卓上遊戯はまだ終わらない
キャラクターノベル制作 空色みなも納品 2021年06月19日 12時33分03秒
●
同じ振り出しから、進んだ道が分かれていても。
目指す上がりが同じなら、またどこかで会えるはずだから――。
●
冒険者の拠点リブラネスタから少し西へ旅したところ。
人々で賑わう通りの脇には、所せましと建物が居並んでおり。
遥か北西を見上げれば、険しい山嶺が空の青に突き刺さるように伸びている。
ここはエラトゥーン都市同盟にある小さな町、エルタ・リコ。
その東西を走るフエゴ・デ・メサ通りのちょうど真ん中にある交差点から北へ向かって十七軒目。
そこにクローリカの目指す建物はあった。
女神の賽子亭。
その名に冠せられたサイコロが看板にも描かれた宿屋は、女将がその手の小道具を用いた遊戯を好むことで有名であった。
しかし、この日クローリカが女神の賽子亭を訪れたのは、そうした遊戯目当てではない。
もともと女神の賽子亭は冒険者ギルド支部としての機能を有した、冒険者の宿なのだ。
「依頼解決の報告に参りました」
クローリカが用件を告げながら入口をくぐったところで、ふと耳についた物音。
それは、ダイスを転がす音だった。
かつてパンクリアース学園に通うお嬢様に仕えていた頃、クローリカも卓上遊戯によく付き合ったものだった。
そのため、遊戯に勤しんでいる気配が気になったクローリカは、音がしたテーブル席を見やる。
そこで席に着いていた二人の顔が目に映ったとき、クローリカはあっ、と短く叫んでしまった。
「クラウスさん……! ミアさん……!」
クローリカの目前に居たのは、パンクリアース学園の卓上遊戯倶楽部で出会った二人だったのだ――。
●
「いやあ、まさかクローリカさんが冒険者になられていたとは」
クラウスと呼ばれた茶髪の男性は、クローリカに同じ卓を囲ませ、飲み物を奢るから好きなものを注文するようにと促した。
当のクラウスは、卓上遊戯に上げた熱と反比例するように冷めた紅茶を、それでも美味しそうに啜っている。
「ここでまた会えたのも、何かの縁ってやつですね!」
その対面に座っていた、ミアと呼ばれていた浅黒い肌を持つ女性が、再会の喜びを前面に押し出す。
ミアの座る椅子は脚が長くなっており、小柄な彼女が問題なくテーブル上に手を置けるよう配慮がなされていた。
クラウスがヒューマンであるのに対し、ミアの種族はハーフリングなのだ。
黒髪の隙間から覗く、短く尖った耳が、そのことをさりげなく主張している。
なお、ミアの目前には檸檬汁を絞り入れた冷水が置かれていた。
「ええ、本当に驚きました。皆さんは、どうしてこちらに……王国でユーリさんにお仕えしていらっしゃるのではないのですか?」
自身と当時仕えていたお嬢様の近況を説明したクローリカは、クラウスたちの事情を気にかける。
クローリカの知る範囲で、クラウスとミアの二人は、リーンエス王国の貴族次男坊であるユーリの召使であったはずだ。
それが王国を離れて、遠く都市同盟の小さな町で出会ったのだから、クラウスたちに何かがあったことは想像に難くない。
「私たちがユーリ様にお仕えしていることは変わりないのですが……そのユーリ様がご実家を出られまして」
クラウスの口から語られたのは、ユーリが召使二人を連れ、王国を出ることになった経緯だった。
二人の主人であるところのユーリは今年二十歳、フルネームをユーリ・トレーガーと言った。
トレーガー家は王国の中流貴族で、自らの領土主権に関心が強い、貴族派に属している。
そうした環境にありながら、ユーリは貴族至上主義とも呼べる王国の風土に反発を覚えていた。
貴族派と王党派の間で繰り広げられる派閥争いに疲弊し、種族間に横たわる差別意識に辟易し。
学園で卓上遊戯倶楽部を立ち上げたのも、そういった頭の痛くなる世界から、少しでも離れられる場所が欲しかったからだという。
「ユーリさんは私にもよくしてくださいましたものね」
かくいうクローリカもハーフビーストであるために、動物の特徴を身体に有している。
学園で学ぶお嬢様のメイドをしていた頃には、心無い貴族の子女に種族のことを揶揄されたこともある。
ヒューマンであることを求められてきた貴族にとって、往々にして他種族は蔑視の対象であったのだ。
だが、クローリカと初めて会った際、ユーリは種族を気にする様子を見せなかった。
ハーフビーストであることを蔑むでもなく、かといって同情してみせるでもなく。
ただただ人類の一員として扱ってくれていたのは、クローリカも感じ取っていた。
「ユーリ様も卒業後はご家業を手伝っていたんですが、そういう性分でしたから……ご実家とは反りが合わなかったんですねえ」
ミアがしみじみと語ったところによると、次男であるユーリはある日、兄と大喧嘩を繰り広げたらしい。
その話から察するに、おそらくユーリの兄は典型的な貴族派貴族であったのだろう。
「そこでユーリ様は息苦しい王国を出て、ご自身で商売を始めるために都市同盟に来られたのですよ」
クラウスたちもユーリが王国を発つ際に誘われ、そのまま三人で旅をすることになったのだとか。
というのが、クラウスたちが女神の賽子亭に宿をとるに至った顛末らしい。
今ユーリがこの場に不在なのは、物件巡りのため一人で町を出歩いているためだった。
「お前たちは少し休んでいるといい、と言って頂いたので、こうして――」
「卓上遊戯に精を出していた、というわけですね」
ミアの言葉にクローリカが改めてテーブルを眺めると、そこにはダイスの他、遊戯に用いる盤や駒が並んでいた。
「こうしていると、あの頃を思い出しますね。まるで昨日のことのように」
天上を仰ぐように顔を上げたクラウスが、遠くを眺めるような目つきをする。
実際、クラウスたちがユーリと共に卓上遊戯倶楽部として活動していた日々は移ろい去った過去になってしまい、もはや思い出の中。
それでも、まるで今も自分たちが学園に居ると錯覚しそうになるほどに、倶楽部における出来事ひとつひとつをありありと思いだせると、クラウスは言う。
「もとはずいぶん堅物だった私も、ユーリ様にずいぶん感化されたものです」
「そうなんですか?」
おどけるような仕草で肩をすくめてみせたクラウスに、クローリカは意外そうな顔をする。
たしかにクラウスは物腰こそ丁寧ではあるが、ユーモアに富んだ人物であるようにクローリカは認識していたようだ。
「倶楽部は居心地のいい空間でしたからねー。ほら、私もハーフリングですし」
「ええ、わかりますとも」
ヒューマンではないということで、ミアも王国では肩身の狭い思いをしてきたのだろう。
時には嫌がらせを受けることもあったとか。
クローリカには、痛いほどそうした事情が理解できた。
「だからこそ、というのはありますかね。こうしてユーリ様の話に乗ったのも」
王国を出る誘いがあったとき、それは面白そうだとミアは食いついたらしい。
これまでにない自由を得ることに、ミアもどこか憧れのようなものがあったのかもしれない。
「今は主に道中の警戒担当をしてます」
「そうしてユーリさんを守っているわけですね」
聞けば、ミアは授恵者として目覚めており、斥候を得意とするという。
冒険者であるクローリカは、ミアが似たような立場に置かれていることに親近感を覚えたようだった。
「そういえば気になっていたんですが……」
「なんでしょう?」
クローリカがじっと見つめてくるものだから、クラウスは残り少なくなった紅茶を口元に運びながら用件を尋ねる。
「お二人はお付き合いなさっているのですか?」
「けほっけほっ!?」
クローリカの言葉が思いがけなかったのか、クラウスはむせた。
「い、いやあ、そんなことは……ねえミアさん?」
「え、ええ、私たちはまだそういう関係じゃ」
分かりやすく動揺するクラウスとミアに、クローリカも察する。
この二人、気があるな、と。
互いにちらちらと視線を送り合っているものだから、意識しているのは傍から見ていても分かったが――。
「ふふっ、まだ、ですか。これからのお二人に期待していますね」
顔を赤くして縮こまった微笑ましい二人の様子に、クローリカも相好を崩す。
しばらく離れ離れになってはいたが、こうして再び出会えたのだ。
これからは時折、近況を報告し合うこともできるだろう。
そう思うと、クローリカはこの先が楽しみで仕方がなかった。
●
「本当にあの頃に戻ったみたいですね」
クローリカは盤上の振り出しに自身の駒を置きながら、呟いた。
せっかくだから一緒に卓上遊戯を楽しんでいこう、とクラウスに誘われたのだ。
ダイスを振って、出た目のマスだけ駒を進め。
時に他の駒の先を行き、時に他の駒の背中を追いかける。
道が枝分かれしていれば、他の駒とは別の道を選ぶこともある。
でも上がりを目指すのはどの駒も同じで――。
「やりました、一番乗りです。皆さんの到着をお待ちしてますね」
一足先に上がりに到着したクローリカは、特等席から二人の駒の歩みを眺める。
クラウスとミアの駒は同じ道を辿って並び、ゆっくりと上がりを目指していた。
最前線で戦う冒険者とは、また違う道をクラウスとミアの二人は歩んでいたかもしれないけれど。
同じ世界の中で先を目指して歩み続けることで、こうして再会することができた。
一つの遊戯で上がりを迎えたら、することは決まっている――。
「私が最後でしたね。ですが、次の遊戯では負けませんよ?」
「はい、受けて立ちましょう」
そう、新たな遊戯を始めよう――クラウスは机上の小道具を片付けながら、別の道具が詰め込まれた箱を取り出した。
クローリカも当然のように、次の遊戯に対して乗り気である。
卓上遊戯倶楽部の遊戯は、まだ終わらない。
あの時の皆はパンクリアース学園から巣立ったけれど。
卓上遊戯倶楽部は、まだ終わらない――。
同じ振り出しから、進んだ道が分かれていても。
目指す上がりが同じなら、またどこかで会えるはずだから――。
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冒険者の拠点リブラネスタから少し西へ旅したところ。
人々で賑わう通りの脇には、所せましと建物が居並んでおり。
遥か北西を見上げれば、険しい山嶺が空の青に突き刺さるように伸びている。
ここはエラトゥーン都市同盟にある小さな町、エルタ・リコ。
その東西を走るフエゴ・デ・メサ通りのちょうど真ん中にある交差点から北へ向かって十七軒目。
そこにクローリカの目指す建物はあった。
女神の賽子亭。
その名に冠せられたサイコロが看板にも描かれた宿屋は、女将がその手の小道具を用いた遊戯を好むことで有名であった。
しかし、この日クローリカが女神の賽子亭を訪れたのは、そうした遊戯目当てではない。
もともと女神の賽子亭は冒険者ギルド支部としての機能を有した、冒険者の宿なのだ。
「依頼解決の報告に参りました」
クローリカが用件を告げながら入口をくぐったところで、ふと耳についた物音。
それは、ダイスを転がす音だった。
かつてパンクリアース学園に通うお嬢様に仕えていた頃、クローリカも卓上遊戯によく付き合ったものだった。
そのため、遊戯に勤しんでいる気配が気になったクローリカは、音がしたテーブル席を見やる。
そこで席に着いていた二人の顔が目に映ったとき、クローリカはあっ、と短く叫んでしまった。
「クラウスさん……! ミアさん……!」
クローリカの目前に居たのは、パンクリアース学園の卓上遊戯倶楽部で出会った二人だったのだ――。
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「いやあ、まさかクローリカさんが冒険者になられていたとは」
クラウスと呼ばれた茶髪の男性は、クローリカに同じ卓を囲ませ、飲み物を奢るから好きなものを注文するようにと促した。
当のクラウスは、卓上遊戯に上げた熱と反比例するように冷めた紅茶を、それでも美味しそうに啜っている。
「ここでまた会えたのも、何かの縁ってやつですね!」
その対面に座っていた、ミアと呼ばれていた浅黒い肌を持つ女性が、再会の喜びを前面に押し出す。
ミアの座る椅子は脚が長くなっており、小柄な彼女が問題なくテーブル上に手を置けるよう配慮がなされていた。
クラウスがヒューマンであるのに対し、ミアの種族はハーフリングなのだ。
黒髪の隙間から覗く、短く尖った耳が、そのことをさりげなく主張している。
なお、ミアの目前には檸檬汁を絞り入れた冷水が置かれていた。
「ええ、本当に驚きました。皆さんは、どうしてこちらに……王国でユーリさんにお仕えしていらっしゃるのではないのですか?」
自身と当時仕えていたお嬢様の近況を説明したクローリカは、クラウスたちの事情を気にかける。
クローリカの知る範囲で、クラウスとミアの二人は、リーンエス王国の貴族次男坊であるユーリの召使であったはずだ。
それが王国を離れて、遠く都市同盟の小さな町で出会ったのだから、クラウスたちに何かがあったことは想像に難くない。
「私たちがユーリ様にお仕えしていることは変わりないのですが……そのユーリ様がご実家を出られまして」
クラウスの口から語られたのは、ユーリが召使二人を連れ、王国を出ることになった経緯だった。
二人の主人であるところのユーリは今年二十歳、フルネームをユーリ・トレーガーと言った。
トレーガー家は王国の中流貴族で、自らの領土主権に関心が強い、貴族派に属している。
そうした環境にありながら、ユーリは貴族至上主義とも呼べる王国の風土に反発を覚えていた。
貴族派と王党派の間で繰り広げられる派閥争いに疲弊し、種族間に横たわる差別意識に辟易し。
学園で卓上遊戯倶楽部を立ち上げたのも、そういった頭の痛くなる世界から、少しでも離れられる場所が欲しかったからだという。
「ユーリさんは私にもよくしてくださいましたものね」
かくいうクローリカもハーフビーストであるために、動物の特徴を身体に有している。
学園で学ぶお嬢様のメイドをしていた頃には、心無い貴族の子女に種族のことを揶揄されたこともある。
ヒューマンであることを求められてきた貴族にとって、往々にして他種族は蔑視の対象であったのだ。
だが、クローリカと初めて会った際、ユーリは種族を気にする様子を見せなかった。
ハーフビーストであることを蔑むでもなく、かといって同情してみせるでもなく。
ただただ人類の一員として扱ってくれていたのは、クローリカも感じ取っていた。
「ユーリ様も卒業後はご家業を手伝っていたんですが、そういう性分でしたから……ご実家とは反りが合わなかったんですねえ」
ミアがしみじみと語ったところによると、次男であるユーリはある日、兄と大喧嘩を繰り広げたらしい。
その話から察するに、おそらくユーリの兄は典型的な貴族派貴族であったのだろう。
「そこでユーリ様は息苦しい王国を出て、ご自身で商売を始めるために都市同盟に来られたのですよ」
クラウスたちもユーリが王国を発つ際に誘われ、そのまま三人で旅をすることになったのだとか。
というのが、クラウスたちが女神の賽子亭に宿をとるに至った顛末らしい。
今ユーリがこの場に不在なのは、物件巡りのため一人で町を出歩いているためだった。
「お前たちは少し休んでいるといい、と言って頂いたので、こうして――」
「卓上遊戯に精を出していた、というわけですね」
ミアの言葉にクローリカが改めてテーブルを眺めると、そこにはダイスの他、遊戯に用いる盤や駒が並んでいた。
「こうしていると、あの頃を思い出しますね。まるで昨日のことのように」
天上を仰ぐように顔を上げたクラウスが、遠くを眺めるような目つきをする。
実際、クラウスたちがユーリと共に卓上遊戯倶楽部として活動していた日々は移ろい去った過去になってしまい、もはや思い出の中。
それでも、まるで今も自分たちが学園に居ると錯覚しそうになるほどに、倶楽部における出来事ひとつひとつをありありと思いだせると、クラウスは言う。
「もとはずいぶん堅物だった私も、ユーリ様にずいぶん感化されたものです」
「そうなんですか?」
おどけるような仕草で肩をすくめてみせたクラウスに、クローリカは意外そうな顔をする。
たしかにクラウスは物腰こそ丁寧ではあるが、ユーモアに富んだ人物であるようにクローリカは認識していたようだ。
「倶楽部は居心地のいい空間でしたからねー。ほら、私もハーフリングですし」
「ええ、わかりますとも」
ヒューマンではないということで、ミアも王国では肩身の狭い思いをしてきたのだろう。
時には嫌がらせを受けることもあったとか。
クローリカには、痛いほどそうした事情が理解できた。
「だからこそ、というのはありますかね。こうしてユーリ様の話に乗ったのも」
王国を出る誘いがあったとき、それは面白そうだとミアは食いついたらしい。
これまでにない自由を得ることに、ミアもどこか憧れのようなものがあったのかもしれない。
「今は主に道中の警戒担当をしてます」
「そうしてユーリさんを守っているわけですね」
聞けば、ミアは授恵者として目覚めており、斥候を得意とするという。
冒険者であるクローリカは、ミアが似たような立場に置かれていることに親近感を覚えたようだった。
「そういえば気になっていたんですが……」
「なんでしょう?」
クローリカがじっと見つめてくるものだから、クラウスは残り少なくなった紅茶を口元に運びながら用件を尋ねる。
「お二人はお付き合いなさっているのですか?」
「けほっけほっ!?」
クローリカの言葉が思いがけなかったのか、クラウスはむせた。
「い、いやあ、そんなことは……ねえミアさん?」
「え、ええ、私たちはまだそういう関係じゃ」
分かりやすく動揺するクラウスとミアに、クローリカも察する。
この二人、気があるな、と。
互いにちらちらと視線を送り合っているものだから、意識しているのは傍から見ていても分かったが――。
「ふふっ、まだ、ですか。これからのお二人に期待していますね」
顔を赤くして縮こまった微笑ましい二人の様子に、クローリカも相好を崩す。
しばらく離れ離れになってはいたが、こうして再び出会えたのだ。
これからは時折、近況を報告し合うこともできるだろう。
そう思うと、クローリカはこの先が楽しみで仕方がなかった。
●
「本当にあの頃に戻ったみたいですね」
クローリカは盤上の振り出しに自身の駒を置きながら、呟いた。
せっかくだから一緒に卓上遊戯を楽しんでいこう、とクラウスに誘われたのだ。
ダイスを振って、出た目のマスだけ駒を進め。
時に他の駒の先を行き、時に他の駒の背中を追いかける。
道が枝分かれしていれば、他の駒とは別の道を選ぶこともある。
でも上がりを目指すのはどの駒も同じで――。
「やりました、一番乗りです。皆さんの到着をお待ちしてますね」
一足先に上がりに到着したクローリカは、特等席から二人の駒の歩みを眺める。
クラウスとミアの駒は同じ道を辿って並び、ゆっくりと上がりを目指していた。
最前線で戦う冒険者とは、また違う道をクラウスとミアの二人は歩んでいたかもしれないけれど。
同じ世界の中で先を目指して歩み続けることで、こうして再会することができた。
一つの遊戯で上がりを迎えたら、することは決まっている――。
「私が最後でしたね。ですが、次の遊戯では負けませんよ?」
「はい、受けて立ちましょう」
そう、新たな遊戯を始めよう――クラウスは机上の小道具を片付けながら、別の道具が詰め込まれた箱を取り出した。
クローリカも当然のように、次の遊戯に対して乗り気である。
卓上遊戯倶楽部の遊戯は、まだ終わらない。
あの時の皆はパンクリアース学園から巣立ったけれど。
卓上遊戯倶楽部は、まだ終わらない――。