【扉叩】廻る

四ノ月血戦 イベントノベル(テーマ)赤の吸血鬼狩り制作 白葉うづき納品 2025年05月15日 01時33分22秒

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 申し訳ありません! 誰か、誰か、いらっしゃいませんか!
 わたしはルガ(アルド・シャウアー)と申します。司祭様をご存じありませんか!

 近くの村で救援活動を行っており、戻ると告げた時刻に姿が見えないのです。
 何事かあったのかと居てもたってもいられず、こうして探している次第でございます。
 どなたか、いらっしゃいませんか……!

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 大粒の雨が鋭く建物に降り注いでいた。扉の前にいたずぶ濡れの少年は、力いっぱい握りしめた拳でもう一度叩こうとして目を見開く――扉が僅かに空いている。その隙間から、冷たい銃口が見えた。
 ぱん、と近くでなければ聞こえないほどの小さな破裂音が鳴る。少年の耳と尾が跳ねると同時に、彼の背後に隠れていた吸血鬼が倒れ込んだ。
「あ、あ……」
「平気か」
 ライフルを携え、扉から出てきた青年が早くと促すよう少年を中に入れる。震えなら転がり入る少年に、乾いた布を乱暴に放った。
「濡れると困る、それで拭いてくれ」
「ありがとうございます……あ、あの!」
「その前に。さっきみたいな人探しは止めておけ、余計なものを呼ぶし、吸血鬼に関係するやつ以外は寝てる時間だ」
 そう釘を刺すと、少年ははい、と返事をして肩を落とす。先ほどの一件が効いているのだろう。青年は僅かに柔らかく問う。
「探し人は、金髪に青い目をした若い男か?」
「そうです!」
 それなら奥にいる、とカインが伝える前に部屋の扉が開く。穏やかな男性が顔を出した。
「ルガ?」
「ペーチェ(メルチス・アダラード)様!!」
 尻尾を拭いていた少年が目を輝かせ、駆け寄ろうとして踏みとどまる。カインの忠告(濡れたままではいけない)を聞いてくれたのだと察した。

「お茶です。温まりますよ」
「休んでていいって言ったろ」
「お客様を放っておくなんてできませんよ」
 青年の妻だというフロラは微笑み、体をお休め下さいと部屋を出る。子どもの様子を見に行くのだろう。
「改めて感謝を申し上げます。ルガまでも助けていただいて」
「成り行きだ、必要以上に礼はいらねぇよ」
 微笑んだ男性はカップを僅かに傾けた後、続ける。
「貴方は、“トバルカイン”さんで間違いないでしょうか」
 それはカインが仕事(赤の吸血鬼狩り)で使用している名義だ。カインは首を振る。
「今の俺はカイン・シン・イーファ(カイン・ステラ)。孤児院の院長だ」
 失礼しました、とペーチェは微笑む。晴れ間の覗いた夜明けと共に二人は帰った。

 後日。二人は礼も兼ね、再び院を訪れる。
 彼らが手伝いたいと言い出すのも、そう遠い話ではなかった。

登場キャラクター

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0