ブラッド・バースディ
四ノ月血戦 イベントノベル(テーマ)菊の氏族制作 おおくまねこ納品 2025年05月06日 13時17分19秒
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俺の名はレピド。もうすぐ俺の十才の誕生日だ。俺には母親はいないが、父親ならいる。その父さんも本当の父親ではないらしい。けれど、たとえ血の繋がりはなくっても、ペデラは俺の大好きな父さんだ。
だから俺は、ペデラに一世一代の誕生日プレゼントをねだることにした。
「俺を、ペデラとおんなじ吸血鬼にして」
俺がそう告げた時、ペデラは目を大きく見開いた。
「……気付いてたんだな」
「うん」
俺は頷いた。
「俺もなりたい、ペデラみたいに」
もう一度言うと、ペデラは泣き笑いのような、困ったような表情を浮かべた。
十年も共に過ごしたら、父と自分が違う生き物だということは嫌でも理解してしまう。
食事だって俺が大好きなお肉を食べても、ペデラには味がわからず栄養にもならない、という。それが悲しかった。一緒の物を食べて、同じ感想を言いたかった。
「ダメだ。二度と言うな」
けれど、ペデラは険しい顔で俺の願いを拒否した。
「でも、俺は」
「ダメなものはダメだ。吸血鬼なんて、ロクなもんじゃない」
俺は何度叱られても断られても、何度も何度もお願いした。そしてそのたびにペデラは激怒した(手は上げられなかったが)。けれど、俺は諦めなかった。
「何度言ったら分かるんだ!! 俺はお前を吸血鬼にはしない!!」
「でも……俺ば……! いっしょに、ごばんだべたいがら……!! ぺデラと!!」
俺は父の怒鳴り声に負けないぐらいの声で叫んだ。ちょっと近所迷惑だったかもしれない。
そしてとうとう、あの父が折れたのだ。
「……わかった。次の満月の晩、儀式をしてやる。誰にも言うなよ」
「うん!」
俺は満面の笑みで返事をしたが、ペデラはひどく悲しそうな顔をしていた。
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とうとうペデラが儀式をしてくれると言ってくれて、とてもとても嬉しかった。
誕生日当日はいつもより良いご飯を食べて、吸血鬼化の儀式の為に外に出た。
「儀式は時間がかかる。眠っていていいぞ」
俺は撫でられながら幸せな気持ちで眠りについた。意識が闇に落ちる寸前、俺の顔に熱い雫が一滴垂れてきた気がした。
●
気がつけば、拾った赤子はすくすくと育ちもうすぐ十歳になろうとしていた。この十年、それなりに苦労もしたけれど、それでも確かに幸せだった。疎ましく思っていた古巣のことも、物資の調達に大活躍した使い魔の術をくれたことだけは、心から感謝した。
だからこの「おねだり」には心底困ったのだ。オレは思いつく限りの吸血鬼のデメリットを列挙し、何度も言い聞かせた。けれど、誰に似たのかこの頑固な息子はまるで諦めない。だから、こうするしかなかった。
レピドは俺の吐いた嘘を信じ、自分も吸血鬼になれるのと疑うことなく、安らかに眠っている。
だが、俺がこれからすることはレピドを「子」にする儀式ではなく、記憶を封印する呪術だ。もうこれ以上……一緒にはいられない。
「さようなら、愛しい子。どうか君に神の御加護があらん事を」
オレはレピドの髪をそっと撫でると、最後の後始末の為に街に向かおうとした。……が、その前に、見張りの使い魔の目を通して、無数の松明の灯りがここに近づいていることに気付いた。そして、風に乗って漂ってくる甘い香り--。間違いない。ハンターだ。
「――そうか。手間が省けたぜ」
長年に渡る潜伏がなぜ今日バレてしまったのかは分からない。だが、タイミングとしてはある意味完璧だ。あの村で唯一生き残ったことといい、レピドは本当に神に祝福されているのかもしれない。
「もしかして、この未来も見えていたのか……? 師匠」
オレは来客達を迎えるべく、屋根の上に登った。オレは三流吸血鬼だが、呪術ならいくつか習得している。自衛に使える程度の術だが、素手で応戦するよりは多少はサマになるだろうさ。
「もう隠れるつもりはないようだな。邪悪なる魂よ、主の名の下に汝を滅ぼさん」
「オレを、滅ぼす? 家畜風情がずいぶんと思い上がったもんだな!」
●
「ん……」
俺は瞼をこすり、目を覚ます。
……目が覚めたら知らない場所で、知らないヒト達に囲まれていた。
「運がよかったね、坊や。君はもう少しで、邪悪な吸血鬼にされてしまうところだったんだよ」
「感謝するのだな。聡い隣人と、我々聖騎士団と、そして偉大なる主に」
俺が目を覚ますのを待っていたのは、立派な白い服を着た連中だった。今夜、邪悪な吸血鬼を討ち滅ぼしたと、自慢そうに語っていた。俺は吸血鬼、と聞いた時、なぜか心が酷くざわついた。
「君の名は?」
一番立派な服を着ていたおじさんが俺に尋ねてきた時、俺はハッとした。
「俺は一体、誰なんだ?」
俺は、自分の名前も、生い立ちもまるで思い出せないことに気付いた。
……。
「大丈夫だよ、坊や。これからは君の父は慈悲深き主だ」
こうして、全てを忘れたレピドは、『ブラッド』と名付けられ、孤児院で吸血鬼ハンターとして育てられることとなった。
俺の名はレピド。もうすぐ俺の十才の誕生日だ。俺には母親はいないが、父親ならいる。その父さんも本当の父親ではないらしい。けれど、たとえ血の繋がりはなくっても、ペデラは俺の大好きな父さんだ。
だから俺は、ペデラに一世一代の誕生日プレゼントをねだることにした。
「俺を、ペデラとおんなじ吸血鬼にして」
俺がそう告げた時、ペデラは目を大きく見開いた。
「……気付いてたんだな」
「うん」
俺は頷いた。
「俺もなりたい、ペデラみたいに」
もう一度言うと、ペデラは泣き笑いのような、困ったような表情を浮かべた。
十年も共に過ごしたら、父と自分が違う生き物だということは嫌でも理解してしまう。
食事だって俺が大好きなお肉を食べても、ペデラには味がわからず栄養にもならない、という。それが悲しかった。一緒の物を食べて、同じ感想を言いたかった。
「ダメだ。二度と言うな」
けれど、ペデラは険しい顔で俺の願いを拒否した。
「でも、俺は」
「ダメなものはダメだ。吸血鬼なんて、ロクなもんじゃない」
俺は何度叱られても断られても、何度も何度もお願いした。そしてそのたびにペデラは激怒した(手は上げられなかったが)。けれど、俺は諦めなかった。
「何度言ったら分かるんだ!! 俺はお前を吸血鬼にはしない!!」
「でも……俺ば……! いっしょに、ごばんだべたいがら……!! ぺデラと!!」
俺は父の怒鳴り声に負けないぐらいの声で叫んだ。ちょっと近所迷惑だったかもしれない。
そしてとうとう、あの父が折れたのだ。
「……わかった。次の満月の晩、儀式をしてやる。誰にも言うなよ」
「うん!」
俺は満面の笑みで返事をしたが、ペデラはひどく悲しそうな顔をしていた。
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とうとうペデラが儀式をしてくれると言ってくれて、とてもとても嬉しかった。
誕生日当日はいつもより良いご飯を食べて、吸血鬼化の儀式の為に外に出た。
「儀式は時間がかかる。眠っていていいぞ」
俺は撫でられながら幸せな気持ちで眠りについた。意識が闇に落ちる寸前、俺の顔に熱い雫が一滴垂れてきた気がした。
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気がつけば、拾った赤子はすくすくと育ちもうすぐ十歳になろうとしていた。この十年、それなりに苦労もしたけれど、それでも確かに幸せだった。疎ましく思っていた古巣のことも、物資の調達に大活躍した使い魔の術をくれたことだけは、心から感謝した。
だからこの「おねだり」には心底困ったのだ。オレは思いつく限りの吸血鬼のデメリットを列挙し、何度も言い聞かせた。けれど、誰に似たのかこの頑固な息子はまるで諦めない。だから、こうするしかなかった。
レピドは俺の吐いた嘘を信じ、自分も吸血鬼になれるのと疑うことなく、安らかに眠っている。
だが、俺がこれからすることはレピドを「子」にする儀式ではなく、記憶を封印する呪術だ。もうこれ以上……一緒にはいられない。
「さようなら、愛しい子。どうか君に神の御加護があらん事を」
オレはレピドの髪をそっと撫でると、最後の後始末の為に街に向かおうとした。……が、その前に、見張りの使い魔の目を通して、無数の松明の灯りがここに近づいていることに気付いた。そして、風に乗って漂ってくる甘い香り--。間違いない。ハンターだ。
「――そうか。手間が省けたぜ」
長年に渡る潜伏がなぜ今日バレてしまったのかは分からない。だが、タイミングとしてはある意味完璧だ。あの村で唯一生き残ったことといい、レピドは本当に神に祝福されているのかもしれない。
「もしかして、この未来も見えていたのか……? 師匠」
オレは来客達を迎えるべく、屋根の上に登った。オレは三流吸血鬼だが、呪術ならいくつか習得している。自衛に使える程度の術だが、素手で応戦するよりは多少はサマになるだろうさ。
「もう隠れるつもりはないようだな。邪悪なる魂よ、主の名の下に汝を滅ぼさん」
「オレを、滅ぼす? 家畜風情がずいぶんと思い上がったもんだな!」
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「ん……」
俺は瞼をこすり、目を覚ます。
……目が覚めたら知らない場所で、知らないヒト達に囲まれていた。
「運がよかったね、坊や。君はもう少しで、邪悪な吸血鬼にされてしまうところだったんだよ」
「感謝するのだな。聡い隣人と、我々聖騎士団と、そして偉大なる主に」
俺が目を覚ますのを待っていたのは、立派な白い服を着た連中だった。今夜、邪悪な吸血鬼を討ち滅ぼしたと、自慢そうに語っていた。俺は吸血鬼、と聞いた時、なぜか心が酷くざわついた。
「君の名は?」
一番立派な服を着ていたおじさんが俺に尋ねてきた時、俺はハッとした。
「俺は一体、誰なんだ?」
俺は、自分の名前も、生い立ちもまるで思い出せないことに気付いた。
……。
「大丈夫だよ、坊や。これからは君の父は慈悲深き主だ」
こうして、全てを忘れたレピドは、『ブラッド』と名付けられ、孤児院で吸血鬼ハンターとして育てられることとなった。