『輝石の家』の、奇跡のような貴方
キャラクターノベル制作 菊華 伴納品 2025年02月17日 08時16分22秒
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――『輝石の家』
これは「生きる力を教えられる」孤児院――パンクリアース学園を卒業後、レピド・クロサイトが設立したものである。
幾年月が流れ、そこで成長した子供たちは社会に巣立っていく。そして、その中からレピドを手伝うべく時々訪れる者も来るようになった。
……のだが……、一つ(?)問題が浮上しつつあった。
「はぁ……」
もうすぐ巣立つヒューマンの少年は深くため息をついていた。その視線は、レピドに注がれているわけで……。
不思議に思っている面々もいたが、少年はもう一度ため息を吐くばかりである。レピドもまた不思議に思い、そっと声をかけた。
「どうしたんだ?」
「レピド先生……、結婚して」
「……?」
少年の言葉に、レピドはこてん、と首を傾げた。
レピドは『自分に恋愛や結婚は必要がない』と考えている。というのも、元々恋愛や性的な事に興味が薄いというのと、ホムンクルスの特性があるからだろうか。故に、少年の言葉に首を傾げたようだ。
だが、少年は深いため息を吐くばかりである。
(レピド先生、やっぱりこう、胸をときめかせる何かがあるんだよ。出会った時から変わらぬ色気とかっこよさ……。それでいてちょっと天然なのが良い――! お母さんがいないなら自分がなればいいって思っちゃうぐらいだし!!)
少年の記憶が確かならば、幼いころの『母の日』の事だった。この日、少年たちは年上の子供達と共にレピドへ似顔絵や花を準備していた。そして、年長者がレピドを呼んできたとき……、彼は『彼女』になっていた。
レピドは「やはり、『母の日』に『母』がいないのは寂しいよな……」と考えて行ったこと。大半の子供達はスキルの力にびっくりしたり、普段よりちょっと柔らかい雰囲気になごんだりしたのだが、一部の子どもたちに衝撃を与えた。もちろん、この少年もその一人である。
「またそうして僕を悩ませる……!」
「……? 何か悩んでいるのか?」
レピドがそっと問いかけるが、少年は胸を押さえ「鈍感! でもそういう所が好き」と呟く。レピドは首をかしげるばかりである。
(……何か、俺がこの子を困らせてしまったのだろうか?)
幼いころからこの少年を孤児院で育ててきたレピドは、心配そうに少年を見るが、彼は頬を赤く染めて「大丈夫です、先生が可愛すぎるだけですから」と言ってそそくさとその場を後にするのだった。
レピドと少年の様子を見ていたハーフリングの少女は小さく肩を竦めた。彼女もあと1年ほどすれば独り立ちするほどの年齢である。彼女は髪が乱れるのも構わず頭を押さえた。
「先生何もわかってない……。先生が天然タラシなのがいけないのよ……!!」
脳裏に浮かんだレピドに対し、少女がため息を吐く。
出会った頃から変わらぬ魅力も相まって、たまに見せる天然具合が幾人かの子供達に突き刺さっているようだ。その現実にレピドは気づいていない。
ある者はドゥジン信仰の果てにレピドの様々な姿を描き裏で同士に良心価格で配布したり。
またある者はレピドを物語の主人公にして他の仲間とのアレやコレを書いては回し読みしたり。
またある者は時折差し入れなどを持って『輝石の家』を訪れては、こっそりレピドに異性の服を進めたりする者などなど。
レピドはOBOG達(一部在院児)の行動を知らない。まさか自分が原因で子供達の情緒に刺激が与えられるなぞ思うまい。
(……もう少し、向き合って話をするべきだろうか?)
と、今も真面目に考えているのである。
レピドにとって子供達は皆大切な存在だ。だから、何か悩んでいるのならば力になりたいのは当たり前である。しかし、悲しいかな、今の彼はあのヒューマンの少年含む面々にとって劇薬そのものなのだ。
「もしかしたら、寂しいのだろうか……?」
ふと脳裏に過ったのは、少年と表情。レピドの目から見た彼は、少し情緒が不安定だった。レピドは少し考えると「たまにはいいだろう」と呟き……、久々にスキルを使うことにした。
(さすがに、さっきの事は謝った方がいいかな?)
深呼吸をした少年は、頭が冷えたのだろう。だいぶ穏やかな顔でレピドを探していた。彼はレピドに萌えている以外は普通のよいこである。普段から率先して、彼を手伝っていた。
そろそろ洗濯物を入れる時間だと考えた彼は、レピドが部屋にいると聞き声をかけること。ノックをして名前を告げると、すぐに反応があった。
「――か? わかった、今開ける」
「……は、はい」
名前を呼ばれた少年は目を丸くする。というのも、レピドの声がいつもより高い気がしたからだ。
ドアが開かれると、レピドは――女性の姿になっていた。かつて「母の日だから」と〈フェイクカバー〉を使ってお母さんに変身した時のように。
「めっ……」
「め?」
「女神降臨!!」
少年はその場に崩れ、レピドの脳裏に星空をバックに目を真ん丸にした猫の姿が映った。
(終)