仮想戦域002022
4周年イベントノベル(テーマ)制作 弓月 蒼納品 2024年09月27日 08時47分54秒
●002022::Revolutionary War Apocalypse-Zero
ディレイン・オールドケイジは突然放り出された中空で、漆黒の翼をはためかせる。
こんなゆっくりな羽搏きで、自分くらいの重量が飛べるとは到底思えないのだけれど。
その感覚に反して、彼の身体は自由自在にこの空の戦場を飛ぶ事が出来た。
(さすがに空中戦は初めてだなあ……え、これ酔わない? 大丈夫?)
とりあえず。翼の動きを止めると真っ逆さまに落ちる。と言う世界の仕様を把握した辺りで。
この遊戯の対戦者が光を帯びて顕現する。自分の翼の色。少し手繰ってみた力。
澱とは似て非なる、魔力なる物の色は黒。であれば対する相手が光の化身なのは当然だ。
「お待たせしました、おじさま」
緋色の翼に金の盛装。何より圧倒的な神々しさ。光を帯びているのが彼女には良く似合っていた。
コルネリウス・アーラ。いや、世界に刻まれた文字を読むなら。『土の力天使クロリス』。
そして恐らく。彼女の視界には『色欲の悪魔ディエル』の名が映っている筈だ。
ディレインの手元にない、けれどコルネリウスと戦う為の手札を。遊戯から借りた。
結果"色欲"なんてあまりどうでも良い、面倒くさい称号を得てしまったけれど。今回ばかりは感謝しかない。
「初めてキミの顔を見て戦えるよ。お手柔らかにね、コルネちゃん」
「ちょ、ちょっと待って下さい。あの、武器が鳥籠しか無くてですね……!」
コルネリウスは焦っていた。自分が纏う光。神力とも言えるそれが絶大な防御力を持っている事は分かる。
でも武器が無い。鳥籠しかない。こんな大きな、重そうな物で殴ったら、おじさまはどうなる?
自分の翼と、"色欲の悪魔ディエル"のそれは性能が殆ど変わらない様に見えた。
だとすると手加減して殴る、なんて出来ない。一瞬で振り抜かないと離脱される。でも、そんなの――――
「今更待ったは無しだよ――――だってこんな機会、きっと最初で最後でしょ?」
羽搏き。その翼の羽一枚一枚を象った魔力が周囲にばら蒔かれるや、無数のそれらが同数の矢へと変ずる。
360度逃げ場など無い。悪魔ディエルの操る魔矢は包み込むような全方位射撃。
参加時に選択し得る武器は無数に存在した。選びきれない中でディレインが重視したのは極単純な1つ。
怠惰な彼は――――己の武器を決して外さない事に注いだ。
■
(――――避けられない……!)
コルネリウスは常に戦いの最前線を駆けて来た熟達の冒険者だ。
けれど、彼女は未だ"力天使コルリス"の性能を把握し切れていない。少なくとも、纏った神力は堅牢だ。
"ディエル"の黒矢、一撃一撃は当たっても弾き返せる程に。けれど、数が余りにも多い。
ざっと見ただけで50は優に超える。それらが微妙に時間差を付け飛んでくる。神力で相殺しても補充される。
ジリ貧、そのものだ。そして"ディエル"本人は安全圏から前には出て来ない。
コルネリウスの判断力と行動力を決して侮らない。最大限の敬意を表し完封しようとして来る。
(このままじゃ……!)
何も出来ずに堕とされる。そこに、"ディエル"からの言葉が降った。
「このままだと、おじさんの勝ちってことになるけどいいのかな」
其処に何処か。寂しさの様な物を感じ取って。コルネリウスは――――"コルリス"は、奮起した。
駄目だ。相手が本気で勝ちに来ているなら、ただ負けてあげるなんてしてはいけない。
それは戦いへの冒涜だ。これは――――真剣勝負なんだから。
「おじさま――――もし本当に痛かったらギブアップして下さいね……!」
翼をはためかせる。進路は直線最短経路。"ディエル"がぎょっとした様に後ろへ下がる。
黒矢は"コルリス"を追尾する。彼女は自覚が無いが、放った矢には戦意を喪失させる呪いが掛かっている。
本来なら、もう交戦の意思なんか失っていて可笑しくない筈。けれど、だったらこれは何だ。
移動に神力を割いた分、矢は彼女の身体を傷付けて行く。HPが減り始めている。けれど止まらない。
『力天使』の名が示す様に。戦意を漲らせ、唯一の武器の鳥籠を振り被る。
――――天使"コルリス"の姿は畏ろしいほどに力強く、呆れてしまうほど綺麗だった。
(ああ――――キミはあの背中のむこうでそんな顔をしてたんだね)
頭上から振り下ろされた鳥籠の衝撃に視界が反転した次の瞬間、掬い上げられる様に二撃目が来た。
自分のHPが大幅に削られ半分を切るも。それでも、それでも。もう少しだけ、その姿を見ていたくて。
「全弾発射」
翼に残った全ての羽で"コルリス"を穿つ。当然、翼を失えば飛び続ける事は叶わない。
それなのに、そこまでしてなお。最後に見えた物は――――矢襖の中で尚鳥籠を振り下ろす戦場に輝ける聖女の姿。
これは、敵わないなあ……
心からの賛美を胸に、"悪魔ディエル"は戦場を堕ちていく。まさに紙一重の敗北だった。
勝者――――地の力天使コルリス。
ディレイン・オールドケイジは突然放り出された中空で、漆黒の翼をはためかせる。
こんなゆっくりな羽搏きで、自分くらいの重量が飛べるとは到底思えないのだけれど。
その感覚に反して、彼の身体は自由自在にこの空の戦場を飛ぶ事が出来た。
(さすがに空中戦は初めてだなあ……え、これ酔わない? 大丈夫?)
とりあえず。翼の動きを止めると真っ逆さまに落ちる。と言う世界の仕様を把握した辺りで。
この遊戯の対戦者が光を帯びて顕現する。自分の翼の色。少し手繰ってみた力。
澱とは似て非なる、魔力なる物の色は黒。であれば対する相手が光の化身なのは当然だ。
「お待たせしました、おじさま」
緋色の翼に金の盛装。何より圧倒的な神々しさ。光を帯びているのが彼女には良く似合っていた。
コルネリウス・アーラ。いや、世界に刻まれた文字を読むなら。『土の力天使クロリス』。
そして恐らく。彼女の視界には『色欲の悪魔ディエル』の名が映っている筈だ。
ディレインの手元にない、けれどコルネリウスと戦う為の手札を。遊戯から借りた。
結果"色欲"なんてあまりどうでも良い、面倒くさい称号を得てしまったけれど。今回ばかりは感謝しかない。
「初めてキミの顔を見て戦えるよ。お手柔らかにね、コルネちゃん」
「ちょ、ちょっと待って下さい。あの、武器が鳥籠しか無くてですね……!」
コルネリウスは焦っていた。自分が纏う光。神力とも言えるそれが絶大な防御力を持っている事は分かる。
でも武器が無い。鳥籠しかない。こんな大きな、重そうな物で殴ったら、おじさまはどうなる?
自分の翼と、"色欲の悪魔ディエル"のそれは性能が殆ど変わらない様に見えた。
だとすると手加減して殴る、なんて出来ない。一瞬で振り抜かないと離脱される。でも、そんなの――――
「今更待ったは無しだよ――――だってこんな機会、きっと最初で最後でしょ?」
羽搏き。その翼の羽一枚一枚を象った魔力が周囲にばら蒔かれるや、無数のそれらが同数の矢へと変ずる。
360度逃げ場など無い。悪魔ディエルの操る魔矢は包み込むような全方位射撃。
参加時に選択し得る武器は無数に存在した。選びきれない中でディレインが重視したのは極単純な1つ。
怠惰な彼は――――己の武器を決して外さない事に注いだ。
■
(――――避けられない……!)
コルネリウスは常に戦いの最前線を駆けて来た熟達の冒険者だ。
けれど、彼女は未だ"力天使コルリス"の性能を把握し切れていない。少なくとも、纏った神力は堅牢だ。
"ディエル"の黒矢、一撃一撃は当たっても弾き返せる程に。けれど、数が余りにも多い。
ざっと見ただけで50は優に超える。それらが微妙に時間差を付け飛んでくる。神力で相殺しても補充される。
ジリ貧、そのものだ。そして"ディエル"本人は安全圏から前には出て来ない。
コルネリウスの判断力と行動力を決して侮らない。最大限の敬意を表し完封しようとして来る。
(このままじゃ……!)
何も出来ずに堕とされる。そこに、"ディエル"からの言葉が降った。
「このままだと、おじさんの勝ちってことになるけどいいのかな」
其処に何処か。寂しさの様な物を感じ取って。コルネリウスは――――"コルリス"は、奮起した。
駄目だ。相手が本気で勝ちに来ているなら、ただ負けてあげるなんてしてはいけない。
それは戦いへの冒涜だ。これは――――真剣勝負なんだから。
「おじさま――――もし本当に痛かったらギブアップして下さいね……!」
翼をはためかせる。進路は直線最短経路。"ディエル"がぎょっとした様に後ろへ下がる。
黒矢は"コルリス"を追尾する。彼女は自覚が無いが、放った矢には戦意を喪失させる呪いが掛かっている。
本来なら、もう交戦の意思なんか失っていて可笑しくない筈。けれど、だったらこれは何だ。
移動に神力を割いた分、矢は彼女の身体を傷付けて行く。HPが減り始めている。けれど止まらない。
『力天使』の名が示す様に。戦意を漲らせ、唯一の武器の鳥籠を振り被る。
――――天使"コルリス"の姿は畏ろしいほどに力強く、呆れてしまうほど綺麗だった。
(ああ――――キミはあの背中のむこうでそんな顔をしてたんだね)
頭上から振り下ろされた鳥籠の衝撃に視界が反転した次の瞬間、掬い上げられる様に二撃目が来た。
自分のHPが大幅に削られ半分を切るも。それでも、それでも。もう少しだけ、その姿を見ていたくて。
「全弾発射」
翼に残った全ての羽で"コルリス"を穿つ。当然、翼を失えば飛び続ける事は叶わない。
それなのに、そこまでしてなお。最後に見えた物は――――矢襖の中で尚鳥籠を振り下ろす戦場に輝ける聖女の姿。
これは、敵わないなあ……
心からの賛美を胸に、"悪魔ディエル"は戦場を堕ちていく。まさに紙一重の敗北だった。
勝者――――地の力天使コルリス。