万博で、友の故郷に思いを馳せて。

5周年イベントノベル(テーマ)制作 蓮華・水無月納品 2025年10月18日 01時10分56秒

 ぱかぱか万博会場は、今日も大いに賑わっている。その数多の来場者の中で、アオは身につけた小っちゃなもこもこポシェットの紐をぎゅっと握り、輝く瞳で辺りを見回した。

「ここがリルクたちのぱびりおん?」
「うん! みんな、いらっしゃい!」

 そんなアオに大きく頷きながら、パビリオン入り口で待ち構えていたリルク・C・ラトウィッジがアオに飛びついた。あーれー、とアオが小さな手足をばたつかせながら、されるがままに愛でられる。
 ナデナデ、ぷにぷに、むぎゅむぎゅ……楽しげにアオを愛で続けるリルクに、アンリ=スティロが大きなため息を吐き。

「こーら! アオが困ってるだろ」
「うわーん、アンリさん意地悪ー!」

 べりっ、とリルクとアオを引き剥がしたアンリに、リルクが泣き真似をしつつ抗議をするが、どこ吹く風だ。救出(?)されたアオはそのまま、ぴょん、と魑無の腕の中に飛び込む。
 可愛いわ、と魑無はアオをしっかり抱きしめてにこにこした。もこもこポシェットだって本当に良く似合っているし、リルクとじゃれ合っていた姿も可愛らしいし、アオは本当に何をしていても可愛い、可愛いの暴力だ。
 そんな魑無達を見渡して、アンリはこほん、と咳払いをし。

「ようこそ、俺達の街(ホワイトレター地域パビリオン)へ。楽しんでいってくれ」

 本来なら魑無達と知り合いなのは、アンリの妹分だ。だが折角のぱかぱか万博、恋人との楽しいひと時も持たせてやりたいと、今日はアンリが魑無達の案内を買って出たのである。
 ゆえに挨拶するアンリに、魑無達も異論はない。ゆえに笑顔で頷く面々の中で、アルバス・ロウルもまた問題ないと首を振った。

「アルバス・ロウルだ。今日はよろしく頼む」
「ルルト・アーキスだよ。今日はよろしくなんだよ」

 アルバスの相棒ルルト・アーキスも、にっこり笑顔で挨拶する。そんな2人にも改めて「よろしくな」と挨拶するアンリの傍らから、ルーシェ・アルジェントも「今日はよろしくね!」と手を振って。
 グッ、と力強く拳へと変える。

「万博の案内ならまっかせてー☆」
「うんうん。今日はボクも案内係だよ! 何でも聞いてね♪」
「そうだな、俺1人では行き届かないこともあるだろうから、リルクとルーシェも適宜案内を頼む」

 ルーシェとは反対側からそう胸を張ったリルク達に、アンリが苦笑しながら告げれば「はーい!」「まっかせて♪」と頼もしい返事が返って来た。本当に頼むぞと、苦笑いを深めながらアンリは後輩達に念押しする。
 そんな3人をじっと見ていた玻璃が、なあ、と首を傾げた。

「今日は制服なのか?」

 というのも、アンリ達は多少のデザインは異なれど、概ね似通った衣装を身につけていて。周囲を見回せば他にも幾人も、同じようなデザインの衣装で歩き回っている人が居る。
 それが、ほんの少しの違和感。玻璃がリルク達と遊ぶ時はいつも私服なので、見慣れなくて新鮮。
 そんな玻璃の疑問に、ああ、とリルクがにっこりした。

「そうなんだ! 可愛いでしょ♪」
「あら、お仕事用の服なのね。でも、似てるけどお揃いには見えないけれども……」
「部署でデザインが違うんだ」

 リルクの言葉に頷きはしたものの、不思議そうに瞬き首を傾げた魑無にルーシェが、くるん、とターンして自身の制服をお披露目する。黒の上下を基調にした制服の上から纏う、裾に模様の入った白の布がふわりと舞って、とても可愛らしい。
 そんなルーシェと共に、リルクもクルッとターンして。後輩達に笑いながらアンリは軽く両手を広げ、玻璃達に自身の制服が良く見えるようにする。
 わぁ、とルルトが目を輝かせた。

「ほんとだ! どれも可愛いね」
「ねー! そうだ、みんなも着てみる?」
「え、着れるの?」

 ルルトの言葉に嬉しそうにターンを追加したリルクの、軽やかな提案にルルトが目を丸くする。もちろん、着られるのなら着てみたいけれども――だってルルトはこの、可愛いデザインの制服に興味津々だったから。
 それゆえのルルトの驚きに、ふむ、とアンリが事も無げに言った。

「貸衣装か、手配しておこう」
「あっ、皆が試着するならわたし達もしようよ。他の制服も着てみたかったんだ~」
「いいね! ボク達も衣装チェンジだ!」

 アンリの言葉にルーシェがポンと両手を合わせ、リルクのテンションがさらに上がる。そんな後輩2人に、やれやれ、と苦笑いしたアンリは「わかったわかった」と心のメモに、貸衣装の人数追加を書き加えたのだった。


●
 アンリの先導の下、まず向かったのは貸衣装屋だ。

「人が多いからはぐれないように気をつけてな」
「ああ!」

 頷くカラッカの眼差しは、並ぶ建物に釘付けだ。ここに来るまでに見てきた他のパビリオン同様、雰囲気からして全く違う(自身の地域とは)。
 アルバスも感心を零した。

「いろんな国を旅してきたが、ホワレ地域のような場所は初めてだ。いつか行ってみたいものだな」
「うん。実際もきっと素敵な所なんだろうなぁ」
「アハハ、ぜひ来てよ!」

 ルルトも、まだ見ぬ異国に思いを馳せる。そんな2人をリルクが嬉しそうに勧誘しつつ、アンリの後をのんびり歩き。
 時に気になった事を尋ねながら――なおルーシェとリルクは半分くらい「それはねー……アンリさん解説お願い!」「さっすが、アンリさん物知り!」などとアンリに丸投げしていた――歩くうち、貸衣装屋に辿り着く。

「おじゃましまーす。わーぁ、たくさん、だねぇ」

 入店したアオは、ずらりと並ぶ貸衣装に目を見開いた。アンリ達が纏っている制服と、配色は同じモノトーンと金――だがそのデザインは色々だ。
 すごいねぇ、と衣装を見て回るアオに、癒されながら魑無も貸衣装を見始め。手近な1着を手に取ったアルバスが、その布の少なさに「ああ」と小さな声を上げた。

「そういえば、温暖な気候なんだったか。涼しげで良いな」
「そうかも。ちなみにそれはガードの制服だよ。アルバスさんは体格いいから、絶対似合うね」

 アルバスの言葉に朗らかに笑った、ルーシェが力強く太鼓判を押したのに、リルクも力強く頷く。

「ボクもルーシェと同意見! で、ルルトさんはディレッタントかな」
「ディレッタント? ……あ、アルバスとは違うデザインだ」

 リルクの言葉にきょとんと眼を瞬かせたルルトは、見せられたディレッタントの衣装ににっこりし。折角だからと試着に行った2人(アルバスとルルト)に、ヨシ! と頷き合ったリルクとルーシェは、残る4人の衣装も見立て始めた。

「玻璃はエクスプロア似合いそうだね。魑無さんはガード、カラッカはポルタル、アオはセイジの帽子がちょこんと乗ってたら可愛いよね♪」
「アオちゃんには、ポルタルの帽子も可愛いかも!」
「絶対にどっちも可愛いわ……!」

 あれこれ話すリルクとルーシェに、魑無が身悶える。どっちにしたら良いのかしらと、真剣に悩む魑無を見上げ、アオがこてんと首を傾げた。
 うーん、とルーシェはそんな魑無と玻璃、カラッカを見つめる。

「玻璃はディレッタントとかも似合いそうだね。あとはー、セイジの制服を着た知的な感じのカラッカとかも面白そう」
「おいコラ、面白いってなんだ? オレは知的だろうが」

 カラッカが怒って見せるも、その表情は楽しげで。アハハ、と笑い返してルーシェはじっ、と魑無を見た。
 そのまま暫し、熟考し――

「うーん、やっぱり魑無さんはガードの制服で戦う姿……うん、格好いい!」
「あー、姐さんにガードの制服、確かに似合いそうっスね」
「なぁに? 私は満場一致でガードなの?」

 カラッカまでそんなことを言い出したので、魑無は目を丸くしながら、ガードの制服をじっと見て。とにかく着てみましょうか、と試着室に向かう。
 他の3人も見立てて貰った制服を手に試着室に消え、リルクとルーシェも憧れてい(着てみたかっ)た制服へとお召替え。そうして出て来た8人(アンリ以外)は、互いの制服姿に歓声を上げた。
 ポルタルの制服を纏ったカラッカが、ひょい、とトンボを切る。

「思った通り、動きやすくていいな」
「あら、似合ってるじゃない。私はこんな感じね。アルバスもガードなら、並んでポーズでも取ってみる?」
「悪くない。こんな感じだろうか?」

 上機嫌に自身の衣装を見降ろしながら提案した魑無に、提案されたアルバスは頷き、それらしい構えを取ってみた。その横で魑無もそれっぽいポーズをしてみたら、カッコいい! と歓声が上がる。
 そうして皆に請われるまま、様々なポーズを取り始めた2人と共に、他の6人も壁の大きな姿見の前でポーズをつけ始め。その様子を眺めていたアンリが、そうだ、と声を上げた。

「玻璃、カラッカ。よかったらなんだが、写真を撮って妹分に渡してもいいか? 推し? だとかで、もらえたら喜ぶと思うんだ」

 なんでも以前、期間限定でアイドル活動をしていた2人のファンになったらしい。だから、と告げるアンリに、当の2人はきょとんと顔を見合わせて。

「構わないとも、アイドル期間は終わったがファンの為なら喜んで」
「オレも構わねぇぞ」

 快く頷けば、助かる、とアンリはほっと息を吐いた。そうして早速、撮影を始めたのだった。


●
 貸衣装で、ニル・バルティース繁華街をそぞろ歩く9人の耳に、ポッポー! と軽快な音が響く。なんだ? と驚いた者達に、蒸気機関車の音だよ、と胸を張ったルーシェが案内したのは蒸気機関車の展示場の1つだ。
 聳える鉄の塊に、アオがぴょこんと飛び上がった。

「これ、すっごくおっきー! のりもの?」
「蒸気の力で走る乗り物、だな。展示映像もある」

 アンリが指差した先には、蒸気機関車が走る映像が流れていた。へぇ……と面白そうに覗き込んだ皆の表情は、驚きに支配される。
 映像でもよく判る、蒸気機関車の力強さ。周囲を流れる景色を見れば、どれほどの速度で走っているのか一目瞭然だ。
 カラッカが驚きの声を上げた。

「こんなでかいのが、そんなに速く動くのか? すげぇな」
「かーっこいー!! すごい、ねぇ」

 アオは目をキラキラ輝かせている。だが玻璃やアルバスの感想は、どちらかと言えばカラッカ寄り。

「ウ魔車より早いのか!」
「な。魔界にも欲しいよな、これ」
「こんなものがうち(アニエピカ地域)にもあったら、どれだけ輸送が楽だろうか。乗り物にソファがついてるのか? 馬車にもつけられないものか……」

 話す玻璃とカラッカの横で、将来は個人で運送業を営みたいアルバスも、食い入るように映像を見つめている。そんな面々に、アンリがくいと蒸気機関車を指さした。

「乗ってみるか?」
「「「乗れるのか!?」」」

 刹那、ガッ! と身を乗り出した玻璃達に、頷くアンリに従いまずは客車(展示機の)に乗り込むと、誰もが目を輝かせながら忙しなく車内を見回した。すげぇ、と全ての座席に座ってみたり、座席の下を覗き込んだり。
 その興奮は、運転席に入ると最高潮。謎の計器に謎のボタン、レバーも幾つもあって、アルバスにとっては未知の小部屋だ。

(なんだこれは……だが俺はもういい大人だ、ルルトの前ではしゃぐわけには……)

 うずうずしつつ、アルバスは必死にそう自分に言い聞かせる。が、そんなアルバスを他所に、玻璃が目についたレバーをガチャガチャしている横では、カラッカが端から順番にボタンを押しまくり、アオなど操作パネルの上を縦横無尽に走っていて。
 アオの足が何かのボタンを踏むと、ポッポー! と軽快な音が響いた。む、とアルバスが無意識に上を見る。

「今のは汽笛か?」
「わーい、なったー!」
「アオ、どれ押したんだ?」
「その辺全部押せば良いんじゃねぇ?」

 大はしゃぎのアオの両脇から、玻璃とカラッカが汽笛のボタンを探し始めた。その様子を見ていたアルバスは、スッ、と3人の間に割って入る。

「この辺りのボタンを踏んだ時に鳴ったと思う」
「おッ、ここか!」
「やっぱ、運転席はテンション上がるよな。……俺も見ていい?」

 一緒に汽笛のボタンを探し始めた3人を、案内人らしく見守っていたアンリもついに、ボタンやレバーを触り(で遊び)始めた。出身地域の物とはいえ、運転席なぞ普段は入れない。
 そんな男性陣(大きな子ども)を見守るルルトの横で、ルーシェがエッヘンと胸を張った。

「ふふーん、すごいでしょ? 他にも飛行翼っていうのがあって、空を飛べるんだよ」
「そうなんだ? 空も飛べるなんてすごいね、ボクも飛んでみたいな」
「なんて楽しそうなのかしら。私も、カラッカに手伝ってもらって飛んだことはあるのよ」

 ルルトが驚きに目を丸くした横で、魑無が懐かしそうに笑う。それに今度はルーシェが、そうなんだ? と目を丸くした。
 うーん、と考えるように首を傾げ。

「多分、カラッカともいい勝負できるんじゃないかな?」
「ほほう、空でオレと勝負しようってのか? 受けて立つぜ♪」

 にっこり言ったルーシェに、カラッカが計器からこちらへ顔を向ける。楽しげなその顔に、魑無はクスクス笑み零した。

「じゃあ、その時は競争してみる? それにしても、あなたたちの地域には面白いものがたくさんあるのね」
「確かに……。なあ! アンタ等(アルバスとルルト)のトコもまた違う感じなのか?」
「そうだね、似てるところもあるけど」
「違う所が多いな」
「そうかー、どっちの地域も実際に行ってみてぇなっ!」

 カラッカの問いに、アルバスとルルトがそう応えれば、カラッカが全力で叫ぶ。そうよねえ、と魑無もうんうん頷いた――実際に行けばきっと、もっと楽しいはずだ。
 そう考える2人を始めとする皆に、リルクとルーシェがにこにこと言う。

「いつか遊びに来なよ! 機関車にも乗れるよ!」
「うんうん、皆ならいつでも大歓迎だよ♪」

 それに、カラッカやアルバスも「こっちも歓迎するぜ」「ああ、案内は任せてくれ」と大きく胸を叩いたのだった。


●
 あちらこちらを見て回り、少し疲れを覚え始めた頃に辿り着いたのはゴンドラだ。わくわくと列に並び、順番が来たところでフェータ(漕ぎ手)の誘導に従い、次々と乗船する。
 アルバスもまたゴンドラに乗り込むと、ルルトへと手を差し伸べた。

「お手をどうぞ」
「ふふ、ありがと」

 そんなアルバスを見上げて微笑みながら、ルルトもまた彼の手を借り船上の人へ。全員乗った事を確認したフェータが、緩やかにゴンドラを運河へ滑らせ始めた。
 すぐに、わぁ……と誰からともなく感嘆が零れ落ちる。玻璃は、ゆったりと流れて行く街並に目を細めた。

「綺麗な街だな」
「ええ、なんて綺麗なのかしら」

 それに魑無も、穏やかに頷く。そうして感嘆を零しつつ、2人が時々目を配るのは「マ魚、いるかなぁ……♪」と、いつしか熱心に水面を覗き始めたアオの事。
 あんまり熱心に覗いているから、いずれ落ちるのではないかとひやひやしていたら案の定、ゴンドラが小さく揺れた拍子に水面へ落ちかけたアオを、危うく玻璃がキャッチした。

「やれやれ。気をつけろよ」
「んー? うん! キレーだねぇ」

 それに、アオはきょとんと小首を傾げつつ(助けられた事すら気付かぬまま)も、にっこり大きく頷いて。船首の方でもアンリがほっと胸を撫で下ろしていたら、カラッカが大きく伸びをした。

「のんびりするのに丁度いいな。でも、もっと揺れたりスピードを出しても楽しそうだ」
「そうねぇ、景観を眺めるにはちょうどいいけど、早さがほしい時もあるわよね。スキッパーっていうのは私たちは乗れないの?」
「アンリさーん!」

 頷く魑無がルーシェに尋ねれば、笑顔でアンリを振り返った(に丸投げした)。はいはい、とアンリもすっかり慣れた様子で苦笑する。
 おそら、とびたいね……♪ と尻尾を振っていたアオが、ふいに差し掛かった大きな影に驚き、顔を上げた。

「あれは何、かなぁ」
「バルト=サージュ記念塔だな。実際の塔にはアルフライラを一望できる展望台がある」
「ねえ、登れるの? 上からの景色も見てみたいわ」

 アオの不思議そうな声に、アンリが説明すれば魑無がこくりと首を傾げた。フェータが「着けますか?」と確認する。
 それらの声にふとアルバスの脳裏に、ルルトと共にシャルガネ(アニエピカ地域)で乗った小舟が思い起こされた。懐かしさに目を細めながら、無意識にルルトを見やったアルバスに、気付いたルルトが微笑む。

「シャルガネの時とはまた違うけど、楽しいね」
「ああ、そうだな」

 ルルトもまた、同じことを思い出していたらしい。それを嬉しく思いながら、アルバスは景色と、それらを賑やかに楽しむ皆を微笑ましく見つめる。
 やがて話がついて、ゴンドラはゆっくり船着き場へ到着した。そうして一行はゆっくりと、塔を上り始めたのだった。

●
 適度な運動(塔での階段昇降)を終えた彼らが辿り着いたのは屋台街(飲食エリアの1つ)だ。もこもこポシェットを掲げたアンリが、簡単にシステムを説明した。

「基本は普通の屋台と一緒だ。支払いはこれを翳すだけ。……いや、便利だよなぁ」

 しみじみとポシェットを見るアンリに、うんうんと幾人もが頷き。先頭に立って歩き始めたルーシェが、まず向かったのは麺屋台だ。

「わたしのおススメはこれ! 米粉で作った麺料理なんだよ」
「米粉麺は揚げても炒めてもおいしいよ♪」
「そうなのか……む、シャルガネの料理に似ているな」

 すかさずリルクも口を挟むのに、頷きながら屋台を覗き込んだアルバスは、軽い驚きの声を上げた。ルルトも横から覗き込む――将来は食堂を経営したいルルトにとって、様々な地域の料理は好奇心を刺激してやまない。

「本当だ、少し似てるね。……って、この麺はお米でできてるんだ?!」
「ルルトさん達のところにもこういうのあるんだ?」
「うん、でもボクらの地域(シャルガネ)の料理は、麺は小麦でできてて」
「それなら東方屋台かなー」

 ルルトの説明に、リルクがぐるりと屋台を見回し。歩き始めた3人を見送り、こっちも買い物続けよっか♪ とルーシェは屋台案内を再開した。
 肉料理、魚料理、蒸し物に焼き物。

「龍眼ソーダもしゅわしゅわしてて美味しいよ♪」
「それも貰うわ。アオ達がいるから、皆で分ければいろいろ食べられるものね」
「確かにな。――アオ、おいで。魔猫サイズでは見にくいだろう」
「わーい、ありがとー」

 魑無の言葉に、玻璃が頷きながら足元をてててと歩くアオを抱き上げれば、すっかり視界が広くなったアオの瞳がキラキラ輝く。それを見下ろしながら、食べ盛りだから今日は思い切り食べさせてやりたいと、玻璃が言った。

「アオは、どこを見たい? どれでも好きなだけ買っていいぞ」
「なんでもいーの? やったー♪」

 それにますます目を輝かせたアオが、早速見たがったのは魚料理。はいはい、と歩き出す玻璃を追いつつ魑無は、どんどんと買い物を続け。
 アオが、「ぼくもピッて、する!」と玻璃の腕をてしてし叩いた。それに頷き玻璃が次の買い物を済ませると、タッチするのはアオ。

「できたー!」
「上手よ、アオ。さて、そろそろ集合場所に向かいましょうか?」

 誇らしげにポシェットを両手で掲げるアオに、にこにこしながら魑無がそう提案し。集合場所(飲食コーナー)へ戻ると、リルクが「あれ」と目を瞬かせた。

「アオも食べて大丈夫なの? 猫用フードの方がいい?」
「魔猫用フード? 食えなかねぇだろうが……オレ等と一緒の方が喜ぶんじゃね?」

 リルクの言葉に、カラッカが当猫(アオ)を振り返る。その先で、当のアオはぶんぶん首を振った。

「魔猫のごはん? やだー、みんなといっしょがいー!」
「ええ、一緒に食べましょう。ルルト達もよかったらどうぞ。アンリ達も休憩したら?」

 そんなアオの頭をにっこり撫でた、魑無が皆に声を掛け。アンリもそれに有り難く頷いて、全員で屋台飯を食べ始める。
 早速、東方風魚の煮つけを口にしたルルトは、うん、と頬を綻ばせた。

「味付けがシャルガネっぽいね」
「このマ魚、はじめてみたー。おいしい」

 アオも同じ煮つけを食べてご満悦。この魚(ホワイトレター地域)は、アオの知る魔魚(ブルブレ地域)と見た目は違うが、味は似通っている。
 ルルトはどんどん東方料理に手を付けては、「これは、具材はちょっと違う……のかな?」などと呟き。それにアルバスも、「似たような具材だと……」などと相槌を打って。
 ふと、笑んだ。

「ふふ、別の地域に来ているというのに、ルルトと旅したことを思い出してしまうよ」
「ボクも、みんなのところの料理も食べてみたくなったよ!」
「確かに特色があって楽しそうだよね。カラッカ達の所は、どう?」

 そんなアルバスに、頷いたリルクとルーシェがカラッカ達に尋ねれば、4人は顔を見合わせた。

「料理は似たようなの(ホワイトレター地域と)を見かけるが……ウチの地域は素材が結構特徴的じゃねぇかな? 色とか見た目とか」
「そうね、うちの素材って魔魚や魔物肉でしょ? 特徴的なのなんて玻璃の飴だけよ」

 カラッカの言葉に、魑無が大きく頷けば、当の玻璃も同意した。

「定番料理というのはないな、多分。独自の味を知りたいなら、カラッカが好きな飴を持ってくればよかったか」
「誰が好きな飴だって? あんなの食えたもんじゃねぇよ」
「わざと尖った味になるように調合してある。普通じゃ面白くないだろう?」

 鼻に皺を寄せて反論するカラッカに、玻璃は少しも動じない。だが、「玻璃の味覚はちょっと信用できないなぁ」とリルクが苦笑すれば、さすがにちょっと苦い顔になった。
 それにクスリと笑ったルルトは、ふと思い出す――後で自分でも作ってみたいと、米粉麺の作り方をアンリに聞きたかったのだ。ゆえにアンリを見たルルトは、だが目の端に映ったブースに気付いて首を傾げた。

「あれは……?」
「お、あれは郵便コーナーだ。限定で万博デザインの便箋に封蝋もあるんだ。今日の記念に是非どうぞ」
「記念切手もあるよ!」
「わたし達がデザインしたのもあるんだ」

 それにアンリが嬉しそうに応えれば、リルクとルーシェも身を乗り出す。そんな3人の話を聞き、ルルトは特設ブースまで足を運んだ。

「万博限定の受付印を押してもらえるんだ? 封蝋も気になる! アルバスも一緒に書かない?」
「ほう。記念にいいな」
「でしょ。どれがいいかなぁ……」

 ルルトの手招きに、アルバスも特設ブースで一緒に、友人や家族の顔を思い浮かべながら便箋や切手を選び始める。絵葉書はお土産にも買う事にしたら、今度は便りの文面を考える時間だ――うち1通は自分達宛。
 すっかり郵便屋さんの顔のリルクが、誇らしげに言った。

「書いたらここのポストに出してね。ボク達が責任を持ってお届けするよ!」

 その言葉にリーシェも、アンリも力強く頷く。頼もしいなと笑い、アルバスとルルトは――いつの間にか他の4人も、手紙を認めるのだった。

登場キャラクター

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0