夜の秘め事は星色に染まる

王立アプリーリス魔法学院 イベントノベル(テーマ)制作 菊華 伴納品 2021年04月05日 19時49分04秒


 ――アプリーリス学園・ドラゴン寮……の、とある部屋。

(すぐ戻れば、大丈夫よね?)
 アンネエルカは星の飾りがついた制服に着替えるとくすくす笑う。そして、そっと窓を開けて箒を手にとり、外へ飛び出した。
 寮の3階から外に出ようとは無謀な事のように思えるが、ここは魔法学園。その生徒であるアンネエルカにとっては箒を使えば造作もない。
 時間は深夜2時。授業で「今夜流星群が近くに落ちるらしい」と聞いた彼女は『星詠部』の一員として黙っていられなかった。
(見つかったら、目くらましの星を使えばいいかしら?)
 悪戯めいた煌めきを翠の目に宿し、アンネエルカは窓を閉めて夜の空へと舞う。春の夜はまだ風が冷たいが、指を鳴らせば星のような煌めきと温もりが乙女を包む。これは寒さから身を守る魔法であるが、星が降るようなエフェクトを持つ魔法が好きな彼女らしいチョイスである。
「静かね……」
 箒の上であたりを見渡ていると、流れ星が一つ。同時に、ガラスのような音が耳を擽る。
(流れ星の欠片!)
 次々に降り注ぐ流れ星。キラキラと流れ、零れ落ちていく流れ星の欠片。アンネエルカの箒も流れ星の輝きに染まり、幻想的な風景があたりを包む。
「見つかっても、これをレポートに出せば大丈夫よね!」
 無断外出の常習犯である彼女は、見つかった際の事を考えながら川辺へとゆっくり降りて行った。

 川辺は、金平糖のような流れ星の破片で輝きに溢れていた。これは落ちて一時間以内に『魔力を持つ者が』回収しなければ力を失うという繊細な特徴がある。 これは強力な魔法薬の材料になるし、持つだけでも魔法の派手さと威力が上がる効果がある。
(星のエフェクトが増えたりするのかしら?)
 考え事をしつつ頭の上を見ればまだ流れ星が流れている。どうやら欠片はまだ降るらしい。
(暫くは実験材料に困らなくなるかも)
 と、顔が綻んだその時、流れ星の破片が川へと落ち……星の光に染まった飛沫が、アンネエルカの制服を濡らす!
「きゃあっ?! これじゃバレちゃうじゃない!」
 アンネエルカは慌てて箒に乗ると、急いで寮へ戻る。星の欠片の力が溶けた水は強力な魔力でもって輝くのだ。しかも丸3日は。
(魔力を抜いても、なかなか落ちないのよね。綺麗だけど……)
 これの所為で無断外出がバレてこってり絞られるアンネエルカであったが、それでも好奇心の趣くまま、お出かけしてしまう彼女なのであった。

(終)

登場キャラクター

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0