女子会いつやる?
キャラクターノベル(グループ)制作 真柄 葉納品 2021年05月18日 12時56分50秒
王都グランエスパーダの下町にある食事処『にくざんまい』は今日も人でごった返していた。
「……はむっ、んぐんぐ」
「ぱくっ……ごくごく」
「むしゃ……しゃくしゃく」
テーブルに所狭しと並べられたおすすめの料理たち。王国風は言わずもがな、帝国風、同盟風、果ては辺境風まで、無国籍でうまそうな肉料理たちがテーブルを彩っていた。
「相変わらず幸せそうーに食べるねぇ」
そんな色とりどりの料理たちが瞬く間に消えていく。先ほどから給仕の娘がひっきりなしに空の皿と大盛りの皿を交換しては厨房とテーブルを往復していた。
「リディー。はい、ワイン」
特大サイズの鶏もも肉の炙りを骨だけにしつつ、リディリディ・トゥラ・イェレミースは、サフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブから葡萄酒のジョッキを受け取ると、ぺこりと頭を下げる。
「んぐ……ぷぁ。……ありがとう、ございます」
並々と注がれていた葡萄酒を、こくこくとよく動く喉で一息に飲み干したリディリディは、『シャルガネ牛の握り』なる珍しい料理に手を出す。
「あれ、コルネは食べないの? お腹痛い?」
と、リディリディの食べっぷりを楽しそうに見つめていたサフィラが、ふともう一人の同席者コルネリウス・アーラに問いかけた。なぜか彼女の皿からは料理があまり減っていない。
「え……? あ、いえ、そういう訳じゃないです。美味しくいただいてますよ」
「ふーん?」
『鹿肉の味噌煮』を箸で器用に持ち上げるコルネリウス。しかし、サフィラは答えずじーっとコルネリウスの顔を見つめていた。
「そうそう。このお店、知らなかったんですけど、美味しいお料理を出すんですね。これなんて同盟のお料理ですよね?」
「……じー」
「あ、あの、サフィラさん……私の顔に何かついています……?」
「耳が動いてるね。何かいい事でもあった?」
「っ!?」
サフィラの指摘にコルネリウスは箸を置き、すぐに両耳を隠してしまう。
「な、別に何もありません。そんな事より、ほらお料理が冷めてしまうので食べましょう!」
動くな動くなと自分の耳をピンと横に引っ張りながら、コルネリウスは笑顔を作り料理を勧める。
「うーん、あからさまに怪しいけど……ま、いっか。――それで、イズさんとはあの後どうなの?」
「ぶふっ!?」
せっかく隠したのに直球ど真ん中で核心を突いてきた質問に、コルネリウスは思わず口に運びかけた鹿肉を落としそうになった。
「あ、あの後って何ですか。どの後ですか!?」
「あ、思い当たるふしが幾つもあるんだね」
「うっ……!」
自ら墓穴を掘った事に気付き落ち込むコルネリウスに、サフィラはにひひと笑う。
「別に何もありませんよ。……その、家まで送ってもらっただけで」
ツンと澄ましながら平然と答えるコルネリウスだが、その耳は再びピコピコと嬉しそうに揺れていた。
「そっか、何にもなかったのかぁ。イズさん紳士だもんね」
「そうですっ、イズさんは紳士なんです!」
「あの……それいただいてもいいでしょうか?」
と、耳を赤らめたコルネリウスにサフィラが「それで?」とさらなる追求を決行しようとした時、対面の席から恐る恐る声をかけられた。
「え、あ、うん。いいけど……もうなくなったの?」
声の主、リディリディにサフィラはびっくりしながら問い返す。見れば確かにテーブルには白い皿が積み重なっていた。
「その……今日は依頼があったので……お、お昼を抜いてしまいまして」
「えっ、リディリディさんがお昼を!?」
「……はい、なのでその分を補給しないといけないかなと……。あ、料理の代金はちゃんと出しますので……依頼料もいただきましたから」
と、リディリディは机の上に、どんとお金の入った革袋を置いた。
そんな時だった。
「あれ、サフィラさんにリディリディさん?」
三人の座るテーブルに向かって歩いてくる人影があった。
「……あ、リサさん。珍しい所で……お会いしましたね」
「ほんとに。……はは、相変わらずすごい量のお皿ですね」
テーブルの大部分を占める空の皿の量に苦笑しつつ、リサ・ベイカーは二人の友人と着席するもう一人を見る。
「えっと、初めまして、ですよね? 私はリサ・ベイカーと言います」
と、リサは初めて会うエルフの女性に話しかけた。
以前は名乗る事を躊躇っていた姓も、あの一件から今ではすっかり平気になっている。
「初めまして、私はコルネリウスと言います。リサさんも二人のご友人なんですね」
椅子から腰を浮かせリサの挨拶に笑顔で返したコルネリウス。
「よろしければ、同席いかがですか?」
「あ、いいんですか?」
と、リサはコルネリウスの誘いに、他の二人を見た。
「もっちろーん」
「……はい、ご一緒嬉しいです」
答えはもちろんYES。サフィラがどうぞどうぞと、空いている椅子を引く。
「ありがとう、サフィラさん。なんだか申し訳ない気もしますけど、遠慮なくお邪魔しますね!」
勧められた椅子に座ったリサ。初対面のコルネリウスとリサが軽い自己紹介を行い、宴は仕切り直しとなった。
●
「その……優しくて、頼りになって、笑顔を絶やさなくて……とても素敵な方なんです」
リディリディの食欲もようやく落ち着き、四人はデザートタイムに突入。温かい飲み物と甘いスイーツに舌鼓を打てば、話題は自然と甘いお話に。
「いつも周りに気をかけていて、何方にもとても親切なんです……」
さっきから真っ赤に染まった耳をピコピコ動かしながら、コルネリウスがもじもじと恋人の事を話していた。
「うんうん、誰にでも親切だから、イズさん」
「そ、そうなんですよ! 誰にでも親切で優しくて、困っている人を放っておけないくらいお人好しで……なので……その、たまにちょっと妬けちゃいます」
「だねぇ、器量もよくて誰にでも親切おまけにイケメン。彼女をするのも大変だねぇ」
「そうなんです。誰にでも気を遣って……いつか疲れてしまわないか心配なんです」
からかう様に笑みを向けたサフィラに、コルネリウスはしゅんと耳を垂れる。
「あ、うん。そうだけど、そういう意味じゃなくて……」
「え?」
からかったつもりが素で返されサフィラは苦笑い。
「……あ。う、浮気とか絶対ないですからね! 一番は私だっていつも言ってくれるんですから!」
そんな苦笑いにコルネリアスもようやく言葉の意味を悟ったのか、身を乗り出して反論する。
「ほほう、『私が一番』。詳しく聞かせてもらおうか、コルネリアスくん」
「うぐっ……」
なんてムキになって反論したら、案の定罠にかかった。
「な、内緒です! いくらお友達でも、話せない事もあるんです!」
それがわかるからこそ気恥ずかしくて、コルネリウスはツンと顔を背けてしまう。
「あはは、ごめんごめん。ちょっと意地悪し過ぎたよ。大切な二人だけの秘密だもんね」
「そうです!」
「素敵な方なんですね、その恋人さん。そういう人とお付き合いできるの、なんかいいなぁ……」
そんな二人のやり取りを見ていたリサが、ぽつりと呟く。
「リサっちもそういうのないの?」
そんな呟きにサフィラがターゲットを変更してきた。
「え? あ、はい。全然ないですよ。実家に帰った時にたまにそういう空気は感じますけど、積極的に相手をどうこうとは言われたことはないですね。そのうち誰か紹介されるんでしょうけど、あまり実感がないというか現実味がないというか他人事というか……」
「それはお家の都合でしょ? リサっち自身は気になる人いないの?」
「あ、そうですね。うーん……それが残念ながらさっぱり。依頼で異性の方とご一緒する事も多いし、出会いは少なくないと思うんですけど……」
「声かけられてりもしない? リサっちかわいいしい、寄ってくる男もいるんじゃない?」
と、肩を竦めるリサに、サフィラは問いかける。
「い、いないですよ! そもそも依頼中にそんな事してる余裕ないですし……」
「いや、別に依頼中じゃなくてもさ。ほら、依頼終わった後に食事に誘われたりとか、なかった?」
「そんなの……ない……え? あれってそういう意味だったんですか!?」
「あ、あるんだね」
何を思い出したのか、いきなり驚くリサにサフィラは苦笑した。
「え……どうしよう。普通に食事してお別れしちゃいましたけど……ぜんぜんそういう風に考えて無くて、あれって、失礼だったんでしょうか」
「どうかな? 相手がどの程度の本気具合でリサっちを誘ったかにもよるだろうけど……あ、そうだ」
と、不安げに問いかけてくるリサから視線を移し、コルネリウスを見たサフィラ。
「やっぱりここは、コルネリウス先輩から意見を聞かないとですなぁ」
「えっ……?」
サフィラの標的がリサに移った事に安堵し、ケーキに手を伸ばしていたコルネリウスが、再び降ってきた質問に振り向いた。
「コルネはどうだと思う? やっぱり誘われてるよね?」
フフフ、逃がさないよと獲物を追うハンターの瞳でサフィラはコルネリウスに質問する。
「そ、そんなのわかりませんよ! そう言うのはサフィラさんが一番詳しいんじゃないんですか?」
「えっ、あたし?」
「サフィラさんは長く生きてますし、人生経験も豊富じゃないですか。恋愛も沢山されたと思うし、そういう男性の雰囲気とかよくわかるんじゃないんですか?」
かくりと首をかしげるサフィラに、コルネリウスは違うんですかと逆に問いかけた。
「うーん、あたし恋愛には興味を持てないから、そういうのよくわからないんだよねぇ」
「えっ、そうなんですか? サフィラさん美人ですし、スタイルもいいし、明朗で誰からも好かれますし、言い寄ってくる男性も多いんじゃないんですか?」」
返ってきた答えに、コルネリウスは思わず問い返す。
「随分過大な評価をありがとう。そういう風に見られてたのは素直に嬉しいけど……まぁ、色々あったからねぇ」
「色々、ですか?」
コルネリウスと共にサフィラの話をじっと聞いていたリサが呟いた。
「うん、まぁ色々ね。だから恋愛に関しては、あたしよりコルネに聞くのがいいと思ったんだけどね」
じっと見つめてくる二人に苦笑で返したサフィラは、葡萄酒で口を湿らせる。
「でも恋愛に興味がなくなるって……やっぱり、それだけの事があったんですか?」
と、話を振ったコルネリウスから質問が返ってきた。
「あちゃぁ、変に興味持たれちゃったかな。まぁ話せば長くなるんだけど、一番の理由は長く生きているからかな」
そう言うとサフィラは、ごまかす様ににゃははと笑った。
「……長く生きるから。わかりますその気持ち」
と、反応は食い入るように話を聞いていた二人ではなく、リディリディからだった。
「え、リディリディさん、わかるんですか?」
「……違ってたら、ごめんなさいです……けど、恋愛っていう括りだと……色々とあります、エルフは……」
「そうそう、色々あるんだよ。だから、ヒューマンのリサっちにはあんまり参考にならなかもだね」
リディリディの援護を受け、だから話を聞いてもつまらないよとサフィラは言う。
「そうなんですか……やっぱり、色々な恋愛をされてきたんですね」
話を切られたことを残念に思いつつも、深入りする所ではないのかとリサは話を止めるが。
「あ、私はそういうの……全然ないです。恋人がいた事も……ないです」
と、リディリディがさも当然と答えた。
「えっ、そうなんですか? リディリディさん、綺麗だから沢山そういうのがあると思ってました」
そんなリディリディの話にリサは驚き、話をぶり返す。
「あ……それもっと言ってください……じゃなかった、私は最近までずっと森に居たので、出会いらしい出会いが……なかったというのが、大きいのかもしれません。……周りは皆、200歳をこえる人……ばかりでしたから……相手にされなかったって……言うのもありますけど」
平然とそう言ってリディリディは再びフォークを手に取った。
「冒険者になってからも同じですか? 中には素敵な方も沢山いらっしゃると思いますけど」
「……あった、のでしょうか? よくわかりませんし……そういう見方で他人を見ていない……です。確かに……依頼では沢山の方と……お会いします。エルフだけじゃなくて……他の種族も沢山。でも、結局……サフィラさんの話に戻りますけど……時間が違い過ぎる……んです」
「それが長命種の悩みですか」
「……はむっ、んぐんぐ」
「ぱくっ……ごくごく」
「むしゃ……しゃくしゃく」
テーブルに所狭しと並べられたおすすめの料理たち。王国風は言わずもがな、帝国風、同盟風、果ては辺境風まで、無国籍でうまそうな肉料理たちがテーブルを彩っていた。
「相変わらず幸せそうーに食べるねぇ」
そんな色とりどりの料理たちが瞬く間に消えていく。先ほどから給仕の娘がひっきりなしに空の皿と大盛りの皿を交換しては厨房とテーブルを往復していた。
「リディー。はい、ワイン」
特大サイズの鶏もも肉の炙りを骨だけにしつつ、リディリディ・トゥラ・イェレミースは、サフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブから葡萄酒のジョッキを受け取ると、ぺこりと頭を下げる。
「んぐ……ぷぁ。……ありがとう、ございます」
並々と注がれていた葡萄酒を、こくこくとよく動く喉で一息に飲み干したリディリディは、『シャルガネ牛の握り』なる珍しい料理に手を出す。
「あれ、コルネは食べないの? お腹痛い?」
と、リディリディの食べっぷりを楽しそうに見つめていたサフィラが、ふともう一人の同席者コルネリウス・アーラに問いかけた。なぜか彼女の皿からは料理があまり減っていない。
「え……? あ、いえ、そういう訳じゃないです。美味しくいただいてますよ」
「ふーん?」
『鹿肉の味噌煮』を箸で器用に持ち上げるコルネリウス。しかし、サフィラは答えずじーっとコルネリウスの顔を見つめていた。
「そうそう。このお店、知らなかったんですけど、美味しいお料理を出すんですね。これなんて同盟のお料理ですよね?」
「……じー」
「あ、あの、サフィラさん……私の顔に何かついています……?」
「耳が動いてるね。何かいい事でもあった?」
「っ!?」
サフィラの指摘にコルネリウスは箸を置き、すぐに両耳を隠してしまう。
「な、別に何もありません。そんな事より、ほらお料理が冷めてしまうので食べましょう!」
動くな動くなと自分の耳をピンと横に引っ張りながら、コルネリウスは笑顔を作り料理を勧める。
「うーん、あからさまに怪しいけど……ま、いっか。――それで、イズさんとはあの後どうなの?」
「ぶふっ!?」
せっかく隠したのに直球ど真ん中で核心を突いてきた質問に、コルネリウスは思わず口に運びかけた鹿肉を落としそうになった。
「あ、あの後って何ですか。どの後ですか!?」
「あ、思い当たるふしが幾つもあるんだね」
「うっ……!」
自ら墓穴を掘った事に気付き落ち込むコルネリウスに、サフィラはにひひと笑う。
「別に何もありませんよ。……その、家まで送ってもらっただけで」
ツンと澄ましながら平然と答えるコルネリウスだが、その耳は再びピコピコと嬉しそうに揺れていた。
「そっか、何にもなかったのかぁ。イズさん紳士だもんね」
「そうですっ、イズさんは紳士なんです!」
「あの……それいただいてもいいでしょうか?」
と、耳を赤らめたコルネリウスにサフィラが「それで?」とさらなる追求を決行しようとした時、対面の席から恐る恐る声をかけられた。
「え、あ、うん。いいけど……もうなくなったの?」
声の主、リディリディにサフィラはびっくりしながら問い返す。見れば確かにテーブルには白い皿が積み重なっていた。
「その……今日は依頼があったので……お、お昼を抜いてしまいまして」
「えっ、リディリディさんがお昼を!?」
「……はい、なのでその分を補給しないといけないかなと……。あ、料理の代金はちゃんと出しますので……依頼料もいただきましたから」
と、リディリディは机の上に、どんとお金の入った革袋を置いた。
そんな時だった。
「あれ、サフィラさんにリディリディさん?」
三人の座るテーブルに向かって歩いてくる人影があった。
「……あ、リサさん。珍しい所で……お会いしましたね」
「ほんとに。……はは、相変わらずすごい量のお皿ですね」
テーブルの大部分を占める空の皿の量に苦笑しつつ、リサ・ベイカーは二人の友人と着席するもう一人を見る。
「えっと、初めまして、ですよね? 私はリサ・ベイカーと言います」
と、リサは初めて会うエルフの女性に話しかけた。
以前は名乗る事を躊躇っていた姓も、あの一件から今ではすっかり平気になっている。
「初めまして、私はコルネリウスと言います。リサさんも二人のご友人なんですね」
椅子から腰を浮かせリサの挨拶に笑顔で返したコルネリウス。
「よろしければ、同席いかがですか?」
「あ、いいんですか?」
と、リサはコルネリウスの誘いに、他の二人を見た。
「もっちろーん」
「……はい、ご一緒嬉しいです」
答えはもちろんYES。サフィラがどうぞどうぞと、空いている椅子を引く。
「ありがとう、サフィラさん。なんだか申し訳ない気もしますけど、遠慮なくお邪魔しますね!」
勧められた椅子に座ったリサ。初対面のコルネリウスとリサが軽い自己紹介を行い、宴は仕切り直しとなった。
●
「その……優しくて、頼りになって、笑顔を絶やさなくて……とても素敵な方なんです」
リディリディの食欲もようやく落ち着き、四人はデザートタイムに突入。温かい飲み物と甘いスイーツに舌鼓を打てば、話題は自然と甘いお話に。
「いつも周りに気をかけていて、何方にもとても親切なんです……」
さっきから真っ赤に染まった耳をピコピコ動かしながら、コルネリウスがもじもじと恋人の事を話していた。
「うんうん、誰にでも親切だから、イズさん」
「そ、そうなんですよ! 誰にでも親切で優しくて、困っている人を放っておけないくらいお人好しで……なので……その、たまにちょっと妬けちゃいます」
「だねぇ、器量もよくて誰にでも親切おまけにイケメン。彼女をするのも大変だねぇ」
「そうなんです。誰にでも気を遣って……いつか疲れてしまわないか心配なんです」
からかう様に笑みを向けたサフィラに、コルネリウスはしゅんと耳を垂れる。
「あ、うん。そうだけど、そういう意味じゃなくて……」
「え?」
からかったつもりが素で返されサフィラは苦笑い。
「……あ。う、浮気とか絶対ないですからね! 一番は私だっていつも言ってくれるんですから!」
そんな苦笑いにコルネリアスもようやく言葉の意味を悟ったのか、身を乗り出して反論する。
「ほほう、『私が一番』。詳しく聞かせてもらおうか、コルネリアスくん」
「うぐっ……」
なんてムキになって反論したら、案の定罠にかかった。
「な、内緒です! いくらお友達でも、話せない事もあるんです!」
それがわかるからこそ気恥ずかしくて、コルネリウスはツンと顔を背けてしまう。
「あはは、ごめんごめん。ちょっと意地悪し過ぎたよ。大切な二人だけの秘密だもんね」
「そうです!」
「素敵な方なんですね、その恋人さん。そういう人とお付き合いできるの、なんかいいなぁ……」
そんな二人のやり取りを見ていたリサが、ぽつりと呟く。
「リサっちもそういうのないの?」
そんな呟きにサフィラがターゲットを変更してきた。
「え? あ、はい。全然ないですよ。実家に帰った時にたまにそういう空気は感じますけど、積極的に相手をどうこうとは言われたことはないですね。そのうち誰か紹介されるんでしょうけど、あまり実感がないというか現実味がないというか他人事というか……」
「それはお家の都合でしょ? リサっち自身は気になる人いないの?」
「あ、そうですね。うーん……それが残念ながらさっぱり。依頼で異性の方とご一緒する事も多いし、出会いは少なくないと思うんですけど……」
「声かけられてりもしない? リサっちかわいいしい、寄ってくる男もいるんじゃない?」
と、肩を竦めるリサに、サフィラは問いかける。
「い、いないですよ! そもそも依頼中にそんな事してる余裕ないですし……」
「いや、別に依頼中じゃなくてもさ。ほら、依頼終わった後に食事に誘われたりとか、なかった?」
「そんなの……ない……え? あれってそういう意味だったんですか!?」
「あ、あるんだね」
何を思い出したのか、いきなり驚くリサにサフィラは苦笑した。
「え……どうしよう。普通に食事してお別れしちゃいましたけど……ぜんぜんそういう風に考えて無くて、あれって、失礼だったんでしょうか」
「どうかな? 相手がどの程度の本気具合でリサっちを誘ったかにもよるだろうけど……あ、そうだ」
と、不安げに問いかけてくるリサから視線を移し、コルネリウスを見たサフィラ。
「やっぱりここは、コルネリウス先輩から意見を聞かないとですなぁ」
「えっ……?」
サフィラの標的がリサに移った事に安堵し、ケーキに手を伸ばしていたコルネリウスが、再び降ってきた質問に振り向いた。
「コルネはどうだと思う? やっぱり誘われてるよね?」
フフフ、逃がさないよと獲物を追うハンターの瞳でサフィラはコルネリウスに質問する。
「そ、そんなのわかりませんよ! そう言うのはサフィラさんが一番詳しいんじゃないんですか?」
「えっ、あたし?」
「サフィラさんは長く生きてますし、人生経験も豊富じゃないですか。恋愛も沢山されたと思うし、そういう男性の雰囲気とかよくわかるんじゃないんですか?」
かくりと首をかしげるサフィラに、コルネリウスは違うんですかと逆に問いかけた。
「うーん、あたし恋愛には興味を持てないから、そういうのよくわからないんだよねぇ」
「えっ、そうなんですか? サフィラさん美人ですし、スタイルもいいし、明朗で誰からも好かれますし、言い寄ってくる男性も多いんじゃないんですか?」」
返ってきた答えに、コルネリウスは思わず問い返す。
「随分過大な評価をありがとう。そういう風に見られてたのは素直に嬉しいけど……まぁ、色々あったからねぇ」
「色々、ですか?」
コルネリウスと共にサフィラの話をじっと聞いていたリサが呟いた。
「うん、まぁ色々ね。だから恋愛に関しては、あたしよりコルネに聞くのがいいと思ったんだけどね」
じっと見つめてくる二人に苦笑で返したサフィラは、葡萄酒で口を湿らせる。
「でも恋愛に興味がなくなるって……やっぱり、それだけの事があったんですか?」
と、話を振ったコルネリウスから質問が返ってきた。
「あちゃぁ、変に興味持たれちゃったかな。まぁ話せば長くなるんだけど、一番の理由は長く生きているからかな」
そう言うとサフィラは、ごまかす様ににゃははと笑った。
「……長く生きるから。わかりますその気持ち」
と、反応は食い入るように話を聞いていた二人ではなく、リディリディからだった。
「え、リディリディさん、わかるんですか?」
「……違ってたら、ごめんなさいです……けど、恋愛っていう括りだと……色々とあります、エルフは……」
「そうそう、色々あるんだよ。だから、ヒューマンのリサっちにはあんまり参考にならなかもだね」
リディリディの援護を受け、だから話を聞いてもつまらないよとサフィラは言う。
「そうなんですか……やっぱり、色々な恋愛をされてきたんですね」
話を切られたことを残念に思いつつも、深入りする所ではないのかとリサは話を止めるが。
「あ、私はそういうの……全然ないです。恋人がいた事も……ないです」
と、リディリディがさも当然と答えた。
「えっ、そうなんですか? リディリディさん、綺麗だから沢山そういうのがあると思ってました」
そんなリディリディの話にリサは驚き、話をぶり返す。
「あ……それもっと言ってください……じゃなかった、私は最近までずっと森に居たので、出会いらしい出会いが……なかったというのが、大きいのかもしれません。……周りは皆、200歳をこえる人……ばかりでしたから……相手にされなかったって……言うのもありますけど」
平然とそう言ってリディリディは再びフォークを手に取った。
「冒険者になってからも同じですか? 中には素敵な方も沢山いらっしゃると思いますけど」
「……あった、のでしょうか? よくわかりませんし……そういう見方で他人を見ていない……です。確かに……依頼では沢山の方と……お会いします。エルフだけじゃなくて……他の種族も沢山。でも、結局……サフィラさんの話に戻りますけど……時間が違い過ぎる……んです」
「それが長命種の悩みですか」
登場キャラクター
コルネリウス・アーラ
リサ・ベイカー
リディリディ・トゥラ・イェレミース
サフィラ・アズラク・ヴォルファング