柚子の香り
キャラクターノベル制作 真柄 葉納品 2021年01月06日 20時59分08秒
「ジルさんこんにちは!」
「おわっ!?」
勢いよく開かれたドアに顔をぶつけそうになりジルは飛び退いた。
「あれ、ジルさん。お出迎えありがとうっ!」
目的の人物を目の前に見つけ、キキは嬉しそうに頭を下げた。
「あ、ああ、あんたか。いらっしゃい。といっても、今から一度店を閉めるよ」
「あれ、今日はお終いだった?」
「昼の営業は終わったからね。今から夜の仕込みだ。食事に来たのかい?」
「ううん、相談に来ました!」
「相談? まぁいい、ここは寒いし入りな」
「はーい、おじゃまします!」
ジルに招き入れられ、キキは足取り軽く店内へと入って行った。
●
客の一人もいない店の中は意外と静かで、キキは珍しそうに店内を見渡す。
「それで相談ってのはなんだい?」
そんなキキにお茶を出したジルが声をかけた。
「えっと、この前の依頼でたくさんもらったから、これをお裾分けに持ってきたの!」
と、キキは持参したバックパックをごそごそと探ると、両手いっぱいの果実を取り出した。
「これは――柚子かい?」
「おぉ、さっすがジルさん。よく知ってるね!」
「いや、実を見たのは初めてだよ。以前に皮を使った事はあったんだけどね」
ジルも興味を示したのか、キキから受け取った果実を眺めたり嗅いだりしている。
「やっぱり独特ないい香りだね」
「うんうん! 皮をこうやって指でこするだけでも――はぁ……いい匂い」
柚子独特の爽やかな香りに、キキはうっとりとため息をついた。
「へぇ、こうかい? ……ああ、これはいいね。でも貴重なものだろう? いいのかい、お裾分けなんて」
「もちろん! 一人じゃこんなにいっぱい使えないし!」
「そうか、それじゃありがたくいただこうかね」
まるで太陽のように笑うキキに、ジルは微笑み返す。
「それで相談ってのは?」
「あっ、そうだ。忘れてた! 実はこの柚子を使った新作料理を考えてるんだけど、なかなかいいアイデアが浮かばなくて……それで、ジルさんなら何かアドバイスくれるかなって思ったんだ!」
「柚子の料理か……私も皮を彩に添えたことくらいしかないからなぁ」
「あれ、難しい……?」
ふむと悩ましげな表情を見せるジルに、キキは不安げに問いかける。
「いや? 楽しみだ」
しかし、ジルはそんなキキに悪戯な笑みで返した。
●
共にエプロンを身に着け準備万端。二人は厨房に立つ。
「何度か作ったのが、皮と百合茶で鶏肉を茹でた料理なんだけど」
「へぇ、塩で食べるとおいしそうだね」
「さすがジルさん! そうなの、調味料は塩だけで十分なくらい美味しいの!」
想像したのか危うく垂れそうになった涎を袖で拭いながら、キキは話す。
「でも、それが美味しいからあまり他の料理を作らなくて……せっかく美味しい柚子だから、もっと色々使えたらなって思うの」
と、キキはちらりとジルを見る。
「ああ、もちろん手伝わせてもらうよ。貴重な食材を扱うんだ、料理人の腕の見せ所だね」
と、ジルがわざとらしく失くした方の腕を叩いた。
「もぉ、ジルさんってば」
そんな、ジルの冗談にキキは少し困ったように微笑んだ。
●
「やっぱり肉料理だね。鳥よりも油が多めなものがいいだろうな」
「豚肉とか?」
「そうだね。豚のスペアリブを使ってみようか」
「うん!」
言ってジルは冷蔵用紋具から肉塊を取り出した。
エプロンを付けた二人は和気藹々と会話を楽しみながら、下ごしらえを進める。
調理はジルが担当し、キキは片腕しかないジルをサポートする。
作るのは『柚子ジャムのスペアリブ』『柚子ご飯』『柚子ゼリー』に決まった。
メインディッシュにキキが柚子と一緒に持ってきた柚子ジャムをふんだんに使ったスペアリブ。
添えるのは柚子の皮と果汁で焚き上げたさっぱりご飯。
そして、デザートには柚子の実をくりぬいた柚子の皮を器に使った、ゼリーを。
二人は協力しながら手際よく調理を進めていった――。
「できたー!」
「ああ、これならお客に提供するにも十分な量だね」
出来上がった数々の試作料理を前に、二人は満足げに頷く。
「あとは味だね。気に入ってもらえるといいんだけど」
「それは問題ないよ! だって、どれもほっぺたが落ちるほどおいしいもん!」
料理中、味見だとちょくちょくつまんでいたキキも大満足の仕上がりだった。
「さて――」
濡れた手をエプロンで拭いたジルが入口へと歩いていく。
「いい時間だし、開店しようか。ついでだ、ちょっと手伝っていくかい。客の反応も見たいだろ?」
「あ、うん。するする!」
その提案に拳を突き上げたキキは、ジルの後を追って入口へと向かった。
「それじゃ、看板をひっくり返そうか。もしかしたらもうお客が待ってるかもしれない」
隣に並んだキキに、ジルが話しかける。
「匂いにつられて?」
「ふむ。これからは柚子を店先に吊るしておくかね」
二人は微笑み合うと、店の看板を【Open】へと変えた――。
「おわっ!?」
勢いよく開かれたドアに顔をぶつけそうになりジルは飛び退いた。
「あれ、ジルさん。お出迎えありがとうっ!」
目的の人物を目の前に見つけ、キキは嬉しそうに頭を下げた。
「あ、ああ、あんたか。いらっしゃい。といっても、今から一度店を閉めるよ」
「あれ、今日はお終いだった?」
「昼の営業は終わったからね。今から夜の仕込みだ。食事に来たのかい?」
「ううん、相談に来ました!」
「相談? まぁいい、ここは寒いし入りな」
「はーい、おじゃまします!」
ジルに招き入れられ、キキは足取り軽く店内へと入って行った。
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客の一人もいない店の中は意外と静かで、キキは珍しそうに店内を見渡す。
「それで相談ってのはなんだい?」
そんなキキにお茶を出したジルが声をかけた。
「えっと、この前の依頼でたくさんもらったから、これをお裾分けに持ってきたの!」
と、キキは持参したバックパックをごそごそと探ると、両手いっぱいの果実を取り出した。
「これは――柚子かい?」
「おぉ、さっすがジルさん。よく知ってるね!」
「いや、実を見たのは初めてだよ。以前に皮を使った事はあったんだけどね」
ジルも興味を示したのか、キキから受け取った果実を眺めたり嗅いだりしている。
「やっぱり独特ないい香りだね」
「うんうん! 皮をこうやって指でこするだけでも――はぁ……いい匂い」
柚子独特の爽やかな香りに、キキはうっとりとため息をついた。
「へぇ、こうかい? ……ああ、これはいいね。でも貴重なものだろう? いいのかい、お裾分けなんて」
「もちろん! 一人じゃこんなにいっぱい使えないし!」
「そうか、それじゃありがたくいただこうかね」
まるで太陽のように笑うキキに、ジルは微笑み返す。
「それで相談ってのは?」
「あっ、そうだ。忘れてた! 実はこの柚子を使った新作料理を考えてるんだけど、なかなかいいアイデアが浮かばなくて……それで、ジルさんなら何かアドバイスくれるかなって思ったんだ!」
「柚子の料理か……私も皮を彩に添えたことくらいしかないからなぁ」
「あれ、難しい……?」
ふむと悩ましげな表情を見せるジルに、キキは不安げに問いかける。
「いや? 楽しみだ」
しかし、ジルはそんなキキに悪戯な笑みで返した。
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共にエプロンを身に着け準備万端。二人は厨房に立つ。
「何度か作ったのが、皮と百合茶で鶏肉を茹でた料理なんだけど」
「へぇ、塩で食べるとおいしそうだね」
「さすがジルさん! そうなの、調味料は塩だけで十分なくらい美味しいの!」
想像したのか危うく垂れそうになった涎を袖で拭いながら、キキは話す。
「でも、それが美味しいからあまり他の料理を作らなくて……せっかく美味しい柚子だから、もっと色々使えたらなって思うの」
と、キキはちらりとジルを見る。
「ああ、もちろん手伝わせてもらうよ。貴重な食材を扱うんだ、料理人の腕の見せ所だね」
と、ジルがわざとらしく失くした方の腕を叩いた。
「もぉ、ジルさんってば」
そんな、ジルの冗談にキキは少し困ったように微笑んだ。
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「やっぱり肉料理だね。鳥よりも油が多めなものがいいだろうな」
「豚肉とか?」
「そうだね。豚のスペアリブを使ってみようか」
「うん!」
言ってジルは冷蔵用紋具から肉塊を取り出した。
エプロンを付けた二人は和気藹々と会話を楽しみながら、下ごしらえを進める。
調理はジルが担当し、キキは片腕しかないジルをサポートする。
作るのは『柚子ジャムのスペアリブ』『柚子ご飯』『柚子ゼリー』に決まった。
メインディッシュにキキが柚子と一緒に持ってきた柚子ジャムをふんだんに使ったスペアリブ。
添えるのは柚子の皮と果汁で焚き上げたさっぱりご飯。
そして、デザートには柚子の実をくりぬいた柚子の皮を器に使った、ゼリーを。
二人は協力しながら手際よく調理を進めていった――。
「できたー!」
「ああ、これならお客に提供するにも十分な量だね」
出来上がった数々の試作料理を前に、二人は満足げに頷く。
「あとは味だね。気に入ってもらえるといいんだけど」
「それは問題ないよ! だって、どれもほっぺたが落ちるほどおいしいもん!」
料理中、味見だとちょくちょくつまんでいたキキも大満足の仕上がりだった。
「さて――」
濡れた手をエプロンで拭いたジルが入口へと歩いていく。
「いい時間だし、開店しようか。ついでだ、ちょっと手伝っていくかい。客の反応も見たいだろ?」
「あ、うん。するする!」
その提案に拳を突き上げたキキは、ジルの後を追って入口へと向かった。
「それじゃ、看板をひっくり返そうか。もしかしたらもうお客が待ってるかもしれない」
隣に並んだキキに、ジルが話しかける。
「匂いにつられて?」
「ふむ。これからは柚子を店先に吊るしておくかね」
二人は微笑み合うと、店の看板を【Open】へと変えた――。