冒険者サフィラ 〜おひとり様のグルメ〜
キャラクターノベル制作 広並 整納品 2021年04月05日 19時09分48秒
潮風が髪を洗う港町。夕暮れの陽射しが、白っぽい街をやわらかく染め上げている。
そんな街の、雰囲気にどことない疲れを滲ませた人々が行き交うストリートを、一人の少女がとぼとぼと歩いていた。
「おなかすいたぁ……」
彼女の名前はサフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブ。褐色の肌と、ヒトより尖った耳が特徴的な冒険者である。外見は年若い少女のようであるが、尖った耳が示す通り、彼女はエルフの一族だ。実年齢はその見た目とはかけ離れたものである。
くるくると鳴く腹を宥めるようにさすりつつ、サフィラは繁華街を目指して道を行く。詳細は省くが、冒険者稼業の関係で、昼食を食いはぐれたのである。
現在の彼女は腹ペコ大魔神。一刻も早く、暖かく美味しい食事にありつきたい所存。
と。
「……ん?」
空腹に研ぎ澄まされたサフィラの嗅覚が、何やら芳しい香りを拾い上げる。
それはどうやら薄暗い路地裏の奥から香っている様子。注視すれば、何やら飯屋の看板らしきものもみえるような。
「……」
さて、どうしよう。
サフィラは一瞬悩んで、直後に主張し始めた腹の虫に根負けした。
こういう地元民しか知らないような場所が「穴場」だったりするし、などと自分に言い聞かせ、サフィラは夕暮れに沈む路地裏へと足を向けるのであった。
「いらっしゃい」
店内は思いの外小綺麗だった。
オレンジ色の光に照らされた店内は、港町らしくどこか無骨さが漂う。いくつかある客席は6割がた埋まっており、まだ夕食には早い時間だというのにそこそこに繁盛している様子。客層も、あからさまな海の男やその家族らしき人物ばかりで、ここが地元民に愛されている店であることが察せられた。
どうやら当たりを引いたらしい。
店に入ったことでより強く香る美味しそうな芳香に、サフィラは期待に胸を弾ませる。
「お一人で?」
「は、はい!」
「ならカウンターへどうぞ」
無骨かつ屈強な海の男然とした男性が、カウンターの奥からサフィラを呼んだ。どうやらあの筋骨隆々な日焼け男が店主らしい。
いそいそとカウンターへ腰掛ければ、程なくしてお冷と手拭い、そしてなぜか小鉢ものが目の前へ提供された。
手ぬぐいはまだわかるとして、なぜお冷と小鉢が?
疑問に思ったサフィラが目をパチクリとして店主を見れば、無骨な男はその日に焼けた頬をニヤリと歪め、どこか照れくさそうに白い歯を見せる。
「お嬢ちゃん、冒険者さんだろう? この街が世話んなったからな、サービスさせてくれ」
「!! いいの!? ありがとう!!」
「いいってことよ。まぁそれ以降の食事代は払ってもらうがな!」
「もちろん!!」
「はっはっは、威勢がいいなァ! さて、悪いがここにゃあメニューなんて小洒落たもんは置いてねぇんだが……何か食いたいものはあるか?」
「おっちゃんのおすすめがあったら、それをお願いしたいな!」
「あいよ!」
威勢のいい少女に、店主はどこか嬉しそうな様子で調理へと取り掛かった。
常連らしき男が店主を揶揄って何事か話しかけたり、店主もそれに気安げに返したりと、ここは客との距離が近い店らしい。
さて。店の雰囲気はいいとして、味である。
サービスで提供された小鉢の中身は、どうやら魚を煮込んだものらしい。魚醤で煮たのか、茶色く照りのあるそれからは甘い香りがする。豪華なことに、砂糖か何かで味をつけている様子。
手ぬぐいで軽く手を拭いてから、サフィラは脂が滲んでいるそれをすくい上げ、恐る恐る口に含んだ。
「!!」
おいしい。
舌に乗せた瞬間、なんとも言えない旨味が舌の上を駆け抜けた。遅れて、それが甘みと魚の風味であることを理解する。
生臭さはなく、いくつかの香草をブレンドしたらしい清涼な香りが鼻を通り抜けていった。
おいしい。
サフィラは確信する。
この店、アタリだ。
「お待ち! スズキのアクアパッツァと、自家製のパンだ」
「わぁ!」
その予感を裏切ることなく、店主に提示されたのは見た目すらも食欲を誘うアクアパッツァ。
スズキだという白身魚をメインに、貝、トマト、ネギらしきものを煮込んだ透明なスープ。立ち登る芳香はハーブらしき香りも混じり合っており、香りだけでもう美味しそうである。
自家製だというパンも、どうやら夕食時に合わせて焼き上げているらしく、まだほのかに温かい。
期待に任せて一つ手に取り、パカリと割開けば、わずかな湯気とともに、ほんわりとした小麦のいい匂いが鼻腔を抜けていった。
ぜったい美味しい。これは間違いない。
ゴクリ。
思わず唾を飲み込んで、サフィラははしたないことを自覚しつつも、誘惑に負けてパンをスープにどっぷりと浸した。
そうして、ひたひたになったパンとスズキの欠片をスプーンですくい、一気に口の中へと招き入れる。
「ンン〜〜〜!!」
優勝!
旨さに目を輝かせ、サフィラは思う存分、今宵の晩餐に舌鼓を打つのであった。
そんな街の、雰囲気にどことない疲れを滲ませた人々が行き交うストリートを、一人の少女がとぼとぼと歩いていた。
「おなかすいたぁ……」
彼女の名前はサフィラ・アズラク・ナハルハルアリーブ。褐色の肌と、ヒトより尖った耳が特徴的な冒険者である。外見は年若い少女のようであるが、尖った耳が示す通り、彼女はエルフの一族だ。実年齢はその見た目とはかけ離れたものである。
くるくると鳴く腹を宥めるようにさすりつつ、サフィラは繁華街を目指して道を行く。詳細は省くが、冒険者稼業の関係で、昼食を食いはぐれたのである。
現在の彼女は腹ペコ大魔神。一刻も早く、暖かく美味しい食事にありつきたい所存。
と。
「……ん?」
空腹に研ぎ澄まされたサフィラの嗅覚が、何やら芳しい香りを拾い上げる。
それはどうやら薄暗い路地裏の奥から香っている様子。注視すれば、何やら飯屋の看板らしきものもみえるような。
「……」
さて、どうしよう。
サフィラは一瞬悩んで、直後に主張し始めた腹の虫に根負けした。
こういう地元民しか知らないような場所が「穴場」だったりするし、などと自分に言い聞かせ、サフィラは夕暮れに沈む路地裏へと足を向けるのであった。
「いらっしゃい」
店内は思いの外小綺麗だった。
オレンジ色の光に照らされた店内は、港町らしくどこか無骨さが漂う。いくつかある客席は6割がた埋まっており、まだ夕食には早い時間だというのにそこそこに繁盛している様子。客層も、あからさまな海の男やその家族らしき人物ばかりで、ここが地元民に愛されている店であることが察せられた。
どうやら当たりを引いたらしい。
店に入ったことでより強く香る美味しそうな芳香に、サフィラは期待に胸を弾ませる。
「お一人で?」
「は、はい!」
「ならカウンターへどうぞ」
無骨かつ屈強な海の男然とした男性が、カウンターの奥からサフィラを呼んだ。どうやらあの筋骨隆々な日焼け男が店主らしい。
いそいそとカウンターへ腰掛ければ、程なくしてお冷と手拭い、そしてなぜか小鉢ものが目の前へ提供された。
手ぬぐいはまだわかるとして、なぜお冷と小鉢が?
疑問に思ったサフィラが目をパチクリとして店主を見れば、無骨な男はその日に焼けた頬をニヤリと歪め、どこか照れくさそうに白い歯を見せる。
「お嬢ちゃん、冒険者さんだろう? この街が世話んなったからな、サービスさせてくれ」
「!! いいの!? ありがとう!!」
「いいってことよ。まぁそれ以降の食事代は払ってもらうがな!」
「もちろん!!」
「はっはっは、威勢がいいなァ! さて、悪いがここにゃあメニューなんて小洒落たもんは置いてねぇんだが……何か食いたいものはあるか?」
「おっちゃんのおすすめがあったら、それをお願いしたいな!」
「あいよ!」
威勢のいい少女に、店主はどこか嬉しそうな様子で調理へと取り掛かった。
常連らしき男が店主を揶揄って何事か話しかけたり、店主もそれに気安げに返したりと、ここは客との距離が近い店らしい。
さて。店の雰囲気はいいとして、味である。
サービスで提供された小鉢の中身は、どうやら魚を煮込んだものらしい。魚醤で煮たのか、茶色く照りのあるそれからは甘い香りがする。豪華なことに、砂糖か何かで味をつけている様子。
手ぬぐいで軽く手を拭いてから、サフィラは脂が滲んでいるそれをすくい上げ、恐る恐る口に含んだ。
「!!」
おいしい。
舌に乗せた瞬間、なんとも言えない旨味が舌の上を駆け抜けた。遅れて、それが甘みと魚の風味であることを理解する。
生臭さはなく、いくつかの香草をブレンドしたらしい清涼な香りが鼻を通り抜けていった。
おいしい。
サフィラは確信する。
この店、アタリだ。
「お待ち! スズキのアクアパッツァと、自家製のパンだ」
「わぁ!」
その予感を裏切ることなく、店主に提示されたのは見た目すらも食欲を誘うアクアパッツァ。
スズキだという白身魚をメインに、貝、トマト、ネギらしきものを煮込んだ透明なスープ。立ち登る芳香はハーブらしき香りも混じり合っており、香りだけでもう美味しそうである。
自家製だというパンも、どうやら夕食時に合わせて焼き上げているらしく、まだほのかに温かい。
期待に任せて一つ手に取り、パカリと割開けば、わずかな湯気とともに、ほんわりとした小麦のいい匂いが鼻腔を抜けていった。
ぜったい美味しい。これは間違いない。
ゴクリ。
思わず唾を飲み込んで、サフィラははしたないことを自覚しつつも、誘惑に負けてパンをスープにどっぷりと浸した。
そうして、ひたひたになったパンとスズキの欠片をスプーンですくい、一気に口の中へと招き入れる。
「ンン〜〜〜!!」
優勝!
旨さに目を輝かせ、サフィラは思う存分、今宵の晩餐に舌鼓を打つのであった。