今は『もしも』の、これからの話
キャラクターノベル(グループ)制作 高久高久納品 2025年02月17日 11時45分05秒
――ある日のこと。
ルルト・アーキスとアルバス・ロウルは、冒険の拠点としているアルタイルにて平和な時を過ごしていた。
ルルトとアルバスのこの時間のお供は紅茶と鉱石カフェで考案したレシピで作ったチョコクッキーだ。
「美味いな、このクッキー」
「うん、美味しいね。紅茶にもよく合うよ」
サクサクと良い音を立ててクッキーを食べるアルバスと、紅茶の香りに小さく溜息を吐くルルト。
甘味を堪能しつつ時折他愛もない会話を交わしながら、ゆったりとしたこの時間を満喫していた。
「あ、そうだ。ねぇ、アルバス」
クッキーを一口齧った後、ふとルルトは何か思いついたようにアルバスの名を呼んだ。
「ん? どうしたルルト?」
呼ばれたアルバスは紅茶を啜った後にルルトに聞き返す。
「アルバスはさ、冒険者を引退したら何がしたい?」
「冒険者を、引退?」
アルバスの言葉にルルトが「そう」と頷く。
「いつか話した事あったよね。引退したら、っていうもしもの話だよ」
「ああ、もしもの話か……うーん……言われてみたら、特に考えてなかったな……」
アルバスが呟くように言う。
冒険者として依頼を受け、様々な場所を訪れ、未知のモノと出会う。それがアルバスにとっては楽しく、辞めることなど考えてもいなかったのだ。
だがルルトに『もしも』の話であるが、引退という言葉を聞いて思うところがないわけでもない。まだ先の話であるとは思うが、いずれ冒険者を辞める日が来るのだ。
「うーん……冒険者を辞めたら、か……」
アルバスが腕を組み、眉間に皺を寄せて考える仕草を見せる。
冒険者引退後、自分がどんな道を進むのか。今まで考えたこともなかった為、どうなっているか中々想像できない。
「……荷運び……か、警護の仕事に就く、かな……何処か拠点を決めて――そうだな、実家のあるベールコートの近くがいい」
時間をかけ、アルバスが絞り出した答え。
「へぇ、アルバスってそういう仕事がしたかったの?」
「したい、と言われるとまた違うんだけどな……」
ルルトに聞かれ、苦笑交じりでアルバスが答える。
荷運びや警備の仕事に興味があるか、と言われるとアルバス自身首を傾げるところだ。では何故そのように答えたかというと、簡単である。自分がこの先何をしているか、と想像できる仕事がこの辺りだったのだ。
「つまり、具体的には決まっていない、と」
「まぁ、そうとも言うな……」
目を逸らしながらアルバスが言った。
「そういうルルトはどうなんだ?」
「ボク? ボクは決まってるよ!」
アルバスの言葉に『よくぞ聞いてくれました』と言わんばかりに胸を張るルルト。
「ボクはね、料理屋さんをやりたいんだ」
「料理屋?」
「そう、料理屋さん! ボク達、冒険者として色んなところに行って、そこで色んな料理に出会ったよね?」
ルルトとアルバスは互いを相棒として、様々な場所で冒険者としての活動をしてきた。
その先々ではそこでしか食べることができないような食材や、ある特定の期間しか食べられない料理など、様々な料理との出会いがあったのだ。
「えっとシャルガネの街の四季折々の料理でしょ? マザキヤの町で買った白パンやホットドッグに、リブラネスタの公園で飲んだレインボージュースも美味しかったなぁ……あ! レースの優勝後に食べたサラマンダーステーキも忘れられないよ!」
今までの思い出を思い出すだけで、ルルトの口元は滝状態である。
「ルルト、口元」
「――はっ!? いけないいけない……ああ、そういえば釣った魚で焼き魚とかお刺身もやったよねぇ……じゅるり」
「もっと酷くなってるじゃないか……でも、元冒険屋の料理屋か。いいんじゃないか?」
ルルトは食べる事が大好きだ。冒険者として色々な場所へ行き、色々な味を知っている。
そんなルルトが料理屋をやるというのは、結構合っているのかもしれない。
そんな思いをアルバスが何気なく口にする。
「アルバスもそう思う!?」
アルバスとしては本当に何気ない一言であったが、食い気味に迫るルルトに「おわっ!?」と思わずのけ反る。
「ね、どう!?」
「い、いや、いいと思うぞ、うん」
「そっか!」
アルバスの言葉に嬉しそうな反応を見せるルルト。急に驚かされたが、喜ぶルルトを見て『まぁいいか』と思うアルバス。
「……そういやさ、アルバスは引退後どうするか、決まってないんだよね?」
「ん? いや、さっき言ったように荷物運びか「具体的には決まってないんだよね?」――具体的に、って言われるとそうだな」
その言葉を聞き、ルルトは「そっかそっか」と何度か頷くと、アルバスを見て言った。
「じゃあさ、一緒にやらない?」
「やらない――って、何をだ?」
「料理屋さん。ボクと一緒に」
ルルトの言葉に、アルバスが驚いた表情を浮かべる。が、それもほんの少しの間。
ルルトの相棒として行動を共にしてきたアルバス。勿論同じ料理を経験してきた。
そんな思い出の味を、相棒と共に作っていく。それも楽しいのではないだろうか。
「……うん。料理屋、いいかもしれないな」
「だよね!」
嬉しそうに言うルルト。一度良いかもしれない、と思うとアルバスの中でも料理屋の方へと気持ちが傾いていく。
「んっ」
アルバスにルルトから手が差し出される。
小さくとも、頼りになる相棒の手を前にして、アルバスは――
「俺でよければ」
自分の手を差し出し、握手で返す。
「ありがとう。改めて、よろしくね」
相棒の手を握り返し、嬉しそうにルルトが言った。
「ああ、よろしくな。相棒として声をかけてくれたんだろう? その期待には応えるつもりさ」
「期待してるよ、相棒ー!」
ルルトがアルバスに満面の笑みを向ける。
――ルルトが料理屋をやりたいと思った理由。
今まで様々な場所を旅して出会ってきた、多くの食を引退後も大切にしたい。この想いに偽りはない。
だが、それだけではなく。
今握手を交わしている相棒が、引退後には相棒ではなくなってしまう。
(それは、とても寂しいよ)
だから、引退後も一緒に出来る事を考えた。そして思いついたのが『料理屋さん』だったのだ。
勿論、アルバスがやりたい事が他にある――荷物運びや警護の仕事を本気でやりたい、というのならば、ルルトは応援するつもりであったけれども。
「ん? 今何か言ったか?」
「んーん、なーんにも」
この事を、アルバスに言うつもりは無い。
「さて、それじゃ色々相談しようか」
「相談?」
「そう、ボク達の夢――料理屋さんの実現に向けて! まず場所だよね。魚介を扱うなら、海沿い? ベールコートの近くで良い所ないかな?」
「そうだなぁ……あ、ベールコート近くでやるなら、百合茶は外せないな」
「そうだね、飲み物メニューに当然入れるとして、他にも――」
ルルトとアルバスが、互いに思いついた事を色々と話していく。
――これはまだ、仮の話だ。
いずれ訪れる、ルルトとアルバスが冒険者を引退する日。
冒険者を辞めた後、2人がどの様な道を歩む事になるのか、今はわからない。
「そういえばアレ、何処の料理だったっけなぁ、美味しかったなぁ……じゅるり」
「ルルト、口元がまた大変な事になってる」
このお茶会で話し合ったような料理屋を、ルルトとアルバスの2人が実現する。
その日が来るかどうか――それはまた、今より先の未来の話である。
ルルト・アーキスとアルバス・ロウルは、冒険の拠点としているアルタイルにて平和な時を過ごしていた。
ルルトとアルバスのこの時間のお供は紅茶と鉱石カフェで考案したレシピで作ったチョコクッキーだ。
「美味いな、このクッキー」
「うん、美味しいね。紅茶にもよく合うよ」
サクサクと良い音を立ててクッキーを食べるアルバスと、紅茶の香りに小さく溜息を吐くルルト。
甘味を堪能しつつ時折他愛もない会話を交わしながら、ゆったりとしたこの時間を満喫していた。
「あ、そうだ。ねぇ、アルバス」
クッキーを一口齧った後、ふとルルトは何か思いついたようにアルバスの名を呼んだ。
「ん? どうしたルルト?」
呼ばれたアルバスは紅茶を啜った後にルルトに聞き返す。
「アルバスはさ、冒険者を引退したら何がしたい?」
「冒険者を、引退?」
アルバスの言葉にルルトが「そう」と頷く。
「いつか話した事あったよね。引退したら、っていうもしもの話だよ」
「ああ、もしもの話か……うーん……言われてみたら、特に考えてなかったな……」
アルバスが呟くように言う。
冒険者として依頼を受け、様々な場所を訪れ、未知のモノと出会う。それがアルバスにとっては楽しく、辞めることなど考えてもいなかったのだ。
だがルルトに『もしも』の話であるが、引退という言葉を聞いて思うところがないわけでもない。まだ先の話であるとは思うが、いずれ冒険者を辞める日が来るのだ。
「うーん……冒険者を辞めたら、か……」
アルバスが腕を組み、眉間に皺を寄せて考える仕草を見せる。
冒険者引退後、自分がどんな道を進むのか。今まで考えたこともなかった為、どうなっているか中々想像できない。
「……荷運び……か、警護の仕事に就く、かな……何処か拠点を決めて――そうだな、実家のあるベールコートの近くがいい」
時間をかけ、アルバスが絞り出した答え。
「へぇ、アルバスってそういう仕事がしたかったの?」
「したい、と言われるとまた違うんだけどな……」
ルルトに聞かれ、苦笑交じりでアルバスが答える。
荷運びや警備の仕事に興味があるか、と言われるとアルバス自身首を傾げるところだ。では何故そのように答えたかというと、簡単である。自分がこの先何をしているか、と想像できる仕事がこの辺りだったのだ。
「つまり、具体的には決まっていない、と」
「まぁ、そうとも言うな……」
目を逸らしながらアルバスが言った。
「そういうルルトはどうなんだ?」
「ボク? ボクは決まってるよ!」
アルバスの言葉に『よくぞ聞いてくれました』と言わんばかりに胸を張るルルト。
「ボクはね、料理屋さんをやりたいんだ」
「料理屋?」
「そう、料理屋さん! ボク達、冒険者として色んなところに行って、そこで色んな料理に出会ったよね?」
ルルトとアルバスは互いを相棒として、様々な場所で冒険者としての活動をしてきた。
その先々ではそこでしか食べることができないような食材や、ある特定の期間しか食べられない料理など、様々な料理との出会いがあったのだ。
「えっとシャルガネの街の四季折々の料理でしょ? マザキヤの町で買った白パンやホットドッグに、リブラネスタの公園で飲んだレインボージュースも美味しかったなぁ……あ! レースの優勝後に食べたサラマンダーステーキも忘れられないよ!」
今までの思い出を思い出すだけで、ルルトの口元は滝状態である。
「ルルト、口元」
「――はっ!? いけないいけない……ああ、そういえば釣った魚で焼き魚とかお刺身もやったよねぇ……じゅるり」
「もっと酷くなってるじゃないか……でも、元冒険屋の料理屋か。いいんじゃないか?」
ルルトは食べる事が大好きだ。冒険者として色々な場所へ行き、色々な味を知っている。
そんなルルトが料理屋をやるというのは、結構合っているのかもしれない。
そんな思いをアルバスが何気なく口にする。
「アルバスもそう思う!?」
アルバスとしては本当に何気ない一言であったが、食い気味に迫るルルトに「おわっ!?」と思わずのけ反る。
「ね、どう!?」
「い、いや、いいと思うぞ、うん」
「そっか!」
アルバスの言葉に嬉しそうな反応を見せるルルト。急に驚かされたが、喜ぶルルトを見て『まぁいいか』と思うアルバス。
「……そういやさ、アルバスは引退後どうするか、決まってないんだよね?」
「ん? いや、さっき言ったように荷物運びか「具体的には決まってないんだよね?」――具体的に、って言われるとそうだな」
その言葉を聞き、ルルトは「そっかそっか」と何度か頷くと、アルバスを見て言った。
「じゃあさ、一緒にやらない?」
「やらない――って、何をだ?」
「料理屋さん。ボクと一緒に」
ルルトの言葉に、アルバスが驚いた表情を浮かべる。が、それもほんの少しの間。
ルルトの相棒として行動を共にしてきたアルバス。勿論同じ料理を経験してきた。
そんな思い出の味を、相棒と共に作っていく。それも楽しいのではないだろうか。
「……うん。料理屋、いいかもしれないな」
「だよね!」
嬉しそうに言うルルト。一度良いかもしれない、と思うとアルバスの中でも料理屋の方へと気持ちが傾いていく。
「んっ」
アルバスにルルトから手が差し出される。
小さくとも、頼りになる相棒の手を前にして、アルバスは――
「俺でよければ」
自分の手を差し出し、握手で返す。
「ありがとう。改めて、よろしくね」
相棒の手を握り返し、嬉しそうにルルトが言った。
「ああ、よろしくな。相棒として声をかけてくれたんだろう? その期待には応えるつもりさ」
「期待してるよ、相棒ー!」
ルルトがアルバスに満面の笑みを向ける。
――ルルトが料理屋をやりたいと思った理由。
今まで様々な場所を旅して出会ってきた、多くの食を引退後も大切にしたい。この想いに偽りはない。
だが、それだけではなく。
今握手を交わしている相棒が、引退後には相棒ではなくなってしまう。
(それは、とても寂しいよ)
だから、引退後も一緒に出来る事を考えた。そして思いついたのが『料理屋さん』だったのだ。
勿論、アルバスがやりたい事が他にある――荷物運びや警護の仕事を本気でやりたい、というのならば、ルルトは応援するつもりであったけれども。
「ん? 今何か言ったか?」
「んーん、なーんにも」
この事を、アルバスに言うつもりは無い。
「さて、それじゃ色々相談しようか」
「相談?」
「そう、ボク達の夢――料理屋さんの実現に向けて! まず場所だよね。魚介を扱うなら、海沿い? ベールコートの近くで良い所ないかな?」
「そうだなぁ……あ、ベールコート近くでやるなら、百合茶は外せないな」
「そうだね、飲み物メニューに当然入れるとして、他にも――」
ルルトとアルバスが、互いに思いついた事を色々と話していく。
――これはまだ、仮の話だ。
いずれ訪れる、ルルトとアルバスが冒険者を引退する日。
冒険者を辞めた後、2人がどの様な道を歩む事になるのか、今はわからない。
「そういえばアレ、何処の料理だったっけなぁ、美味しかったなぁ……じゅるり」
「ルルト、口元がまた大変な事になってる」
このお茶会で話し合ったような料理屋を、ルルトとアルバスの2人が実現する。
その日が来るかどうか――それはまた、今より先の未来の話である。