エクレアさん、大激怒!
キャラクターノベル制作 おおくまねこ納品 2021年10月03日 13時27分56秒
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「今回のお仕事は楽しかったですね! また行きたいなあ」
小さくなっていく農園を見下ろしながら、レイヤ・ダライ=カホールは口元を綻ばせた。
彼女は今、フェイデン子爵領での依頼を終え、帰路についている途中である。流れる雲を間近で眺めたり、空から山々や街並みを見下ろすことができるのは、ビッグオウムに乗ることができる冒険者の特権だ。
「――こうして、少女は夢を叶え、空飛ぶ島に辿り着いたのです」
子供の頃に読んだ冒険譚をゴブリンの騎手に披露してみたりと、今日のレイヤはご機嫌であった。だが、家が近づくにつれ、だんだんと不安が膨れ上がる。依頼は大成功だったが、彼女には一つだけ気になることがあったのだ。
「やっちゃった……。エクレアさん、怒ってないといいんですが……」
エクレアとは、レイヤのペットである雌のミニベヒモー(家畜化された帝国原産の魔獣の一種)である。体毛はこげ茶色だが、背は黒い。名前の由来は古い言語で『稲妻』を意味するらしい。「決してシュー生地のお菓子ではありません」とはレイヤ本人の弁である。
レイヤは今回、ペットである魔獣ミニベヒモーのエクレアも連れて行き、農耕作業に従事する予定だった。しかし、当日の朝にうっかり寝坊してしまい、エクレアを置いて独りで出発してしまったのだ。
しかし、不思議なことに現地には謎のミニベヒモーが出没し、レイヤは予定通り牛耕をすることができた。ミニベヒモーとたっぷり戯れることができた(こき使われたとも言う)。レイヤはとても楽しかったが、置いていかれたエクレアは果たして許してくれるのか……。たぶん許してはくれない気がする。
「ただいま、エクレアさん……」
レイヤは恐る恐る自宅の扉を開けた。すると、玄関にでん、とエクレアが鎮座している姿が目に飛び込んできた。エクレアは機嫌がいい時ならば尻尾を振りながらレイヤへと近づいてくるのだが、今日のエクレアさんはそんな愛想の良い気配は微塵も感じられない。エクレアはそこはかとなく不機嫌そうな目で、レイヤを静かにじっと見つめているのであった。
「ごめんなさい! エクレアさん! 忘れてたわけではないんです、わたし、朝寝坊しちゃって」
レイヤはペコペコと頭を下げ、謝罪の言葉を口にした。すると、エクレアは「頭を垂れて平伏せよ」と言わんばかりの視線をレイヤへと向けてきた。エクレアは魔獣だが、とても賢い。人語をちゃんと理解しているんじゃないかと思われる素振りさえ見せる。レイヤがペットのエクレアにさん付けしているのは、エクレアは「さん」付けでないと名前を呼んでも反応しないからである。レイヤの心からの謝罪を、エクレアは座ったまま、黙って聞いていた(ように見えた)が、ふいにのそり、と体を起こした。そして、エクレアはクンクンと、レイヤの匂いを嗅ぐ。
ゴンッ。
「いたっ」
突然エクレアに頭突きされたレイヤは悲鳴を上げた。エクレアはふんっふんっと鼻息を荒くしながら、レイヤの脇腹へと頭突きを連発してきた。荒々しい仕草で抉り込むように打つべし、とでも言わんばかりにエクレアはレイヤの脇を執拗に攻める。丸い牛角が何度もレイヤのお腹に叩きつけられ、とても痛かった。
「エクレアさん、いたいです! 許して下さい!」
エクレアがあまりにしつこく頭突きを繰り返してくるので、レイヤはたまらず家の外へと逃亡した。するとエクレアは逃げたレイヤを追い、猛スピードで突進してきた。
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「エクレアさん、許して下さいー! わたしが悪かったですから! お土産もありますから!」
数分間追いかけまわされたレイヤが半泣きになりながらそう叫ぶと、エクレアはぴたりと動きを止め、スフィンクスのような佇まいでその場に座り込んだ。
レイヤは恐る恐る、農園でお土産にもらったトウモロコシの飼料を取り出した。エクレアが厳しい視線を注ぐ中、レイヤはお皿にトウモロコシを盛り、そっとエクレアに差し出す。
エクレアは無言で(しゃべるわけもないが)ボリボリとトウモロコシを平らげると、尻尾を振りながらレイヤを見つめてきた。
「あっ、おかわりですね! まだありますよ!」
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なんとかエクレアに機嫌を直すことに成功したレイヤはほっとしていた。エクレアはトウモロコシを食べ終えると、のそのそとレイヤの家へと帰っていく。
「エクレアさん、どこへ……?」
レイヤはきょとんとした様子で自宅の奥へと消えていくエクレアの様子を見守った。しばらくすると、エクレアはブラシを口にくわえて戻ってきた。そしてエクレアは首をぐいんと振りかぶり、勢いよくレイヤの足元へブラシを投げつけた!
「ブラッシングですね! はい、ただいま!」
果たしてどちらが主人なのだろうか。今日もエクレアさんは気位が高く、気高く尊大なペットなのであった。
「今回のお仕事は楽しかったですね! また行きたいなあ」
小さくなっていく農園を見下ろしながら、レイヤ・ダライ=カホールは口元を綻ばせた。
彼女は今、フェイデン子爵領での依頼を終え、帰路についている途中である。流れる雲を間近で眺めたり、空から山々や街並みを見下ろすことができるのは、ビッグオウムに乗ることができる冒険者の特権だ。
「――こうして、少女は夢を叶え、空飛ぶ島に辿り着いたのです」
子供の頃に読んだ冒険譚をゴブリンの騎手に披露してみたりと、今日のレイヤはご機嫌であった。だが、家が近づくにつれ、だんだんと不安が膨れ上がる。依頼は大成功だったが、彼女には一つだけ気になることがあったのだ。
「やっちゃった……。エクレアさん、怒ってないといいんですが……」
エクレアとは、レイヤのペットである雌のミニベヒモー(家畜化された帝国原産の魔獣の一種)である。体毛はこげ茶色だが、背は黒い。名前の由来は古い言語で『稲妻』を意味するらしい。「決してシュー生地のお菓子ではありません」とはレイヤ本人の弁である。
レイヤは今回、ペットである魔獣ミニベヒモーのエクレアも連れて行き、農耕作業に従事する予定だった。しかし、当日の朝にうっかり寝坊してしまい、エクレアを置いて独りで出発してしまったのだ。
しかし、不思議なことに現地には謎のミニベヒモーが出没し、レイヤは予定通り牛耕をすることができた。ミニベヒモーとたっぷり戯れることができた(こき使われたとも言う)。レイヤはとても楽しかったが、置いていかれたエクレアは果たして許してくれるのか……。たぶん許してはくれない気がする。
「ただいま、エクレアさん……」
レイヤは恐る恐る自宅の扉を開けた。すると、玄関にでん、とエクレアが鎮座している姿が目に飛び込んできた。エクレアは機嫌がいい時ならば尻尾を振りながらレイヤへと近づいてくるのだが、今日のエクレアさんはそんな愛想の良い気配は微塵も感じられない。エクレアはそこはかとなく不機嫌そうな目で、レイヤを静かにじっと見つめているのであった。
「ごめんなさい! エクレアさん! 忘れてたわけではないんです、わたし、朝寝坊しちゃって」
レイヤはペコペコと頭を下げ、謝罪の言葉を口にした。すると、エクレアは「頭を垂れて平伏せよ」と言わんばかりの視線をレイヤへと向けてきた。エクレアは魔獣だが、とても賢い。人語をちゃんと理解しているんじゃないかと思われる素振りさえ見せる。レイヤがペットのエクレアにさん付けしているのは、エクレアは「さん」付けでないと名前を呼んでも反応しないからである。レイヤの心からの謝罪を、エクレアは座ったまま、黙って聞いていた(ように見えた)が、ふいにのそり、と体を起こした。そして、エクレアはクンクンと、レイヤの匂いを嗅ぐ。
ゴンッ。
「いたっ」
突然エクレアに頭突きされたレイヤは悲鳴を上げた。エクレアはふんっふんっと鼻息を荒くしながら、レイヤの脇腹へと頭突きを連発してきた。荒々しい仕草で抉り込むように打つべし、とでも言わんばかりにエクレアはレイヤの脇を執拗に攻める。丸い牛角が何度もレイヤのお腹に叩きつけられ、とても痛かった。
「エクレアさん、いたいです! 許して下さい!」
エクレアがあまりにしつこく頭突きを繰り返してくるので、レイヤはたまらず家の外へと逃亡した。するとエクレアは逃げたレイヤを追い、猛スピードで突進してきた。
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「エクレアさん、許して下さいー! わたしが悪かったですから! お土産もありますから!」
数分間追いかけまわされたレイヤが半泣きになりながらそう叫ぶと、エクレアはぴたりと動きを止め、スフィンクスのような佇まいでその場に座り込んだ。
レイヤは恐る恐る、農園でお土産にもらったトウモロコシの飼料を取り出した。エクレアが厳しい視線を注ぐ中、レイヤはお皿にトウモロコシを盛り、そっとエクレアに差し出す。
エクレアは無言で(しゃべるわけもないが)ボリボリとトウモロコシを平らげると、尻尾を振りながらレイヤを見つめてきた。
「あっ、おかわりですね! まだありますよ!」
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なんとかエクレアに機嫌を直すことに成功したレイヤはほっとしていた。エクレアはトウモロコシを食べ終えると、のそのそとレイヤの家へと帰っていく。
「エクレアさん、どこへ……?」
レイヤはきょとんとした様子で自宅の奥へと消えていくエクレアの様子を見守った。しばらくすると、エクレアはブラシを口にくわえて戻ってきた。そしてエクレアは首をぐいんと振りかぶり、勢いよくレイヤの足元へブラシを投げつけた!
「ブラッシングですね! はい、ただいま!」
果たしてどちらが主人なのだろうか。今日もエクレアさんは気位が高く、気高く尊大なペットなのであった。