秋郊の出会い
キャラクターノベル制作 真柄 葉納品 2021年10月28日 12時26分58秒
木々の色付きに心躍らせ秋の道を往く。
道は黄色い絨毯で覆われ、歩く度にさくさくと小気味のいい音を響かせた。
「素敵な景色……」
隆盛を誇った『緑』は秋の訪れと共に黄や赤へ。
黄に染まった落葉が、少し冷たくなってきた風に吹かれて舞い上がった。
「あ……ありました。アケビ」
舞い踊る落ち葉を目で追っていたら、すぐ先に薄紫色の果実を見つけた。
小柄なミア=リゼルでも届きそうな場所に、膨らみ弾けた実が釣り下がっている。
ミアはつま先立ちで手を伸ばし、その実を幾つかもぎ取った。
「後は……」
地面に視線を落とせば、黄色く敷かれた絨毯の隙間からひょっこりと顔を出すキノコたち。
ミアはしゃがみ込むみ秋の味覚を摘んでいく。
「――ふぅ、これ位で大丈夫でしょうか」
籠一杯の秋の味覚を満足げに見下ろし、ミアは額に浮いた汗を拭う。
あの人の為に秋の色の濃い山へと踏み入り、沢山の味覚を頂戴した。
歩き慣れない山道に苦労したし、沢山汗もかいたけど、満足のいく成果を得る事が出来たのは、きっと運と天気に恵まれたせい。
「急いで帰りましょう」
木々の隙間から覗く秋の空には、少しだけ紅がさしている。
ミアは腕にかかる重みに微笑み、帰路を急いだ。
●
定宿の台所を借り、籠を机に置いた。
中を覗けば出会ったばかりの秋の味覚たちと再びご対面。
「早速、下拵えですね」
秋の味達が傷つかないように、優しく取り出して並べていった。
アケビ、栗、柿。キノコに銀杏――頭の中で料理の出来上がりを想像しながら、仕分けをするとても幸せな時間。
暖かな湯気を上げる料理の先にあの人の姿を想像すると、心まで温かくなる様な気がした。
「果物はデザートにして頂くとして――」
――もぞっ。
「ひあっ!?」
ミアが柿とアケビを一旦籠に戻そうとした時、視界に動くものを捉えて慌てて手を離した。
「も、もしかして、虫ですか……?」
ミアは恐る恐る床に転げ落ちたアケビに視線を落とす。すると――――。
「……え、違う。栗鼠……の子供?」
ぱっくりと割れたアケビの実に必死にしがみ付く小さな小さな命を見つけた。
虫ではない。もこもこの毛におおわれた小さな栗鼠に似た生物だ。
こんな生物は見た事がないし、聞いた事もない。きっと摘み取った秋の味覚のどれかにくっついて、籠の中に紛れ込んだのだろうけど――。
ミアは小さな命を捕まえようとゆっくりと手を伸ばし、恐る恐る触れてみた。
「あ……」
初めて見る小さな命は、弱々しく呼吸を繰り返している。
弱っている。
ヒーラーとしての勘だろうか。すぐにわかった。
ミアはアケビの実に必死にしがみ付く小さな命を、慎重に引き剥がすと掌に乗せる。
「……軽い。小さい」
まるで重さを感じない小さな命は、ミアの掌でぐったりと項垂れていた。
「大変……こんなに弱って……何とか、しないと」
ミアは小さな命を両手で優しく包み込むと、エーテルを練り上げヒールをかける。
治っていて、と願いをかけて掌を開いてみるが――。
「……変わってない、です」
小さな命に変化はなかった。
「他に何か……」
ミアは辺りをきょろきょろと見渡す。小さな動物なんて今まで飼った事がないから、どうすればいいのかわからない。知り合いに動物を診れるお医者様もいないから、相談する相手もいない。
もしかすれば記憶をなくす前に触れあった事があったのかもしれないけど、それも今はわからない。
「そうです、お水を……!」
ミアは立ち上がると水瓶へ急ぐ。揺らさないように慎重に。
お行儀は悪いが直接瓶に手を入れ指先を濡らすと、小さな命の口元へ運んだ。
「……な、舐めました」
最初はヒクヒクと鼻を揺らしていた小さな命が、ゆっくりと口を開け小さな舌でミアの指を舐める。
滴る水を何度も何度も懸命に舐めている小さな命が、ついに閉じていた瞳を開けた。
「大丈夫、ですか……?」
ミアが小さな命の瞳を覗き込むと、応えるようにチチチと鳴いた。
「あ、ご飯も」
返事をくれたのが嬉しくて、ミアは急いで机へ戻りアケビの実の柔らかい中身を指で掬って小さな命の口元へ運ぶ。
「食べて、くれました……」
水を飲んだ時と同じように、小さな舌でミアの手についた実を舐めとる小さな命。
「沢山食べてくださいね」
ミアは何度も口元にアケビの実を運び、小さな命も応えるように舐め続けた。
●
ミアの献身的な介護により、弱っていた小さな命はすっかり元気を取り戻す。
すっかり懐いてしまったこの小さな命を山に還さねばと迷った事もあったが、結局共に暮らすことを決意した。
後日、この動物の正体を調べると、『ヤマネ』という種類だとわかった。
そして、ミアはこの小さな命に命を繋いでくれた秋の恵みから名を貰い『アビ』と名付ける。
「アビさん、これからよろしくお願いします」
掌の上で鼻をヒクヒクと動かすアビに、ミアはにこりと微笑んだのだった。
道は黄色い絨毯で覆われ、歩く度にさくさくと小気味のいい音を響かせた。
「素敵な景色……」
隆盛を誇った『緑』は秋の訪れと共に黄や赤へ。
黄に染まった落葉が、少し冷たくなってきた風に吹かれて舞い上がった。
「あ……ありました。アケビ」
舞い踊る落ち葉を目で追っていたら、すぐ先に薄紫色の果実を見つけた。
小柄なミア=リゼルでも届きそうな場所に、膨らみ弾けた実が釣り下がっている。
ミアはつま先立ちで手を伸ばし、その実を幾つかもぎ取った。
「後は……」
地面に視線を落とせば、黄色く敷かれた絨毯の隙間からひょっこりと顔を出すキノコたち。
ミアはしゃがみ込むみ秋の味覚を摘んでいく。
「――ふぅ、これ位で大丈夫でしょうか」
籠一杯の秋の味覚を満足げに見下ろし、ミアは額に浮いた汗を拭う。
あの人の為に秋の色の濃い山へと踏み入り、沢山の味覚を頂戴した。
歩き慣れない山道に苦労したし、沢山汗もかいたけど、満足のいく成果を得る事が出来たのは、きっと運と天気に恵まれたせい。
「急いで帰りましょう」
木々の隙間から覗く秋の空には、少しだけ紅がさしている。
ミアは腕にかかる重みに微笑み、帰路を急いだ。
●
定宿の台所を借り、籠を机に置いた。
中を覗けば出会ったばかりの秋の味覚たちと再びご対面。
「早速、下拵えですね」
秋の味達が傷つかないように、優しく取り出して並べていった。
アケビ、栗、柿。キノコに銀杏――頭の中で料理の出来上がりを想像しながら、仕分けをするとても幸せな時間。
暖かな湯気を上げる料理の先にあの人の姿を想像すると、心まで温かくなる様な気がした。
「果物はデザートにして頂くとして――」
――もぞっ。
「ひあっ!?」
ミアが柿とアケビを一旦籠に戻そうとした時、視界に動くものを捉えて慌てて手を離した。
「も、もしかして、虫ですか……?」
ミアは恐る恐る床に転げ落ちたアケビに視線を落とす。すると――――。
「……え、違う。栗鼠……の子供?」
ぱっくりと割れたアケビの実に必死にしがみ付く小さな小さな命を見つけた。
虫ではない。もこもこの毛におおわれた小さな栗鼠に似た生物だ。
こんな生物は見た事がないし、聞いた事もない。きっと摘み取った秋の味覚のどれかにくっついて、籠の中に紛れ込んだのだろうけど――。
ミアは小さな命を捕まえようとゆっくりと手を伸ばし、恐る恐る触れてみた。
「あ……」
初めて見る小さな命は、弱々しく呼吸を繰り返している。
弱っている。
ヒーラーとしての勘だろうか。すぐにわかった。
ミアはアケビの実に必死にしがみ付く小さな命を、慎重に引き剥がすと掌に乗せる。
「……軽い。小さい」
まるで重さを感じない小さな命は、ミアの掌でぐったりと項垂れていた。
「大変……こんなに弱って……何とか、しないと」
ミアは小さな命を両手で優しく包み込むと、エーテルを練り上げヒールをかける。
治っていて、と願いをかけて掌を開いてみるが――。
「……変わってない、です」
小さな命に変化はなかった。
「他に何か……」
ミアは辺りをきょろきょろと見渡す。小さな動物なんて今まで飼った事がないから、どうすればいいのかわからない。知り合いに動物を診れるお医者様もいないから、相談する相手もいない。
もしかすれば記憶をなくす前に触れあった事があったのかもしれないけど、それも今はわからない。
「そうです、お水を……!」
ミアは立ち上がると水瓶へ急ぐ。揺らさないように慎重に。
お行儀は悪いが直接瓶に手を入れ指先を濡らすと、小さな命の口元へ運んだ。
「……な、舐めました」
最初はヒクヒクと鼻を揺らしていた小さな命が、ゆっくりと口を開け小さな舌でミアの指を舐める。
滴る水を何度も何度も懸命に舐めている小さな命が、ついに閉じていた瞳を開けた。
「大丈夫、ですか……?」
ミアが小さな命の瞳を覗き込むと、応えるようにチチチと鳴いた。
「あ、ご飯も」
返事をくれたのが嬉しくて、ミアは急いで机へ戻りアケビの実の柔らかい中身を指で掬って小さな命の口元へ運ぶ。
「食べて、くれました……」
水を飲んだ時と同じように、小さな舌でミアの手についた実を舐めとる小さな命。
「沢山食べてくださいね」
ミアは何度も口元にアケビの実を運び、小さな命も応えるように舐め続けた。
●
ミアの献身的な介護により、弱っていた小さな命はすっかり元気を取り戻す。
すっかり懐いてしまったこの小さな命を山に還さねばと迷った事もあったが、結局共に暮らすことを決意した。
後日、この動物の正体を調べると、『ヤマネ』という種類だとわかった。
そして、ミアはこの小さな命に命を繋いでくれた秋の恵みから名を貰い『アビ』と名付ける。
「アビさん、これからよろしくお願いします」
掌の上で鼻をヒクヒクと動かすアビに、ミアはにこりと微笑んだのだった。