食いしん坊シスター、ふわとろオムライスに出会う
キャラクターノベル制作 広並 整納品 2021年01月31日 19時35分38秒
ほわほわと揺れる白い湯気。
立ち込める香りは甘く、嗅いでいる者をしあわせにするバターの匂い。
濃厚なソースは一流レストランにだって負けていない。鮮やかな色彩は見るものの食欲を掻き立て、艶々と輝いてスプーンが差し込まれるのを今か今かと待っている。
「ほわぁ……!!」
シルク・メイプルリーフは感嘆のため息を吐き出した。
彼女の目の前にあるのは、ふんわりとろとろのオムライスである。黄金に輝くふわとろ卵を、ケチャップソースの鮮やかな赤が彩っていた。
ただし、大きさが少々おかしい。
シルクの顔よりデカイのである。ランクの高い宿屋に置いてある大きな枕ほどの大きさなのだ。隣に置いてある付け合わせのサラダとスープの器がおもちゃに見えてくるレベル。
そんな巨大オムライスを、シルクは今にも涎を垂らさんばかりのきらきら笑顔で見つめている。彼女的には、この大きさが魅力的に見えるらしい。
「こ、こんなにとろとろなたまご、ホントに食べちゃって大丈夫なのですか……?!」
窓から差し込む陽の光を浴びてきらきらと輝く半熟卵を示し、シルクは料理人を見上げた。
卵とは、しっかりと火を通してから食べるもの。それが半ば常識となっている。
保存が効き、手軽に摂取できる卵は、しかしその割れやすさとアタリを引く確率の高さから、そこそこ高級な品なのである。鳥を飼育している場所ではその限りではなかろうが、都市部で生活しているとそうそう口に入る品ではない。
が、どうやらここでは違うらしい。
「ええ、今朝採れたばかりの新鮮な卵とミルク、熟成させたバターを使用していますので、問題なくお食べになっていただけますよ」
ニコニコと笑う料理人は、己の自信作を早く食べてもらいたくてウズウズしていた。こんな美人でナイスバディーなお姉さんに食べてもらえるなら本望。全身でそう語っている。
「んんん、ではエンリョなくいただきますね……!!」
大振りの木匙を手に取るシルク。その瞳は期待で爛々と輝いていた。
「ふぉ……!!」
匙を、オムライスに差し入れる。
抵抗なく木匙を飲み込んだそれは、鮮やかなオレンジの断面を覗かせた。ほっかりと揺らぐ湯気が、ほのかなガーリックの香りと爽やかな甘酸っぱい香りをシルクの鼻腔に届けてくれる。
たまらず掬い取った米粒と卵は、複雑に絡み合って今にもこぼれ落ちそうなほど。
「はー、む」
落ちそうな米粒を、舌で迎え入れることで救い上げる。口の端についたご飯粒はご愛嬌。
「ンンンン〜〜〜!!」
ほっぺたがおっこちちゃう。シルクは旨味に痺れる頬を両手で支えた。
口の中に広がる、酸味と甘味、そして旨味のハーモニー。噛み締めるほどにじわりと甘味をもたらすのは、粘り気が出るほど丁寧に炒められた玉ねぎだろうか。
時折コリっとした食感を提供してくれているニンジンも、大胆に存在を主張する鶏肉も、全てが全て素晴らしい。
もむもむ、ごっくん。
シルクは素晴らしすぎるさいしょのひとくちを、目一杯堪能して飲み込んだ。
「はぁ、こんなにおいしいものが食べられるなんて……神に感謝を……!」
開かれた瞳が、とろんと溶けている。
片手で頬を支えながら、しかしもう片方の手は迷いなくオムライスに伸びていた。
切り崩す。掬いあげる。口に運んで、噛み締める。
淀みないその手つきは衰えることなく、見る間にその大きさを失っていく巨大オムライス。
はふ、もむもむ、ごっくん。
時折スープやサラダに手を伸ばしつつ、シルクは巨大オムライスを全身で堪能していた。
ふんだんに使われたバターがその唇をつやつやと潤し、とろりとした卵は口元を汚す。それを拭き取るなんてとんでもない! とばかりに、シルクはしきりに唇を舐め取っていた。
多量のカロリーを摂取することで白い頬は薔薇色に染まり、あまりの美味しさに瞳は潤む。吐き出す息は感嘆に濡れ色っぽい。
気付けば、オムライスは最後の一口を残し消失していた。
シルクは名残惜しげに最後の一口を見つめ、万感の想いを込めるように瞳を閉じる。悩ましげに下がった眉もそのままに、しかし待ちきれない様子で木匙を口腔内に導いた。
もむもむ、ごくん。
「はぁ……」
米粒一つ残さず、巨大オムライスを平げたシスターは、満足と寂寞の混じった吐息を吐き出して、静かに両手を組んで空を仰ぐ。
「神に、感謝を……!」
その姿は、一枚の絵画の如く完成された美しさであったという。
「いやぁ、いい食いっぷりだねぇ。ここはデザートも美味しいんだが……」
「食べます!!」
常連らしき男性の声に、シルクはそれこそ秒で反応した。あまりの速度に声をかけた男性は一瞬呆気に取られ、次いで楽しそうに笑う。
「そりゃよかった! どれ、その食べっぷりに免じて、おじさんが奢ってあげよう」
「いいんですか?!」
田舎の食堂に、楽しげな笑い声が響く。
彼女の行く道は、今日も笑顔で溢れていた。
立ち込める香りは甘く、嗅いでいる者をしあわせにするバターの匂い。
濃厚なソースは一流レストランにだって負けていない。鮮やかな色彩は見るものの食欲を掻き立て、艶々と輝いてスプーンが差し込まれるのを今か今かと待っている。
「ほわぁ……!!」
シルク・メイプルリーフは感嘆のため息を吐き出した。
彼女の目の前にあるのは、ふんわりとろとろのオムライスである。黄金に輝くふわとろ卵を、ケチャップソースの鮮やかな赤が彩っていた。
ただし、大きさが少々おかしい。
シルクの顔よりデカイのである。ランクの高い宿屋に置いてある大きな枕ほどの大きさなのだ。隣に置いてある付け合わせのサラダとスープの器がおもちゃに見えてくるレベル。
そんな巨大オムライスを、シルクは今にも涎を垂らさんばかりのきらきら笑顔で見つめている。彼女的には、この大きさが魅力的に見えるらしい。
「こ、こんなにとろとろなたまご、ホントに食べちゃって大丈夫なのですか……?!」
窓から差し込む陽の光を浴びてきらきらと輝く半熟卵を示し、シルクは料理人を見上げた。
卵とは、しっかりと火を通してから食べるもの。それが半ば常識となっている。
保存が効き、手軽に摂取できる卵は、しかしその割れやすさとアタリを引く確率の高さから、そこそこ高級な品なのである。鳥を飼育している場所ではその限りではなかろうが、都市部で生活しているとそうそう口に入る品ではない。
が、どうやらここでは違うらしい。
「ええ、今朝採れたばかりの新鮮な卵とミルク、熟成させたバターを使用していますので、問題なくお食べになっていただけますよ」
ニコニコと笑う料理人は、己の自信作を早く食べてもらいたくてウズウズしていた。こんな美人でナイスバディーなお姉さんに食べてもらえるなら本望。全身でそう語っている。
「んんん、ではエンリョなくいただきますね……!!」
大振りの木匙を手に取るシルク。その瞳は期待で爛々と輝いていた。
「ふぉ……!!」
匙を、オムライスに差し入れる。
抵抗なく木匙を飲み込んだそれは、鮮やかなオレンジの断面を覗かせた。ほっかりと揺らぐ湯気が、ほのかなガーリックの香りと爽やかな甘酸っぱい香りをシルクの鼻腔に届けてくれる。
たまらず掬い取った米粒と卵は、複雑に絡み合って今にもこぼれ落ちそうなほど。
「はー、む」
落ちそうな米粒を、舌で迎え入れることで救い上げる。口の端についたご飯粒はご愛嬌。
「ンンンン〜〜〜!!」
ほっぺたがおっこちちゃう。シルクは旨味に痺れる頬を両手で支えた。
口の中に広がる、酸味と甘味、そして旨味のハーモニー。噛み締めるほどにじわりと甘味をもたらすのは、粘り気が出るほど丁寧に炒められた玉ねぎだろうか。
時折コリっとした食感を提供してくれているニンジンも、大胆に存在を主張する鶏肉も、全てが全て素晴らしい。
もむもむ、ごっくん。
シルクは素晴らしすぎるさいしょのひとくちを、目一杯堪能して飲み込んだ。
「はぁ、こんなにおいしいものが食べられるなんて……神に感謝を……!」
開かれた瞳が、とろんと溶けている。
片手で頬を支えながら、しかしもう片方の手は迷いなくオムライスに伸びていた。
切り崩す。掬いあげる。口に運んで、噛み締める。
淀みないその手つきは衰えることなく、見る間にその大きさを失っていく巨大オムライス。
はふ、もむもむ、ごっくん。
時折スープやサラダに手を伸ばしつつ、シルクは巨大オムライスを全身で堪能していた。
ふんだんに使われたバターがその唇をつやつやと潤し、とろりとした卵は口元を汚す。それを拭き取るなんてとんでもない! とばかりに、シルクはしきりに唇を舐め取っていた。
多量のカロリーを摂取することで白い頬は薔薇色に染まり、あまりの美味しさに瞳は潤む。吐き出す息は感嘆に濡れ色っぽい。
気付けば、オムライスは最後の一口を残し消失していた。
シルクは名残惜しげに最後の一口を見つめ、万感の想いを込めるように瞳を閉じる。悩ましげに下がった眉もそのままに、しかし待ちきれない様子で木匙を口腔内に導いた。
もむもむ、ごくん。
「はぁ……」
米粒一つ残さず、巨大オムライスを平げたシスターは、満足と寂寞の混じった吐息を吐き出して、静かに両手を組んで空を仰ぐ。
「神に、感謝を……!」
その姿は、一枚の絵画の如く完成された美しさであったという。
「いやぁ、いい食いっぷりだねぇ。ここはデザートも美味しいんだが……」
「食べます!!」
常連らしき男性の声に、シルクはそれこそ秒で反応した。あまりの速度に声をかけた男性は一瞬呆気に取られ、次いで楽しそうに笑う。
「そりゃよかった! どれ、その食べっぷりに免じて、おじさんが奢ってあげよう」
「いいんですか?!」
田舎の食堂に、楽しげな笑い声が響く。
彼女の行く道は、今日も笑顔で溢れていた。
登場キャラクター
シルク・メイプルリーフ