ある祝いの日、確かな絆

キャラクターノベル(グループ)制作 ウケッキ納品 2025年04月09日 09時00分46秒

●ある祝いの日、確かな絆

 それは暖かい日差しの日。
 新暦1225年4月9日。【アルバス・ロウル】26歳の誕生日。
「よし、これで良し! あとは……あわわ、ケーキの仕上げをしなくっちゃっ!」
 可愛らしく飾り付けられた部屋の中で【ルルト・アーキス】は慌ただしく走り回っていた。
 ルルトが忙しく動き回っているのには理由がある。今日の主役であるアルバスが帰ってくる前に全ての用意を終わらせ、サプライズ誕生パーティーをしてあげたいのだ。
 普段、彼から受けている恩や貰ってばかりではいけないとルルトなりに考えた結果のようである。なお、作業は順調で後はケーキの用意を済ますだけだ。
 だがここで問題が発生する。なんとアルバスの気配をルルトは捜波で探知してしまったのだ。予定よりも一時間は早い。
「うわわわ!? まだ早いってば! そうだ、タマさん、シロさん、お願いできるかな?」
 二匹は、にゃんっとひと鳴きするとそのまま外へと走り去っていく。ルルトの意図を汲み取ったのかもしれない。きっとあの二匹に任せておけば大丈夫だろう。
 シロとタマが時間稼ぎをしている間に、ルルトは今ちょうど焼き上がったケーキの仕上げに入る。
 窯から焼き上がったばかりのケーキのスポンジを取り出すとルルトはそれを丁寧に皿の上に乗せる。ふわふわのケーキのスポンジはこのままでも美味しそうなほど、香ばしい香りを漂わせている。
「よかった、ちゃんと焼けてるみたいだね。それじゃ、後はこれを……」
 木のボウルに用意してあった生クリームをヘラですくい取ると、ルルトはスポンジを崩さないように塗りつけていく。この作業は繊細な手捌きが必要で、あまり適当にやれば美しくならないし、乱暴にやればスポンジが崩れたりへこんだりしてしまうだろう。
 生クリームを丁寧に塗りながらルルトは思う。世の中のお菓子職人は凄いなぁと。こんな気を張る作業を一日にいくつも行っているのだから。
 綺麗にスポンジに生クリームを塗り終えるとルルトは近所の商店で買った【店長オススメ! 色付き粒砂糖】を取り出す。丸形や星形、月形など様々な形に成形された粒砂糖の詰め合わせだ。店長によるとケーキを彩るのにうってつけなんだとか。
 それを少しだけつまんで取り出すとぱらぱらとケーキの上にかけていく。まるで白いキャンバスに筆で色を乗せたかのようにケーキの彩りが増した。
「うんうん、いい感じじゃないかな? それじゃこっちのフルーツを乗せてっと」
 切り分けておいたオレンジやイチゴなどのフルーツをふんだんに使って、ケーキの上部を飾り付けていく。これだけでも実に華やかだ。
 そして最後の仕上げにと、知り合いの菓子職人に頼んで作ってもらった名前入りチョコプレートを置く。プレートには【アルバス、おたんじょうびおめでとう!】とホワイトチョコで書かれているようだ。
 全ての飾りつけを終えルルトは、ふうっと息を吐きながら額の汗を拭う。アルバスの気配がさっきよりも近づいているが、どうやら帰宅前に間に合ったらしい。
「さてと、後は待つだけかな? 喜んでくれるといいなぁ」

 時間は少し戻って。
 用事が早くに済んだアルバスは菓子店に寄っていた。そこには色とりどりの飴細工がいくつも並んでいる。
「リンゴ味、いやレモン味も捨てがたいな。いっそ両方買ってしまうか」
 手持ちを確認すると、問題なく購入は出来そうだ。それならばとアルバスはリンゴ味とオレンジ味の飴細工を二つ購入する。
 それをベルトポーチに詰めると足取り軽く帰路についた。このポーチは長く使っている物で、所々が傷んでおり、すぐに破れる感じではないがそろそろ交換時だろう。
「こいつも傷んできたか。そろそろ変えないと知らない内に底が抜けるかもな」
 そう言いながら大分薄くなってきたポーチの底部分を撫でつつ歩いていると、シロとタマの姿が見えた。二匹は塀の上に鎮座し、まるで門番かのようにアルバスを見下ろしている。ふにゃあっとひと鳴きする二匹を見てアルバスの顔が緩んだ。
「おや? お出迎えかな。はは、おいで。一緒に帰ろうか?」
 アルバスが手を伸ばすと、するりと抜ける様にシロは身を翻す。それならとタマの方へ手を伸ばすが、そちらもするりと抜けて塀の上で尻尾を揺らめかせている。
 まるでからかっているような二匹の様子を見て、アルバスは思う。きっと遊びたいのだろうと。
「そうか、いなくって寂しかったんだな? いいぞ、少し遊ぼうか」
 鬼ごっこのように塀の上にいるシロ、もしくはタマをアルバスは捕まえようと手を伸ばす。それを二匹は素早い身のこなしでかわし続けた。
 しばらくそうしていた二匹は疲れたのか、少々息を切らしている。ふと、シロは何かに気づいたかのように振り返った。タマも同じように振り返る。
 二匹は互いの顔を見合わせると、すたっと身軽に地面へと降り立った。
「ん? もういいのか。それじゃ帰ろうか」
 コートを広げると嬉しそうに二匹はアルバスのコートの中へと入った。
 そうして家に帰りついたアルバスは扉を開けて、目を見開いて驚く。なぜなら華やかに飾りつけされた室内が目に飛び込んできたからだ。
「アルバス、誕生日おめでとー♪」
 紙吹雪を散らし、笑顔でルルトがアルバスを出迎える。
 暖かな祝いの言葉とルルトの笑顔にアルバスの疲れが一気に吹っ飛んだ。祝われるというのはいいものだ。
「ありがとう。まさか、こんなに祝ってくれるとは」
「ほらほら、主役は席についてついて!」
 アルバスの背後にくるっと回ると軽く押しながらルルトはアルバスを席に誘う。席に着くと、目の前にはチキンやコーンスープ、唐揚げにケーキとお祝いの料理が目白押しだった。
「これ、全部作ったのか?」
「うん! いつも助けてもらったり、貰ってばっかりだったから……頑張ったんだよ!」
 胸を張って誇らしげなルルトの様子に自然とアルバスも笑顔が零れた。
「ありがとうな。それじゃ冷めないうちに頂くとするか」
 ルルトが作ったどの料理も非常に美味しく、アルバスはそこらの店に行くよりも美味いとルルトを褒めた。ルルトも満更ではなさそうに笑う。
 嬉しそうにするアルバスの様子を見て、ルルトはシロ、タマと手をハイタッチさせた。
 料理とケーキを楽しんだ後、ルルトはある包みをアルバスに渡す。
「これ、プレゼント! ほら開けてみてっ」
 包みを開けるとそこには猫の刻印が施されたベルトポーチが入っていた。
「ちょうど今使ってるのが傷んできていたんだ。まさか知っていたのか?」
「うん、だっていつも使ってるの見てるから。ふふ、いつもありがとう。これからも……よろしくね!」
 ルルトの言葉にアルバスは満面の笑みを浮かべる。
「本当にありがとう。こちらこそ、いつもありがとう。これからもよろしく頼む」
 アルバスはぎゅっとルルトに感謝のハグをする。子供扱いせず、対等に扱ってくれるアルバスへの暖かい感情を抱きしめながら、ルルトは微笑んだのだった。

登場キャラクター

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0