お嬢様とメイドの卓上遊戯の盤外編――もとい番外編
キャラクターノベル(グループ)制作 空色みなも納品 2021年02月08日 20時55分00秒
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気心の知れた仲だから。
あなたの嘘はお見通し――?
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ルアンナ・ミュラーの姓がまだセラフィアスだった頃、ルアンナはパンクリアース学園の貴族寮で暮らしていた。
といっても、何もセラフィアス家が貴族だったわけではない。
ルアンナの両親が貴族に口利きをした結果である。
そして、貴族寮の寮生には部屋に召使を置くことが許されている。
当時、まだ髪も長かったクローリカは、ルアンナにメイドとして仕えていた。
「近頃、お嬢様が楽しそうに出かけている……」
そんなクローリカが気にしているのは、ルアンナが放課後、遅くに帰ってくるようになったこと。
しかも決まってウキウキとした様子で戻ってくる。
(これは――何かありますね)
クローリカはこの時、心に決めた。
今日ルアンナが帰ってきたら、その秘密を問いただそうと。
そんな折、ちょうどルアンナが寮室に帰ってきた。
「お帰りなさいませ、お嬢様。あの、実はお話が――」
「ただいま、クローリカ。あれ、奇遇ですね。私もクローリカに話したいことがあるんです」
クローリカが出迎えながら話を切り出そうとすると、やはり上機嫌なルアンナから、そんな答えが返ってきたのだった。
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「卓上遊戯倶楽部?」
「ええ、とっても楽しいところですよ。だから、クローリカも一緒にどうかと思って」
話を聞いて素っ頓狂な声を上げるクローリカを、そのままルアンナは自らが通い詰める倶楽部に勧誘しようとする。
「最近のお嬢様の様子は、それで得心が行きましたが……しかし、急な話なので」
クローリカが返答を迷っていると――。
「まあ、とりあえずやってみましょ♪」
ルアンナはそれも見越していたとでもいうのか、手早くカードの束を取り出す。
「冒険者をいかに早く集めてパーティーを結成するか、ライバルと競うゲームです」
ルアンナがクローリカに見せたカードにはそれぞれ冒険者が描かれており、戦士、斥候、魔術師、癒し手、射手の五種類に分かれていた。
「これらのカードは一種類につき各六枚ずつあります」
ルアンナの説明に基づくと、カードは全部で三十枚あることになる。
「これをよくシャッフルして、五枚を裏向きのまま取り除きます。除いたカードは、このゲームでは使いません」
言葉通り、ルアンナは五枚のカードを取り除いた後、残った二十五枚をさらに十三枚と十二枚に分けた。
「そして先手が十三枚を、後手が十二枚を取るのですが、とりあえず説明のために私が先手をとりますね」
そう言ってルアンナは分けたカードを手に取り、クローリカにもカードを渡したのだった。
●
「では、私は癒し手に声をかけたいと思います」
自らが雇おうとする冒険者を宣言しながら、ルアンナは手札から一枚のカードを出す。
しかしそのカードは――裏向きに伏せられていた。
「ええと、私はこれが本当に癒し手か、そうでないか当てればいいんでしたね」
「はい、それで大丈夫ですよ」
あの後、一通りの説明を受けたクローリカが改めてルールの確認をとりながら、ルアンナの顔色を窺う。
ルアンナはニコニコした笑顔を崩さず、クローリカの目を見つめ返している。
(本当か嘘かを当てるなんて、ただ二つに一つの賭けのようにも思えますが――)
クローリカが聞いた説明によると、ここで行うべきは、ルアンナの行った宣言の真贋を見抜くこと。
そう、ルアンナはカードを伏せる際に、嘘をついているかもしれないのだ。
「えっと、じゃあ本当だと思います」
クローリカが答えを告げたのを聞いて、ルアンナが表向きにしたカードに描かれていたのは――短剣を手にした軽装の冒険者。
「残念でした、私が雇うのは実は斥候です」
ルアンナは差し出していたカードを、テーブル上の自らの目前に置く。
「むう、難しいですね。もし当たっていたら、その斥候は私が横取りで雇えていたのですね?」
「その通りです。そして冒険者を雇えなかった側の手番になるので、次はクローリカが手札を出す番ですね」
クローリカの言ったように、どうやらこのゲームでは、雇おうとする冒険者がライバルに察知されると、横取りで先に雇われてしまう世界観らしい。
ルアンナは無事に嘘を見破られなかったので、冒険者を雇うことに成功し、横取りに失敗したクローリカが次の番、というわけだ。
このように雇った冒険者が、自分のもとに同じ種類が三人集まるか、五種類すべて集まればゲームの勝利者となる。
(しかし、何を出しましょう。そして――何と言いながら出しましょう?)
困惑するクローリカが取り合えず自分の手札を眺めると、射手が手元に最も多く、五枚あるのが目に留まった。
「で、では私は射手を雇います」
「なるほど。では、それは本当でしょう」
クローリカはつい手にしたカードをそのまま宣言したことをルアンナに易々と見抜かれてしまい、自らの出した射手を横取りされてしまう。
「よく分かりましたね、お嬢様」
「ふふ、最初から嘘をつくというのも難しいでしょうからね」
クローリカが感心してみせると、ルアンナは種明かしをしてみせる。
「じゃあ……次は戦士を雇います」
「それは嘘じゃないですか?」
クローリカは次は魔術師のカードを伏せて嘘をついてみるも、ルアンナがあっさりそれを見破る。
「一体どうすれば……」
「あはは、ごめんなさい。本当のこと言って当てられた次だから、今度は嘘をついてみるかなって」
肩を落とすクローリカに、ルアンナは朗らかに笑いながらも謝った。
「今度こそ戦士を雇います!」
「おっと、連続で戦士ですか……これも嘘、でしょうか」
本当と嘘を交互に当てられ、それを指摘されたクローリカの起死回生の一手は、あえて連続で嘘をつかないことだった。
つまり、ここでクローリカが出したカードは――戦士。
ルアンナもクローリカがパターンを変えることを期待していたのか、今度は宣言の真偽を当てることに失敗した。
「私も初めて冒険者を雇えました……ここから反撃しますよ!」
宣言の成功で勢いづき、ゲームにのめり込んでいくクローリカ。
ルアンナは答えを外したにも関わらず、それを嬉しそうに眺めていた。
●
そうして続いたゲームも、いよいよ佳境を迎えていた。
「では私はここで、癒し手を雇おうと思います」
カードを伏せながら行われたルアンナの宣言に、クローリカは固唾を飲む。
現在、ルアンナが雇った冒険者は、斥候、魔術師、射手が各一人ずつ、そして癒し手が二人。
もし伏せられたカードが宣言通り癒し手だとして、それを雇わせれば――ルアンナはこのゲームに勝利する。
「私にも、分かってきましたよ」
しかし、そこでクローリカは自らが雇った冒険者を眺め、不敵に笑った。
「お嬢様、それは嘘ですね? 私が思うに、そのカードは――戦士かと。それで五種類揃えても、お嬢様の勝ちですからね」
クローリカの指摘を受け、ルアンナが口をつぐんで押し黙る。
そう、クローリカが雇った冒険者は、戦士、斥候、魔術師、射手が各々一人ずつ。
もし本当にルアンナが出したカードが癒し手であれば――それをクローリカが当てて横取りした際、クローリカに勝利を許すことになる。
これまでクローリカに渡しては危険なカードを出すことのなかったルアンナが、ここに来て危ない橋を渡るはずが――。
「すいません、これ本当に癒し手なんです♪」
めくられたカードは、無情にもルアンナの勝利を告げていた。
気心の知れた仲だから。
あなたの嘘はお見通し――?
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ルアンナ・ミュラーの姓がまだセラフィアスだった頃、ルアンナはパンクリアース学園の貴族寮で暮らしていた。
といっても、何もセラフィアス家が貴族だったわけではない。
ルアンナの両親が貴族に口利きをした結果である。
そして、貴族寮の寮生には部屋に召使を置くことが許されている。
当時、まだ髪も長かったクローリカは、ルアンナにメイドとして仕えていた。
「近頃、お嬢様が楽しそうに出かけている……」
そんなクローリカが気にしているのは、ルアンナが放課後、遅くに帰ってくるようになったこと。
しかも決まってウキウキとした様子で戻ってくる。
(これは――何かありますね)
クローリカはこの時、心に決めた。
今日ルアンナが帰ってきたら、その秘密を問いただそうと。
そんな折、ちょうどルアンナが寮室に帰ってきた。
「お帰りなさいませ、お嬢様。あの、実はお話が――」
「ただいま、クローリカ。あれ、奇遇ですね。私もクローリカに話したいことがあるんです」
クローリカが出迎えながら話を切り出そうとすると、やはり上機嫌なルアンナから、そんな答えが返ってきたのだった。
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「卓上遊戯倶楽部?」
「ええ、とっても楽しいところですよ。だから、クローリカも一緒にどうかと思って」
話を聞いて素っ頓狂な声を上げるクローリカを、そのままルアンナは自らが通い詰める倶楽部に勧誘しようとする。
「最近のお嬢様の様子は、それで得心が行きましたが……しかし、急な話なので」
クローリカが返答を迷っていると――。
「まあ、とりあえずやってみましょ♪」
ルアンナはそれも見越していたとでもいうのか、手早くカードの束を取り出す。
「冒険者をいかに早く集めてパーティーを結成するか、ライバルと競うゲームです」
ルアンナがクローリカに見せたカードにはそれぞれ冒険者が描かれており、戦士、斥候、魔術師、癒し手、射手の五種類に分かれていた。
「これらのカードは一種類につき各六枚ずつあります」
ルアンナの説明に基づくと、カードは全部で三十枚あることになる。
「これをよくシャッフルして、五枚を裏向きのまま取り除きます。除いたカードは、このゲームでは使いません」
言葉通り、ルアンナは五枚のカードを取り除いた後、残った二十五枚をさらに十三枚と十二枚に分けた。
「そして先手が十三枚を、後手が十二枚を取るのですが、とりあえず説明のために私が先手をとりますね」
そう言ってルアンナは分けたカードを手に取り、クローリカにもカードを渡したのだった。
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「では、私は癒し手に声をかけたいと思います」
自らが雇おうとする冒険者を宣言しながら、ルアンナは手札から一枚のカードを出す。
しかしそのカードは――裏向きに伏せられていた。
「ええと、私はこれが本当に癒し手か、そうでないか当てればいいんでしたね」
「はい、それで大丈夫ですよ」
あの後、一通りの説明を受けたクローリカが改めてルールの確認をとりながら、ルアンナの顔色を窺う。
ルアンナはニコニコした笑顔を崩さず、クローリカの目を見つめ返している。
(本当か嘘かを当てるなんて、ただ二つに一つの賭けのようにも思えますが――)
クローリカが聞いた説明によると、ここで行うべきは、ルアンナの行った宣言の真贋を見抜くこと。
そう、ルアンナはカードを伏せる際に、嘘をついているかもしれないのだ。
「えっと、じゃあ本当だと思います」
クローリカが答えを告げたのを聞いて、ルアンナが表向きにしたカードに描かれていたのは――短剣を手にした軽装の冒険者。
「残念でした、私が雇うのは実は斥候です」
ルアンナは差し出していたカードを、テーブル上の自らの目前に置く。
「むう、難しいですね。もし当たっていたら、その斥候は私が横取りで雇えていたのですね?」
「その通りです。そして冒険者を雇えなかった側の手番になるので、次はクローリカが手札を出す番ですね」
クローリカの言ったように、どうやらこのゲームでは、雇おうとする冒険者がライバルに察知されると、横取りで先に雇われてしまう世界観らしい。
ルアンナは無事に嘘を見破られなかったので、冒険者を雇うことに成功し、横取りに失敗したクローリカが次の番、というわけだ。
このように雇った冒険者が、自分のもとに同じ種類が三人集まるか、五種類すべて集まればゲームの勝利者となる。
(しかし、何を出しましょう。そして――何と言いながら出しましょう?)
困惑するクローリカが取り合えず自分の手札を眺めると、射手が手元に最も多く、五枚あるのが目に留まった。
「で、では私は射手を雇います」
「なるほど。では、それは本当でしょう」
クローリカはつい手にしたカードをそのまま宣言したことをルアンナに易々と見抜かれてしまい、自らの出した射手を横取りされてしまう。
「よく分かりましたね、お嬢様」
「ふふ、最初から嘘をつくというのも難しいでしょうからね」
クローリカが感心してみせると、ルアンナは種明かしをしてみせる。
「じゃあ……次は戦士を雇います」
「それは嘘じゃないですか?」
クローリカは次は魔術師のカードを伏せて嘘をついてみるも、ルアンナがあっさりそれを見破る。
「一体どうすれば……」
「あはは、ごめんなさい。本当のこと言って当てられた次だから、今度は嘘をついてみるかなって」
肩を落とすクローリカに、ルアンナは朗らかに笑いながらも謝った。
「今度こそ戦士を雇います!」
「おっと、連続で戦士ですか……これも嘘、でしょうか」
本当と嘘を交互に当てられ、それを指摘されたクローリカの起死回生の一手は、あえて連続で嘘をつかないことだった。
つまり、ここでクローリカが出したカードは――戦士。
ルアンナもクローリカがパターンを変えることを期待していたのか、今度は宣言の真偽を当てることに失敗した。
「私も初めて冒険者を雇えました……ここから反撃しますよ!」
宣言の成功で勢いづき、ゲームにのめり込んでいくクローリカ。
ルアンナは答えを外したにも関わらず、それを嬉しそうに眺めていた。
●
そうして続いたゲームも、いよいよ佳境を迎えていた。
「では私はここで、癒し手を雇おうと思います」
カードを伏せながら行われたルアンナの宣言に、クローリカは固唾を飲む。
現在、ルアンナが雇った冒険者は、斥候、魔術師、射手が各一人ずつ、そして癒し手が二人。
もし伏せられたカードが宣言通り癒し手だとして、それを雇わせれば――ルアンナはこのゲームに勝利する。
「私にも、分かってきましたよ」
しかし、そこでクローリカは自らが雇った冒険者を眺め、不敵に笑った。
「お嬢様、それは嘘ですね? 私が思うに、そのカードは――戦士かと。それで五種類揃えても、お嬢様の勝ちですからね」
クローリカの指摘を受け、ルアンナが口をつぐんで押し黙る。
そう、クローリカが雇った冒険者は、戦士、斥候、魔術師、射手が各々一人ずつ。
もし本当にルアンナが出したカードが癒し手であれば――それをクローリカが当てて横取りした際、クローリカに勝利を許すことになる。
これまでクローリカに渡しては危険なカードを出すことのなかったルアンナが、ここに来て危ない橋を渡るはずが――。
「すいません、これ本当に癒し手なんです♪」
めくられたカードは、無情にもルアンナの勝利を告げていた。