の料理指向を改めると同時に、隊員達の食育過程の見直しにも力を入れることにした。
●
翌日から、遊兵5番隊の日々の食事メニューが全面的に見直されることとなった。
アルマは卓越した料理技術に加え、自身の医学と薬学知識を三食の献立にそれとなく取り入れ、隊員達の体力向上を図ることとした。
そして運動面に関してはカミールにひと通りの指導方法を伝授し、副長主導での生活改善に取り組む運びとなったのだが、その前に、体質改善ビフォーアフターをやろう、という話になった。
ピックアップされたのは、ここ一カ月程で随分と体重が増えてしまった中年隊員。彼の腹回りは悲惨な程に、どっしりとした脂肪がこびりついていた。
「さぁ皆、よぉーく見ておくんだよ。これが今の彼、結果にコミットする前のおデブさんだからね」
何故か回転する小舞台の上に乗せられ、重低音が特徴的なBGMが流れる奇妙な空間がそこにあった。
さらし者にされた中年太りの隊員は、しょんぼりした表情で遊兵5番隊員達からの悲哀に満ちた視線を一身に集めている。
だが、ここからがスタートだ。ここで落ち込んでいる場合ではない。
アルマ式ブートキャンプ、名付けてアルザップの開始が高らかに宣言された。
とはいっても、変にスパルタ式の厳しいトレーニングを課すという訳ではない。要は毎日の食事で栄養バランスをしっかり管理し、適切な運動量で基礎体力を向上しようというだけの話である。
外は雪、それも気温は路面が凍り付いてしまう程の寒さだ。そんな中で体を動かしたところで、腹回りにこびりついた脂肪を燃焼させられる筈も無い。
アルマはロモズ歩兵団の屋内訓練場を利用することにした。ここなら何箇所か置きに設置された暖炉でしっかり温度調整が取られており、寒さに凍えることも無く、安心して汗を流すことが出来る。
年齢の高い者はスクワットから入り、少しずつ負荷を増やしてゆく。逆に体力が有り余っている若い隊員は筋力トレーニングや短距離ダッシュ系の訓練で汗を流し始めていた。
尤も、訓練課程が穏やかだったのは最初の一週間までである。そこから先が、中々の地獄であった。
ある程度基礎体力の向上が見られ始めたところで、カミールは少しずつ負荷を増強していった。筋肉というものはもうこれ以上は無理、これが限界というところまで追い込んだところで、更にもう一段階の負荷をかけることで初めて、次なるステップへと進むことが出来る。
余裕を持たせてストップをかけてしまえば、筋肉は損傷しない為に自己再生しなくなるのだ。
「お前さんらぁ授恵者と違うけぇ、ここでよう鍛えとかんと後で泣きぃ見るでぇ」
カミールの檄に対し、誰ひとりとして文句をいう者は居ない。全てのロモズ歩兵団員は、これまでに発生した帝国内での騒乱で必ず一度は戦場を経験している。つまり彼ら自身、体力の喪失は即ち死を意味するという事実を本能で理解出来ているという訳だ。
だからこそ、カミールの指導にも音を上げずについてきている。
これはアルマとしても喜ぶべき光景であった。
そのアルマはゲテモノ喰いの悪食趣味を(少なくともここカルケルーア・ロモズ内では)しっかり改め、一般人が食しても普通に美味いといえる料理を供することに腐心した。
ここでは己の趣味嗜好よりも、隊の基礎体力向上に重きを置かなければならないのである。
そういう意味では、アルマもそれなりに頑張った。
●
そんなこんなで、一カ月が経過した。
遊兵5番隊の面々は以前と比較すると、随分肉体が引き締まって、顔つきもまぁまぁ精悍に見える様になっていた。
ここで再び、あの中年隊員の登場である。
この日も彼は回転式の小舞台の上に立ったが、今回は以前の様なしょんぼりとしたみすぼらしい姿などではなく、引き締まったボディを堂々と披露する笑顔一杯の晴れ姿だった。
背後に流れるBGMも明るい音色の、元気ハツラツなメロディーである。
アルザップは、結果にコミットしたという訳だ。
「うん、良かった良かった。皆、本当によく頑張ったよ」
ロモズ歩兵団の大会議室に部下を集め、アルマは笑顔を弾けさせた。実際、ここ数日の体力測定結果を見ても他隊と何ら遜色は無い。寧ろ、一部では遊兵5番隊が上回っている項目もある。
数字は嘘をつかない。遊兵5番隊は間違い無く、結果で応えてみせたのである。やれば出来るとは、まさにこのことだろう。
「ところで隊長さぁ、ひとつ良いスか」
カミールが変な半笑いを浮かべ、微妙な目つきでアルマの傍らにすり寄ってきた。
喜び一杯のアルマは、カミールの笑顔が意味するところが余りよく理解出来ていない。だがこの直後にカミールが放ったひと言は、中々に衝撃的だった。
「あんまりこんなこたぁいいたくねんだけど……隊長さぁ、ちょっと太りました?」
その瞬間、アルマの笑顔が凍り付いた。
まさか、そんな筈はない。アルマは授恵者なのだ、太ったりなど、そんな馬鹿なことが起きる筈が無い。
ところがアルマを見る隊員達の目は、決して笑ってはいなかった。
アルマは恐る恐る、自身の頬に触れてみた――そして、実感した。何だか以前よりも、随分ふっくらとした様な気がする。
次いで、自身の脇腹を軽く摘まんでみた。
その瞬間、喉の奥でほわぁぁぁと変な声が漏れた。
「隊長さぁ、美味い料理作ってくれんのはエエけど、毎回味見じゃあちゅうて、結構バクバク喰うてたもんねぇ……」
カミールの言葉が、全てだった。
アルマは隊員達の体力向上に意識を集中させる余り、己の体脂肪に全く無頓着となっていたのだ。
次はアルマ自身がアルザップに挑む番であった。
ロモズ歩兵団の現本拠地であるカルケルーア・ロモズは山岳集落群である為、冬場の厳しさは平地の比ではない。
兎に角雪が多く、冬の朝晩に於ける気温の低さはちょっとした極寒地方並みである。
その分、各家屋の断熱構造や暖房設備はいずれも完璧に近い形で行き届いており、屋内で生活する分には何の支障も無い。
そして連日の降雪で雪かき風景がすっかり日常となってしまったある日、ロモズ歩兵団遊兵5番隊長アルマ・ヴァレンタインは突然何を思ったか、ブートキャンプをやろうといい出した。
「美味い食事と適度な運動で、皆を鍛えよう」
その日、歩兵団各隊の日々の定期訓練を終えたところで、アルマは執務室に戻るなり、副長のカミールを捕まえて朗らかに宣言した。
一体何のことかと目を白黒させるカミールに対し、アルマは屋外での行動が制限されている今だからこそ、本来目を背けてはいけない部分に焦点を当てようというのである。
「隊長さぁや、要するに何ぃどげするんですかね?」
ここ最近、他の隊員達との交流も増えて随分と訛りが収まってきたカミール。発音や語尾といったところでまだまだ微妙な違いが残っているものの、普通に日常会話を交わすだけなら、以前とは比べ物にならない程に聞き取り易くなっていた。
そのカミールが、久々に地元訛り丸出しでアルマに問い返した。それ程に驚いた、ということだろう。
問われたアルマは、遊兵5番隊の定期訓練結果表を卓上に差し出した。そこには各隊員の成績が比較形式で記載されている。
カミールは尚も不思議そうな様子で、アルマが指し示す数値の羅列をじっと覗き込んだ。
「あー、これだけじゃあ分からないか……んじゃ、他の隊の分も見せるね」
アルマは事務局から借りてきた他隊の成績表を隣に置いて、カミールに比較させた。ここで漸くカミールも合点がいった様子で、何度も頷いている。
要するに、遊兵5番隊員の訓練成績が他隊に比べると、余り芳しくなかったのだ。いい換えれば、色々な部分で劣っている点が多いということである。
これは流石に隊長アルマとしても見過ごす訳にはいかなかった。
●
一体何が原因で、遊兵5番隊の成績が落ち込む様になったのだろうか。訓練メニューそのものは各隊共通であり、どの隊も殊更に何か特別なことをしている訳ではない。
「主に基礎体力面での成績が落ち込んじょっちゅうがかぁ」
カミールの何げないひと言に、アルマは瞳を煌めかせた。そこが問題だ、と漸く気づいたのである。
「基礎体力が疎かになってたら全ての技術面に悪影響が出る……うーん、こんな初歩的なところを見落とすたぁねぇ」
ここでアルマは、遊兵5番隊の日頃の食事メニューを提出させた。ロモズ歩兵団では食材や物資に関わることは全て、記録に残されている。当然、各隊で独自に設定している献立も情報として文書化されていた。
アルマとカミールは、卓上に広げられたここ半年の自隊食事メニューに愕然とした。
「な……何じゃこりゃあ」
思わずそんな呟きが口を衝いて飛び出してしまう程に、惨憺たる内容だった。
「こりゃあ……半分ぐりゃあがジャンクフードみたいなもんじゃなぁ」
流石のカミールも、呆れて口がふさがらない。
特に目立ったのがピザ、芋の素揚げ、菓子パン、麺類の類であり、野菜や蛋白質が極端に少ない。これでは体力不足に陥るのも、時間の問題であった。
「うぅ~ん……何でこんな偏食になっちゃったのかなぁ」
「そらぁやっぱり、隊長さぁのゲテモノ料理がショックやったんじゃなかろかね」
カミールからの思わぬひと言に、アルマはその場で凍り付いてしまった。
もしかして、隊の基礎体力低下にはアルマ自身にも原因の一端が隠されていたというのだろうか。だが確かに今思い返してみると、隊長就任当初の頃はアルマもかなり好き勝手に、自分好みの料理で舌鼓を打っていた時期がある。
思わず天井を仰ぎ、やっちまったぁと額に手を当てた。
「こりゃあボク自身の反省も込めて、皆に美味しく食べて貰えるちゃんとした料理を振る舞わなきゃなぁ」
アルマは己の料理指向を改めると同時に、隊員達の食育過程の見直しにも力を入れることにした。
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翌日から、遊兵5番隊の日々の食事メニューが全面的に見直されることとなった。
アルマは卓越した料理技術に加え、自身の医学と薬学知識を三食の献立にそれとなく取り入れ、隊員達の体力向上を図ることとした。
そして運動面に関してはカミールにひと通りの指導方法を伝授し、副長主導での生活改善に取り組む運びとなったのだが、その前に、体質改善ビフォーアフターをやろう、という話になった。
ピックアップされたのは、ここ一カ月程で随分と体重が増えてしまった中年隊員。彼の腹回りは悲惨な程に、どっしりとした脂肪がこびりついていた。
「さぁ皆、よぉーく見ておくんだよ。これが今の彼、結果にコミットする前のおデブさんだからね」
何故か回転する小舞台の上に乗せられ、重低音が特徴的なBGMが流れる奇妙な空間がそこにあった。
さらし者にされた中年太りの隊員は、しょんぼりした表情で遊兵5番隊員達からの悲哀に満ちた視線を一身に集めている。
だが、ここからがスタートだ。ここで落ち込んでいる場合ではない。
アルマ式ブートキャンプ、名付けてアルザップの開始が高らかに宣言された。
とはいっても、変にスパルタ式の厳しいトレーニングを課すという訳ではない。要は毎日の食事で栄養バランスをしっかり管理し、適切な運動量で基礎体力を向上しようというだけの話である。
外は雪、それも気温は路面が凍り付いてしまう程の寒さだ。そんな中で体を動かしたところで、腹回りにこびりついた脂肪を燃焼させられる筈も無い。
アルマはロモズ歩兵団の屋内訓練場を利用することにした。ここなら何箇所か置きに設置された暖炉でしっかり温度調整が取られており、寒さに凍えることも無く、安心して汗を流すことが出来る。
年齢の高い者はスクワットから入り、少しずつ負荷を増やしてゆく。逆に体力が有り余っている若い隊員は筋力トレーニングや短距離ダッシュ系の訓練で汗を流し始めていた。
尤も、訓練課程が穏やかだったのは最初の一週間までである。そこから先が、中々の地獄であった。
ある程度基礎体力の向上が見られ始めたところで、カミールは少しずつ負荷を増強していった。筋肉というものはもうこれ以上は無理、これが限界というところまで追い込んだところで、更にもう一段階の負荷をかけることで初めて、次なるステップへと進むことが出来る。
余裕を持たせてストップをかけてしまえば、筋肉は損傷しない為に自己再生しなくなるのだ。
「お前さんらぁ授恵者と違うけぇ、ここでよう鍛えとかんと後で泣きぃ見るでぇ」
カミールの檄に対し、誰ひとりとして文句をいう者は居ない。全てのロモズ歩兵団員は、これまでに発生した帝国内での騒乱で必ず一度は戦場を経験している。つまり彼ら自身、体力の喪失は即ち死を意味するという事実を本能で理解出来ているという訳だ。
だからこそ、カミールの指導にも音を上げずについてきている。
これはアルマとしても喜ぶべき光景であった。
そのアルマはゲテモノ喰いの悪食趣味を(少なくともここカルケルーア・ロモズ内では)しっかり改め、一般人が食しても普通に美味いといえる料理を供することに腐心した。
ここでは己の趣味嗜好よりも、隊の基礎体力向上に重きを置かなければならないのである。
そういう意味では、アルマもそれなりに頑張った。
●
そんなこんなで、一カ月が経過した。
遊兵5番隊の面々は以前と比較すると、随分肉体が引き締まって、顔つきもまぁまぁ精悍に見える様になっていた。
ここで再び、あの中年隊員の登場である。
この日も彼は回転式の小舞台の上に立ったが、今回は以前の様なしょんぼりとしたみすぼらしい姿などではなく、引き締まったボディを堂々と披露する笑顔一杯の晴れ姿だった。
背後に流れるBGMも明るい音色の、元気ハツラツなメロディーである。
アルザップは、結果にコミットしたという訳だ。
「うん、良かった良かった。皆、本当によく頑張ったよ」
ロモズ歩兵団の大会議室に部下を集め、アルマは笑顔を弾けさせた。実際、ここ数日の体力測定結果を見ても他隊と何ら遜色は無い。寧ろ、一部では遊兵5番隊が上回っている項目もある。
数字は嘘をつかない。遊兵5番隊は間違い無く、結果で応えてみせたのである。やれば出来るとは、まさにこのことだろう。
「ところで隊長さぁ、ひとつ良いスか」
カミールが変な半笑いを浮かべ、微妙な目つきでアルマの傍らにすり寄ってきた。
喜び一杯のアルマは、カミールの笑顔が意味するところが余りよく理解出来ていない。だがこの直後にカミールが放ったひと言は、中々に衝撃的だった。
「あんまりこんなこたぁいいたくねんだけど……隊長さぁ、ちょっと太りました?」
その瞬間、アルマの笑顔が凍り付いた。
まさか、そんな筈はない。アルマは授恵者なのだ、太ったりなど、そんな馬鹿なことが起きる筈が無い。
ところがアルマを見る隊員達の目は、決して笑ってはいなかった。
アルマは恐る恐る、自身の頬に触れてみた――そして、実感した。何だか以前よりも、随分ふっくらとした様な気がする。
次いで、自身の脇腹を軽く摘まんでみた。
その瞬間、喉の奥でほわぁぁぁと変な声が漏れた。
「隊長さぁ、美味い料理作ってくれんのはエエけど、毎回味見じゃあちゅうて、結構バクバク喰うてたもんねぇ……」
カミールの言葉が、全てだった。
アルマは隊員達の体力向上に意識を集中させる余り、己の体脂肪に全く無頓着となっていたのだ。
次はアルマ自身がアルザップに挑む番であった。