慈愛の花咲く私たちの家

キャラクターノベル(グループ)制作 白葉うづき納品 2025年02月02日 15時51分41秒

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「よくお越しくださいました、コルネリウスさん。実は……貴方にぜひとも見ていただかないといけないものがあります。帰ってきたばかりで早々にお呼び立てしてしまい申し訳ありません。ですが、すぐにでも貴方にお知らせしたくて」
「わ、わかりました。それで一体……どうされたのでしょう」
「はい。この扉を開けるとその意味が分かると思います。実は――」

「ボナロが一人で歩けるようになりました!」

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 王国北部の街シャイネには、グナーデ教会という教会がある。コルネリウス・アーラにとって大切な場所の一つだ。深い親愛を抱く家族がいて、いつでも暖かく迎えてくれる、かけがえのない居場所。
 そんな家族に冒頭の大歓迎を受けた後、コルネリウスは調理台に立つ。本来ならば料理が得意なフィオやメルチスが作るのだが、フィオは今日遅くなるらしく、メルチス(メルチス・アダラード)はコルネリウスの計らいで休憩してもらっている。
 料理の手伝いは、すっかり大きくなったハウラとスールがしてくれた。アルド(アルド・シャウアー)とピオはボナロの面倒を見て、準備をしている内にティト、そしてフィオが帰ってくる。途中からメルチスがそわそわし始めたため、結局は皆で準備をして、皆で食卓を囲んだ。

「改めて、お帰りなさい。というか私たちの好きなものばかり作ってくださっていませんか……! 貴方たちのおかえりパーティーだというのに……!」
「気にしないでください! 私も皆の好きなものを知れて嬉しいですから」
「今度はコルネリウスさんのお好きなものを聞かせてください。おかえりパーティーは明日も続行です!」
 そう息まくメルチスは、いつも通り、というかいつも以上になんだか楽しげだ。
「学校などはどうですか? 貴方たちの話をお聞きしたいです」
「私は――」
 コルネリウスは自身の近況を伝える。竜の傍らにいること、孤児院を巡っていること、そこでお手伝いをしながら子どもたちの環境や世界情勢、貴族としての知識や振る舞いを学んでいること。
「素敵! お姉さまは竜のお姫様になったのね!」
「スゴいナ! でもナンカさらわれそうダ」
「心配、だな。ぼくたちのところに来てて、大丈夫?」
「お姉ちゃんは強いから平気だよ! もしそんなことがあれば、僕たちも助けに行くからね」
 アルドの心強い言葉に微笑む。
「ふふ、頼もしいです。でもお姉ちゃんはそう簡単には捕まりませんよ! 安心してください」
「本当に強いんです、コルネリウスさん。今回の旅で改めて圧倒されました」
 そう話すのはピオだ。実は今回学園から帰ってきたのはコルネリウスとアルドだけではない。一年生としてピオも通い始めていた。
「ピオくんの知識も知識欲もすごいんですよ。図書館に行くといつも会えるんです」
「勉強が苦手な人の先生にもなってあげたりしてるんだ。皆に字を教えたのもピオだもんね」
「小さな子に教える先生のお仕事も始めたんです。まだアルド兄やコルネリウスさんに助けてもらいながらですが」
「将来は先生かもしれませんね」
「先生……それも、いいですね」
「ミンナすごいナ、オレもガンバらないとダ」
「ティトは何を頑張ってるの?」
「訓練!」
「ティトは街の自警団に入ったのよね」
「そうなんですか……!」
 まじまじとティトを見る。ゴブリンの少年は、確かに前よりもずいぶん体つきがしっかりして、体も大きくなっていた。
「危ないことはありませんでしたか?」
「ゼンゼン! マチヲまわッテケイビしたリ、ケモノ避けノ柵ヲタテたりダ。訓練モオトナとやるゾ! 団長ニ筋がイイッテ褒めラレタ!」
「でも、怪我ばっかりして、服破いて、くる」
「いつもアリがとナ、スール!」
「まだまだわたしには敵わないけれどね」
「ハウラがツヨすぎるンダ!」
「ハウラさんは最近何をしてるんですか?」
「お姉さまと似ているかもしれないわ。街の孤児院や、神父と周辺の村を回ってお手伝いしてるのよ」
 リザードマンの少女も成長していた。シンプルな可愛らしいワンポイントのお洒落もしていて、年頃の少女という印象を抱かせる。
「あ、もちろん、ハウラだけでなく他に護衛の人もお願いしていますよ」
「それならよかったです。メルチスさんの、エーテル浄化のお手伝いをしているんですね」
「そうよ、ヒトも動物も植物も、出来る限り豊かで穏やかに過ごしてもらいたいから。いつかは冒険者になって皆を助けて回りたいって、最近思うの。だから、お姉さまが目標!」
「ふふ、ハウラさんなら、きっともっとすごい冒険者になれますよ」
「その間は、私が教会のお仕事をしています。本格的なことはまだできないけれど、応急処置やご飯を作ることはできるから」
「ガーデニングの仕事もまだやってるの、フィオ?」
「うん。アドベントのお手伝いもして、勉強してるんだ」
「もしかしてクラリッサさんですか?」
 フィオが頷く。話に出てきた教会は、人員がほぼ一新されたらしい。今では細々と街の人々に寄り添う存在となっているそうだ。
「ゆくゆくは、神父の全部を引き継いで、ここを守っていきたいって。そう思ってます」
「フィオ」
「なあにスール」
「またシンプが泣くゾ」
「もう泣いてるわ」

「スールくんは最近いかがですか?」
「ぼくは、お裁縫と、編み物、してる」
「可愛い動物のマスコットを編んじゃうの。お店にも置いてもらってるのよね」
「ボナロの服もスールが作ったんですよ!」
「とっても上手ですね……! すごいです!」
「コルネリウスのも、いつか、作ってあげる」
 スールは誇らしそうに胸を張る。
「アルドはどうですか」
「僕は、『皆で美味しいご飯を食べる会』をこの前やったんだ。皆や、お姉ちゃんの力を借りて」
 それは、庶務であるアルドが立候補する際に掲げた公約だ。学年もクラスも関係なく、同じ場所でご飯を食べてお喋りしてみよう、という思い切った催しは何とか開催にこぎつけたらしい。割愛するが、その際のいざこざや苦労を、手伝ったコルネリウスは知っている。
「全部は上手くいかなかったんだ。でも、次が楽しみって声も聞けて」
「私とご飯を食べている時も、ずっと考えているんですよね。次はどうしよう、今度はあれをしてみようってたくさん案を聞かせてくれて」
「お姉ちゃんとお話してると、色々浮かんできて」
 アルドは瞳を細める。
「今はね、どうしたら戦争しないでいられるかって思いながら勉強してる。難しいけど考えたいし……誰にでも力を貸してって言えるような世界になればいいな、って」
「……本当に立派になりましたね」
「えへへ……」
「学園のこと、もっと聞かせてほしいな」
「そうですね……ボク、いつも壁新聞を読ませてもらってるんです。この前はすごかったですよ。何でも学園には火吹き――」
「あっちょっと待ってください」

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「見てください! ボナロと私でコルネリウスさんの絵を描いたんですよ」
「……素敵な絵ですね!」
「髪の流れなんか上手く描けたと思うんです」
 なかなか大差のない絵(ひしゃげた丸と数本の線で構成されていた)を持って上機嫌なメルチスに、コルネリウスが声を掛ける。
「メルチスさん、これお土産です。二人からお好きだって聞いて」
 果実酒を渡すと、目を輝かせるメルチスに小さく笑った。もしかしたら、一番わかりやすいのは彼かもしれない。
「ボナロのこと、あまり話していませんでしたね」
 新しい家族、ドワーフの赤ん坊はもうすぐ一歳になるかという年らしい。
「実は、私が取り上げたんです。突然のことで医者もなく、……母親は助けることが出来ませんでした。改めて無力さと、ヒトの儚さを知りました。だから、最近は医術の勉強もしています。一人でも多く救いたい私のエゴであり意地です」
 ぽつぽつと話しながら、メルチスはグラスを空ける。
「自分に出来ることをしていく一生にする。それが、生き残った私がすべきことだと、今は思います。生まれ育った帝国に恩返ししたい気持ちも残っています。エーテル浄化も踏まえた旅にいつか出た時、コルネリウスさんのお力にもなれるかもしれませんね」
 その時はぜひ頼ってください、と青年は微笑んだ。

 見送りの朝。子どもたちが並んでコルネリウスを待っていた。
「それじゃ、皆で行くよ、せーの!」
 いっせいに子どもたちが差し出す。大きな袋、花の髪飾り、野菜の絵が描かれた本に、コルネリウスの愛馬を模した毛糸のマスコット、お花にリボン。ボナロはぽてぽてと歩み寄り、ぎゅっとしてくれて、コルネリウスもぎゅっと返した。
「オレはこの辺りでイチバンキレイなハナ摘んだゾ!」
「綺麗ですね……押し花もよさそうです。スールくんのマスコットもフィオさんの髪飾りも可愛いですね」
「アルドに聞いて、つくったんだ」
「カンパニュラの花飾りです。コルネリウスさんに似合うと思って」
「わたしは武器のお手入れセットよ! 袋にも道具にも、可愛らしいお花の紋が刻まれてるの」
「ハウラさんは素敵なものをたくさん知っているんですね。ピオくんの野菜の本もわかりやすいですね」
「図書館で見つけたんです。珍しい野菜も載っていて、人に教えるにも役立ちそうで」
「アルドくんは……橙色の、綺麗なリボンですね」
「うん。お返しと、家族の証、かな。付けてなくても家族だけれど、物があれば、思い出すから」
 最後にメルチスが小さな袋を差し出す。
「皆で祝福を込めた花の種です。ユリに似た可愛らしい、凛とした花が咲くんですよ。いつの間にか教会の花壇に咲いていて……コルネリウスさんに似ているって話してたんです。だから私たちはこう呼んでいます――『コルネリウス』と」
 コルネリウスは手元に目を落とす。自分の名前を冠した、花の種。そうして、全部をぎゅっと抱きしめる。
「ありがとうございます。……大切にします」

 ――慈愛(グナーデ)の名を持つ教会は、深い愛で満たされた、紛れもない皆の家だった。家族がどんなに増えていっても、この家はいつまでも、家族たちの心の中に花咲かせる。そう、コルネリウスは感じられた。

登場キャラクター

アーカイブ生成日時 2026年08月05日 14時56分25秒 ・ world0