名探偵はそこにいる

キャラクターノベル制作 真柄 葉納品 2021年04月03日 20時58分29秒

 今日も春の陽気に誘われてリブラネスタの大通りは人々でごった返していた。

「にゅふふ……この名探偵サフィラから逃げられると思っているのかい?」

 そんな賑わう街のとある路地。山と積まれた木箱の隙間に顔を突っ込み、路地奥を覗く一人のエルフの姿があった。

 その名もサフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブ。熟練の冒険者にして名探偵の名をほしいままにするクールな存在だ。
 多才な彼女の元には日々多くの謎(依頼)が舞い込む。
 ある日は、高層階の外壁掃除。煙突の煤を浴びてきちゃないのだ。
 そして、またある日は、地下水道のゴミさらい。フラれた彼氏に貰った指輪を一時の感情で捨てたけど、勿体ないから回収して売るんだって。
 またまた、ある日は愛犬の躾。賢い犬だけど涎がひどいから何とかしてくれって……それ、そう言う犬種だからね! 飼う前に気付いて!?
 こうして、サフィラの元に実に様々な謎(依頼)が寄せられるのだ。

 そして、今日の依頼といえば――。

「ねぇねぇ、サフィラちゃん。ちょっと聞いとくれよ――」
 馴染みの魚屋のおばちゃんからだった。

 曰く、近頃多発する謎の鮮魚失踪事件。まるで脚でも生えたかのように忽然と消えるというのだ。

「ふふ~ん。なるほどなるほど。これは事件の香りがプンプンするねっ!」
 おばちゃんの話を聞き、サフィラは徐にハンティング帽を取り出した。
「さぁ、詳しく教えてくれたまえ、わとんそ君」
 「誰だい?」というおばちゃんを気にもせず、その話に耳を傾ける。
「――ふむふむなるほど。今までに失踪したのがサンマ3匹にアジ5匹。イワシが12匹!? これは大量失踪事件……大事件じゃない!」
 いつの間にかキセルと虫眼鏡まで装備していたサフィラが大声を上げた。
「安心しておばちゃん! いや、わとんそ君! この事件は名探偵サフィラが必ず解決してあげる! ばっちゃんの名にかけて!」
 「あ、ああ、よろしくたのむよ」というおばちゃんの声援を背に受けながら、サフィラ、今日のお仕事始動!

●
「あたしの経験から言うと、お魚に足が生える事は無いと思うんだよね。だとすると、きっと犯人は別に居る! そう、これは失踪事件なんかじゃない……誘拐事件なんだよ!」
 路地に向かいグッと拳を握るサフィラを、通りを行き交う人々は物珍しそうに眺めて通り過ぎていく。
「という事で、犯人ちゃんはどこかな~」
 そんな通行人の事など気にもせず、サフィラは木箱を飛び越え路地へと入っていった。

 薄暗い路地には様々な情報が転がっている。
「ほう……骨。今夜はチキンにしよ」
「ふむ……抜け毛。あのおじさんの頭(プライド)も随分と寂しくなってきたもんね」
「これは……磯の香! まさか、被害者じゃ……!」
 クンクンと鼻を鳴らしたサフィラは、カッと目を見開くと路地を駆け抜けた。

「あ、どうもこんにちは」
 路地を抜けた先は行き止まりだった。
 目の前にはにゃぁーと間延びした鳴き声でなく虎柄をした猫が一匹。
「お嬢さん、つかぬことを聞きますが、この辺りで魚攫い犯を見かけ――」
 サフィラはのんびりと欠伸するネコを驚かさないようにと、ゆっくりと近づいて……そして、見てしまった。
「……そ、その夥しい数の白骨死骸は!」
 げぷっと息を吐く猫の足元には、幾つもの白骨(魚)が散乱していたのだ。
「ふ……ふふふ……! やはり、この名探偵サフィラの鼻は全ての謎を嗅ぎ分ける! この泥棒ネコ! 大人しくお縄を――って、あれ? いない……?」
 ついに(偶然)見つけた犯人に、お決まりの前口上をぶつけようとポーズを決めるも、容疑者の姿はいつの間にか消えている。
「おやや? どこいった?」
 サフィラはきょろきょろと辺りを伺うが、ここは行き止まり。どこにも逃げ場は――。
「って、居たぁ! あんな高い所に!」
 無いだろうと高をくくっていたら、ネコは正面の壁の上を悠々と横切っている。
「このあたしから逃げようなんて、百と八年早いよ!!」

 かくして、人知れず始まった路地裏大捜査線。泥棒ネコを追う、名探偵サフィラの運命やいかに! 次回、『崩れ去る自信』、こうご期待!

「まだ字数余ってるよね!?」

 …………おーっと、ここでネコが姿をくらませたぞ! 急げサフィラ! 負けるなサフィラ! 魚屋の平和は君にかかっている!
「くっ! 精霊さん(ナレーター)後で覚えといてよ! こら、まてぇぇ! ネコ、逃がさないぞ!!」
 決して常人では見る事の出来ない精霊さん(ナレーター)に一瞥くれると、サフィラは塀を飛び越え猫を追っていった。

(割愛)

「ふっふっふ……あたしの勝ちだね」
 ついに逃げ場のない路地へとネコを追い詰めたサフィラは、じりじりと距離を詰めていく。ネコも負けじと威嚇するが、実力差は明らかだった。
「よし、捕まえたっ! これで事件解決だねっ!」
 がばっと飛びつきネコを捉えたサフィラ。首根っこを掴まれぷらーんと伸びるネコを手に、泥だらけの彼女は満足げに何度も頷いたのだった。

登場キャラクター

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0