4月X日 『攻撃魔法・実技』 第1回目
王立アプリーリス魔法学院 イベントノベル(テーマ)制作 夜帷かもめ納品 2021年04月01日 10時29分29秒
「それじゃあ、次」
「はいっ!」
まだ少し緊張の残る、だがやる気に満ちた声が青空へと響いた。
「名前と学籍番号を」
「ネーヴェ・グラヌローザ、学籍番号2087番。ドラゴン寮ですっ!」
「所属寮は言わずとも宜しい。では――始めて」
しまった、という焦りが少女の顔に浮かぶのもつかの間。しっかりと杖を握り、両足を軽く広げて地面を踏みしめるとネーヴェは呪文の詠唱を始めた。
「五大精霊の祖に連なる炎の精霊、生命の火を掌りし偉大なる鱗の王よ、我が呼びかけに応えて力を示せ――」
座学で諳んじた文言を、一字一句確かめるように彼女は声を上げる。煌めく雲母のような粒子が虚空に生じ、杖の先に集うと光条が四方八方へと広がる。あまりの眩さにネーヴェが目を細めると、後方から叱責が飛んだ。
「標的から目を逸らさない。眩しすぎる場合には杖の先を下げなさい」
つい返事をしそうになるが、詠唱の途中なので集中を切らす事はできない。言われた通りに脇を締めて先端を構えなおすと、視線の先から光源が外れたことで50m先の標的が良く見えた。
「燃え盛る・火球!」
球状に極限まで濃縮された魔力が火の玉となり、打ち出されると標的を巻き混んで激しく燃え盛る。轟音が、衝撃波に遅れてネーヴェの髪を揺らした。
「よし――合格。下がって良し」
講師の言葉に、少女はぺこりとお辞儀をして待機列へと戻っていく。入れ違いに、次の生徒が講師の下へと走っていった。待機列の中に戻ったネーヴェは、級友たちへと二言、三言何やら言葉を交わす。初めての『攻撃魔法・実技』の演習。今日はまず魔法がしっかりと発動すれば合格といったところである。魔法の行使に成功したネーヴェはクラスの中でもまあ上々の成績と言えるだろう。
自身を囲む級友へと笑みを返し、ぐるりを見回したネーヴェは怪訝な顔をする。
――待機列に残していた筈の、使い魔が見当たらない。
「あれ……アーテル?」
どこへ行ったのかと探してみれば、列の更に後方、花壇の植え込みに隠れて毛並みを膨らませている子猫の姿があった。
「ふふ、びっくりしちゃった? 大丈夫。おいで?」
ネーヴェが寄ってしゃがみ込むと、小さな子猫が彼女の脚へと纏わりつき、手のひらをぺろりと舐めた。火球が弾ける音に驚いたのであろう、その瞳はまんまるに見開かれている。
ネーヴェだけではなく、アーテルもまだ魔法学院の生活にまだ慣れていない。そんな新学期の一日であった。
「はいっ!」
まだ少し緊張の残る、だがやる気に満ちた声が青空へと響いた。
「名前と学籍番号を」
「ネーヴェ・グラヌローザ、学籍番号2087番。ドラゴン寮ですっ!」
「所属寮は言わずとも宜しい。では――始めて」
しまった、という焦りが少女の顔に浮かぶのもつかの間。しっかりと杖を握り、両足を軽く広げて地面を踏みしめるとネーヴェは呪文の詠唱を始めた。
「五大精霊の祖に連なる炎の精霊、生命の火を掌りし偉大なる鱗の王よ、我が呼びかけに応えて力を示せ――」
座学で諳んじた文言を、一字一句確かめるように彼女は声を上げる。煌めく雲母のような粒子が虚空に生じ、杖の先に集うと光条が四方八方へと広がる。あまりの眩さにネーヴェが目を細めると、後方から叱責が飛んだ。
「標的から目を逸らさない。眩しすぎる場合には杖の先を下げなさい」
つい返事をしそうになるが、詠唱の途中なので集中を切らす事はできない。言われた通りに脇を締めて先端を構えなおすと、視線の先から光源が外れたことで50m先の標的が良く見えた。
「燃え盛る・火球!」
球状に極限まで濃縮された魔力が火の玉となり、打ち出されると標的を巻き混んで激しく燃え盛る。轟音が、衝撃波に遅れてネーヴェの髪を揺らした。
「よし――合格。下がって良し」
講師の言葉に、少女はぺこりとお辞儀をして待機列へと戻っていく。入れ違いに、次の生徒が講師の下へと走っていった。待機列の中に戻ったネーヴェは、級友たちへと二言、三言何やら言葉を交わす。初めての『攻撃魔法・実技』の演習。今日はまず魔法がしっかりと発動すれば合格といったところである。魔法の行使に成功したネーヴェはクラスの中でもまあ上々の成績と言えるだろう。
自身を囲む級友へと笑みを返し、ぐるりを見回したネーヴェは怪訝な顔をする。
――待機列に残していた筈の、使い魔が見当たらない。
「あれ……アーテル?」
どこへ行ったのかと探してみれば、列の更に後方、花壇の植え込みに隠れて毛並みを膨らませている子猫の姿があった。
「ふふ、びっくりしちゃった? 大丈夫。おいで?」
ネーヴェが寄ってしゃがみ込むと、小さな子猫が彼女の脚へと纏わりつき、手のひらをぺろりと舐めた。火球が弾ける音に驚いたのであろう、その瞳はまんまるに見開かれている。
ネーヴェだけではなく、アーテルもまだ魔法学院の生活にまだ慣れていない。そんな新学期の一日であった。