少し休んで、またもう一歩
四ノ月血戦 イベントノベル(テーマ)白の司祭制作 白葉うづき納品 2025年05月24日 13時22分27秒
暖かで気持ちのいい日だった。教会に併設された孤児院の子どもたちはまだお休みの時間で、同じお手伝いさんが見てくれている。今のうちにと、ルナは教会の掃除を行っていた。
箒で石段に付いた土を払いながら、ルナは小さく息を吐く。そうして視線を落としたと同時に、見慣れた姿を見つけて顔を綻ばせた。
「また来てくれたんですね、たわし」
「なぁん」
ふわりと広がる司祭服を揺らし、しゃがんで迎えたのは、最近教会に来てくれる猫。『たわし』は、よく訪れてくれるこの子に親しみを覚えたルナが付けた名だ。自分でもなかなか可愛らしい名前だと思う。
彼、もしくは彼女のお気に入りは日のよく当たる石段だ。ちゃっかり掃除後の綺麗な場所で日向ぼっこをするたわしを眺めながら、ルナも調子よく掃除を進めていく。気ままに箒へじゃれつく姿も可愛らしくて、ルナは思わず笑みを浮かべた。
*
「ありがとうございます、たわし」
「にゃ?」
掃除も一通り終わり、お腹が空いたのか擦り寄ってきたたわしに干し魚をあげながら、ルナは呟く。話を聞いてくれているのか、返事をくれたたわしに手を伸ばし、柔らかくその頭を撫でた。たわしも気持ちよさそうに目を細める。
「ちょっとだけ、ちょっとだけですよ、私、元気がなかったんです」
――四ノ月決戦が始まったことで、吸血鬼の襲撃が目に見えて増えていた。ルナもまた白の司祭。招集があれば馳せ参じ、力を以て吸血鬼を狩らねばならない。けれどルナは、一方的に吸血鬼を悪だと決めつける方針に、心から賛同が出来なかった。人を害する者はその限りではないが、そうでない吸血鬼もいることを知っている。
そんな吸血鬼を、ルナは逃がしてしまうのだ。養父は理解してくれる一方、ルナの振る舞いを非難する仲間もいる。今日は、そんな夜が明けた朝だった。
「皆にしてみたら怒るのは当然ですよね。でも……」
日常の合間に、ルナはよく吸血鬼のことを考える。全員とは言わない。一部の彼らとなら、共存していくことが出来るのではないか、と。
「たわし?」
いつの間にか、ルナの足元にたわしがいた。体を擦りつけた後、置いていた箒を猫の手でつつく。遊びたいのだろうか。可愛らしい仕草に、ルナは瞳を細めて立ち上がった。
箒で遊んだ後、石段に座るルナの膝へとたわしが乗る。木漏れ日の差し込む場所で、柔らかな風が髪を揺らす。
ルナは久しぶりに、穏やかな空気を胸いっぱいに吸い込んだ。
箒で石段に付いた土を払いながら、ルナは小さく息を吐く。そうして視線を落としたと同時に、見慣れた姿を見つけて顔を綻ばせた。
「また来てくれたんですね、たわし」
「なぁん」
ふわりと広がる司祭服を揺らし、しゃがんで迎えたのは、最近教会に来てくれる猫。『たわし』は、よく訪れてくれるこの子に親しみを覚えたルナが付けた名だ。自分でもなかなか可愛らしい名前だと思う。
彼、もしくは彼女のお気に入りは日のよく当たる石段だ。ちゃっかり掃除後の綺麗な場所で日向ぼっこをするたわしを眺めながら、ルナも調子よく掃除を進めていく。気ままに箒へじゃれつく姿も可愛らしくて、ルナは思わず笑みを浮かべた。
*
「ありがとうございます、たわし」
「にゃ?」
掃除も一通り終わり、お腹が空いたのか擦り寄ってきたたわしに干し魚をあげながら、ルナは呟く。話を聞いてくれているのか、返事をくれたたわしに手を伸ばし、柔らかくその頭を撫でた。たわしも気持ちよさそうに目を細める。
「ちょっとだけ、ちょっとだけですよ、私、元気がなかったんです」
――四ノ月決戦が始まったことで、吸血鬼の襲撃が目に見えて増えていた。ルナもまた白の司祭。招集があれば馳せ参じ、力を以て吸血鬼を狩らねばならない。けれどルナは、一方的に吸血鬼を悪だと決めつける方針に、心から賛同が出来なかった。人を害する者はその限りではないが、そうでない吸血鬼もいることを知っている。
そんな吸血鬼を、ルナは逃がしてしまうのだ。養父は理解してくれる一方、ルナの振る舞いを非難する仲間もいる。今日は、そんな夜が明けた朝だった。
「皆にしてみたら怒るのは当然ですよね。でも……」
日常の合間に、ルナはよく吸血鬼のことを考える。全員とは言わない。一部の彼らとなら、共存していくことが出来るのではないか、と。
「たわし?」
いつの間にか、ルナの足元にたわしがいた。体を擦りつけた後、置いていた箒を猫の手でつつく。遊びたいのだろうか。可愛らしい仕草に、ルナは瞳を細めて立ち上がった。
箒で遊んだ後、石段に座るルナの膝へとたわしが乗る。木漏れ日の差し込む場所で、柔らかな風が髪を揺らす。
ルナは久しぶりに、穏やかな空気を胸いっぱいに吸い込んだ。