血に交われば紅くなる
四ノ月血戦 イベントノベル(テーマ)白の司祭制作 空色みなも納品 2025年04月23日 23時58分30秒
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血染めの赤い糸に結ばれた二人、血塗られた運命を辿る――。
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闇夜に浮かぶ双丘の狭間に、一陣の風が吹き抜けた。
二つの丘には片や、白の司祭が修道女――ルアンナ・ミュラーが立ち。
片や、薔薇の氏族が吸血鬼――マルグリット・ライヒシュタインが立つ。
「私が許せない者、それは貴女のように人の命を汚す吸血鬼です」
ルアンナの手に収まった赤い宝石から柄が伸びて、身の丈ほどもある長杖と化す。
「汚すだなんて心外ですわ。下賤な人間に、高貴な血を分け与えて差し上げようというだけですのに」
胸元に紅いブローチを揺らしたマルグリットが、口の端を吊り上げて牙を剥く。
二人には因縁があった。
もはや、宿命の星の下に生まれたと言ってもよい。
こうして相まみえるのも、これで何度目となるか。
聖職者の中にあって、突出した法術の使い手であるルアンナと。
吸血鬼の中にあって、特筆すべき戦闘力を有するマルグリット。
二人の実力は天秤にかけたとてわずかばかりも傾かないであろうほど拮抗しており、これまで決着はつかず。
今度こそ、けりを付ける――そうした思いだけは、立場も何もかも異なる二人に共通していた。
「せいっ!」
先に動いたのは、ルアンナだった。
長杖が右掌の上をくるりと一回転し、両の手で握り直される。
前方に向け突きつけられた宝石に、押し込められるように白い光が凝縮されていく――。
「当たって!」
解放された光は、眩いばかりの軌跡を伴って一息にマルグリットのもとへ。
「甘いですわ。角砂糖を三つ入れたお紅茶のほうがまだ、甘さ控えめでしてよ」
マルグリットがわずかに体を揺らしただけで、光の槍はその左横の何もない空間を貫くことになった。
しかし、マルグリットも無傷ではない。
その左腕はドレスの袖が切り裂かれ、血飛沫を散らしている。
その血飛沫は地に落ちることなく、宙に浮かぶ。
やがてそれは意思を持ったかのように、ルアンナ目掛けて鋭く飛翔した。
ルアンナは咄嗟に、手にした杖を飛来した血液の矢に向ける。
杖の先で光の線が幾何学模様を描き、結界を成した。
結界に阻まれた血液の矢が、暗闇に紅い花を咲かす。
だが、無数に放たれた血液の矢をすべて防ぎきれたわけではない。
ルアンナもまた、身体にいくつもの傷を負うことになった。
「なら、こうですっ……!」
ルアンナの杖の先が、天に掲げられる。
それは、まるで夜空の星を指し示すように。
星が、ルアンナの願いに応えたかのようであった。
夜空から、光の線が幾重にも重なって地上に降り注ぐ。
「ちいっ!」
思わず舌打ちを漏らしたマルグリットの体表を、掠めた光が刻んでいく。
「これはお返しですわ! 遠慮は不要でしてよ!」
マルグリットはルアンナへ向かって駆け出しながら、右掌を前方にかざす。
するとマルグリットの傷から溢れ出た血潮が、天へと立ち昇っていき。
そして、血液の雨となってルアンナへ襲い掛かった。
光の白い筋と、血液の紅い筋が、夜空で無数に交錯する――。
「つまらないものですが、と謙遜くらいしてはどうです? 実際、つまらないものですからね!」
ルアンナはマルグリットが己の目前にまで迫ったのを見て、杖を顔の前で水平に構える。
ギィン――!
鈍い、金属音。
杖の柄に、紅く濡れた短剣が食い込んでいた。
マルグリットが己の血液から形成した短剣を振り下ろしたのだ。
先程は上から下に振るわれた短剣が、今度は右から左へと振るわれる。
それをルアンナが杖を鉛直に傾けて受け止める。
そうして何度も、何度も打ち合う内に、ルアンナはじりじりと後退することを強いられていた。
「おっと、貴女の手の内は知っていますよ?」
突如、ルアンナが柄を後ろに突き出すように杖を振る。
「ギャッ!?」
柄の先端に突かれて、白黒のコウモリが悲鳴を上げた。
マルグリットの使い魔が、ルアンナの背後を狙っていたのだ。
「なら今宵は小細工なしで舞うとするのですわ――そう、アナタの力尽きるまで」
マルグリットの指先から、糸のように血が迸る。
それは、運命の赤い糸。
二人の宿敵としての繋がりを示す、血塗られた証であった。
赤い糸で結ばれた二人はもはや、相手の望むまま傷付けられることしか敵わない。
マルグリットは無防備となったルアンナの身体へ、短剣を突き入れる。
「ええ、ここで決着を付けましょう――!」
ルアンナも杖に最大限の祈りを込め、マルグリットへと殴りかかった――。
●
「はぁ、はぁ――」
粗い息を吐くルアンナが膝をついて、杖で身体を支えている。
「私、やりました」
ルアンナの視線の先で、神の威光という名の、杖による一撃を受けたマルグリットが倒れ伏していた。
「お会いしたら、褒めて頂けるでしょうか――神様」
ルアンナの腹部には、血濡れた短剣が突き刺さっており。
その上体はゆっくりと、大地へ抱き寄せられていった。
血染めの赤い糸に結ばれた二人、血塗られた運命を辿る――。
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闇夜に浮かぶ双丘の狭間に、一陣の風が吹き抜けた。
二つの丘には片や、白の司祭が修道女――ルアンナ・ミュラーが立ち。
片や、薔薇の氏族が吸血鬼――マルグリット・ライヒシュタインが立つ。
「私が許せない者、それは貴女のように人の命を汚す吸血鬼です」
ルアンナの手に収まった赤い宝石から柄が伸びて、身の丈ほどもある長杖と化す。
「汚すだなんて心外ですわ。下賤な人間に、高貴な血を分け与えて差し上げようというだけですのに」
胸元に紅いブローチを揺らしたマルグリットが、口の端を吊り上げて牙を剥く。
二人には因縁があった。
もはや、宿命の星の下に生まれたと言ってもよい。
こうして相まみえるのも、これで何度目となるか。
聖職者の中にあって、突出した法術の使い手であるルアンナと。
吸血鬼の中にあって、特筆すべき戦闘力を有するマルグリット。
二人の実力は天秤にかけたとてわずかばかりも傾かないであろうほど拮抗しており、これまで決着はつかず。
今度こそ、けりを付ける――そうした思いだけは、立場も何もかも異なる二人に共通していた。
「せいっ!」
先に動いたのは、ルアンナだった。
長杖が右掌の上をくるりと一回転し、両の手で握り直される。
前方に向け突きつけられた宝石に、押し込められるように白い光が凝縮されていく――。
「当たって!」
解放された光は、眩いばかりの軌跡を伴って一息にマルグリットのもとへ。
「甘いですわ。角砂糖を三つ入れたお紅茶のほうがまだ、甘さ控えめでしてよ」
マルグリットがわずかに体を揺らしただけで、光の槍はその左横の何もない空間を貫くことになった。
しかし、マルグリットも無傷ではない。
その左腕はドレスの袖が切り裂かれ、血飛沫を散らしている。
その血飛沫は地に落ちることなく、宙に浮かぶ。
やがてそれは意思を持ったかのように、ルアンナ目掛けて鋭く飛翔した。
ルアンナは咄嗟に、手にした杖を飛来した血液の矢に向ける。
杖の先で光の線が幾何学模様を描き、結界を成した。
結界に阻まれた血液の矢が、暗闇に紅い花を咲かす。
だが、無数に放たれた血液の矢をすべて防ぎきれたわけではない。
ルアンナもまた、身体にいくつもの傷を負うことになった。
「なら、こうですっ……!」
ルアンナの杖の先が、天に掲げられる。
それは、まるで夜空の星を指し示すように。
星が、ルアンナの願いに応えたかのようであった。
夜空から、光の線が幾重にも重なって地上に降り注ぐ。
「ちいっ!」
思わず舌打ちを漏らしたマルグリットの体表を、掠めた光が刻んでいく。
「これはお返しですわ! 遠慮は不要でしてよ!」
マルグリットはルアンナへ向かって駆け出しながら、右掌を前方にかざす。
するとマルグリットの傷から溢れ出た血潮が、天へと立ち昇っていき。
そして、血液の雨となってルアンナへ襲い掛かった。
光の白い筋と、血液の紅い筋が、夜空で無数に交錯する――。
「つまらないものですが、と謙遜くらいしてはどうです? 実際、つまらないものですからね!」
ルアンナはマルグリットが己の目前にまで迫ったのを見て、杖を顔の前で水平に構える。
ギィン――!
鈍い、金属音。
杖の柄に、紅く濡れた短剣が食い込んでいた。
マルグリットが己の血液から形成した短剣を振り下ろしたのだ。
先程は上から下に振るわれた短剣が、今度は右から左へと振るわれる。
それをルアンナが杖を鉛直に傾けて受け止める。
そうして何度も、何度も打ち合う内に、ルアンナはじりじりと後退することを強いられていた。
「おっと、貴女の手の内は知っていますよ?」
突如、ルアンナが柄を後ろに突き出すように杖を振る。
「ギャッ!?」
柄の先端に突かれて、白黒のコウモリが悲鳴を上げた。
マルグリットの使い魔が、ルアンナの背後を狙っていたのだ。
「なら今宵は小細工なしで舞うとするのですわ――そう、アナタの力尽きるまで」
マルグリットの指先から、糸のように血が迸る。
それは、運命の赤い糸。
二人の宿敵としての繋がりを示す、血塗られた証であった。
赤い糸で結ばれた二人はもはや、相手の望むまま傷付けられることしか敵わない。
マルグリットは無防備となったルアンナの身体へ、短剣を突き入れる。
「ええ、ここで決着を付けましょう――!」
ルアンナも杖に最大限の祈りを込め、マルグリットへと殴りかかった――。
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「はぁ、はぁ――」
粗い息を吐くルアンナが膝をついて、杖で身体を支えている。
「私、やりました」
ルアンナの視線の先で、神の威光という名の、杖による一撃を受けたマルグリットが倒れ伏していた。
「お会いしたら、褒めて頂けるでしょうか――神様」
ルアンナの腹部には、血濡れた短剣が突き刺さっており。
その上体はゆっくりと、大地へ抱き寄せられていった。