食は万里を超えて遊兵5番隊に通ず
キャラクターノベル制作 革酎納品 2021年08月13日 13時34分10秒
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春先のロモズ旧村は山間の廃村を復旧させたというだけあって、日中はかなり暖かく感じられるが、夜になれば相当に冷える。
ロモズ歩兵団隊長選抜考査当日、アルマ・ヴァレンタインは旧村長宅近くに用意された待合所の民家で、供された熱い紅茶を静かに啜っていた。
既に陽は西に傾き始め、ひんやりと冷たい外気が木窓を通して室内にも流れ込みつつある。
アルマ自身の選抜考査は、既に終了していた。治癒師としての技能試験は滞りなく進み、面談の際にも特に大きな失敗は無かった――筈だ。少なくとも、自分ではその様に信じている。
(そういえばこのロモズ旧村で獲れる食材って、どんなのがあるんだろう?)
緊張感から解放された所為か、隊長採用後の食について、ふと考えを馳せた。
一部隊に配される人数は20名と聞いている。部下がつけば、戦場ではその人数分の食材や料理の確保にも走らなければならない。食は人類が生きていく上で絶対に避けては通れない命題だ。今から考えておくのも隊長としての務めだ。
アルマの食の好みは、その方向性が常人とは少々異なる。はっきりいえばゲテモノ食いだ。時折周りから、よくそんなものが食えるなという視線を浴びることが少なくないことも理解している。
だが美味いものは、美味い。見た目だけで食材の本当の良さを決めつけてしまうのは、愚の骨頂だ。
とはいえ、ロモズ旧村で調達可能な平均的食材というものは、確実に押さえておきたい。
(ちょっと歩いてこようかな)
基本的に、選抜考査を終了した者は結果発表までの間は自由の身分である。
この時間を有効活用しない手は無い。
アルマは席を立った。
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ロモズ旧村内の村道は、そこかしこで補修作業が続いている。カルケル集落群から移住してきた当初はもっと損耗が酷かったらしいが、現在はまだあちこちが傷んでいるものの、居住地としては十分に機能しているといって良い。
道行くひとびとを眺めながら、アルマはのんびりと村道を歩いた。
その表情にはいつの間にか、ひとの上に立つ者としての自覚の色が芽生え始めていた。
まだ選抜考査の結果は出ていないが、アルマとしては普通に採用される自信を持っていた。勿論、根拠など欠片も無い。完全な希望的観測に過ぎない。
だが不採用を決定づける様な悲観的材料も見当たらない。であれば、普通に採用されるんじゃないかという漠然とした想いが頭の片隅でふわふわと浮いては沈み、浮いては沈みを繰り返している。
(ま……隊長に採用されなくても、きっとこのロモズ旧村からはたくさん依頼が出るだろうし、ここの難民さん達と顔馴染みになっておくのも、悪くないかもね)
アルマは、まだ整備中との看板が掲げられている郊外の練兵場へと足を向けた。
途中、ひとりの年若い難民と出会った。彼はヴィント出身なのだが、ヴァイセントラフ砦ではなく、敢えてカルケル集落群の臨時難民キャンプへと逃げ込んだのだという。
「カルケルの方が、まともな難民生活が出来そうだな、と思って」
その年若い難民青年は悪びれた様子も無く、陽気に笑った。聞くところによれば、ヴァイセントラフ砦に収容された難民の生活レベルは中々厳しいものがあるらしく、カルケル集落群の臨時難民キャンプや、ここロモズ旧村での余裕ある生活ぶりと比較すると、結構悲惨な状況にあるらしい。
(へぇ~……意外と皆、逞しいんだね)
難民青年に笑顔を返しながら、アルマは練兵場を目指した。
辿り着いてみると、整備中の看板通り、そこかしこが建築資材の置き場と化しており、まともな訓練が出来る状態ではなかった。
「どぢらさぁでぇ?」
不意に、聞き慣れない方言が飛んできた。
振り向くと、何本もの弓を担いだひとりのエルフ青年が、練兵場脇の事務棟へと続く小径に立っていた。
エルフ青年はカミールと名乗った。ほんの30分程前に、遊兵5番隊副長を拝命したばかりであり、早速その手続きと兵舎内の自室割り当て作業の為に、ここまで足を運んできたのだという。
(うはぁ……それにしても、凄い訛りだねぇ)
カミールとは軽く挨拶を交わしてそのまま別れたが、一体どこの出身なのだろうとアルマはひとり頭を悩ませた。
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夜になって、採用発表の場が設けられた。
アルマは無事に隊長に採用され、遊兵5番隊長を拝命することとなった。
(あれ? 遊兵5番隊っていったら……)
即座に、夕刻の練兵場前で出会ったエルフ青年の顔が思い浮かんだ。彼はまだ、居るだろうか――そんなことを考えながら、アルマはロモズ旧村内の兵舎へと足を走らせた。
カミールは食堂でひとり、簡単な野菜料理をもぐもぐと咀嚼しながら団規抜粋を読み込んでいた。
「や、どうも」
アルマが手を振ると、カミールは何だろうと不思議そうな顔立ちで、小さくお辞儀を返してきた。
「えぇっと、実はボクねぇ、遊兵5番隊長に就任することになったんだよ」
「あぁれま、んげなごどあるんじゃな」
カミールは立ち上がり、改めて挨拶を述べた。彼はロモズ旧村から峰をひとつ隔てた位置にある、エルフ小集落出身の授恵者だという話だった。
このエルフ小集落とロモズ旧村とで最初に接触が生じた際、双方の印象は最悪だったのだという。
お互いに生活圏が被り、片方は狩猟や伐採で森を盛大に荒しまくり、片方は結界を張り巡らせて山中に足を踏み入れた難民達に多くの怪我人を生じせしめた。
お互いが感情的な状態となり、あわや一触即発かという段階にまで進んだこともあったらしい。しかしながら最終的には冒険者達の献身的な仲裁で両者とも矛を収め、現在では共依存関係で協力し合うようになっているのだという。
「へぇ~、そんなことがあったんだねぇ」
アルマがロモズ旧村に本格的に関わり始めたのは、今回の隊長選抜考査が事実上最初であった。その為、これまで色々あったロモズ旧村やカルケル集落群での出来事、或いはロモズ旧村とエルフ小集落との関係成立の経緯はほとんど知らない。
そういう意味ではカミールはアルマにとって、ロモズ旧村内外に関連する事柄の貴重な情報源となり得るだろう。
そしてカミールの訛りが強いことも、彼がエルフ小集落出身だということに原因がある。
カミールが生まれ育ったエルフ小集落は数百年の長きに亘ってフィルエス大森林からは孤立した状態で周囲との関わりを断ち続けてきた。その為、言語体系に於いては周辺地域から少しずつずれが生じ始め、独自の発音が幅を利かせる様になったのだという。
だがロモズ旧村と接することで、カミール自身もほぼ生まれて初めて外界との接触を持つことになったのだという。
これ程隔絶された世界の中で長期間生き抜いてきた割りには、訛りが強いとはいえ、一応の意思疎通が図れるというのは、それはそれで奇跡に近しい話だった。
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聞けば、カミールは数週間前からロモズ旧村とエルフ小集落を往復していた為、ロモズ旧村にも顔馴染みが多いらしい。遊兵5番隊員に至っては全員、カミールの知り合いばかりなのだという。
「んだげぇちっとも不安にゃあならんちゅう」
逆にアルマは、今目の前に居るカミール以外、全くといって良い程に遊兵5番隊員の皆とは面識が無い。
これは拙い、早々に顔合わせしておかなくては――流石のアルマも幾分の危機感を覚え始めていた。そんなアルマの思惑をその表情から見抜いたのか、カミールは今からでも顔合わせに行くかと問いかけてきた。
どうやら遊兵5番隊の全隊員はこの夜、同じ兵舎に寝泊まりしているらしい。
「うん、是非お願い!」
アルマの顔が、ぱっと輝いた。
カミールは残りの野菜料理を勢い良く掻き込むと、アルマを連れて兵舎の二階へと上がった。この兵舎には遊兵5番隊の他に、重兵3番隊の隊員が数名程度、寝泊まりしているとの由。アルマが案内されたのは非常に面積のある会議室サイズの大部屋だった。
木製二段ベッドが十台並び、ほぼ全員が与えられた寝台内で思い思いの時間を過ごしていた。
「ほいほいぃ、注目だでぇ。隊長さんのおつきじゃけえ、皆挨拶せんとよぉ」
カミールが軽く手を打ち合わせると、遊兵5番隊の面々は一瞬だけ驚いた様子を見せたが、すぐに全員嬉しそうな調子で集まってきた。
その中に、見覚えのある顔がひとつ。ヴィントから逃れてきたという、あの年若い難民青年だった。
「えぇっと……このたび、遊兵5番隊長を拝命しましたアルマ・ヴァレンタインです! どうぞ宜しくね!」
直後、室内は歓声に覆われた。自分達にも遂に授恵者隊長が誕生したと、誰もが大喜びだった。
カミールも授恵者といえば授恵者なのだが、彼は冒険者としての経験が浅い為、本格的な戦闘経験や冒険者としての技量に秀でた授恵者を迎えるのは、事実上これが最初のようだった。
「隊長、早速歓迎会やりましょう。ここで俺達と一緒に、お食事座談会なんてどうです?」
例のヴィントからの脱出青年が声を上げると、他の面々もこれに続けとばかりに喝采を挙げた。
「え……い、良いのかな?」
「なぁに遠慮しとぅばぁですかい。やらにゃ損でしょな」
ここは皆と一緒に盛り上がらないと、後で絶対後悔する――カミールにも背中を押され、アルマはすぐに決断した。
「蜂の子ありますよ、蜂の子」
隊員の誰かが木製のサラダボウルをぬっと突き出してきた。こんがり焼けた蜂の子が、大量に詰まっていた。アルマは即座に、これは美味そうだと涎が垂れた。
「おぉ、隊長さんイケるクチっすねぇ」
また別の誰かが笑顔を見せた。どうやら彼らとは、食の概念でも親友になれそうな気がした。
「隊長、こげな感じのもんが好きなんじゃかね。ちょい待っとれやなもし」
カミールは一階の厨房へと駆け下りていった。きっとエルフの食文化にも隠された食通料理があるのだろう。 アルマは久々に、心から嬉しくなった。
春先のロモズ旧村は山間の廃村を復旧させたというだけあって、日中はかなり暖かく感じられるが、夜になれば相当に冷える。
ロモズ歩兵団隊長選抜考査当日、アルマ・ヴァレンタインは旧村長宅近くに用意された待合所の民家で、供された熱い紅茶を静かに啜っていた。
既に陽は西に傾き始め、ひんやりと冷たい外気が木窓を通して室内にも流れ込みつつある。
アルマ自身の選抜考査は、既に終了していた。治癒師としての技能試験は滞りなく進み、面談の際にも特に大きな失敗は無かった――筈だ。少なくとも、自分ではその様に信じている。
(そういえばこのロモズ旧村で獲れる食材って、どんなのがあるんだろう?)
緊張感から解放された所為か、隊長採用後の食について、ふと考えを馳せた。
一部隊に配される人数は20名と聞いている。部下がつけば、戦場ではその人数分の食材や料理の確保にも走らなければならない。食は人類が生きていく上で絶対に避けては通れない命題だ。今から考えておくのも隊長としての務めだ。
アルマの食の好みは、その方向性が常人とは少々異なる。はっきりいえばゲテモノ食いだ。時折周りから、よくそんなものが食えるなという視線を浴びることが少なくないことも理解している。
だが美味いものは、美味い。見た目だけで食材の本当の良さを決めつけてしまうのは、愚の骨頂だ。
とはいえ、ロモズ旧村で調達可能な平均的食材というものは、確実に押さえておきたい。
(ちょっと歩いてこようかな)
基本的に、選抜考査を終了した者は結果発表までの間は自由の身分である。
この時間を有効活用しない手は無い。
アルマは席を立った。
●
ロモズ旧村内の村道は、そこかしこで補修作業が続いている。カルケル集落群から移住してきた当初はもっと損耗が酷かったらしいが、現在はまだあちこちが傷んでいるものの、居住地としては十分に機能しているといって良い。
道行くひとびとを眺めながら、アルマはのんびりと村道を歩いた。
その表情にはいつの間にか、ひとの上に立つ者としての自覚の色が芽生え始めていた。
まだ選抜考査の結果は出ていないが、アルマとしては普通に採用される自信を持っていた。勿論、根拠など欠片も無い。完全な希望的観測に過ぎない。
だが不採用を決定づける様な悲観的材料も見当たらない。であれば、普通に採用されるんじゃないかという漠然とした想いが頭の片隅でふわふわと浮いては沈み、浮いては沈みを繰り返している。
(ま……隊長に採用されなくても、きっとこのロモズ旧村からはたくさん依頼が出るだろうし、ここの難民さん達と顔馴染みになっておくのも、悪くないかもね)
アルマは、まだ整備中との看板が掲げられている郊外の練兵場へと足を向けた。
途中、ひとりの年若い難民と出会った。彼はヴィント出身なのだが、ヴァイセントラフ砦ではなく、敢えてカルケル集落群の臨時難民キャンプへと逃げ込んだのだという。
「カルケルの方が、まともな難民生活が出来そうだな、と思って」
その年若い難民青年は悪びれた様子も無く、陽気に笑った。聞くところによれば、ヴァイセントラフ砦に収容された難民の生活レベルは中々厳しいものがあるらしく、カルケル集落群の臨時難民キャンプや、ここロモズ旧村での余裕ある生活ぶりと比較すると、結構悲惨な状況にあるらしい。
(へぇ~……意外と皆、逞しいんだね)
難民青年に笑顔を返しながら、アルマは練兵場を目指した。
辿り着いてみると、整備中の看板通り、そこかしこが建築資材の置き場と化しており、まともな訓練が出来る状態ではなかった。
「どぢらさぁでぇ?」
不意に、聞き慣れない方言が飛んできた。
振り向くと、何本もの弓を担いだひとりのエルフ青年が、練兵場脇の事務棟へと続く小径に立っていた。
エルフ青年はカミールと名乗った。ほんの30分程前に、遊兵5番隊副長を拝命したばかりであり、早速その手続きと兵舎内の自室割り当て作業の為に、ここまで足を運んできたのだという。
(うはぁ……それにしても、凄い訛りだねぇ)
カミールとは軽く挨拶を交わしてそのまま別れたが、一体どこの出身なのだろうとアルマはひとり頭を悩ませた。
●
夜になって、採用発表の場が設けられた。
アルマは無事に隊長に採用され、遊兵5番隊長を拝命することとなった。
(あれ? 遊兵5番隊っていったら……)
即座に、夕刻の練兵場前で出会ったエルフ青年の顔が思い浮かんだ。彼はまだ、居るだろうか――そんなことを考えながら、アルマはロモズ旧村内の兵舎へと足を走らせた。
カミールは食堂でひとり、簡単な野菜料理をもぐもぐと咀嚼しながら団規抜粋を読み込んでいた。
「や、どうも」
アルマが手を振ると、カミールは何だろうと不思議そうな顔立ちで、小さくお辞儀を返してきた。
「えぇっと、実はボクねぇ、遊兵5番隊長に就任することになったんだよ」
「あぁれま、んげなごどあるんじゃな」
カミールは立ち上がり、改めて挨拶を述べた。彼はロモズ旧村から峰をひとつ隔てた位置にある、エルフ小集落出身の授恵者だという話だった。
このエルフ小集落とロモズ旧村とで最初に接触が生じた際、双方の印象は最悪だったのだという。
お互いに生活圏が被り、片方は狩猟や伐採で森を盛大に荒しまくり、片方は結界を張り巡らせて山中に足を踏み入れた難民達に多くの怪我人を生じせしめた。
お互いが感情的な状態となり、あわや一触即発かという段階にまで進んだこともあったらしい。しかしながら最終的には冒険者達の献身的な仲裁で両者とも矛を収め、現在では共依存関係で協力し合うようになっているのだという。
「へぇ~、そんなことがあったんだねぇ」
アルマがロモズ旧村に本格的に関わり始めたのは、今回の隊長選抜考査が事実上最初であった。その為、これまで色々あったロモズ旧村やカルケル集落群での出来事、或いはロモズ旧村とエルフ小集落との関係成立の経緯はほとんど知らない。
そういう意味ではカミールはアルマにとって、ロモズ旧村内外に関連する事柄の貴重な情報源となり得るだろう。
そしてカミールの訛りが強いことも、彼がエルフ小集落出身だということに原因がある。
カミールが生まれ育ったエルフ小集落は数百年の長きに亘ってフィルエス大森林からは孤立した状態で周囲との関わりを断ち続けてきた。その為、言語体系に於いては周辺地域から少しずつずれが生じ始め、独自の発音が幅を利かせる様になったのだという。
だがロモズ旧村と接することで、カミール自身もほぼ生まれて初めて外界との接触を持つことになったのだという。
これ程隔絶された世界の中で長期間生き抜いてきた割りには、訛りが強いとはいえ、一応の意思疎通が図れるというのは、それはそれで奇跡に近しい話だった。
●
聞けば、カミールは数週間前からロモズ旧村とエルフ小集落を往復していた為、ロモズ旧村にも顔馴染みが多いらしい。遊兵5番隊員に至っては全員、カミールの知り合いばかりなのだという。
「んだげぇちっとも不安にゃあならんちゅう」
逆にアルマは、今目の前に居るカミール以外、全くといって良い程に遊兵5番隊員の皆とは面識が無い。
これは拙い、早々に顔合わせしておかなくては――流石のアルマも幾分の危機感を覚え始めていた。そんなアルマの思惑をその表情から見抜いたのか、カミールは今からでも顔合わせに行くかと問いかけてきた。
どうやら遊兵5番隊の全隊員はこの夜、同じ兵舎に寝泊まりしているらしい。
「うん、是非お願い!」
アルマの顔が、ぱっと輝いた。
カミールは残りの野菜料理を勢い良く掻き込むと、アルマを連れて兵舎の二階へと上がった。この兵舎には遊兵5番隊の他に、重兵3番隊の隊員が数名程度、寝泊まりしているとの由。アルマが案内されたのは非常に面積のある会議室サイズの大部屋だった。
木製二段ベッドが十台並び、ほぼ全員が与えられた寝台内で思い思いの時間を過ごしていた。
「ほいほいぃ、注目だでぇ。隊長さんのおつきじゃけえ、皆挨拶せんとよぉ」
カミールが軽く手を打ち合わせると、遊兵5番隊の面々は一瞬だけ驚いた様子を見せたが、すぐに全員嬉しそうな調子で集まってきた。
その中に、見覚えのある顔がひとつ。ヴィントから逃れてきたという、あの年若い難民青年だった。
「えぇっと……このたび、遊兵5番隊長を拝命しましたアルマ・ヴァレンタインです! どうぞ宜しくね!」
直後、室内は歓声に覆われた。自分達にも遂に授恵者隊長が誕生したと、誰もが大喜びだった。
カミールも授恵者といえば授恵者なのだが、彼は冒険者としての経験が浅い為、本格的な戦闘経験や冒険者としての技量に秀でた授恵者を迎えるのは、事実上これが最初のようだった。
「隊長、早速歓迎会やりましょう。ここで俺達と一緒に、お食事座談会なんてどうです?」
例のヴィントからの脱出青年が声を上げると、他の面々もこれに続けとばかりに喝采を挙げた。
「え……い、良いのかな?」
「なぁに遠慮しとぅばぁですかい。やらにゃ損でしょな」
ここは皆と一緒に盛り上がらないと、後で絶対後悔する――カミールにも背中を押され、アルマはすぐに決断した。
「蜂の子ありますよ、蜂の子」
隊員の誰かが木製のサラダボウルをぬっと突き出してきた。こんがり焼けた蜂の子が、大量に詰まっていた。アルマは即座に、これは美味そうだと涎が垂れた。
「おぉ、隊長さんイケるクチっすねぇ」
また別の誰かが笑顔を見せた。どうやら彼らとは、食の概念でも親友になれそうな気がした。
「隊長、こげな感じのもんが好きなんじゃかね。ちょい待っとれやなもし」
カミールは一階の厨房へと駆け下りていった。きっとエルフの食文化にも隠された食通料理があるのだろう。 アルマは久々に、心から嬉しくなった。