きみのなは
王立アプリーリス魔法学院 イベントノベル(テーマ)制作 真柄 葉納品 2021年04月21日 19時32分44秒
正午を告げる鐘の音が鳴った。
魔法学園の生徒達は鐘と共に一斉に教室から飛び出す。もちろん向かう先は。
『購買部』
学院広しといえど、この購買部だけが、生徒達の胃袋を満たしてくれるのだ。
だから、ここには鐘と共に数多の生徒達が詰めかける。それはまるで戦場。功を焦り単騎突撃し、玉砕するもの。仲間と連携し、確実を狙うモノ そして、漁夫の利を狙う者――。
そして、生徒達が狙うモノ、それが『焼きそばパン』『メロンパン』『クロワッサン』『あんぱん』など、綺羅星の如く並び立つ英雄達だった。
そして、それらに並ぶように置かれた、もう一つの輝きがある。
その名を……『チョココロネ』。
『貴婦人の縦巻きロール』とも称される美しき肢体に、溢れんばかりに詰められたチョコレートクリーム。
その魅力に魅了される狼達も多い。しかし、この『チョココロネ』、購買では頭一つ抜けた存在なのだ。何せ、他の者達よりも……お高い。まさに『高嶺の花』、いや『高値の華』だった。
他のパン達が飛ぶように商品棚から消えていくのに対し、貴婦人はまるで伴侶を選ぶように、ゆっくりと数を減らしていく。
だから、決まって最後に残る一つもまた『貴婦人』だった。
そして、今まさに最終決戦が始まろうとしていた――。
「むむ、これはあたしが先に手を付けたネ」
「いえ、私の方が早かったです」
「そんな事はないヨ。指一本分、あたしの勝ちネ」
「接触面積は関係ありません。いかに早く手を付けるか。それが勝者としての絶対条件です」
「それなら、あたしのものネ。早さでも掴んでる広さでも負けて無いヨ。だから、早く手をどけるといいネ」
最後の貴婦人に添えられた手が二つ。
一つは褐色の。そして、もう一つは真っ白な。
「……わかりました。購買部のおば様、倍出します。私に譲ってもらえませんか?」
「なっ!? 金の力使うとか汚い大人ネ!!」
「汚くありません。これは私の……放課後用チョココロネ資金を差し出しているのです。身を切っているんですよっ!」
と、白い手の主「コルネリウス・アーラ」は今初めて対戦相手を見た。
「そ、その制服は……グリフォン寮!」
「うん? そうネ。あたしはグリフォン寮1年サフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブいうヨ」
「えっ!? グリフォンのサフィラといえば『灰亜琉武森羅拳』のサフィラ!?」
「む? なんで知ってるネ」
「それは、お兄ちゃんが『今年とんでもない1年生が入ったんだ。今度紹介してやるよ。あと、おっ――』って言ってたから!」
「『あと、おっ』の続きが気になるアルが……という事はグリフォン寮に兄弟がいるアルか?」
「うっ、どうしてそれを……!」
「……うーん、これはびっくり天然さん」
「天然さんじゃありません! うぅ……こうなったら、決闘です!」
「わぉ、脈絡が行方不明ネ! でも、そういうの……嫌いじゃないぜ」
うぅーと威嚇する様に上目遣いで見上げてくるコルネリウスに、サフィラはグッと右手の親指を立てる。
「でも、ここじゃ周りに迷惑アルヨ。場所を移すネ」
「意外と律儀なおっ……いいでしょう。では、校庭で勝負です!」
「おけまる!」
校庭へ向かう二人に購買のおばちゃんが「これ持って行かなくていいのかいー」と、最後の貴婦人を持ち上げ手を振り、授業開始の鐘が鳴り響く中、ついに戦いの火蓋は切って落とされた――。
●
「流石、ペガサス寮ネ。その鳥で戦うアルか」
コルネリウスの腕にとまるニラミズクを見つめ、サフィラが不敵に微笑んだ。
「そちらは抜かないんですか?」
「抜くも何も、あたしの武器は『コレ』ネ」
と、答えるサフィラは片足を大きく上げる独特のポーズで、拳を突き出す。
「なるほどそれが……いいでしょう。相手にとって不足はありません!」
言うなりコルネリウスは、ニラミズクを空へと放つ。そして、腰に下げていた掌サイズの鳥籠を取り出した。
「いざ、尋常に勝負です!」
気合と共に駆け出したコルネリウスが魔力を流した瞬間、鳥籠は巨大化。ニラミズクもすっぽり入るほどに大きくなる。
「んなっ!?」
鳥籠の巨大化というまったくもって意味不明な行動に、サフィラびっくり。
「これが私の杖。魔力を流し強化した最強の杖です!」
一気に距離を詰めたコルネリウスが鳥籠を大きく振りかぶり、サフィラ目がけて振り下ろ――。
「ニラさん、キミに決めました!」
さずに、上空のニラミズクに合図を送った。
「鳥籠、使わんのかーい!」
と、サフィラが思わずツッコミを入れてしまう中、ニラミズクが急降下。サフィラのつむじを狙う。
「大人しくその制服を私に渡してください! ちょっと大胆なスリッと入っていますけど、それもまたお兄ちゃんの視線を釘付けにするにはいいアクセントになります。お胸は……くっ、しかたありません、あとで仕立て直しましょう。はぁ……これで私もお兄ちゃんと同寮生」
「欲望がダダ洩れネっ!?」
魔法学園の生徒達は鐘と共に一斉に教室から飛び出す。もちろん向かう先は。
『購買部』
学院広しといえど、この購買部だけが、生徒達の胃袋を満たしてくれるのだ。
だから、ここには鐘と共に数多の生徒達が詰めかける。それはまるで戦場。功を焦り単騎突撃し、玉砕するもの。仲間と連携し、確実を狙うモノ そして、漁夫の利を狙う者――。
そして、生徒達が狙うモノ、それが『焼きそばパン』『メロンパン』『クロワッサン』『あんぱん』など、綺羅星の如く並び立つ英雄達だった。
そして、それらに並ぶように置かれた、もう一つの輝きがある。
その名を……『チョココロネ』。
『貴婦人の縦巻きロール』とも称される美しき肢体に、溢れんばかりに詰められたチョコレートクリーム。
その魅力に魅了される狼達も多い。しかし、この『チョココロネ』、購買では頭一つ抜けた存在なのだ。何せ、他の者達よりも……お高い。まさに『高嶺の花』、いや『高値の華』だった。
他のパン達が飛ぶように商品棚から消えていくのに対し、貴婦人はまるで伴侶を選ぶように、ゆっくりと数を減らしていく。
だから、決まって最後に残る一つもまた『貴婦人』だった。
そして、今まさに最終決戦が始まろうとしていた――。
「むむ、これはあたしが先に手を付けたネ」
「いえ、私の方が早かったです」
「そんな事はないヨ。指一本分、あたしの勝ちネ」
「接触面積は関係ありません。いかに早く手を付けるか。それが勝者としての絶対条件です」
「それなら、あたしのものネ。早さでも掴んでる広さでも負けて無いヨ。だから、早く手をどけるといいネ」
最後の貴婦人に添えられた手が二つ。
一つは褐色の。そして、もう一つは真っ白な。
「……わかりました。購買部のおば様、倍出します。私に譲ってもらえませんか?」
「なっ!? 金の力使うとか汚い大人ネ!!」
「汚くありません。これは私の……放課後用チョココロネ資金を差し出しているのです。身を切っているんですよっ!」
と、白い手の主「コルネリウス・アーラ」は今初めて対戦相手を見た。
「そ、その制服は……グリフォン寮!」
「うん? そうネ。あたしはグリフォン寮1年サフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブいうヨ」
「えっ!? グリフォンのサフィラといえば『灰亜琉武森羅拳』のサフィラ!?」
「む? なんで知ってるネ」
「それは、お兄ちゃんが『今年とんでもない1年生が入ったんだ。今度紹介してやるよ。あと、おっ――』って言ってたから!」
「『あと、おっ』の続きが気になるアルが……という事はグリフォン寮に兄弟がいるアルか?」
「うっ、どうしてそれを……!」
「……うーん、これはびっくり天然さん」
「天然さんじゃありません! うぅ……こうなったら、決闘です!」
「わぉ、脈絡が行方不明ネ! でも、そういうの……嫌いじゃないぜ」
うぅーと威嚇する様に上目遣いで見上げてくるコルネリウスに、サフィラはグッと右手の親指を立てる。
「でも、ここじゃ周りに迷惑アルヨ。場所を移すネ」
「意外と律儀なおっ……いいでしょう。では、校庭で勝負です!」
「おけまる!」
校庭へ向かう二人に購買のおばちゃんが「これ持って行かなくていいのかいー」と、最後の貴婦人を持ち上げ手を振り、授業開始の鐘が鳴り響く中、ついに戦いの火蓋は切って落とされた――。
●
「流石、ペガサス寮ネ。その鳥で戦うアルか」
コルネリウスの腕にとまるニラミズクを見つめ、サフィラが不敵に微笑んだ。
「そちらは抜かないんですか?」
「抜くも何も、あたしの武器は『コレ』ネ」
と、答えるサフィラは片足を大きく上げる独特のポーズで、拳を突き出す。
「なるほどそれが……いいでしょう。相手にとって不足はありません!」
言うなりコルネリウスは、ニラミズクを空へと放つ。そして、腰に下げていた掌サイズの鳥籠を取り出した。
「いざ、尋常に勝負です!」
気合と共に駆け出したコルネリウスが魔力を流した瞬間、鳥籠は巨大化。ニラミズクもすっぽり入るほどに大きくなる。
「んなっ!?」
鳥籠の巨大化というまったくもって意味不明な行動に、サフィラびっくり。
「これが私の杖。魔力を流し強化した最強の杖です!」
一気に距離を詰めたコルネリウスが鳥籠を大きく振りかぶり、サフィラ目がけて振り下ろ――。
「ニラさん、キミに決めました!」
さずに、上空のニラミズクに合図を送った。
「鳥籠、使わんのかーい!」
と、サフィラが思わずツッコミを入れてしまう中、ニラミズクが急降下。サフィラのつむじを狙う。
「大人しくその制服を私に渡してください! ちょっと大胆なスリッと入っていますけど、それもまたお兄ちゃんの視線を釘付けにするにはいいアクセントになります。お胸は……くっ、しかたありません、あとで仕立て直しましょう。はぁ……これで私もお兄ちゃんと同寮生」
「欲望がダダ洩れネっ!?」