吸血鬼たちの夕べ《side:赤の吸血鬼狩り》

四ノ月血戦 イベントノベル(テーマ)青の聖騎士団制作 弓月 蒼納品 2025年05月20日 01時52分59秒

 吸血鬼と、人間の戦いは続いている。
 中でも、昨今活発に人間社会を蝕んでいるのが『薔薇の氏族』である。

 彼らの目的が何かは知れない。何か怨恨でもあるのかもしれない。
 ただ分かっている事は、一部の薔薇の氏族は度々『赤の吸血鬼狩り』と戦端を開いていた。

 ともなれば、吸血鬼狩りの側からの逆襲劇を仕掛ける例も――――当然の様にある。

「ふっっっ、ざけないで下さい、ぶっ飛ばしますよ……っ!」

 手に馴染んだ大剣が舞う。本来華奢な少女が取り扱える重量ではない。
 法術による身体能力拡張、及び物品への聖性の付与。

 つまり、材質を軽くしつつ切れ味を“法術による後付け”で継ぎ足す事によって。
 彼女――――Alexandra・Hexe・Claudia(アレクサンドラ)は少女の身でその巨大な刃を操っていた。

 しかし、手にある大剣は一本。対して本来のアレクサンドラの戦闘スタイルは二刀流である。
 ではもう一本は何処に有るかと言えば、対する薔薇の氏族の吸血鬼の手元にあった。

「まあ、またそんな武器に頼った立ち回りをして。
 いつも言っているでしょう? 判断が遅い。初動が遅い。そして残心が足りていないと」

 足を綺麗に引っ掛けられて転ぶ。どんがらがっしゃん、と、倉庫に突っ込んだ。
 きゅう……と言って目を回すまでお約束。アレクサンドラの吸血鬼狩りは、未熟だった。

「はい、では掃除から始めましょうね?
 鉢が割れてしまった花は入れ替えて下さい。勿論お給料からは差っ引きます」

「あ、貴女! だから何度でも言っているでしょう!
 私はバイト希望者でも無ければ花やの店番でもなく、誇り高い吸血鬼狩り(ヴァンパイアハンター)……!」

「はいはい、承知してます。でも誇り高い吸血鬼狩りなら尚更。
 負けは負け。その際に壊した器物分くらいは働いて貰わないと……」

 頬に手を当てて首を傾げる緑髪の女吸血鬼の、案外的を射た正論に。
 口論(レスバ)が余り得意ではないアレクサンドラが継ぐ言葉を失いぐぬぬ……となる。

「くっ、邪悪な吸血鬼め……今回だけ! 今回だけですからねっ!」

 言い負かされている。と言う自覚は余り無いまま丸め込まれるアレクサンドラ。
 エプロンを着用、自分が壊した花器を掃除し。移し替えた植木鉢を店先に並べるのが定番の動きだ。

「明日こそ貴女の命日と知りなさいっ! あ、いらっしゃいませ。花束ですか?  鉢植えですか?」

 はいはい、と言いながら店主である女吸血鬼は店を開く。花や『夕暮亭』は、今日も平常営業中だ。

登場キャラクター

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0