カカオを求めしはドワーフの武士

キャラクターノベル制作 ウケッキ納品 2021年04月27日 10時19分41秒

●甘味の元はまさかの魔獣!?

 甘味。それはいつの世も人を惹きつけてやまない物である。
 アイスに始まり、チョコレート、それらは広く知られているが……その原料については以外にも知られていない。そう、それらが取れる場所も然り。
 『カカオが取れる場所があるから入手して欲しい、報酬は弾む』その言葉に誘われ、アスカ・タチカゼはカカオを落とすという魔獣の生息先へとやって来ていた。
「結構報酬額、いいんだよね……あぁ、報酬が入ったら何を買おうかなぁ……」
 歩きながらドワーフであり、小柄な彼女の脳裏には彼女の好きな東方文化の品々が思い浮かぶ。
 新しい着物もありだろう、果ては良い刀を鍛冶師に依頼し打ってもらうのもありだ、と列挙すればきりがない。
 彼女はかつて刀匠の技に惹かれ、刀、ひいては東方文化に興味を持ったという過去がある。
 それからというもの、隙さえあれば普段着る物から身に着ける物品、家具に至るまで東方文化を集めていた。
 だがドワーフの文化も大事だと思っており、懐にはいつでも出せる位置に付け髭がしまわれている。
 そんな彼女が歩いていると目の前から大きな巨体が現れた。それは背にカカオの木を生やした巨大な亀の魔獣である。
 魔獣はゆっくりとした動きで立ち上がって彼女を睨みつけるとけたたましい咆哮をあげた。空気が振動し、びりびりと耳に音が響き渡る。
 咄嗟に戦闘態勢を取ったアスカが動くよりも早く、魔獣の舌が延ばされ彼女を殴りつける。
 大太刀を振るい、舌の軌道を変えてそれをかわすアスカであったが家ほどもあるかというあまりの魔獣の巨体にどう攻めればいいかと考える。
(この大きさじゃ普通に斬っても効果が薄いよね、だったら急所を狙うの一択かな)
 何度も振るわれる巨大な舌の攻撃を右に左にかわしながら、足捌きで彼女は魔獣との距離を詰めていきその一瞬を待った。
 するとその一瞬の隙はすぐに訪れる。叩きつけるように振るわれた舌の攻撃の後、大きく下げられた魔獣の頭部が無防備となったのだ。
 その隙を逃さず、素早く移動したアスカはエーテルを纏わせた刃を振るい魔獣の頭部へ大太刀を突き立てた。
 苦しみの咆哮をあげながら魔獣は暴れるがアスカはより大太刀を深々と突き刺す。紫色の飛沫を上げ、魔獣は頭を振り回して暴れまわる。
 アスカはそれでも振り落とされまいと大太刀の柄をしっかりと握っている。
 ついに魔獣は膝をつき、巨体を地面へと沈めるのであった。
 大太刀を引き抜き、振るって刃に付着した血を飛ばすとアスカは大太刀を鞘へと戻す。
「ふう……さて、カカオの採集といこうかなっ、どれどれ……意外とおっきいね、これ」
 木になっているカカオをいくつかもぎ取ると採集用の籠へと放り込んでいく。カカオはかなりの数が育っており、籠はすぐにいっぱいになった。
 その内の一つを籠から拾い上げるとばきっとその大きな実を割ってみる。すると中にはふわふわの白い果肉が詰まっており実に美味しそうだ。
 むしっと果肉をむしり取るとアスカはそれを一口分、口の中に放る。芳醇な香りと甘いフルーティーな味わい。果物らしさが口の中に広がっていく。
「あ、なかなか美味しいかも……」
 そう思った瞬間の出来事だった。彼女に悲劇が訪れたのは。
 ご存じの通り、カカオの果肉【カカオパルプ】の中には【カカオ豆】がある。これは果肉とは違い相当苦いのだ。
 彼女はそれを知らず、思いっきり噛み砕いてしまう。勿論、直後に訪れるのは果肉の甘味など吹き飛ばす強烈なカカオの苦み。流石は古代の薬にも使用されていたという品物とでもいうべきか。
「にっがあぁぁあっ!? なにっ、これが甘いこいつになるんじゃないの!? 全然、チョコレートらしさなんかないんだけどぉっ!?」
 いまだ口の中に残る殻ごとかじったが故の渋さと苦みに涙目になりながらアスカは帰路へと着くのであった。
 帰りながら手に持った板状のチョコレートをかじり、もう片手に持ったカカオと見比べてアスカは首をかしげる。
「どうやって、こんな苦いばっかりの豆があんな甘いお菓子になるんだろ、うーん……全然想像つかない」
 歩きながら彼女は思うのだった。
 もうカカオ豆は安易にかじるまいと。
 そう、口に残る渋さと苦みに誓って。

登場キャラクター

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0