『黒猫キッチン』開店しました!
キャラクターノベル(グループ)制作 高久高久納品 2025年02月23日 08時48分54秒
――これは、今より少し先。数年後のいつかの話。
――エラトゥーン都市同盟の何処か、ベールコートやフェアドゥキア平野とほど近い場所に存在する海辺の町にて。
「この町で良かったのか?」
「うん、間違いないから大丈夫」
パルドとウォーゼルは、訪れた町を歩いていた。2人の後ろを小さな黒豹のような見た目の猫のショコラと、柴犬のような見た目のミニコボのチョコが並び、後をついて歩いている。
パルドもウォーゼルも、キョロキョロと町並みを見回している。冒険者時代に訪れた事はあったかもしれないが、馴染みの場所というわけでもなく、土地勘が無い為目的の場所を見逃さない様にしているのだ。
そんな主人たちの真似をするように――というよりも好奇心からか、ショコラとチョコもキョロキョロと辺りを見回しながらふらふらと歩いている。町並みに夢中になり、危うく置いていかれそうになって慌てて早足になる――というのを何回か繰り返していた。
「けど、良い町みたいだね」
「そうだな」
ウォーゼルの言葉にパルドが頷く。
のどかな町であった。時折吹いてくる風に乗り、潮の香りが漂ってくる。大きな街のような賑やかさは無いが、見かける人々からは日々を生きる活力を感じられる。
ここで暮らす者達が、平穏な日々を営んでいるのであろう事を思わせる風景が少し歩いているだけで見る事が出来た。
「良い場所を見つけたよね、あの2人も」
「ああ――っと……もしかして、あれか?」
パルドの目に、とある建物が映った。
――その建物には、店であることを示す看板があった。
作ったばかりであろう、新しい物のように見える看板には猫と月が描かれており、店を示す店名として『黒猫キッチン』という文字が書かれている。
また店の入り口にはメニューが書かれた立て看板があり、店名と共にここが食堂であることを示していた。
「ここ、だな」
「そうだね」
店名を確認してパルドとウォーゼルが頷く。この店こそが、2人がこの町を訪れた目的であった。
「連れて来ても大丈夫なんだよな?」
ペット禁止という飲食店は無いわけではない。食堂を目を輝かせてみているショコラとチョコを見て、パルドが少し不安そうな顔を見せる。
「大丈夫、というか『是非連れてきて』って話だったね」
そう言いながらウォーゼルが食堂から目を離さないショコラを抱え上げる。その様子を見て、パルドはチョコを抱えた。
2人の腕の中に居ながらも、ショコラとチョコの視線は食堂に向けられたままだった。
そうしていると、食堂の扉が開き、中から人が出てきた。腹をさすりながら満足気な表情を浮かべている事から、恐らく客であろう。
その客の後ろから、小柄なハーフリングが姿を現す。猫や星が描かれた制服を纏っており、店員である事が分かる。
「ありがとうございましたー! また来てくださいねー!」
ひらひらと手を振っている客に、笑顔で頭を下げる店員。
その店員を、パルドもウォーゼルも良く知っていた。
少し背が伸びたのか、記憶の姿よりも更に大人びた雰囲気を醸し出しているが、その笑顔を見間違える事は無い。
「……あれ? あーっ!」
客を見送り、店に戻ろうとした際にパルドとウォーゼルが居る事に気付いた店員が驚いたような声をあげ、表情を変える。が、すぐに嬉しそうな顔になり駆け寄ってくる。
「パルドにウォーゼルだ! チョコとショコラもいる! 来てくれたんだ!」
パルドとウォーゼル、それに抱えているチョコとショコラの顔を見て嬉しそうな声をあげる店員。
「ああ、相変わらずのようだな」
「変わってないね、ルルトは」
パルドとウォーゼルの言葉に、店員――ルルト・アーキスが「むぅっ」と頬を膨らませる。
「ボクが成長してないっていうの? これでも大きくなったんだからね! 少しだけど!」
拗ねたように言うルルトの姿に『そういう意味じゃないんだけどな』とパルドとウォーゼルが苦笑する。
「……それで、今日はみんな――チョコもショコラもちゃんとお腹空かせてきたんだよね?」
頬を膨らませながらちらりと視線を向けるルルトに、パルドとウォーゼルは頷き、チョコとショコラは一鳴きして答える。
その反応に満足したのか、すぐに「ならよし!」と笑顔になるルルト。そのコロコロと変わる表情に『やっぱり相変わらずだ』とパルドとウォーゼルは言葉に出さずに思う。
「それじゃ――いらっしゃいませ! 『黒猫キッチン』へようこそ!」
ルルトの明るい声が、辺りに響いた。
●
――『黒猫キッチン』は、冒険者を引退したルルトが相棒と共に営んでいる食堂である。
いつか、相棒と共に語っていた『冒険者を辞めたら料理屋をやりたい』という夢を実現させたのである。
冒険者時代からの友人であるパルドとウォーゼルはその知らせを聞き、開店祝いに訪れたのであった。
現在の『黒猫キッチン』店内には、ちらほらと客の姿が見られた。
今の時刻は昼を過ぎて少し経つ。ピークを越えて、落ち着いてきているのだろう。空になった料理皿を前に、食後の余韻に浸っている客の姿が見られる。
また、ある客の足元には小さな犬の姿も見えた。満足そうな顔をして座る前には皿が置かれており、この犬も『黒猫キッチン』では立派な客なのだろう。ペット同伴も大丈夫、という事を改めて認識し、パルドが1人ほっと息を吐く。
辺りを見回すパルドとウォーゼルの足元に、また見知った姿――足先と尻尾の先だけが白い黒猫とくりっと丸い瞳が印象的な大鼬が座っていた。
「ふふ、タマさんとシロのお出迎えだよ!」
タマさんとシロは何処か誇らしげな様子をパルドとウォーゼルに見せる。
「タマさんもシロも久しぶり」
「タマさんもシロも、変わってないようだな」
抱えていたチョコ、ショコラを下ろし、ウォーゼルとパルドは屈んでタマさんとシロに挨拶しながら撫でる。
撫でられる手に目を細め、少しすると満足したようにタマさんとシロはふらふらと何処かへ行ってしまう。
「いらっしゃ――おお! よく来てくれたな!」
案内の為に来た店員――アルバス・ロウルがパルドとウォーゼルを見て嬉しそうに声を上げた。
ルルトのように店員の格好をしている為一瞬気づかなかったが、懐かしい友人にパルドとウォーゼルも笑みを見せる。
「ああ、そうだ。遅れたが開店、おめでとう」
「俺からもおめでとう。素敵な店だね」
開店祝いを持ってきたことを思い出し、パルドは花を、ウォーゼルは祝いの品をそれぞれ渡す。
「わぁ、ありがとう!」
「気を遣わせて悪いな」
開店祝いを笑顔で受け取った後、「それじゃ席に案内するね」「奥の方がゆっくりできるな」とルルトとアルバスの2人で店の奥へと案内する。
チョコとショコラもいる為、ある程度のスペースがある席へとパルドとウォーゼルは案内される。
「メニュー、どうぞ」
席に着いた2人にルルトがメニューを渡す。内容を見て「おぉ……」「これは……」と声を漏らす2人に、ルルトが「ふふ、懐かしいでしょ」と面白そうに笑う。
メニューには様々な料理の名前が並んでいる。その中には、冒険者時代に味わった事のある、懐かしい名前も多く並んでいた。
「これは、何を選んでいいか迷うな……」
「本当だね……あ、これ美味しかったやつだ」
メニューとにらめっこ状態の2人を見て、アルバスも「わかる。迷うよな」と腕を組み、うんうんと頷いていた。
にらめっこはしばらく続いたが、やがて「よし、決めた」とパルドとウォーゼルがほぼ同時に顔を上げる。
「オレはサラマンダーステーキで」
「あ、それもいいけど、俺はこの魚の塩焼きで」
パルドがサラマンダーステーキを、ウォーゼルは魚の塩焼きを、それぞれ注文する。
「はーい、承りましたー!」
「それじゃ、来るまで待っててくれよな」
ルルトとアルバスがそう言って去っていった。
●
「パルド、そわそわしすぎ」
注文してからまだそれほど経っていないというのに、そわそわと落ち着きのない様子を見せるパルド
チョコを抱え撫でたり、時に吸ったりして気を鎮めようとしているパルドを、抱えたショコラを撫でながら微笑ましい目で見るウォーゼル。
「……それにしても、2人とも変わってないみたいで安心した」
「そうだね、元気そうだし俺もほっとしたよ」
冒険者を引退してから、互いにやる事があり会う事が無かった。数年という年月が開いたが、相変わらずの様子の2人が見られた事を嬉しく思うのであった。
よく見るとルルトやアルバスの他に、同じ制服を着た者の姿が見られた。他にもスタッフを雇っているようで、ルルトとアルバスは接客や配膳をメインに動いていた。
何処か懐かしい店内を見回してみると、冒険者の頃の思い出の品々が飾られており、2人が見た物もあった。
「何か懐かしい、って感じがしたんだけどさ、わかったよ」
ルルトとアルバスの冒険拠点であった『アルタイル』と、店内の雰囲気が似ている事に気付いたとウォーゼルが言うと、同じように思っていたらしいパルドが「なるほど」と納得した様に頷いた。
「お待たせしましたー!」
パルドとウォーゼルが店内を観察していると、ルルトとアルバスが注文した物を運んでくる。どれも懐かしく、美味しそうな料理にパルドとウォーゼルの口から「おぉ」という声が漏れる。
「キミ達のごはんだよ」とショコラとチョコ用の料理が乗った皿を、ルルトは見せる。目を輝かせるショコラとチョコを見て、微笑みながらルルトは頭を撫でた。
気が付くと注文した物以外にも料理など並べるルルトとアルバス。不思議に思っているとアルバスが笑いながら言った。
「丁度暇になったんでな。休憩がてら、話を聞こうと思って」
「久々だもんね。お話しようよ」
アルバスとルルトの提案に是非とも、と2人は頷いた。
●
「へぇ! 孤児院継ぐことにしたんだ!」
「まだまだ見習いだけどね」
「今は少しずつだが、仕事を任せてもらってる」
料理に舌鼓を打ちつつ、パルドとウォーゼルの近況を聞いてルルトが驚いた様な声をあげる。
――パルドとウォーゼルも新たな道として、生まれ育った孤児院を継ぐ事を選んだというのだ。
その仕事は大変だというが、何処か満ちたように語るパルドとウォーゼルの言葉を、ルルトとアルバスは微笑みながら聞いていた。
「なら、次は子供達も連れてくるといいよ。ね、アルバス?」
「ああ、いつでも歓迎する――あ、前もって予約してくれると助かるかな。席の確保もあるんだが、ルルトも俺も店を空ける事があるんだ」
アルバスとルルトは給仕以外にも店舗運営にも携わっている。新メニュー考案も2人は行っており、新たな味探求の為に旅に出る事もあるというのだ。
「探究、と言いつつ食べ歩きみたいなもんだけどな。でもまだまだ知らない味がある、ってのには驚かされるよ」
アルバスの言葉にルルトもうんうん、と頷いている。
「……やっぱり変わらないな」
「そうだね、変わらないね」
そんな姿を見て、パルドとウォーゼルが呟いた。
――アルバスもルルトも、冒険者を引退してから数年という年月が経った。
冒険の為に着けていた装備から食堂の制服へと変わったが、アルバスもルルトも未だ根は冒険者であり、互いに相棒である事はあの頃と変わっていない。そんな風に、パルドとウォーゼルには2人が見えたのであった。
「――変わらないって何さ! これでも少しは身長も伸びたんだよ!」
パルドとウォーゼルの言葉を勘違いしたのか、頬を膨らますルルト。
「いや、そういう意味じゃないんだが……」
「うん、そうそう」
「あーあ、拗ねたルルトは強敵だぞ?」
困るパルドとウォーゼルを見て口元をニヤケさせるアルバス。この状況を楽しんでいるようだ。
「もう! 2人の為に用意したデザートはあげないんだから!」
頬を膨らませたルルトの言葉に『それは困る!』と声をあげるパルドとウォーゼル。「ああ、あのデザート美味いんだよな。滅多に出せる物じゃないし」とからかう様にアルバスが言うので、パルドとウォーゼルも焦った表情になる。
「ところで、そのデザートはどうするんだ?」
「もちろんボクが食べる!」
「2つあるが?」
「2つとも!」
「いや1つは俺にもくれよ」
そんなやりとりに『やっぱり2人共変わってない』と改めて思いながらも、宥める方法に頭を悩ますパルドとウォーゼルであった。
――エラトゥーン都市同盟の何処か、ベールコートやフェアドゥキア平野とほど近い場所に存在する海辺の町にて。
「この町で良かったのか?」
「うん、間違いないから大丈夫」
パルドとウォーゼルは、訪れた町を歩いていた。2人の後ろを小さな黒豹のような見た目の猫のショコラと、柴犬のような見た目のミニコボのチョコが並び、後をついて歩いている。
パルドもウォーゼルも、キョロキョロと町並みを見回している。冒険者時代に訪れた事はあったかもしれないが、馴染みの場所というわけでもなく、土地勘が無い為目的の場所を見逃さない様にしているのだ。
そんな主人たちの真似をするように――というよりも好奇心からか、ショコラとチョコもキョロキョロと辺りを見回しながらふらふらと歩いている。町並みに夢中になり、危うく置いていかれそうになって慌てて早足になる――というのを何回か繰り返していた。
「けど、良い町みたいだね」
「そうだな」
ウォーゼルの言葉にパルドが頷く。
のどかな町であった。時折吹いてくる風に乗り、潮の香りが漂ってくる。大きな街のような賑やかさは無いが、見かける人々からは日々を生きる活力を感じられる。
ここで暮らす者達が、平穏な日々を営んでいるのであろう事を思わせる風景が少し歩いているだけで見る事が出来た。
「良い場所を見つけたよね、あの2人も」
「ああ――っと……もしかして、あれか?」
パルドの目に、とある建物が映った。
――その建物には、店であることを示す看板があった。
作ったばかりであろう、新しい物のように見える看板には猫と月が描かれており、店を示す店名として『黒猫キッチン』という文字が書かれている。
また店の入り口にはメニューが書かれた立て看板があり、店名と共にここが食堂であることを示していた。
「ここ、だな」
「そうだね」
店名を確認してパルドとウォーゼルが頷く。この店こそが、2人がこの町を訪れた目的であった。
「連れて来ても大丈夫なんだよな?」
ペット禁止という飲食店は無いわけではない。食堂を目を輝かせてみているショコラとチョコを見て、パルドが少し不安そうな顔を見せる。
「大丈夫、というか『是非連れてきて』って話だったね」
そう言いながらウォーゼルが食堂から目を離さないショコラを抱え上げる。その様子を見て、パルドはチョコを抱えた。
2人の腕の中に居ながらも、ショコラとチョコの視線は食堂に向けられたままだった。
そうしていると、食堂の扉が開き、中から人が出てきた。腹をさすりながら満足気な表情を浮かべている事から、恐らく客であろう。
その客の後ろから、小柄なハーフリングが姿を現す。猫や星が描かれた制服を纏っており、店員である事が分かる。
「ありがとうございましたー! また来てくださいねー!」
ひらひらと手を振っている客に、笑顔で頭を下げる店員。
その店員を、パルドもウォーゼルも良く知っていた。
少し背が伸びたのか、記憶の姿よりも更に大人びた雰囲気を醸し出しているが、その笑顔を見間違える事は無い。
「……あれ? あーっ!」
客を見送り、店に戻ろうとした際にパルドとウォーゼルが居る事に気付いた店員が驚いたような声をあげ、表情を変える。が、すぐに嬉しそうな顔になり駆け寄ってくる。
「パルドにウォーゼルだ! チョコとショコラもいる! 来てくれたんだ!」
パルドとウォーゼル、それに抱えているチョコとショコラの顔を見て嬉しそうな声をあげる店員。
「ああ、相変わらずのようだな」
「変わってないね、ルルトは」
パルドとウォーゼルの言葉に、店員――ルルト・アーキスが「むぅっ」と頬を膨らませる。
「ボクが成長してないっていうの? これでも大きくなったんだからね! 少しだけど!」
拗ねたように言うルルトの姿に『そういう意味じゃないんだけどな』とパルドとウォーゼルが苦笑する。
「……それで、今日はみんな――チョコもショコラもちゃんとお腹空かせてきたんだよね?」
頬を膨らませながらちらりと視線を向けるルルトに、パルドとウォーゼルは頷き、チョコとショコラは一鳴きして答える。
その反応に満足したのか、すぐに「ならよし!」と笑顔になるルルト。そのコロコロと変わる表情に『やっぱり相変わらずだ』とパルドとウォーゼルは言葉に出さずに思う。
「それじゃ――いらっしゃいませ! 『黒猫キッチン』へようこそ!」
ルルトの明るい声が、辺りに響いた。
●
――『黒猫キッチン』は、冒険者を引退したルルトが相棒と共に営んでいる食堂である。
いつか、相棒と共に語っていた『冒険者を辞めたら料理屋をやりたい』という夢を実現させたのである。
冒険者時代からの友人であるパルドとウォーゼルはその知らせを聞き、開店祝いに訪れたのであった。
現在の『黒猫キッチン』店内には、ちらほらと客の姿が見られた。
今の時刻は昼を過ぎて少し経つ。ピークを越えて、落ち着いてきているのだろう。空になった料理皿を前に、食後の余韻に浸っている客の姿が見られる。
また、ある客の足元には小さな犬の姿も見えた。満足そうな顔をして座る前には皿が置かれており、この犬も『黒猫キッチン』では立派な客なのだろう。ペット同伴も大丈夫、という事を改めて認識し、パルドが1人ほっと息を吐く。
辺りを見回すパルドとウォーゼルの足元に、また見知った姿――足先と尻尾の先だけが白い黒猫とくりっと丸い瞳が印象的な大鼬が座っていた。
「ふふ、タマさんとシロのお出迎えだよ!」
タマさんとシロは何処か誇らしげな様子をパルドとウォーゼルに見せる。
「タマさんもシロも久しぶり」
「タマさんもシロも、変わってないようだな」
抱えていたチョコ、ショコラを下ろし、ウォーゼルとパルドは屈んでタマさんとシロに挨拶しながら撫でる。
撫でられる手に目を細め、少しすると満足したようにタマさんとシロはふらふらと何処かへ行ってしまう。
「いらっしゃ――おお! よく来てくれたな!」
案内の為に来た店員――アルバス・ロウルがパルドとウォーゼルを見て嬉しそうに声を上げた。
ルルトのように店員の格好をしている為一瞬気づかなかったが、懐かしい友人にパルドとウォーゼルも笑みを見せる。
「ああ、そうだ。遅れたが開店、おめでとう」
「俺からもおめでとう。素敵な店だね」
開店祝いを持ってきたことを思い出し、パルドは花を、ウォーゼルは祝いの品をそれぞれ渡す。
「わぁ、ありがとう!」
「気を遣わせて悪いな」
開店祝いを笑顔で受け取った後、「それじゃ席に案内するね」「奥の方がゆっくりできるな」とルルトとアルバスの2人で店の奥へと案内する。
チョコとショコラもいる為、ある程度のスペースがある席へとパルドとウォーゼルは案内される。
「メニュー、どうぞ」
席に着いた2人にルルトがメニューを渡す。内容を見て「おぉ……」「これは……」と声を漏らす2人に、ルルトが「ふふ、懐かしいでしょ」と面白そうに笑う。
メニューには様々な料理の名前が並んでいる。その中には、冒険者時代に味わった事のある、懐かしい名前も多く並んでいた。
「これは、何を選んでいいか迷うな……」
「本当だね……あ、これ美味しかったやつだ」
メニューとにらめっこ状態の2人を見て、アルバスも「わかる。迷うよな」と腕を組み、うんうんと頷いていた。
にらめっこはしばらく続いたが、やがて「よし、決めた」とパルドとウォーゼルがほぼ同時に顔を上げる。
「オレはサラマンダーステーキで」
「あ、それもいいけど、俺はこの魚の塩焼きで」
パルドがサラマンダーステーキを、ウォーゼルは魚の塩焼きを、それぞれ注文する。
「はーい、承りましたー!」
「それじゃ、来るまで待っててくれよな」
ルルトとアルバスがそう言って去っていった。
●
「パルド、そわそわしすぎ」
注文してからまだそれほど経っていないというのに、そわそわと落ち着きのない様子を見せるパルド
チョコを抱え撫でたり、時に吸ったりして気を鎮めようとしているパルドを、抱えたショコラを撫でながら微笑ましい目で見るウォーゼル。
「……それにしても、2人とも変わってないみたいで安心した」
「そうだね、元気そうだし俺もほっとしたよ」
冒険者を引退してから、互いにやる事があり会う事が無かった。数年という年月が開いたが、相変わらずの様子の2人が見られた事を嬉しく思うのであった。
よく見るとルルトやアルバスの他に、同じ制服を着た者の姿が見られた。他にもスタッフを雇っているようで、ルルトとアルバスは接客や配膳をメインに動いていた。
何処か懐かしい店内を見回してみると、冒険者の頃の思い出の品々が飾られており、2人が見た物もあった。
「何か懐かしい、って感じがしたんだけどさ、わかったよ」
ルルトとアルバスの冒険拠点であった『アルタイル』と、店内の雰囲気が似ている事に気付いたとウォーゼルが言うと、同じように思っていたらしいパルドが「なるほど」と納得した様に頷いた。
「お待たせしましたー!」
パルドとウォーゼルが店内を観察していると、ルルトとアルバスが注文した物を運んでくる。どれも懐かしく、美味しそうな料理にパルドとウォーゼルの口から「おぉ」という声が漏れる。
「キミ達のごはんだよ」とショコラとチョコ用の料理が乗った皿を、ルルトは見せる。目を輝かせるショコラとチョコを見て、微笑みながらルルトは頭を撫でた。
気が付くと注文した物以外にも料理など並べるルルトとアルバス。不思議に思っているとアルバスが笑いながら言った。
「丁度暇になったんでな。休憩がてら、話を聞こうと思って」
「久々だもんね。お話しようよ」
アルバスとルルトの提案に是非とも、と2人は頷いた。
●
「へぇ! 孤児院継ぐことにしたんだ!」
「まだまだ見習いだけどね」
「今は少しずつだが、仕事を任せてもらってる」
料理に舌鼓を打ちつつ、パルドとウォーゼルの近況を聞いてルルトが驚いた様な声をあげる。
――パルドとウォーゼルも新たな道として、生まれ育った孤児院を継ぐ事を選んだというのだ。
その仕事は大変だというが、何処か満ちたように語るパルドとウォーゼルの言葉を、ルルトとアルバスは微笑みながら聞いていた。
「なら、次は子供達も連れてくるといいよ。ね、アルバス?」
「ああ、いつでも歓迎する――あ、前もって予約してくれると助かるかな。席の確保もあるんだが、ルルトも俺も店を空ける事があるんだ」
アルバスとルルトは給仕以外にも店舗運営にも携わっている。新メニュー考案も2人は行っており、新たな味探求の為に旅に出る事もあるというのだ。
「探究、と言いつつ食べ歩きみたいなもんだけどな。でもまだまだ知らない味がある、ってのには驚かされるよ」
アルバスの言葉にルルトもうんうん、と頷いている。
「……やっぱり変わらないな」
「そうだね、変わらないね」
そんな姿を見て、パルドとウォーゼルが呟いた。
――アルバスもルルトも、冒険者を引退してから数年という年月が経った。
冒険の為に着けていた装備から食堂の制服へと変わったが、アルバスもルルトも未だ根は冒険者であり、互いに相棒である事はあの頃と変わっていない。そんな風に、パルドとウォーゼルには2人が見えたのであった。
「――変わらないって何さ! これでも少しは身長も伸びたんだよ!」
パルドとウォーゼルの言葉を勘違いしたのか、頬を膨らますルルト。
「いや、そういう意味じゃないんだが……」
「うん、そうそう」
「あーあ、拗ねたルルトは強敵だぞ?」
困るパルドとウォーゼルを見て口元をニヤケさせるアルバス。この状況を楽しんでいるようだ。
「もう! 2人の為に用意したデザートはあげないんだから!」
頬を膨らませたルルトの言葉に『それは困る!』と声をあげるパルドとウォーゼル。「ああ、あのデザート美味いんだよな。滅多に出せる物じゃないし」とからかう様にアルバスが言うので、パルドとウォーゼルも焦った表情になる。
「ところで、そのデザートはどうするんだ?」
「もちろんボクが食べる!」
「2つあるが?」
「2つとも!」
「いや1つは俺にもくれよ」
そんなやりとりに『やっぱり2人共変わってない』と改めて思いながらも、宥める方法に頭を悩ますパルドとウォーゼルであった。