秘密の夜の決闘!
王立アプリーリス魔法学院 イベントノベル(テーマ)制作 白葉うづき納品 2021年05月05日 21時51分34秒
学院裏のとある広場で、制服を着た二人が向き合っていた。闇夜にも溶けてしまいそうな猫耳を揺らし、もう一方にびしりと指を突きつける。
「決闘だ! 明日のあれは俺のものなんだからな!」
「わかったわかった、それじゃ今日は何にするよ」
「えっと、……えーと」
「考えてねえのかよ!」
吹き出すように笑うアーシェル・G・クラインに、アルフィー・リッパーはわかりやすく頬を膨らませる。ふしゃーと毛を逆立せ尻尾をぴんと立たせた。
「じゃあ何にするか決めるか。これまで何したっけか」
「かけっこに、木登りに、サンダービーンズの早食い、サークルマッシュをどれだけ上手に踏んで飛べるか……」
指を折りながらアルフィーが思い出すのは、どれも競うものではあるが可愛らしい競争。二人が行う決闘はどちらかが怪我をすることもない、じゃれ合いのようなものだ。
一方的に挑まれているアーシェルはというと、
(こいつに呼び出されないとどうも調子狂うんだよな)
悩むアルフィーを楽しげに見守っていた。
「マッシュ飛び俺もしたい!」
「ふぎゃっ!?」
突然、木の上から声がかかった。驚いたアルフィーはアーシェルの後ろに隠れ、アーシェルは聞き慣れた声に空を見上げる。
「ヴィンツ! 何してんだこんなとこで」
「星に会いに行ってた!」
「だ、誰あんた」
そこには箒に乗った少年がいた。黒い制服を翻し、アルフィーの目の前に降りたつ。
「ヴィンツだよ、よろしくー!」
「……知り合い?」
「まあな。星見てたんなら、星屑捕まえにいってたのか」
「うん! 見てみてー」
見せてくれた革袋の中に色とりどりの星屑が入っていた。指でつまめる丸いとげとげ、少しだけ光っていて僅かに甘い匂いもする。アルフィーは唇を尖らせると、アーシェルの制服を引っ張った。
「っていうか決闘! 忘れてないか」
「おっとそうだ。ヴィンツ、何かいい決闘方法知らねえか」
「決闘! 魔法ではやらないの?」
「怪我させるのとか、嫌だし」
「そっか! じゃあねー」
ふいと視線を逸らして尻尾を丸めたアルフィー、それを目で追いながらヴィンツが叫んだ。
「流れ星キャッチにしよー!」
星の多い夜は空から星屑が溢れ、夜空に流れている。彼が提案したのは、どちらが多くその星屑を集められるかという決闘。それ用の網も箒も貸してくれるらしい。
「それじゃ俺から行くか。ヴィンツ、乗せてくれるか?」
「はーい!」
箒に乗り、上昇する。勝負は制限時間内にどれだけ多く集められるかだ。
「ぐるぐるしていい?」
「今か? 仕方ねえな」
「わーい!」
箒を下に向け、円状に回る旋回が始まる。見ているだけで酔いそうな光景だったがアーシェルは物ともしていなかった。
きらきら輝く網を手に戻ってくると、革袋の上にざーっと広げる。
「俺はこれだけだな」
「よーし! 今日こそは俺が勝つ! ……ええと、乗せてくれるのか?」
少年に聞いてみると、ぶんぶん首を振られた。代わりにアーシェルが箒を用意している。
「え……アーシェルが?」
「初回でヴィンツの箒は止めた方がいいからな」
「だって!」
「……し、仕方ないな。あんまり揺らすなよ!」
「はは、仰せのままに」
アーシェルの腰に掴まり、一緒に空へ。空には星が煌めいていて、見下ろした学院はところどころ灯りがつき、薄く光りを帯びて見えた。防御魔法の一つかもしれない。
「さっきから見逃してるけどいいのか?」
「い、今から採るんだよ。ちゃんと運転集中しろ、負けたくないからって変なルート取るのは無しだぞ!」
「わかってるって」
アーシェルの箒は思ったより快適だった。アルフィーが採りやすいようゆっくり空を回ってくれるし、あっちだと指を差せば従ってくれる。アルフィーはすっかり夢中になって星採りの網を振り回した。
「ほら、そこだ」
「もうちょっと、んー……!」
「あ、あそこ。すげえ塊あるぜ」
「本当だ、行こう!」
戻ってきたアルフィーの網は星屑で溢れていた。一目瞭然の結果、アルフィーは満足そうに口端を上げる。
「今日は俺の勝ちだ! これで明日のあれは俺のものだな」
「あれ?」
「「から揚げパン」」
二人揃って答えたのは、学院の売店で人気のパン。
「そもそもあんたが俺の目の前でから揚げパン買ったからいけないんだ」
「仕方ねえだろ、俺も食いたかったし」
二人のやり取りに、ヴィンツも楽しげに声を掛ける。
「良かったね!」
「ふふん、ありがとうな」
「箒もすっごく楽しそうだったし!」
「……はあ!?」
アルフィーは目を瞬かせる。俺が? こいつとの箒を? 自問自答している間、アーシェルはにやりと笑う。
「お前、本当に俺の事が好きだよな。俺もだぜ」
「は、……はぁああ!? い、いつ誰があんたのこと好きだって言ったんだよ! 勝手に思ってればいいだろ」
「黒猫さんまっかっか!」
「うるさい!」
夜空の下で秘密の時間は続く。騒ぎを聞いて教師が駆け付けたのは、また別のお話だ。
「決闘だ! 明日のあれは俺のものなんだからな!」
「わかったわかった、それじゃ今日は何にするよ」
「えっと、……えーと」
「考えてねえのかよ!」
吹き出すように笑うアーシェル・G・クラインに、アルフィー・リッパーはわかりやすく頬を膨らませる。ふしゃーと毛を逆立せ尻尾をぴんと立たせた。
「じゃあ何にするか決めるか。これまで何したっけか」
「かけっこに、木登りに、サンダービーンズの早食い、サークルマッシュをどれだけ上手に踏んで飛べるか……」
指を折りながらアルフィーが思い出すのは、どれも競うものではあるが可愛らしい競争。二人が行う決闘はどちらかが怪我をすることもない、じゃれ合いのようなものだ。
一方的に挑まれているアーシェルはというと、
(こいつに呼び出されないとどうも調子狂うんだよな)
悩むアルフィーを楽しげに見守っていた。
「マッシュ飛び俺もしたい!」
「ふぎゃっ!?」
突然、木の上から声がかかった。驚いたアルフィーはアーシェルの後ろに隠れ、アーシェルは聞き慣れた声に空を見上げる。
「ヴィンツ! 何してんだこんなとこで」
「星に会いに行ってた!」
「だ、誰あんた」
そこには箒に乗った少年がいた。黒い制服を翻し、アルフィーの目の前に降りたつ。
「ヴィンツだよ、よろしくー!」
「……知り合い?」
「まあな。星見てたんなら、星屑捕まえにいってたのか」
「うん! 見てみてー」
見せてくれた革袋の中に色とりどりの星屑が入っていた。指でつまめる丸いとげとげ、少しだけ光っていて僅かに甘い匂いもする。アルフィーは唇を尖らせると、アーシェルの制服を引っ張った。
「っていうか決闘! 忘れてないか」
「おっとそうだ。ヴィンツ、何かいい決闘方法知らねえか」
「決闘! 魔法ではやらないの?」
「怪我させるのとか、嫌だし」
「そっか! じゃあねー」
ふいと視線を逸らして尻尾を丸めたアルフィー、それを目で追いながらヴィンツが叫んだ。
「流れ星キャッチにしよー!」
星の多い夜は空から星屑が溢れ、夜空に流れている。彼が提案したのは、どちらが多くその星屑を集められるかという決闘。それ用の網も箒も貸してくれるらしい。
「それじゃ俺から行くか。ヴィンツ、乗せてくれるか?」
「はーい!」
箒に乗り、上昇する。勝負は制限時間内にどれだけ多く集められるかだ。
「ぐるぐるしていい?」
「今か? 仕方ねえな」
「わーい!」
箒を下に向け、円状に回る旋回が始まる。見ているだけで酔いそうな光景だったがアーシェルは物ともしていなかった。
きらきら輝く網を手に戻ってくると、革袋の上にざーっと広げる。
「俺はこれだけだな」
「よーし! 今日こそは俺が勝つ! ……ええと、乗せてくれるのか?」
少年に聞いてみると、ぶんぶん首を振られた。代わりにアーシェルが箒を用意している。
「え……アーシェルが?」
「初回でヴィンツの箒は止めた方がいいからな」
「だって!」
「……し、仕方ないな。あんまり揺らすなよ!」
「はは、仰せのままに」
アーシェルの腰に掴まり、一緒に空へ。空には星が煌めいていて、見下ろした学院はところどころ灯りがつき、薄く光りを帯びて見えた。防御魔法の一つかもしれない。
「さっきから見逃してるけどいいのか?」
「い、今から採るんだよ。ちゃんと運転集中しろ、負けたくないからって変なルート取るのは無しだぞ!」
「わかってるって」
アーシェルの箒は思ったより快適だった。アルフィーが採りやすいようゆっくり空を回ってくれるし、あっちだと指を差せば従ってくれる。アルフィーはすっかり夢中になって星採りの網を振り回した。
「ほら、そこだ」
「もうちょっと、んー……!」
「あ、あそこ。すげえ塊あるぜ」
「本当だ、行こう!」
戻ってきたアルフィーの網は星屑で溢れていた。一目瞭然の結果、アルフィーは満足そうに口端を上げる。
「今日は俺の勝ちだ! これで明日のあれは俺のものだな」
「あれ?」
「「から揚げパン」」
二人揃って答えたのは、学院の売店で人気のパン。
「そもそもあんたが俺の目の前でから揚げパン買ったからいけないんだ」
「仕方ねえだろ、俺も食いたかったし」
二人のやり取りに、ヴィンツも楽しげに声を掛ける。
「良かったね!」
「ふふん、ありがとうな」
「箒もすっごく楽しそうだったし!」
「……はあ!?」
アルフィーは目を瞬かせる。俺が? こいつとの箒を? 自問自答している間、アーシェルはにやりと笑う。
「お前、本当に俺の事が好きだよな。俺もだぜ」
「は、……はぁああ!? い、いつ誰があんたのこと好きだって言ったんだよ! 勝手に思ってればいいだろ」
「黒猫さんまっかっか!」
「うるさい!」
夜空の下で秘密の時間は続く。騒ぎを聞いて教師が駆け付けたのは、また別のお話だ。