金蘭の交わり
王立アプリーリス魔法学院 イベントノベル(テーマ)制作 真柄 葉納品 2021年04月24日 19時31分31秒
人知れず学院の隅にひっそりと佇む大木は、学院の歴史をその目で見てきた生き証人なのかもしれない。
そんな由緒正しき忘れられた大木の大枝に登り、木陰の恩恵を享受しながらページをめくり、学院の喧騒をBGMに文字を巡る。それがオウル寮4年テス・クラルスの日課であった。
「……今日は風がざわついているな」
文字から目を離し梢を見上げる。しかし、枝はそれほど揺れていない。
テスは少し不思議に思いながらも、風精霊の気まぐれかと再び本へ視線を戻した――その時。
「うわああぁぁぁぁ!!」
枝葉の向こうからものすごい悲鳴が聞こえた。
テスはすぐに本を閉じ、枝の上に手をつくが。
――ガササササササッ!!!
枝葉を突き破り突っ込んできた『何か』に、押し倒される様に――墜落した。
「いつつ……一体何だったんだ」
咄嗟の反重力魔法が間に合い地面への衝突は回避されたが、突っ込んできた『何か』による突撃ダメージはしっかり貰っている。
テスは焦点の定まらない視界を正そうと頭を振って、気付いた。
「ドラゴン寮の制服……?」
テスの上に乗っている真っ赤な制服。この学園で赤の意匠といえばドラゴン寮を置いて他にない。
「少年、大丈夫ですか?」
お腹の上でくるくると目をまわすドラゴン寮の少年の肩を優しく揺すった。
「……う、うーん」
すると、気が付いたのか少年はゆっくりと顔を上げる。
まだ幼さの残る顔。年頃で言えば1,2年生あたりか。長い金髪を後ろで束ね、整った顔には幾つもの擦り傷。折角の容姿がとも思わなくもないが……。
「え……? あれ、オレいったいどうして……」
と、テスが思わず見惚れていると、少年がきょろきょろと首を振る。そして、にこりと微笑むテスと目が合った。
「……ふぁ!? え、え、え!?」
「ようやく気が付きましたか、少年」
「えっと……君は誰?」
「私はテス。それよりも、気が付いたのであれば降りてもらえると助かるんですが」
「うわあぁぁ! ごめんっ!!」
少年はようやくテスを組み敷いてる事に気付いたのか、勢いよく飛び降りた。
「ふぅ、大丈夫ですか? 怪我はありませんか」
「それはこっちのセリフだよ! 君こそ大丈夫、な……」
「うん? どうかしましたか?」
しぼんでいく語尾を不思議に思い、テスは首をかしげる。
「い、いえ、すみません、先輩!」
と、突然背筋を伸ばしたかと思うと、思い切り頭を下げた。
「た、他寮の先輩だとわからなくて、生意気な口をききました!」
頭を下げたまま謝罪する少年にテスはなぜか可笑しくなってくる。
「気にしないでいいですよ。怪我はありませんか?」
「は、はい! この通りピンピンして――つっ」
「ふむ、手首ですね。ちょっと見せてもらえますか」
元気アピールの拳を作ろうとして顔をゆがめた少年を見て、テスが手を差し伸べた。
「で、でも」
「見せてください」
力のこもったテスの言葉に、少年は半ば無意識に自分を手を差し出す。
「……捻ってますね。治療しましょう、そこに座ってください」
そう言うと、テスは少年に肩を貸し木の根元に座らせた。
●
「校舎にぶつかるよりは木の方がまだましかと思って突っ込んだんです……」
「ふふっ、そこに『たまたま』私がいたわけですか」
「ご、ごめんなさい……」
治療を行う間にも会話を重ねた二人。他寮で先輩後輩の間柄だったが、なぜかすんなりと打ち解けてしまった。
「そういえば、まだ名前を聞いてませんでしたね」
「えっ!? あ、ごめん! オレはロイ・アウレア、ドラゴン寮の1年だ! です!」
「1年生……なるほど、それで」
「え?」
「いえ、こちらの話です。それにしても箒が苦手とは、あまり聞きませんね。魔力量が少ないのですか?」
「あ、攻撃系は得意だぞ! です!」
「ふむ……となると、原因はこちらですか」
と、ぐっと拳を握るロイを微笑ましく見ながら、テスは木に立てかけてあった箒を見た。
「見せてもらっても?」
「え、別に良いけど……学院支給の普通の箒だよ?」
不思議そうに見つめるロイに微笑み、テスは箒を掴む。
「手を出してもらえますか?」
「えっ!」
突然言われ驚いたものの、ロイはおずおずと右手を差し出した。
「少し見ますね」
そう言ってテスはロイの手に自分のものを重ねる。ゆっくりと伝わってくる魔力の熱。
「……なるほど。やっぱりか――」
テスはロイの手を通じて感じる魔力と箒の魔力回路を比べていく。
「――ロイさん。ロイさん、聞いてますか?」
右手から伝わってくる温もりにドキドキしていると、テスが声をかけてきた。
「え……あ、なに?」
「なにって、調整終わりましたよ。これで飛べるはずです」
「えっ!?」
あっさりと言い切ったテスに、ロイは驚く。
「飛んでみてください」
「は、はい」
と、テスが言うのでロイは半信半疑で箒に跨った。
そして、魔力を箒に注ぐと――。
「飛べ」
小さく命令を下した。
そんな由緒正しき忘れられた大木の大枝に登り、木陰の恩恵を享受しながらページをめくり、学院の喧騒をBGMに文字を巡る。それがオウル寮4年テス・クラルスの日課であった。
「……今日は風がざわついているな」
文字から目を離し梢を見上げる。しかし、枝はそれほど揺れていない。
テスは少し不思議に思いながらも、風精霊の気まぐれかと再び本へ視線を戻した――その時。
「うわああぁぁぁぁ!!」
枝葉の向こうからものすごい悲鳴が聞こえた。
テスはすぐに本を閉じ、枝の上に手をつくが。
――ガササササササッ!!!
枝葉を突き破り突っ込んできた『何か』に、押し倒される様に――墜落した。
「いつつ……一体何だったんだ」
咄嗟の反重力魔法が間に合い地面への衝突は回避されたが、突っ込んできた『何か』による突撃ダメージはしっかり貰っている。
テスは焦点の定まらない視界を正そうと頭を振って、気付いた。
「ドラゴン寮の制服……?」
テスの上に乗っている真っ赤な制服。この学園で赤の意匠といえばドラゴン寮を置いて他にない。
「少年、大丈夫ですか?」
お腹の上でくるくると目をまわすドラゴン寮の少年の肩を優しく揺すった。
「……う、うーん」
すると、気が付いたのか少年はゆっくりと顔を上げる。
まだ幼さの残る顔。年頃で言えば1,2年生あたりか。長い金髪を後ろで束ね、整った顔には幾つもの擦り傷。折角の容姿がとも思わなくもないが……。
「え……? あれ、オレいったいどうして……」
と、テスが思わず見惚れていると、少年がきょろきょろと首を振る。そして、にこりと微笑むテスと目が合った。
「……ふぁ!? え、え、え!?」
「ようやく気が付きましたか、少年」
「えっと……君は誰?」
「私はテス。それよりも、気が付いたのであれば降りてもらえると助かるんですが」
「うわあぁぁ! ごめんっ!!」
少年はようやくテスを組み敷いてる事に気付いたのか、勢いよく飛び降りた。
「ふぅ、大丈夫ですか? 怪我はありませんか」
「それはこっちのセリフだよ! 君こそ大丈夫、な……」
「うん? どうかしましたか?」
しぼんでいく語尾を不思議に思い、テスは首をかしげる。
「い、いえ、すみません、先輩!」
と、突然背筋を伸ばしたかと思うと、思い切り頭を下げた。
「た、他寮の先輩だとわからなくて、生意気な口をききました!」
頭を下げたまま謝罪する少年にテスはなぜか可笑しくなってくる。
「気にしないでいいですよ。怪我はありませんか?」
「は、はい! この通りピンピンして――つっ」
「ふむ、手首ですね。ちょっと見せてもらえますか」
元気アピールの拳を作ろうとして顔をゆがめた少年を見て、テスが手を差し伸べた。
「で、でも」
「見せてください」
力のこもったテスの言葉に、少年は半ば無意識に自分を手を差し出す。
「……捻ってますね。治療しましょう、そこに座ってください」
そう言うと、テスは少年に肩を貸し木の根元に座らせた。
●
「校舎にぶつかるよりは木の方がまだましかと思って突っ込んだんです……」
「ふふっ、そこに『たまたま』私がいたわけですか」
「ご、ごめんなさい……」
治療を行う間にも会話を重ねた二人。他寮で先輩後輩の間柄だったが、なぜかすんなりと打ち解けてしまった。
「そういえば、まだ名前を聞いてませんでしたね」
「えっ!? あ、ごめん! オレはロイ・アウレア、ドラゴン寮の1年だ! です!」
「1年生……なるほど、それで」
「え?」
「いえ、こちらの話です。それにしても箒が苦手とは、あまり聞きませんね。魔力量が少ないのですか?」
「あ、攻撃系は得意だぞ! です!」
「ふむ……となると、原因はこちらですか」
と、ぐっと拳を握るロイを微笑ましく見ながら、テスは木に立てかけてあった箒を見た。
「見せてもらっても?」
「え、別に良いけど……学院支給の普通の箒だよ?」
不思議そうに見つめるロイに微笑み、テスは箒を掴む。
「手を出してもらえますか?」
「えっ!」
突然言われ驚いたものの、ロイはおずおずと右手を差し出した。
「少し見ますね」
そう言ってテスはロイの手に自分のものを重ねる。ゆっくりと伝わってくる魔力の熱。
「……なるほど。やっぱりか――」
テスはロイの手を通じて感じる魔力と箒の魔力回路を比べていく。
「――ロイさん。ロイさん、聞いてますか?」
右手から伝わってくる温もりにドキドキしていると、テスが声をかけてきた。
「え……あ、なに?」
「なにって、調整終わりましたよ。これで飛べるはずです」
「えっ!?」
あっさりと言い切ったテスに、ロイは驚く。
「飛んでみてください」
「は、はい」
と、テスが言うのでロイは半信半疑で箒に跨った。
そして、魔力を箒に注ぐと――。
「飛べ」
小さく命令を下した。