類は友を呼び、珍味が想いを繋げる

キャラクターノベル制作 広大野人納品 2021年09月07日 11時11分27秒

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 アルマ・ヴァレンタインが台所から戻って来た。
 『干物詰め合わせセット』から厳選した肴を皿いっぱいに乗せてある。今にも溢れ落ちそう……で落ちないのは、アルマが成せる技だろうか。
「思ったより結構な量があるの……」
 驚いて目を見開くグダドワ。
 それはそうだろう。なにより、このセット。成人男性10人分はあるのだ……幾ら大食いのドワーフであっても驚かない訳がない。
 更に、グダドワが長年住んでいるヴォーンの街は、完全に内陸部だ。海の物というのも珍しい。
「やたら、頭の大きい魚じゃの……」
「それはタマデッカだよ! こう、ぎゅぎゅぎゅーってダンジョンの水路を“飛んで”来るの」
 両手を合わせて派手にジェスチャーするアルマ。
 強そうな剥き出しの牙に……グダドワは絶対に自分では獲りにいかないと心に決めた。
「ふむ……味が濃いな!」
「タマデッカは、塩味の身が引き締まっていて、油もあるから、ジューシーなんだよ」
 そう説明しつつ、アルマも干物を口に運ぶ。
 潮の香りが全身に広がった。これも納得の出来である。
「これは……なんじゃ? 細長くて弾力がありそうじゃが?」
 次に黄土色した見た事もない存在をフォークで刺す。
 干物になっていると現物が、どんな姿をしていたのか分かりにくい場合もある……色々な方角から眺めて……視線をアルマへと向けた。
「これって、貝なんだよ。ながほそーい貝が地面に埋まって、上に来た獲物目掛けて貝ごと“突撃”してくるの!」
 アルマは全身を使って、ジャンプするような仕草で表現する。
 なるほど。物騒な貝だな……とグダドワは思いつつ、口に運ぶ。
「おぉぉ! 歯ごたえが凄いな!」
「だよね! このチヨウヤク貝の干物の売りは、コリコリとした食感と、噛めば噛む程染み出る旨味なんだよ!」
 前のめりになって力説するアルマも、半分、齧っている。
 これは、酒が進まない訳がない。
 持参した忽麦酒(エール)と蜂蜜酒(ミード)が、グダドワの胃袋の中にどんどん流れていく。
「……思ったんじゃが、なぜ、そんなに詳しいんじゃ?」
 グダドワの疑問にアルマは胸を張って即答した。
「現地で見て来たから! 元がどんな生き物だったのか、気になるんだよ!」
「おぉ……そ、そうじゃな……」
 冒険者とはそういうものなのかと、思う事にした。
 にしてもだ、とグダドワは少し手を休めてテーブルの上に並んだ数々の品を眺める。
「儂は長生きしとるが、世の中には、まだまだ知らない事、知らない土地、知らない食べ物があるんじゃな……」
「世界は広いからね!」
「こうして、アルマが教えてくれるからこそ、知る事ができる……本当に感謝じゃ……」
 急に褒められて、やや照れながらも、アルマは頷く。
 グダドワがぐいっと忽麦酒(エール)を飲み干した。
「また、来てくれるかの? 色々な土産話と共に」
「もちろんだよ! そうそう、今日はね、こんな物も持ってきたの!」
 取り出したのは謎肉の塊。
 大きさは人の手の拳位はあるだろうか……殻みたいなものに覆われ、奇妙なのは上下両端が節のように締まっていて、左右には何かが生えていた跡が見える。
 それを受け取るグダドワ。
「ふむ……儂は昔から、色々な物を食べてきたつもりではおるが……なんじゃこりゃ?」
「結構、美味しかったんだよ!」
 やや興奮気味のアルマの台詞に、その正体をなんとか見極めようと、ぐるぐると謎肉を回す老ドワーフ。
 殻があるから……蟹? にしては脚のような跡は左右に一つずつしかない。
 海老にしても、脚は下側だし……考えれば考えるほど分からない。
「分からんが……まぁ、食べてからまた考えるかの」
「湯がいてあるから、殻を剥げば、そのまま食べられるよ」
 パリッと音を立てて、思ったよりも簡単に殻が剥ける。その様は、甲殻類にやはり似ていた。
 そして、現れるプリっとした謎肉本体に齧りつく。
「……なんじゃ、これはぁ! 何の肉なんじゃ!?」
 口の中に入った瞬間、飲み物のように蕩け広がる肉。
 今まで、こんな食べ物と出逢った事がない。
「たぶん……一般的には食べない生き物かも……」
「ほほう。ゲテモノの類か……しかし、儂はそれぐらいでは怯まんぞ」
 類は友を呼ぶというのは、どこか遠い異国の諺かもしれない。
 グダドワもまた、イケる口であるようだ。
「……分かったぞ。この肉は、宝石蚯蚓(ジェムワーム)じゃな!」
「残念、グダドワさん。これは、大沼百足(スワンプセンチピート)の胴体の一部だよ」
「そっちじゃったかー」
 自信があって答えたからか、悔しそうな表情を浮かべるグダドワ。
 一方、アルマはアルマで、老ドワーフが言った方が気になっていた。
「宝石蚯蚓(ジェムワーム)って、どんなのかな?」
「儂は一度しか見た事がないんじゃがな……宝石鉱山の中で住まう蚯蚓の一種じゃ」
 グダドワの話に、アルマは目を輝かせた。いつか、きっと捕まえて、グダドワさんと一緒に食べようと思ったからだ。
 こうして、アルマは新しいゲテモノ食い仲間を得たのであった。

登場キャラクター

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0